[文書名] 海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
令和元年5月31日
海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係閣僚会議
1.はじめに
● プラスチックは、我々の生活に利便性と恩恵をもたらしている有用な物質である。他方で、海洋に流出すると長期間にわたり環境中にとどまることとなる。
● 現在、世界全体で年間数百万トンを超えるプラスチックごみが海洋に流出していると推計されている。このため、海洋プラスチックごみによる地球規模での環境汚染による生態系、生活環境、漁業、観光等への悪影響が懸念され、国連をはじめとする様々な国際会議において、重要かつ喫緊の課題として議論が行われている。持続可能な開発目標(SDGs)においても、目標14において、「あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」とされている。
● こうした問題の解決のためには、プラスチックが社会と持続可能性に対して果たす重要な役割を認識しつつ、海洋プラスチックごみの流出防止に世界全体で連携して取り組む必要がある。重要なことは、プラスチックごみの海への流出をいかに抑えるかであり、経済活動を制約する必要はなく、2019年のG20の議長国である日本としては、新興国も含め、G20としての海洋プラスチックごみ問題への対策が効果的に促進されるよう取り組んでいく。
● それとともに、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の考え方に基づき、国内の法制度を整え、技術を磨き、循環型社会を築いてきた我が国としては、プラスチック資源循環を徹底することはもとより、世界に先駆けて実効的な海洋プラスチックごみ対策を実施し、我が国のベストプラクティス(経験知見・技術)を国際的に発信・展開することで、世界をリードしていく必要がある。このため、安倍総理は、第198回通常国会の施政方針演説において、「プラスチックにおける海洋汚染が、生態系への大きな脅威となっています。美しい海を次の世代に引き渡していくため、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指し、ごみの適切な回収・処分、海で分解される新素材の開発など、世界の国々と共に、海洋プラスチックごみ対策に取り組んでまいります」と表明した。
● 施政方針演説、「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」(以下「海岸漂着物処理推進法」という。)等を踏まえ、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指した、我が国としての具体的な取組を、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」として取りまとめ、関係府省が連携し、幅広い関係者の協力を得つつ、強力に推進していく。
2.新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指した我が国としてのアクション
● 現在、我が国からの海洋プラスチックごみの流出量は年間2~6万トンと推計されている*1*。国民生活や事業活動に伴い陸域で発生したプラスチックごみの一部が、廃棄物処理制度により回収されず、意図的・非意図的に環境中に排出され、雨や風に流され、河川その他の公共の水域等を経由して海域に流出することや、漁業、マリンレジャー等において海域で使用されるプラスチック製品が直接海域に流出することにより、発生している。したがって、海洋へのプラスチックごみの流出を効果的に削減していくためには、海岸地域だけでなく内陸部も含めすべての地域における共通の課題であるとの認識に立って、家庭、事業所、市街地、農地、河川、漁場等のあらゆる場所において、国民、事業者、民間団体、国、地方公共団体等すべての者が当事者意識を持って、真摯に対策に取り組んでいくことが求められる。
● 海洋プラスチックごみ対策も成長の誘因であり、経済活動の制約ではなくイノベーションが求められているという考えの下、プラスチックを有効利用することを前提としつつ、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指し、以下のような取組を徹底していく。
①まず、廃棄物処理制度によるプラスチックごみの回収・適正処理をこれまで以上に徹底するとともに、ポイ捨て・不法投棄及び非意図的な海洋流出の防止を進める。
②それでもなお環境中に排出されたごみについては、まず陸域での回収に取り組む。さらに、一旦海洋に流出したプラスチックごみについても回収に取り組む。
③また、海洋流出しても影響の少ない素材(海洋生分解性プラスチック、紙等)の開発やこうした素材への転換など、イノベーションを促進していく。
④さらに、我が国の廃棄物の適正処理等に関する知見・経験・技術等を活かし、途上国等における海洋プラスチックごみの効果的な流出防止に貢献していく。
⑤世界的に海洋プラスチック対策を進めていくための基盤となるものとして、海洋プラスチックごみの実態把握や科学的知見の充実にも取り組む。
● 具体的には、以下の取組を進めていくことにより、新たな汚染を生み出さない世界に向け、効果的な海洋プラスチックごみ対策を実施していく。
(1)廃棄物処理制度等によるプラスチックごみの回収・適正処理の徹底
● 我が国は、1970年代以降、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)等に基づき、家庭や事業者から排出されるプラスチック廃棄物を収集し、生活環境の保全上の支障が生じないよう適正に処理する仕組みを構築・運用してきた。さらに、1990年代以降、容器包装を始めとして各種のリサイクル法を制定し、
3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進に取り組んできた。こうした取組をベースに、家庭や事業所から排出されるプラスチックごみの回収・3R・適正処理を更に推進していく。
● また、近年、中国をはじめアジア各国でプラスチックごみの輸入規制が強化されている。これに伴い、これまで我が国から資源として海外に輸出され、リサイクル・処理されていた使用済プラスチック類が国内に滞留し、不法投棄・不適正処理が発生する懸念が生じており、こうした新たな事態に対応し、リサイクルと適正処理を確保するための対応を行う。
○容器包装・製品等(陸域)
− 廃棄物処理制度や容器包装等のリサイクル制度を適切に運用し、自治体がプラスチック製容器包装を分別して回収すること、国民が日々のごみ出し・分別回収に協力することによる、プラスチック回収の徹底(環境省)
− 農業由来の使用済プラスチックの回収・適正処理の徹底、排出抑制のための中長期展張フィルムや生分解性マルチの積極的な活用等について、関係団体等とも連携しつつ、情報発信による普及・啓発を行う。(農林水産省)
− 「省CO2型リサイクル等高度化設備導入促進事業」(令和元年度予算33.3億円、平成30年度補正予算60億円)を活用し、プラスチック製品2のリサイクル施設等の処理施設の整備を速やかに進め、国内資源循環体制を構築する。(環境省)
− 「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環体制構築事業」(令和元年度予算35億円)を活用し、これまで回収・リサイクルされてこなかった資源の有効活用やプラスチック製品*2*のリサイクル技術の開発を支援する。(環境省)
− 公共関与型の産業廃棄物処理施設や大規模な処理施設等の既存施設の更なる活用の要請、事前協議制等の域外からの産業廃棄物搬入規制を行っている自治体に対する搬入規制の廃止・緩和又は手続の合理化・迅速化の要請、排出事業者に対する適正な対価の支払いを含めた適正処理の推進についての周知を行うなど関係団体との協力により、適正な国内処理体制の構築を進める。(環境省)
− 海岸漂着物処理推進法において海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するため必要があると認めるときに都道府県が策定することとされている地域計画について、全都道府県*3*により策定されるよう国としても支援するとともに、地域計画に基づく都道府県等の取組を促進する。(環境省)
○ 海域で使用される漁具等のプラスチック製品
− 「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環体制構築事業」及び「省CO2型リサイクル等高度化設備導入促進事業」を活用し、海域で使用される漁具等のプラスチック製品*4*のリサイクル等の技術開発及び設備導入を支援することで処理費用を軽減し、適正処理・回収リサイクルを促進する。(環境省・農林水産省)
− 事業者団体や漁港管理者等を通じ、漁業者に対する陸域回収、分別・リサイクル等の周知と適正実施を徹底する。漁業系廃棄物処理計画策定指針(平成3年制定)及び漁業系廃棄物処理ガイドライン(平成3年制定)の更新・周知を図る。(農林水産省・環境省)
(2)ポイ捨て・不法投棄・非意図的な海洋流出の防止
● 陸域で発生したプラスチックごみの一部が、ポイ捨て・不法投棄や非意図的な漏出等により、通常の廃棄物の回収・処理ルートを外れ、河川等を通じて海洋に流出している。また、海域で使用される漁具等のプラスチック製品が、ポイ捨て・不法投棄や非意図的な流出等により海洋に流出している。
● こうしたポイ捨て・不法投棄や海洋流出の防止の徹底に取り組む。
○容器包装・製品等(陸域)
− 違法行為である不法投棄・ポイ捨ての撲滅のため、廃棄物処理法等に基づく監視・取締りを徹底するとともに、ポイ捨てを規制する条例等*5*のより多くの地方公共団体による制定と、条例に基づく監視・取締りの徹底を行う。(環境省・警察庁・海上保安庁・総務省)
− 不法投棄・不適正処理の原因となるような、無許可収集等廃棄物処理法に違反している疑いのある不用品回収業者の監視・取締りを徹底する。(環境省・警察庁)
− 「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」*6*(毎年5月30日(ごみゼロの日)~6月5日
(環境の日))及び「海ごみゼロウィーク」(毎年5月30日~6月8日(世界海洋デー)前後)を中心として、環境省を中心とした関係省庁、都道府県、市町村、企業、廃棄物関係団体、NPO等が連携して、集中的な監視パトロール・一斉美化活動、普及啓発活動を実施する。「海ごみゼロウィーク」としては、青いTシャツやタオルなど、青色のアイテムを身に着けた一斉清掃アクションを展開し、環境省・日本財団がこうした情報を集約・発信することにより、2019年の期間中2000箇所で80万人規模、2019年~2021年の3年間で240万人のプロジェクト参加を目指す。(環境省)
− 海岸漂着物処理推進法に基づく海岸漂着物等地域対策推進事業(平成30年度二次補正予算31億円、令和元年度予算4億円)を活用し、都道府県や市町村等による海洋ごみの発生抑制のための普及啓発等を促進する。(環境省)
− 花火大会等の地域イベントや公園等の公共の場において、イベント主催者や管理者等によるごみの持ち帰り・ごみ拾いのよびかけ等によるごみの持ち帰り運動を推進することにより、ポイ捨て・不法投棄の防止を図る。(環境省)
− 河川へのごみ等の投棄の防止を図るため、普及啓発活動のほか、河川巡視等による不法投棄の抑制、地域と連携した清掃活動の実施等によりごみ等の投棄がしにくい地域環境の創出等に努める。(国土交通省)
− 若年層を含む一般市民を対象に海洋環境保全教室を開催し、プラスチックごみ等が海洋環境に与える影響等について啓発を実施する。(海上保安庁)
− 清涼飲料団体が、飲料用ペットボトルの100%有効利用を目指して、自動販売機横に自販機専用空容器リサイクルボックスを設置する取組など、食品産業関係団体が実施する取組を国としても積極的に支援する。また、ポイ捨て防止に向け、消費者に対し、このような業界の取組を積極的に発信、啓発する。(農林水産省)
− 被覆肥料の被膜殻をほ場外に流出させない取組について、関係団体とも連携しつつ、情報発信による普及・啓発を行う。(農林水産省)
− 洗い流しのスクラブ製品に含まれるマイクロビーズの削減の徹底や、プラスチック原料の製造・流通からプラスチック製品の製造に至る過程におけるペレット等の飛散・流出防止対策徹底を図るため、産業界による自主的取組等を促進する。(経済産業省・環境省)
− 海岸漂着物処理推進法において海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するため必要があると認めるときに都道府県が策定することとされている地域計画について、全都道府県により策定されるよう国としても支援するとともに、地域計画に基づく都道府県等の取組を促進する。(環境省:再掲)
○ 海域で使用される漁具等のプラスチック製品
− 厳しい海況等に起因する非意図的な流出を可能な限り防止するため、漁業者により操業前後の点検等、漁具の適正な使用・管理が行われるよう、事業者団体を通じ徹底する。(農林水産省)
− 漁船、マリンレジャー愛好者等を対象に訪船・訪問指導を行い、プラスチックごみ等の不法投棄防止について啓発を実施する。(海上保安庁)
− 沿岸部や沖合の海域において、違法行為である不法投棄・ポイ捨ての撲滅のため、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律等に基づく取締りを徹底する。(海上保安庁)
(3)ポイ捨て・不法投棄されたごみの回収
● これまで様々な主体において街中、住宅街、道路、河川、公園等の陸域において、清掃美化活動が実施されてきたところ、それぞれの取組の一層の推進を通じ、ポイ捨て・不法投棄されたごみの回収を促進し、海洋流出をできるだけ防止する。
− 市民(企業、町内会、環境団体等)が、地方公共団体と連携しつつ、一定区画の公共地域(駅前、道路、公園、河川敷、海岸等)を愛着を持って清掃美化・管理活動を行う「アダプト・プログラム」*7*の更なる展開(アダプト・プログラムの普及推進や助成等を行う公益社団法人食品容器環境美化協会と連携)(環境省)
− 道路においては、ボランティア・サポート・プログラムの活動により、実施団体や市区町村と連携し、清掃活動やごみの回収等に取り組む。(国土交通省)
− 河川において地方自治体や地域の住民等と連携した清掃活動やごみの回収等に取り組む。(国土交通省)
− プラスチックごみ等の下水道への流入抑制及び下水処理工程を通じた回収、流出抑制に引き続き取り組む。(国土交通省)
− 学校や地域における多様な体験活動・環境教育の推進(文部科学省)
− 「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」(毎年5月30日(ごみゼロの日)~6月5日(環境の日))及び「海ごみゼロウィーク」(毎年5月30日~6月8日(世界海洋デー)前後)を中心として、環境省を中心とした関係省庁、都道府県、市町村、企業、廃棄物関係団体、NPO等が連携して、集中的な監視パトロール・一斉美化活動、普及啓発活動を実施する。「海ごみゼロウィーク」としては、青いTシャツやタオルなど、青色のアイテムを身に着けた一斉清掃アクションを展開し、環境省・日本財団がこうした情報を集約・発信することにより、2019年の期間中2000箇所で80万人規模、2019年~2021年の3年間で240万人のプロジェクト参加を目指す。(環境省:再掲)
− 公益財団法人日本財団の「海と日本プロジェクト」を基盤とした取組である
「CHANGE FOR THEBLUE」と連携し、「海ごみゼロウィーク」一斉清掃への積極的な協力・参加等を行う。具体的には、全国の海上保安部署が地域において、幅広く声掛けし、学校、自治体等との共同実施なども含め、一斉清掃活動に協力・参加を行う。(海上保安庁)
− 海岸漂着物処理推進法において海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するため必要があると認めるときに都道府県が策定することとされている地域計画について、全都道府県により策定されるよう国としても支援するとともに、地域計画に基づく都道府県等の取組を促進する。(環境省:再掲)
(4)海洋に流出したプラスチックごみの回収
● 海岸漂着物処理推進法に基づき、海岸管理者等は、管理する海岸の土地において、その清潔が保たれるよう、海岸漂着物等の処理のため必要な措置を講ずるとともに、国はこうした取組に対する財政的な支援を行ってきた。また、海岸管理者以外にも、環境美化に係るNPOや漁業者等の様々な主体において海岸漂着物等の回収活動が実施されてきた。
● こうした取組をより一層効果的・効率的に推進することを通じ、海洋プラスチックごみの回収量の増加に取り組む。
● 海岸漂着物処理推進法に基づく「海岸漂着物等地域対策推進事業」(平成30年度二次補正予算31億円、令和元年度予算4億円)を活用し、都道府県・市町村等による海洋ごみの回収・処理を推進する。(環境省)
− 海岸漂着物処理推進法の改正に伴い、漂流ごみ及び海底ごみが同法に基づく対策の対象に含められたことを踏まえ、漁業者が操業時に回収した海洋ごみについて、漁業者への負担に配慮してその持ち帰りを促進するため、同法に基づく環境省の「海岸漂着物等地域対策推進事業」による補助金等を活用して都道府県及び市町村が連携し、市町村の処理施設の活用も含めた処理を推進する。(環境省・農林水産省)
− 海岸漂着物処理推進法に基づく都道府県が設置する海ごみ対策推進協議会への漁業関係団体等の沿岸・流域関係者の積極的な参画を得つつ、地域の実情に応じて、漂流ごみ及び海底ごみの回収・処理のあり方について検討を促進し、漂流ごみ及び海底ごみの回収及び処理を推進する。(環境省・農林水産省)
− 水産多面的機能発揮対策(令和元年度予算29億円の内数)を活用して海洋の生態系の維持・回復のために漁業者等が取り組む海洋プラスチックごみを含む海洋ごみの回収・処理を推進する。さらに、外国漁船の投棄漁具等について、韓国中国等外国漁船操業対策事業(平成30年度二次補正予算50億円の内数)を活用し、漁業者による回収・処分を推進する。(環境省・農林水産省)
− 港湾管理者による、港湾区域内で漂流する海洋プラスチックごみを含めた浮遊ごみ等の回収処理(国土交通省)
− 船舶航行の安全を確保し、海域環境の保全を図るため、海洋環境整備船を配備して東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、有明・八代海の閉鎖性海域(港湾区域、漁港区域を除く)において、海面に漂流する海洋プラスチックごみを含めた浮遊ごみ等を回収する。(国土交通省)
● 「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」(毎年5月30日(ごみゼロの日)~6月5日(環境の日))及び「海ごみゼロウィーク」(毎年5月30日~6月8日(世界海洋デー)前後)を中心として、環境省を中心とした関係省庁、都道府県、市町村、企業、廃棄物関係団体、NPO等が連携して、集中的な監視パトロール・一斉美化活動、普及啓発活動を実施する。「海ごみゼロウィーク」としては、青いTシャツやタオルなど、青色のアイテムを身に着けた一斉清掃アクションを展開し、環境省・日本財団がこうした情報を集約・発信することにより、2019年の期間中2000箇所で80万人規模、2019年~2021年の3年間で240万人のプロジェクト参加を目指す。(環境省:再掲)
− 回収した海洋プラスチックごみの再生利用等の推進(環境省)
− 海岸漂着物処理推進法において海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するため必要があると認めるときに都道府県が策定することとされている地域計画について、全都道府県により策定されるよう国としても支援するとともに、地域計画に基づく都道府県等の取組を促進する。(環境省:再掲)
(5)代替素材の開発・転換等のイノベーション
● 海洋生分解性プラスチックやセルロース素材など、海洋に流出しても影響の少ない素材の開発を促進し、海洋に流出しやすい用途を中心に使用を促進していくなど、官民連携により、海洋プラスチックごみ対策のためのイノベーションを推進する。
− 海洋生分解性プラスチックの開発・普及促進に向けて、「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」に基づき、産業界やNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)等との官民連携により、海水中での生分解メカニズムの解析、生分解性機能の高度化と新たな樹脂開発、安定的な量産化に向けた製造コスト削減、国際規格整備等の課題解決に取り組む。(経済産業省)
− バイオプラスチック導入ロードマップを策定し、代替素材の導入されるべき領域を示すことで素材の開発を促進(環境省)
− 「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環体制構築事業」等を通じ、プラスチック製品について、紙や海洋生分解プラスチック、セルロース素材等への代替を支援していく。(環境省)
− 産業界と共に官民連携で海洋プラスチックごみ対策に取り組む「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」*8*の活動を支援し、プラスチック製品の持続可能な使用や紙等を含む代替素材の導入・普及に向けて、CLOMAビジョンに基づき、川上・川中・川下の各社のシーズやニーズに係る見える化の実施や、個社の垣根を越えて解決すべき技術的・社会的課題に協働で取組むなど、官民連携でイノベーションを促進する。食品の容器包装についても紙等を含む代替素材を適応させ利活用していく取組を促進する。(経済産業省・農林水産省)
− 木材のマテリアル利用技術開発事業(令和元年度予算4億円の内数)を通じ、木質資源による生分解性を有した新たな素材の開発を促進する。(農林水産省)
− 海洋プラスチックごみ問題について世界に類を見ない優れた革新的技術・システム・アイディアを実践している企業・団体・研究者と「海洋プラスチック官民イノベーション協力体制」を構築し、我が国発の革新的ソリューションを発信する。(環境省)
− ブイやカキ養殖用パイプ等の高い耐久性や強度が必要とされない漁具について、漁業環境改善推進事業(令和元年度予算1.8億円の内数)等を通じ、海洋生分解性プラスチック又は他の海洋生分解性素材を用いた漁具の開発を促進する。(農林水産省・環境省)
− NEDO研究開発予算等を活用し、ベンチャー企業や大学等の様々な技術とアイデアによる、革新的なイノベーションを推進していく。(経済産業省)
− 植物や微生物の能力や機能を活用し、バイオマス資源からバイオプラスチックを高効率に合成する手法を開発する。具体的には、インフォマティクスを用いたモノマー合成に関わる酵素の研究開発、菌体外合成も含んだ酵素による重合などプロセスの高効率化、新規の海洋生分解性バイオプラスチックの開発や高機能化による用途展開の拡張に向けた技術基盤開発等に取り組む。(文部科学省)
− 微生物の能力を活用し、海洋プラスチックごみや回収したプラスチックごみを高効率に分解する手法を開発する。具体的には、海洋環境中や魚類の腸内に生息するプラスチック分解能力を有する微生物等の探索、計算科学やAI等を活用した代謝メカニズムの解明、高効率にプラスチックを分解する酵素の探索、ゲノム編集等の技術を用いてプラスチック分解能力を強化した微生物等の創出等に取り組む。(文部科学省)
(6)こうした取組を促進するための関係者の連携協働
● 新たな汚染を生み出さない世界を実現するためには、海域や海岸地域だけでなく内陸部も含めたすべての地域における共通の課題として、国民、事業者、民間団体、国、地方公共団体等のすべての者が当事者意識を持って、それぞれの立場から積極的に取り組むことが必要である。
● このため、(1)~(5)のような取組を底上げしていくための関係者の幅広い連携協働を促進する。
− 海洋プラスチック問題等の解決に向けて、幅広い普及啓発・広報を通じて海洋プラスチック汚染の実態の正しい理解を促しつつ、国民的気運を醸成し、国、地方公共団体、国民、NGO、事業者、研究機関等の幅広い関係主体が一つの旗印の下連携協働して、海洋ごみの発生防止に向けて“プラスチックとの賢い付き合い方”を進める「プラスチック・スマート」キャンペーン*9*を強力に展開する。(環境省)
・ 「プラスチック・スマート」の趣旨に賛同し、地方公共団体、NPO、事業者など幅広い主体が、各地で、河川や海岸、市街地等におけるごみ拾い活動等を展開している。
・ ユニークな取組として、例えば、ごみ拾いにスポーツの要素を加えたスポーツごみ拾いや、ごみ拾いのボランティア活動を男女に出会いの機会を提供する場(いわゆる街コン)としても活用する取組も行われている。
・ 個人も、ツイッターなどのSNSで「♯プラスチックスマート」とタグをつけて、ごみ拾い等への取組を発信する動きが広まっている。
− 平成31年1月に立ち上げた「プラスチック・スマートフォーラム」を通じ、海洋プラスチックごみ問題に取り組む企業・団体間の対話・交流を促進するとともに、日本財団などの海洋ごみ問題に取り組む団体と連携し、海洋ごみ対策の優良事例を表彰する「海ごみゼロアワード」の実施、海洋ごみ対策に関する国内の活動や取組等を国内外に発信する「海ごみゼロ国際シンポジウム」の開催等の情報発信・普及啓発を行う。また、研究者による最新の知見の共有を図る。(環境省)
− 「プラスチック資源循環アクション宣言」*10*を通じ、3R、研究開発、国民理解の増進等、農林水産業・食品産業の企業・業界団体による自主的な取組を促進する(「プラスチック・スマート」キャンペーンとも連携)。また、ポイ捨て防止に向け、業界団体と連携しながら、消費者に対してこのような業界の取組を積極的に発信、啓発する。(農林水産省)
− 産業界と共に官民連携で海洋プラスチックごみ対策に取り組む「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」の活動を支援し、プラスチック製品の持続可能な使用や紙等を含む代替素材の導入・普及に向けて、川上・川中・川下の各社のシーズやニーズに係る見える化の実施や、CLOMAビジョンを策定して個社の垣根を越えて解決すべき技術的・社会的課題、対応策を提言し、官民連携でイノベーションを促進する。食品の容器包装についても紙等を含む代替素材を適応させ利活用していく取組を促進する。(経済産業省・農林水産省:再掲)
− 海洋プラスチックごみ問題について世界に類を見ない優れた革新的技術・システム・アイディアを実践している企業・団体・研究者と「海洋プラスチック官民イノベーション協力体制」を構築し、我が国発の革新的ソリューションを発信する。(環境省:再掲)
− プラスチック資源循環や海洋プラスチックごみ対策に向けた日本経済界の取組を推進するとともに国内外に広く発信するため、日本経済団体連合会の「業種別プラスチック関連目標」、「SDGsに資するプラスチック関連取組事例集」*11*等の経済界による自主的取組を促進していく。(経済産業省)
− 日本の化学関係の業界団体が設立した海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)によるアジア新興国におけるプラスチック廃棄物の管理向上の支援や、日本プラスチック工業連盟による日中プラスチック加工関連業界の協力覚書に基づくペレット等の飛散・流出防止支援等の産業界による国際協力を促進する。(経済産業省)
− 海岸漂着物処理推進法に基づき都道府県が組織することができることとされている海岸漂着物対策推進協議会*12*等を通じ、都道府県、地域住民、民間団体、関係地方公共団体、関係行政機関等の地域の多様な主体の参加・連携、相互の情報共有と十分な意思疎通を図るとともに、流域圏の内陸から沿岸にわたる関係主体が一体となった対策を促進する。(環境省)
− より一層の海洋ごみ削減のためには、多様な主体が連携した、内陸域を含めた広域的な発生抑制対策等を推進することが重要であり、複数自治体等連携による発生抑制対策等のモデル事業を推進するとともに、流域圏を含む地域計画の策定を支援する。(環境省)
− 海洋プラスチックごみ問題についての理解を促進し、環境負荷の少ない行動を自主的に実践することができるよう、環境教育や消費者教育を推進する。(消費者庁・文部科学省・環境省)
− 自然資本の維持・再生を目的とする「つなげよう、支えよう森里川海プロジェクト」の実施を通じて、海洋ごみ対策を含む様々な主体の活動を推進する。(環境省)
− 海洋ごみ対策に関する推進テーマを含め、次世代を担う子供たちを中心とした多くの人の海への好奇心を喚起することを目的に日本財団と主催している「海と日本プロジェクト」を更に推進し、産学官民が協働した海に関する多様なイベントの開催を促進する。(内閣府総合海洋政策推進事務局・国土交通省)
(7)途上国等における対策促進のための国際貢献
● 我が国は、これまで廃棄物の適正処理やリサイクルのための制度、人材、施設等を率先して整備するとともに、廃棄物発電等にも先進的に取り組んできた。こうした我が国の知見・経験・技術・ノウハウを活かし、途上国等における海洋プラスチックごみの効果的な流出防止に貢献するため、特に廃棄物管理、海洋ごみの回収、イノベーションに関する能力強化を支援していくとともに、各国の実情や発展段階に応じオーダーメイドで、海洋プラスチックごみ削減に資する我が国のソフトインフラとハードインフラをパッケージで海外展開していく。
● また、2018年11月のASEAN+3首脳会議において安倍総理から提唱した「ASEAN+3海洋プラスチックごみ協力アクション・イニシアティブ」に基づき、ASEAN諸国への支援を実施する。
− 途上国に対し、廃棄物法制、分別・収集システムを含む廃棄物管理・3R推進のための能力構築や制度構築、海洋ごみに関する国別行動計画の策定、リサイクル施設や廃棄物発電施設を含む廃棄物処理施設などの質の高い環境インフラの導入や関連する人材育成のため、ODAや国際機関経由の支援を含め、二国間や多国間の協力による様々な支援を行う。(外務省・環境省)
<これまでの取組例>
・ バングラデシュのダッカ市において、JICA(国際協力機構)の無償資金協力及び技術協力により、ごみ収集率が44%(2004年)から80%(2017年)に改善。一日当たりのごみ収集量も1400トン(2004年)から4948トン(2017年)に増加。
・ ミャンマーのヤンゴン市において、二国間クレジット(JCM)資金支援事業により廃棄物発電施設を建設。
・ ドミニカ共和国のサンティアゴ市にて、JICAの技術協力を通じ、日本の標準仕様の一つである「福岡方式」を導入し、覆土等により最終処分場を改善。
− 廃棄物処理関連施設等のインフラ輸出や、プラスチック代替品やリサイクル技術等に関するイノベーション・技術導入の支援等のため、産業界と連携した国際ビジネス展開や、NGO・地方公共団体との連携を通じ、日本企業・NGO・地方公共団体による活動の国際展開を推進する(環境省・経済産業省・外務省)
− 関連の国際会議やイニシアティブ等を通じ、日本の官民の取組におけるベスト・プラクティス(経験知見・技術)を発信・共有する。(外務省・環境省・経済産業省)
− 日本の化学関係の業界団体が設立した海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)によるアジア新興国におけるプラスチック廃棄物の管理向上の支援や日中プラスチック加工関連業界の協力覚書に基づくペレット等の飛散・流出防止支援等の産業界による国際協力を促進(経済産業省:再掲)
− ASEAN諸国に対し、自治体、市民、ビジネスセクター等の非政府主体の意識向上、海洋ごみに関する国別行動計画の策定、廃棄物発電インフラを含む適切な廃棄物管理及び3Rに関する能力構築、海洋ごみ対策に関する知見の共有を促進する地域ナレッジハブ設立等の上記のASEAN+3のイニシアティブに基づく支援を実施する。
(環境省・外務省)
− 東南アジア地域での海洋プラスチックごみのモニタリング実施に向けた支援、人材育成(環境省)
(8)実態把握・科学的知見の集積
● 地球規模で海洋プラスチックごみを削減していくためには、モニタリング手法の国際調和を図りつつ、海洋プラスチックごみの分布状況などの科学的な知見を世界各国で共有することが必要である。
● また、我が国における海洋プラスチックごみの発生の状況等についても検討を深めるとともに、プラスチックの環境中での挙動、人や生態系への影響等についての調査を進め、より一層効果的・効率的な対策につなげていく。
− 海洋プラスチックごみのモニタリング手法の国際調和・標準化の推進。2018年度にとりまとめたガイドラインを踏まえ、2019年度は東南アジア数カ国とともに調査の実証実施を行い、人材育成のための研修に招聘する。(環境省)
− 国内における海洋プラスチックごみの排出量、排出源及び陸域から海域までの排出経路に関して、プラスチックごみの処理に関する調査、ポイ捨て・不法投棄・散乱ごみ(プラスチック)回収量調査及び河川、湖沼等の公共の水域における状況調査並びにそれらの調査結果を踏まえた推計等を実施する。(環境省)
− 河川等におけるマイクロプラスチックの採取・分析方法の検討(環境省)
− 海洋気象観測船による北西太平洋の浮遊プラスチック類の目視観測を実施(気象庁)
− 国内における海岸漂着物等の定期的な調査(環境省)
− マイクロプラスチックを含む海洋プラスチックごみの人や生態系への影響等の調査の推進(環境省・農林水産省)
− マイクロプラスチックを含む海洋プラスチックごみの分布実態を効率的に把握する手法の開発(文部科学省)
− マイクロプラスチックを含む海洋プラスチックごみの深海生態系への影響を評価する手法の開発(文部科学省)
− 国立研究開発法人海洋研究開発機構が公開している「深海デブリデータベース」の充実(文部科学省)
3.取組を効果的に進めていくための指標
● 2.の取組を効果的に進めていくため、以下の指標を設定し、毎年その進捗を把握する。
①プラスチックごみの国内適正処理量(環境省)
②陸域におけるポイ捨て・不法投棄・散乱プラスチックごみ回収量(環境省)
③海洋プラスチックごみ回収量(環境省)
④代替材料(海洋分解性プラスチック、紙等)の生産能力/使用量(環境省・経済産業省)
⑤国際協力により増加する「適正処理される廃棄物」の量(環境省・外務省)
4.今後の進め方
● アクションプランに基づき、我が国のベストプラクティス(経験知見・技術)を国際的に発信・展開しつつ、関係府省が緊密に連携し、幅広い関係主体の協力を得ながら、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指し、実効的な対策に率先して取り組んでいく。
● 指標の進捗状況について毎年把握するとともに、国内における海洋プラスチックごみの排出源・陸域から海域までの排出経路に関する調査・推計を行った上で、我が国からの海洋プラスチックごみの排出量について定期的に推計を行う。
● その上で、イノベーションや科学的知見の進展も踏まえつつ、本アクションプランについて3年後を目途として見直しを行い、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指し、取組を強化していく。
{*1* Jambeck ら : Plastic waste inputs from land into the ocean, Science (2015)。世界全体で見ると途上国からの流出量の比率が高く、G7各国からの流出は世界全体の約2%と推計されている。}
{*2* 「省CO2型リサイクル等高度化設備導入促進事業」、「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環体制構築事業」の対象範囲には、発泡スチロール製魚箱を含む。以下、同じ。}
{*3* 平成31年4月10日時点で、47都道府県中、37都道府県が地域計画を策定。}
{*4* 「省CO2型リサイクル等高度化設備導入促進事業」、「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環体制構築事業」の対象範囲には、漁網、発泡スチロール製フロート等を含む。以下、同じ。}
{*5* ポイ捨て等を規制する条例等を制定している市区町村は996(平成29年、環境省調べ)}
{*6* 平成30年度における「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」期間内外での予定事業数は4,966件}
{*7* 全国で、423自治体がアダプト・プログラムを導入し、45000団体以上が参加、活動者は250万人以上(平成31年2月時点、公益社団法人食品容器環境美化協会調べ)}
{*8* 海洋プラスチックごみ問題に積極的に取り組むサプライチェーンを構成する関係事業者(容器包装等の素材製造、加工、利用等)により設立(2019年5月段階で、215企業・団体が参画)}
{*9* 平成31年5月30日時点で、408団体、578件の取組が登録されている。}
{*10* 2019年3月12日時点で、85企業・団体等から宣言が応募されている。}
{*11* 2月8日段階で、164企業・団体より300事例が寄せられている。}
{*12* 47都道府県中、23都道府県が海岸漂着物対策推進協議会を設置(平成28年度海岸漂着物処理推進法施行状況調査 環境省)}