[文書名] 「ACE:Actions for CooI Earth(美しい星への行動)」(攻めの地球温曜化外交戦略)
1.理念
1880年から現在までに世界の平均気温が0.85℃上昇し,最近30年の各10年聞の世界平均気温は,1850年以降のどの10年間よりも高温であった。IPCCは,「気候システムの温暖化については,疑う余地がない」としている。
2013年は,安倍総理が「美しい星へのいざない」として“クールアース50"を発表してから6年。この間,新興固などは急速な発展を続け,中国は世界最大の温室効果ガス排出固となるなど,全世界規模で経済成長や貧困撲滅と両立した形で温暖化対策を進める重要性が増している。このように気候変動問題を巡る状況も大きく変化する中で,全ての固が参加した形で温室効果ガス排出を世界規模で効果的に抑制していくため,新たな国際ルールを形成しつつ,具体的な温室効果ガス削減行動を直ちに開始することが急務となっている。
こうした中,優れた環境エネルギー技術を有する日本は,技術で世界に貢献する攻めの姿勢を示すことで,実効性のある対策に裏打ちされた気候変動の国際交渉を展開し,存在感を飛躍的に高めるチャンスを前にしている。温室効果ガスの排出量を2050年までに世界全体で半減,先進国全体で80%削減を目指すという目標を改めて掲げ,安倍総理が掲げた美しい星を実現するため,今こそ「行動“アクション"Jが必要とされている。
2.行動
「美しい星」を実現するため,2050年までの世界全体の温室効果ガスの排出量半減,先進国全体で80%削減を目指すという目標を達成することを改めて掲げる。この成功のために,日本は東日本大震災及び原発事故を乗り越え,「“エース"」として目標達成の努力を主導する。具体的には,イノベーション,アプリケーション,パートナーシップの三本柱におけるアクションをもって,「技術で世界に貢献していく,攻めの地球温暖化外交」を実行する。
(1)イノベーション
環境エネルギー技術を誇る日本が,さらなる「技術革新“イノベーション”」により,技術の飛躍的進歩の先頭に立つことは,目標実現に不可欠。革新的技術の開発を推進し,将来にわたって大幅な温室効果ガス排出削減を確実にするとともに,途上国のニーズに応える現地適応型技術の開発を進めることにより,早急かつ効果的に途上国に寄り添った温室効果ガス排出削減に貢献する。
> 技術革新を推進するため,2020年度までの園地方の基礎的財政収支黒字化を前提としつつ,官民併せて5年で1100億ドルの圏内投資を目指す。特に,長期的視点から,ハイリスクだがインパクトの大きな技術開発には園が率先して取り組む。
> 切れ目なく優れた技術の開発・普及を推進すぺ<.最新の知見を踏まえて技術レベルの在り方を提示する技術ロードマップを示す観点から,「環境エネルギー技術革新計画」を改訂した。同計画を着実に実行し,これらの技術が世界中で開発・普及されることにより,2050年世界半減に必要な量の約8割の削減が可能となる。
✓ CCS(二酸化炭素回収・貯留技術):火力発電等から排出されるC02を回収し地下に貯留。日本はCCS普及の鍵となる分離・回収技術の高効率化で世界に貢献。
✓ 革新的構造材料輸送機器の軽量化により燃費を大幅に向上。特に炭素繊維分野で世界に貢献する。(自動車の場合,車体を約6割軽量化)
✓ 人工光合成:水とC02からプラスチック原料等を製造し,C02を固定化。日本は,2030年代の実用化を目指し,世界に先駆けて研究を推進する。
✓ 日本発の低炭素技術を途上国に展開するため,相手国のニーズを把握し,技術開発や製品技術の最適化を図る。
> 日本と他国の技術のシナジー効果を生み出すため,基盤研究分野を中心Iこ主要国との国際的な連携を推進し,世界的な革新的技術の開発を加速する。
> イノベーション加速を通じた地球温暖化問題の解決のため,世界の産学官トップが一堂に会し,議論する「世界エネルギー・環境イノベーションフォーラム(いわば「エネルギー・環境技術版ダボス会議」)」を日本が毎年開催する。
(2)アプリケーション
上記と同時に,日本の誇る既存の低炭素技術の世界への「応用“アプリケーション"」を図る。日本の技術の普及を加速するとともに,技術による削減効果を検証することにより,戦略的に次世代の技術の創造・普及につなげ,温室効果ガスの更なる排出削減・吸収と新たな成長を同時に実現する。
> 日本が有する優れた技術の普及により,世界の排出削減に最大限貢献するよう,以下のような取組を推進する。
✓ 3年間でニ国間オフセット・クレジット制度(JCM)の署名園を現在の8か国から倍増することを目指し,関係固との協議を加速する。併せて,低炭素技術の移転を伴うプロジェクトの形成を支援し,その排出削減・吸収への日本の貢献を定量化して,日本の排出削減目標の達成に活用する。具体的には,プロジェクト実証や設備補助事業の積極的な推進. JBICやNEXIと連携したJCM特別金融スキーム(JSF: JCM Special Financing Scheme) の創設,JICA等が支援するプロジェクトと連携しつつ排出削減を行うプロジェクトを支援するための基金の設置,都市・島まるごと支援,関係省庁及び開発・金融機関等との協議会の活用等に取り組む。
✓ 技術の国際普及に向けた基盤づくり
① 全世界での排出削減のため,LED照明機器,遮熱窓等の製品,高性能工業炉の製造プロセス等で,エネルギー効率の評価手法を提案し,戦略的に国際標準化を推進。また途上国に対して,省エネ基準や,測定能力に関する制度構築を支援する。
②日本の技術・ノウハウで,途上国の低炭素計画策定,適応能力強化を支援。
> 世界最先端の温室効果ガス測定の新衛星(GOSAT後継機)の2017年度打ち上げを目指す。アジアを中心に国別,さらには大都市単位での温室効果ガス排出量をモニタリングし,対策効果を検証し,削減対策を提案していく。
> 低炭素技術の導入効果検証やテクノロジーアセスメント(技術の効用や環境影響の評価)により,技術ニーズを把握し,技術創造・普及の方向性を効果的に検証する。
(3)パートナーシップ
各国及び様々なステークホルダーとの「連携“パートナーシップ"」を強化する。この観点から,途上国支援のコミットメントを行うほか,アジア各国との連携の強化にも努め,技術革新と技術普及の基礎を形作る。これにより,国際議論に積極的に関与していく。
> 持続可能な開発や人聞の安全保障にも資するべく,途上国の気候変動への緩和及び適応努力を支援するための資金コミットメントを打ち出す。
✓ 緩和・適応分野でODA,OOF,民間資金などを総動員し,2013年−2015年の3年聞に計1兆6000億円の支援を行う。(約160億ドル。公的資金は約130億ドルで,先進国に期待される3年計約350億ドルの1/3を日本が担う。)
✓ 島幌国等気候変動の影響に脆弱な国々に対しては,防災支援を重点項目とし,災害復旧スタンドパイ借款,円借款の優先条件等の新制度も活用,効果的な支援を行う。
✓ 2015年に日本で開催される第3回国連防災世界会議に向けた各国との協調など,マルチの場を活用しつつ,途上国支援を牽引していく。
✓ 2020年までの官民年間1000億ドルの長期資金動員に向け,公的金融手段を活用し,気候変動分野への民間企業の参画を促し,民間資金の大幅な増大を促す。
✓ 上記の支援は,優れた競争力を持つ日本の低炭素技術及びインフラシステムの海外展開にも資するものであり,日本と途上国聞のWin-Win関係を構築していく。
> アジア諸国との気候変動分野での連携を強化する。
✓ 東アジアサミットやAPEC等の関連会合を通じた低炭素成長の意識向上。
✓ APAN(アジア太平洋適応ネットワーク)等の情報・知識共有ネットワークを通じて,アジア太平洋地域の適応能力の強化を支援。
> 上記の取組も活用しつつ,COP21(2015年)までに決まる,新たな2020年以降の気候変動の国際枠組み構築に向けた議論を,日本がリードする。
✓ 全ての国が参加する枠組みに合意できるよう,日本が総力を結集。各国が自ら定めるコミットメントを提出し,国際的なルールに基づいて事前コンサルテーションと取組状況の国際的評価及び検証を行い,削減ポテンシャルを把握し,削減努力の野心向上につなげる公平かつ実効的な将来枠組みを実現すベく米国等の主要国と協力関係を深化。
(了)