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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ドイツ連邦共和国環境・自然保護・建設・原子炉安全省と日本国環境省との間の脱炭素社会に向けた低炭素技術普及を推進するための二国間協力に関する共同声明

[場所] 東京(環境省)
[年月日] 2016年5月18日
[出典] 環境省
[備考] (仮訳)
[全文]

ドイツ連邦共和国環境・自然保護・建設・原子炉安全省と

日本国環境省(以下,各々は「各省」,合わせて「両省」という。)は、

ドイツ連邦共和国と日本国の脱炭素社会推進に向けた低炭素技術分野における協力関係を強化する。

両省は

-パリ協定では、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2℃高い水準を十分に下回るものに抑えること及び世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも1.5℃高い水準までのものに制限するための努力を継続することを目的としていることを認識し、

-2015年のエルマウ・サミットにおいてG7参加国首脳は、今世紀中の世界経済の脱炭素化のためには温室効果ガスの大幅削減が必要であることを強調し、カーボンマーケット・プラットフォーム構築にコミットしていることを認識し、

-持続可能な開発のための2030アジェンダでは、気候変動への対策とエネルギーシステムの転換を含む、17の持続可能な開発目標(SDGs)と169のターゲットを示していることを認識する。

両省は、両国の技術力を活用して、今世紀中に脱炭素経済社会への転換を牽引していく責任があることを認め、また、この点に関し国際及び国内のレベルにおける二国間協力が有益であることを確信する。

このため、両省は次のとおりの共通認識を得るに至った。

1. 両省は、次に挙げる領域における協力を強化することを意図する。

  a. 途上国への「技術移転」を含む、国内及び地球規模での気候変動に取り組むための低炭素技術の役割に関する戦略対話を毎年開催する。

  b. 戦略対話における情報交換のための有望な低炭素技術を選定する。

  c. 選定された低炭素技術の試験的適用から得られるベストプラクティス及び経験を戦略的対話を通じて共有する。

  d. “L2-Tech・ジャパン・イニシアティブ”、ドイツの“環境イノベーション事業”、“国家気候イニシアティブ”やR&D事業、技術の試験的適用や財政的インセンティブ等の支援メカニズムに関する経験の共有を通じ、選定した低炭素技術に対して競争力が得られるまで支援を提供する。

  e. 途上国における低炭素技術の普及のため、日本の二国間クレジット制度(JCM)やドイツの国際気候イニシアティブ(IKI)等の市場メカニズムや支援メカニズムに関する情報を交換する。

  f. 試験的適用段階前の将来的な低炭素技術のロードマップを作成する。

  g. 各々の長期的な国家目標に従い、長期的な温室効果ガスの削減戦略(2050年)における低炭素技術の役割を明確化する。

  h. 日本とドイツ両国の研究機関の間で、低炭素で強靱な社会のための長期シナリオに関する知見の共有を行う。

  i. パリ協定(第6条第2項)の協力アプローチのような支援メカニズムの利用を含む、両国における地方政府と企業の間の連携を支援する。

2. 各省は、本共同声明の実施に責任をもつコーディネーターを指名するものとする。両省のコーディネーターは、両者の同意により、他の日独研究機関の協力をはじめ活動の進捗レビュー、行動計画の策定、及び本協力関係強化のために、日独交互に開催される年次会合をリードするものとする。この会合は、低炭素技術の役割に関する戦略的な対話

(1.a)及び、関連セクターとの議題を特定した共同のワークショップを含めるものとする。さらに、この年次会合は必要に応じて低炭素技術に関する他の日独行事と併せて開催するものとする。

3. 本共同声明は、両国が地域間または国際間で締結又は決定された条約・協定・覚書における両省のいかなる個別の約束にも影響を与えない。

4. 本共同声明は両省のいずれに対してもいかなる義務又は法的拘束力のある約束を課すものではない。

2016年5月18日、東京において英語により本書2通に署名した。



日本国

環境省

丸川珠代

環境大臣


ドイツ連邦共和国

環境・自然保護・建設・原子炉安全省

BarbaraHendricks

環境・自然保護・建設・原子炉安全大臣