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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との低炭素成長パートナーシップに関する協力覚書

[場所] ネピドー
[年月日] 2015年9月16日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. 日本国政府及びミャンマー連邦共和国政府(以下「両政府」という。)は,気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「条約」という。)第2条に言及される条約の究極的な目的及び持続可能な開発の達成を追求し,また気候変動に協力して取り組むことを継続するために,次のとおり低炭素成長パートナーシップを推進する。

2. 両政府は,国際連合の下,地域的及び二国間の枠組みでの低炭素成長に向けた協力のため,様々なレベルで緊密に政策協議を行う。

3. 両政府は,ミャンマー連邦共和国における低炭素を実現するための投資並びに低炭素技術,製品,システム,サービス及び社会基盤の普及を促進するため,二国間クレジット制度(以下「JCM」という。)を創設し,条約の原則並びにそれぞれの国の関連する有効な国内法令に従ってJCMを実施する。

4. 両政府は,JCMを運営するため,合同委員会を設置する。

(1)合同委員会は,両政府の代表者から構成される。

(2)合同委員会の委員の構成を含む合同委員会運営規則は,両政府の協議を通じて定められる。

(3)合同委員会は,JCMに関する規則及び指針,温室効果ガスの排出削減又は吸収量を定量化するための方法論,第三者機関の指定のための要件及び必要に応じてその他のJCMの実施及び管理に関する事項を策定する。

(4)合同委員会は,JCMの実施のために,定期的に会合を招集する。

5. 両政府は,JCMの下での緩和事業における認証された排出削減又は吸収量を,国際的に表明したそれぞれの温室効果ガス緩和努力の一部として使用できることを相互に認める。

6. 両政府は,世界的な温室効果ガスの排出削減又は吸収に向けた具体的行動を推進するために,JCMの堅固な方法論,透明性及び環境十全性を確保するとともに,JCMを簡素で実用的なものとする。

7. いずれの政府も,温室効果ガスの排出削減又は吸収量の二重計算を回避するため,JCMの下で登録された緩和事業を,他の国際的な気候緩和制度の目的のために使用しない。

8. 両政府は,JCMを実施していくために必要な資金,技術及び能力向上の支援の円滑化のため,緊密に協力する。特に,ミャンマー連邦共和国でのJCMの実施のため,日本国政府はミャンマー連邦共和国政府を支援する。

9. JCMは取引を行わないクレジット制度としてその運用を開始する。両政府は,JCMの実施を踏まえつつ,取引可能なクレジット制度への移行のための協議を継続し,可能な限り早い段階で当該協議の結論を得る。

10. 両政府は,JCMが取引可能なクレジット制度に移行された後,JCMを通じ,ミャンマー連邦共和国の適応努力を支援すべく,具体的な貢献を目指す。

11. 本協力覚書は,署名日に開始し,条約の下での新たな国際的な枠組みが効力を生じるまでの期間を対象とする。両政府は,とりわけ,気候変動に関する国際連合の交渉における進展を踏まえつつ,本協力覚書のあり得る延長につき検討し,本協力覚書の期限までに結論を得る。

12. 本協力覚書の解釈,適用,実施から生じるいかなる意見の相違又は紛争も,両政府間の協議を通じて解決される。

13. 本協力覚書の各内容は,両政府間の相互の書面による同意によってのみ修正される。

本協力覚書は,2015年9月16日,ネピドーにおいて,日本国政府を代表し樋口建史駐ミャンマー連邦共和国日本国大使,ミャンマー連邦共和国を代表しテッ・テッ・ジン・環境保全・林業副大臣によって,英語による本書2通に署名される。



樋口建史
ミャンマー連邦共和国特命全権大使
日本国


テッ・テッ・ジン
環境保全・林業副大臣
ミャンマー連邦共和国