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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] グラスゴー気候合意(Decision-/CMA.3)

[場所] 
[年月日] 2021年11月13日
[出典] 環境省
[備考] 環境省暫定訳
[全文] 

Decision-/CMA.3

グラスゴー気候合意

 パリ協定締約国会合は、

 パリ協定第2条を想起し、

 また、決定3/CMA.1及び決定1/CMA.2決定を想起するとともに、

 決定-CP.26に留意し*1*

 持続可能な開発と貧困撲滅に向けた努力の文脈で気候行動を強化するために、気候変動に対処し、

地域的及び国際的な協力を促進する際の多国間主義の役割を認め、

 特に開発途上締約国との連帯を示しつつ、2019年のコロナウイルス感染症の壊滅的な影響、及び持続可能かつ強靭で包摂的な世界全体の復興を確保することの重要性を認識し、

 また、気候変動が人類共通の関心事であり、締約国が、気候変動に対処するための行動をとる際に、人権、健康についての権利、先住民の権利、地域社会、移民、子供、障がい者及び影響を受けやすい状況にある人々の権利並びに開発の権利、ジェンダー平等、女性の自律的な力の育成及び世代間の衡平性を尊重し、促進し、考慮すべきであることを確認し、

 気候変動に対処するための行動を起こす際に、すべての生態系(森林、海洋及び雪氷圏を含む。)の本来のままの状態における保全及び生物多様性の保全(「母なる地球」として一部の文化によって認められるもの)を確保することの重要性に留意し、並びに「気候の正義」の概念の一部の者にとっての重要性に留意し、

 グラスゴーにおける世界リーダーズサミットに参加した国家及び政府の首脳に対し、引き上げられた目標及び行動の表明、並びに2030年までに部門毎の行動を加速させるための非締約国関係者との協力に関する約束に関し謝意を表明し、

 気候変動への対処及び対応における先住民、地域社会及び市民社会(若者や子供を含む。)の重要な役割を認識するとともに、多くのレベルでの協力的な行動が緊急に必要であることを強調し、

I. 科学と緊急性

1. 効果的な気候行動及び政策立案のためには、利用可能な最良の科学が重要であることを認める。

2. 気候変動に関する政府間パネルの第6次評価報告書への第1作業部会の報告書*2*、及び世界気象機関による気候の状態に関する最近の世界全体及び地域の報告書を歓迎し、2022年の科学上及び技術上の助言に関する補助機関に今後の報告書を提出することを気候変動に関する政府間パネルに招請する。

3. 人間活動がこれまでに約摂氏1. 1度の温暖化を引き起こしていること、影響が既にすべての地域で感じられていること、また、パリ協定の温度目標達成と整合的なカーボンバジェットが今や小さく、急速に枯渇していることに、警告と最大限の懸念を表明する。

4. パリ協定は衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映するように実施されると規定するパリ協定第2条2を想起する。

5. パリ協定の目標実施における隔たりに対処するため、この決定的な10年間における緩和、適応及び資金に関連する野心と行動を強化することの緊急性を強調する。

II. 適応

6. 気候変動に関する政府間パネル第6次評価報告書への第1作業部会の報告書から得られた見解(気候及び気象の極端な事象並びにそれらの人間と自然に対する悪影響が追加的な気温上昇と共に増加し続けることを含む。)に深刻な懸念をもって留意する。

7. 開発途上締約国の優先事項とニーズを考慮しつつ、利用可能な最良の科学に沿って、気候変動に対する適応能力を高め、強靭性を強化し、脆弱性を低減するため、資金、能力構築、技術移転を含む行動と支援の規模を拡大することの緊急性を強調する。

8. これまでに提出された適応に関する情報と国別適応計画は適応行動と優先事項の理解と実施を促進するものであり、歓迎する。

9. 適応策を地方、国、地域の計画にさらに統合することを締約国に強く求める。

10. 決定9/CMA. 1に従い、世界全体の実施状況の検討(グローバル・ストックテイク)に適時な情報を提供するため、まだ提出していない締約国に対し、パリ協定第4回締約国会合(2022年11月)に先立ち、適応に関する情報を提出するよう要請する。

11. パリ協定の効果的な実施における適応に関する世界全体の目標の重要性を認め、適応に関する世界全体の目標に関する包括的な2年間のグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画の開始を歓迎する。

12. グラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画の実施は、パリ協定第3回締約国会合の直後に開始されることに留意する。

13. 気候変動に関する政府間パネルに対し、パリ協定第4回締約国会合において、適応に必要な事項への評価に関連するものを含め、第6次評価報告書への第2作業部会の報告書から得られた見解を提示するよう招請し、研究者コミュニティに対し、気候変動の地球規模、地域規模及び局所的な影響、対応の選択肢、並びに適応に必要な事項への理解を深めるよう求める。

III. 適応資金

14. 開発途上締約国における気候変動の影響の悪化に対応するためには、現在の適応のための気候資金の供与が依然として不十分であることに懸念をもって留意する。

15. 国別適応計画及び適応に関する情報の策定及び実施を含め、世界全体の取組の一環として開発途上締約国のニーズに対応するため、適応のための気候資金、技術移転及び能力構築の提供の規模を緊急かつ大幅に拡大することを先進締約国に強く求める。

16. 適応に特化した支援を提供する適応基金の価値を含め、適応資金の適切性と予見可能性の重要性を認め、先進締約国に対し、複数年の約束を検討するよう招請する。

17. 適応基金及び後発開発途上国基金への拠出を含め、開発途上締約国の適応を支援するため、その増大するニーズに対応し、適応を支援するための気候資金の供与を増やすとの多くの先進締約国による最近の約束は、従前の努力と比較して大きな進捗を示しており、これを歓迎する。

18. パリ協定第9条4を想起しつつ、規模拡大した資金源の供与において緩和と適応との間の均衡を達成する文脈において、開発途上締約国に対する適応のための気候資金の供与を先進締約国全体で2025年までに2019年の水準から少なくとも2倍にすることを先進締約国に強く求める。

19. 特に適応のための気候計画達成に必要な規模の資金を供与するため、資金動員を強化することを国際開発金融機関、その他の金融機関及び民間部門に求めるとともに、民間の資金源から適応資金を動員するための革新的な取組及び措置を引き続き検討することを締約国に奨励する。

IV. 緩和

20. 世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること、及びその気温上昇を工業化以前より摂氏1. 5度高い水準までのものに制限するための努力を継続するというパリ協定の気温目標を再確認する。

21. 気候変動の影響は、摂氏1. 5度の気温上昇の方が、摂氏2度の気温上昇に比べてはるかに小さいことを認め、気温の上昇を摂氏1. 5度に制限するための努力を継続することを決意する。

22. 世界全体の温暖化を摂氏1. 5度に制限するためには、世界全体の温室効果ガスの排出量を迅速、大幅かつ、持続可能的に削減する必要があること(2010年比で2030年までに世界全体の二酸化炭素排出量を45%削減し、今世紀半ば頃には実質ゼロにすること、及びその他の温室効果ガスを大幅に削減することを含む。)を認める。

23. また、このためには、この決定的な10年間に、利用可能な最良の科学的知見と衡平性に基づき、各国の異なる事情に照らした共通だが差異のある責任及びそれぞれの能力を反映し、持続可能な開発と貧困撲滅のための努力の中で、行動を加速させる必要があることを認める。

24. パリ協定の気温目標達成に向けた進展を示す、新たな又は更新された国が決定する貢献、温室効果ガスの低排出型発展のための長期的な戦略、その他の行動を通報する締約国の努力を歓迎する。

25. パリ協定の下での*3*国の決定する貢献に関する統合報告書の結果に重大な懸念を持って留意する。それによると、提出されたすべての国の決定する貢献の実施を考慮した場合、2030年の温室効果ガスの総排出量は2010年のレベルより13. 7%増加すると推定される。

26. 締約国がパリ協定第4条2に従い加速された行動と国内の緩和策の実施を通じて、総排出量を削減する努力を強化することが緊急に必要であることを強調する。

27. この決定的な10年間に緩和の野心及び実施の規模を緊急に拡大するための作業計画を策定することを決定し、全体としての実施状況の検討(グローバル・ストックテイク)を補完する形で、パリ協定第4回締約国会合での検討及び採択に向け、この問題に関する決定案を提案することを実施に関する補助機関及び科学上及び技術上の助言に関する補助機関に要請する。

28. 新たな又は更新された国が決定する貢献を未通報の締約国に対し、パリ協定第4回締約国会合に先立ち、可能な限り早くこれを行うよう強く求める。

29. パリ協定第3条並びに第4条3、4、5及び11を想起し、異なる国情を考慮しつつ、2022年末までに、パリ協定の温度目標に整合するよう、必要に応じて各国の国が決定する貢献における2030年目標を再検討し、強化することを締約国に要請する。

30. また、事務局に対し決定1/CMA. 2のパラグラフ10で言及されたパリ協定の下での国が決定する貢献に関する統合報告書を毎年更新し、パリ協定の締約国会議の各会合で提供するよう要請する。

31. 2030年以前の野心に関する年次ハイレベル閣僚ラウンドテーブルを、パリ協定第4回締約国会合から開催することを決定する。

32. パリ協定第4回締約国会合までに、異なる国情を考慮しつつ、今世紀半ば頃までの実質ゼロ排出への公正な移行に向けた、パリ協定第4条19に言及される温室効果ガスの低排出型発展のための長期的な戦略を通報することを未通報の締約国に強く求める。

33. 上記パラグラフ32で言及された戦略を、利用可能な最良の科学に沿って、適宜、定期的に更新することを締約国に招請する。

34. パリ協定第4回締約国会合に提供されるよう、パリ協定第4条パラグラフ19で言及される温室効果ガスの低排出型発展のための長期的な戦略に関する統合報告書を作成することを事務局に要請する。

35. 国が決定する貢献を温室効果ガスの低排出型発展のための長期的な戦略と整合させることの重要性に留意する。

36. 各国の事情に照らした最貧者及び最脆弱者を対象とした支援を提供し、また、公正な移行に向けた支援の必要性を認識しつつ、クリーン電力の実装と省エネルギー措置(排出削減対策の講じられていない石炭火力発電の逓減(フェーズダウン)と非効率な化石燃料補助金のフェーズアウトに向けた努力を加速させることを含む)の急速な拡大によるものを含む低排出なエネルギーシステムへの移行に向けた技術の開発、実装、普及及び政策の採用を加速することを締約国に求める。

37. メタンを含む二酸化炭素以外の温室効果ガスの排出量を2030年までに削減するための、さらなる行動を検討することを締約国に招請する。

38. 社会的及び環境的セーフガードを確保しつつ、森林やその他の陸域・海洋生態系が温室効果ガスの吸収・貯蔵庫として機能すること、また、生物多様性を保護することを含め、自然と生態系を保護・保全・回復することがパリ協定の気温目標を達成するために重要であることを強調する。

39. 開発途上締約国に対する支援を強化することで、締約国の行動におけるより高い野心を可能にすることを認める。

V. 緩和及び適応のための資金、技術移転並びに能力構築

40. 先進締約国に対し、条約及びパリ協定の下での既存の義務を継続するものとして、緩和及び適応の両方に関して、開発途上締約国を支援するため、強化された支援(資金源、技術移転、能力開発を含む。)を供与するよう強く求めるとともに自発的にそのような支援を供与又は継続して供与することを他の締約国に奨励する。

41. 特に、気候変動の影響が大きくなっていること及び2019年のコロナウイルス感染症拡大の結果として債務が増加していることで、開発途上締約国のニーズが高まっていることに懸念を持って留意する。

42. 資金に関する常設委員会による、この条約及びパリ協定の実施に関連する開発途上締約国のニーズの特定に関する第1次報告書*4*、並びに気候資金の流れに関する第4次隔年評価書*5*を歓迎する。

43. 開発途上締約国への支援を年間1,000億米ドルを超えて大幅に増やすことを含め、パリ協定の目標達成に必要な水準に達するため、あらゆる資金源から気候資金を動員する必要があることを強調する。

44. 意味のある緩和行動及び実施の透明性の文脈において、2020年までに年間1,000億米ドルを共同で動員するという先進締約国の目標がまだ達成されていないことに深い憂慮をもって留意するとともに、多くの先進締約国が行った増額の約束並びに「気候資金実施計画:1,000億米ドルの目標達成」*6*及びそこに含まれる共同の行動を歓迎する。

45. パリ協定第9条5に基づく次回の隔年報告書の通報を通じ、上記パラグラフ44で言及された約束をより明確にすることを先進締約国に求める。

46. 1,000億米ドル実施目標を早急に、かつ2025年までに完全に達成することを先進締約国に強く求めるとともに、その約束の実施における透明性の重要性を強調する。

47. 気候行動への投資をさらに拡大することを資金供与の制度の運営組織、国際開発金融機関、その他の金融機関に強く求めるとともに、無償やその他の譲許性の高い形態の資金を含め、世界のあらゆる資金源からの気候資金の規模及び効果を継続的に高めることを求める。

48. 気候変動の悪影響に特に脆弱な国のニーズを考慮した、資金源の規模拡大の必要性を再度強調するとともに、この観点から、特別引出権を含む譲許的な資金源やその他の形態の支援の供与と動員に当たって、気候変動の脆弱性をどのように反映させるべきかを検討することを多国間機関に奨励する強く求める強く求める。

49. 気候資金に関する新規合同数値目標(2025年以降の資金動員目標)の審議開始について謝意をもって歓迎し、決定-/CMA. 3の下で設立された*7*特別作業計画、及びそこに含まれる行動に建設的に関与することを期待する。

50. 資金に関する常設委員会の作業を踏まえ、途上国のニーズと優先事項を考慮し、持続可能な開発と貧困撲滅の努力の文脈の中で、気候変動の脅威に対する世界的な対応を強化する必要性、また、温室効果ガスについて低排出量型であり、および気候に対して強靱である発展に向けた方針に資金の流れを適合させ必要性を踏まえ、上記49で言及された審議の重要性を強調する。

51. 多くの開発途上締約国が直面している資金へのアクセスに関する課題を強調するとともに、資金供与の制度の運営組織等による資金へのアクセスを強化するための更なる努力を奨励する。

52. 譲許的な形態の気候資金へのアクセスの適格性及び能力に関して提起された特定の懸念に留意し、気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上締約国のニーズを考慮した上で、資金規模を拡大して供与することの重要性を再度強調する。

53. 気候変動の悪影響に対する脆弱性を譲許的な資金の供与と動員にどのように反映するか、また、資金へのアクセスをどのように簡素化し、強化できるかを検討することを資金支援に関連する供与貴官に奨励する。

54. 持続可能な開発と貧困撲滅の文脈において、透明、かつ包摂的な方法で、温室効果ガス排出量について低排出型であり、及び気候に対して強靱である発展に向けた方針に資金の流れ適合させるための理解と行動を強化することが緊急課題であることを強調する。

55. 先進締約国、国際開発金融機関、及びその他の金融機関に対し、その融資活動をパリ協定の目標とより一層整合させるよう求める。

56. この条約及びパリ協定の実施に向けた能力構築活動の一貫性と調整の強化に特に関連して、能力構築についての進捗を確認する。

57. 現在及び新たな能力構築のギャップとニーズの特定及び対処において引き続き開発途上締約国を支援すること並びに気候行動とそれに対応する解決策を活性化することの必要性を認める。

58. 「気候行動のためのCOP26カタリスト」の成果と、能力構築に関する行動を前進させる多くの締約国によってなされた強い約束を歓迎する。

59. また、技術執行委員会及び気候技術センター・ネットワークの2020年及び2021年の共同年次報告書を歓迎し*8*、両機関に協力関係を強化することを招請する。

60. イノベーションを加速し、奨励し、可能にすることを含め、緩和・適応行動の実施のための技術開発・移転に関する協力行動を強化することの重要性、及び技術に関する制度のための多様なソースからの予見可能で持続的かつ十分な資金供与の重要性を強調する。

VI. ロス&ダメージ(気候変動の影響に伴う損失及び損害)*9*

61. 気候変動が既に損失及び損害を引き起こしており、今後もますます増加するであろうこと、また、気温の上昇に伴い、気候や天候の極端事象による影響や、緩やかに進行する事象が、これまで以上に社会的、経済的、環境的な脅威となることを確認する。

62. また、気候変動の悪影響に伴う損失及び損害を回避し、最小化し、対処するためには、先住民や地域社会を含む、地方、国、地域レベルの幅広い関係者が重要な役割を果たすことを確認する。

63. 気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上締約国において、気候変動の悪影響に伴う損失及び損害を回避し、最小化し、対処するための取組を実施するため、資金、技術移転、能力構築など、必要に応じて行動及び支援の規模を拡大する緊急性を繰り返し述べる。

64. 先進締約国、資金メカニズムの運営組織、国際連合機関及び政府間組織、その他の二国間及び多国間機関、非政府組織及び民間の資金源を含め、気候変動の悪影響に伴う損失及び損害に対処する活動に対し、強化され、追加された支援を提供することを強く求める。

65. 気候変動の悪影響に伴う損失及び損害を回避し、最小化し、対処するための取組を実施する能力を構築する上で、需要に応じた技術支援の重要性を認める。

66. 気候変動の悪影響に伴う損失及び損害を回避し、最小化し、対処するためのサンティアゴ・ネットワークについて、その機能と制度的取極をさらに発展させるためのプロセスに関する合意を含め、さらなる運用化がなされることを歓迎する。

67. 決定-/CMA. 3で9に規定された機能を支援し、開発途上国における気候変動の悪影響に伴う損失及び損害を回避し、最小化し、対処するための関連取組の実施に向けた技術支援を行うため、サンティアゴ・ネットワークに資金が提供されることを決定する。*10*

68. また、サンティアゴ・ネットワークの下での技術支援のために提供された資金の管理方法及びその支出条件は、決定-/CMA. 310で定められたプロセスによって決定されることを決定する。*11*

69. さらに、決定-/CMA. 3*12*10に従って決定されるサンティアゴ・ネットワークの下での作業を促進するための事務局の役務を提供する組織が、上記67で言及された資金を管理することを決定する。

70. 上記パラグラフ67に記載されているように、サンティアゴ・ネットワークの運用及び技術支援の提供のための資金を提供することを先進締約国に強く求める。

71. 気候変動の悪影響によって引き起こされるニーズの規模に対応するための一貫した行動の重要性を確認する。

72. 損失及び損害の回避、最小化、対処へのアプローチを如何に改善できるかについての理解を深めるため、開発途上国と先進国、基金、技術機関、市民社会、地域社会との間のパートナーシップを強化することを決意する。

73. 気候変動の悪影響に伴う損失及び損害を回避し、最小化し、対処するための活動の資金調達の取り決めを議論するため、締約国、関連機関及び関係者の間でグラスゴー対話を設置すること、実施に関する補助機関の各年の第1会期に実施すること、及びこれを第60回会合(2024年6月)で終了することを決定する。

74. 気候変動の影響に伴う損失及び損害のためのワルシャワ国際メカニズムの執行委員会と協力して、グラスゴー対話を開催することを実施に関する補助機関に要請する。

VII. 実施

75. パリ協定の完全実施を速やかに進めることを決意する。

76. 世界全体としての実施状況の検討の開始を歓迎し、上記5に照らし、このプロセスが包括的かつ包摂的であり、パリ協定第14条及び決定19/CMA. 1に適合するものであることの決意を表明する。

77. 非締約国の関係者の世界全体としての実施状況の検討への効果的な参加を支援するようハイレベル・チャンピオンに奨励する。

78. カトヴィツェ気候合意を想起し、以下に関する決定文書の採択を含むパリ協定の作業プログラムの完了を謝意をもって歓迎する。

(a)パリ協定の第4条10で言及されているNDCの共通の時間枠(決定-/CMA. 3)*13*

(b)パリ協定第13条で言及されている行動と支援のための強化された透明性枠組みに関する方法論的事項(決定-/CMA. 3)*14*

(c)パリ協定第4条12で言及されている(注:NDCの)公的登録簿の運用及び使用のための方法並びに手順(決定-/CMA. 3)*15*

(d)パリ協定第7条12で言及されている(注:適応に関する情報の)公的登録簿の運用及び使用のための方法並びに手順(決定-/CMA. 3)*16*

(e)パリ協定の第6条2で言及されている協力的アプローチに関するガイダンス(決定-/CMA. 3)*17*

(f)パリ協定の第6条4で設立されたメカニズムのルール、方法、手順(決定-/CMA. 3)*18*

(g)パリ協定第6条8で言及されている非市場アプローチの枠組みの下での作業計画(決定-/CMA. 3)。*19*

79. パリ協定第13条及び決定18/CMA. 1で定められた日程にのっとり、強化された透明性枠組み下での時宜を得た報告を確保する目的で、必要な準備を速やかに行うことを締約国にを強く求める。

80. 開発途上国が、適時、適切かつ予見可能な方法で、パリ協定第13条に基づく強化された透明性枠組みの実施の支援拡大を求めていることを確認する。

81. 第8次増資プロセスの一環として、気候に対して割り当てる資金源を増やす方法を正式に検討する20よう地球環境ファシリティに奨励する強く求める決定/-CP. 26を歓迎するとともに、決定1/CP. 21の84に基づき設立された透明性に関する能力開発イニシアティブが、開発途上締約国の要請に基づき、強化された透明性枠組みに関する制度的及び技術的な能力開発を引き続き支援することを認める。

82. 開発途上締約国による透明性に関する能力開発イニシアティブへのアクセスの改善を引き続き促進することを地球環境ファシリティに要請する決定/-CMA. 3を歓迎し、21気候資金へのアクセスに関するタスクフォースや「気候行動のためのCOP26カタリスト」など、これらの努力を強化する他の機関及びイニシアティブと密接に協力するよう地球環境ファシリティに奨励する。

83. 決定/-CP. 26の附属書に記載された専門家諮問グループ(CGE)の付託事項の改定に留意する。*22*

84. パリ協定第4条15にのっとり、対応措置の影響を最も受ける経済を有する締約国、特に開発途上締約国の懸念を考慮する必要性を認める。

85. 温室効果ガスについて低排出であり、気候変動に強靱な開発に向けた方針資金の流れを適合させること(技術の展開と移転、開発途上締約国への支援の提供を含む。)も含め、持続可能な開発、貧困の撲滅、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)及び質の高い雇用の創出を促進する公正な移行を確保する必要性を認める。

VIII. 協働

86. パリ協定の目標に向けた実施の隔たりを解消することが緊急に必要であることに留意し、2023年に2030年までの野心を検討するため、世界の指導者を招集するようことを国際連合事務総長に招請する。

87. パリ協定の目標に向けた進捗に貢献するため、社会のすべての主体、部門、地域にわたる、技術的進歩を含む革新的な気候行動に関する国際協力の重要性を認める。

88. また、パリ協定の目標に向けた前進への貢献に当たり、市民社会、先住民、地域社会、若者、児童、地方政府、地域政府など、非締約国の関係者の重要な役割を認める。

89. 野心強化のための*23*世界的な気候行動のためのマラケシュ・パートナーシップの改善、ハイレベル・チャンピオンの指導力と行動、及び自主的なイニシアティブの説明責任と進捗状況の追跡を支援するための気候行動のための非政府主体気候行動プラットフォームに関する事務局の作業を歓迎する。

90. また、地域気候ウィーク*24*に関するハイレベルコミュニケを歓迎するとともに、締約国及び非締約国の関係者が地域レベルで気候変動に対する信頼性と持続性のある対応を強化することができるよう、地域気候ウィークの継続を奨励する。

91. 人権、並びに男女間の平等及び女性の自律的な力の育成に関するそれぞれの締約国の義務を尊重、促進、考慮する「気候エンパワーメントのための行動に関するグラスゴー作業計画」の実施を速やかに開始することを締約国に強く求める。

92. また、パリ協定の下での意思決定を含め、多国間、国、地方の意思決定プロセスにおいて、意味のある若者の参加と代表権を確保することを締約国及び利害関係者に強く求める。

93. 気候変動に関する効果的な行動において、先住民及び地域社会の文化と知識が重要な役割を果たすことを強調し、気候変動対策の設計と実施に先住民及び地域社会を積極的に関与させることを締約国及び利害関係者に強く求める。

94. 9つの非政府組織の構成員を含むオブザーバー組織が、知識を共有し、パリ協定の目標を達成するための野心的な行動を呼びかけ、そのために締約国と協力する上で、重要な役割を果たしているとの認識を表明する。

95. 気候変動対策への女性の完全で、意味のある、公平な参加を拡大し、野心を高め気候目標を達成するために不可欠な、ジェンダーに対応した実施と実施手段を確保することを締約国に奨励する。

96. 本決定で言及された事務局により実施される活動に見込まれる予算への影響に留意する。97. 本決定で求められた事務局の行動を、資金源の利用可能性を条件に実施するよう要請する。



{*1* 第26回締約国会合の議題2(f)で提案された「グラスゴー気候合意」と題する決定書案。}

{*2* 気候変動に関する政府間パネル。2021.2021年の気候変動。ThePhysicalScienceBasis.ContributionofWorkingGroupItotheSixthAssessmentReportoftheIntergovernmentalPanelonClimateChange(気候変動に関する政府パネルの第6次評価報告書へのワーキンググループIの貢献)。VMasson-Delmotte,PZhai,APirani,etal.(eds.).Cambridge:Cambridge:CambridgeUniversityPress.https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/で入手可能。}

{*3* 文書FCCC/PA/CMA/2021/8/Rev.1およびhttps://unfccc.int/sites/default/files/resource/message_to_parties_and_observers_on_ndc_numbers.pdfを参照。}

{*4* 文書FCCC/CP/2021/10/Add.2-FCCC/PA/CMA/2021/7/Add.2を参照。}

{*5* 文書FCCC/CP/2021/10/Add.1-FCCC/PA/CMA/2021/7/Add.1を参照。}

{*6* https://ukcop26.org/wp-content/uploads/2021/10/Climate-Finance-Delivery-Plan-1.pdfを参照。}

{*7* パリ協定の第3回締約国会合の議題8(e)で提案された「気候金融に関する新しい集団的定量目標」と題する決定案。}

{*8* FCCC/SB/2020/4とFCCC/SB/2021/5。}

{*9* なお、気候変動の影響に伴う損失及び損害のためのワルシャワ国際メカニズムのガバナンスに関する議論では成果が得られなかったが、これはこの問題のさらなる検討を妨げるものではないことを付記する。}

{*10* パリ協定第3回締約国会合の議題7に提案された「気候変動の影響に伴う損失及び損害のためのワルシャワ国際メカニズム」と題する決定案。}

{*11* 上記脚注10の通り。}

{*12* 上記脚注10の通り。}

{*13* パリ協定第3回締約国会合の議題3(b)で提案された「パリ協定第4条10で言及される国内確定拠出金の共通時間枠」と題する決定案。}

{*14* パリ協定第3回締約国会合の議題5で提案された「パリ協定第13条で言及された透明性強化の枠組みの方法、手順、ガイドラインを運用するガイダンス」と題する決定案。}

{*15* パリ協定の第3回締約国会合の議題6(a)で提案された「パリ協定の第4条12で言及された公的レジストリの運営と使用のためのモダリティと手順」と題する決定案。}

{*16* パリ協定の第3回締約国会合の議題6(b)で提案された「パリ協定の第7条12で言及された公的レジストリの運営と使用のためのモダリティと手順」と題する決定案。}

{*17* パリ協定第3回締約国会合の議題12(a)で提案された「パリ協定第6条2で言及された協力的アプローチに関するガイダンス」と題する決定案。}

{*18* パリ協定第3回締約国会合の議題12(b)で提案された「パリ協定第6条4で設立されたメカニズムのルール、モダリティ、手順」と題する決定案。}

{*19* パリ協定第3回締約国会合の議題12(c)で提案された「パリ協定第6条8で言及された非市場的アプローチの枠組みの下での作業プログラム」と題する決定案。}

{*20* 第26回締約国会合の議題8(d)で提案された「締約国会議への地球環境ファシリティの報告と地球環境ファシリティへのガイダンス」と題する決定案。}

{*21* パリ協定の第3回締約国会合の議題8(c)で提案された「地球環境ファシリティへのガイダンス」と題する決定案。}

{*22* 第26回締約国会合の議題5で提案された「専門家諮問グループの委託条件の改訂」と題する決定案。}

{*23* https://unfccc.int/sites/default/files/resource/Improved%20Marrakech%20Partnership%202021-2025.pdfを参照。}

{*24* https://unfccc.int/regional-climate-weeks/rcw-2021-cop26-communique。}