データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国政府及びアゼルバイジャン共和国政府との間の二国間クレジット制度に関する協力覚書

[場所] バクー
[年月日] 2022年9月5日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

パラグラフ1

日本国政府及びアゼルバイジャン共和国政府(以下個別に「政府」といい、「両政府」と総称する。)は、パリ協定の第2条1(a)に規定される、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること及び世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏1.5度高い水準までのものに制限するために努力することを含むパリ協定の目的を追求し、並びに気候変動への対処における二国間協力を強化するため、二国間クレジット制度(以下「JCM」という。)を創設する。

パラグラフ2

JCMは、先進的な脱炭素の技術、製品、システム、サービス及びインフラ等の普及や緩和行動の実施を促進し、これにより、アゼルバイジャン共和国における温室効果ガスの排出削減又は吸収及び持続可能な開発並びに日本及びアゼルバイジャン共和国の国が決定する貢献の達成に公平性と相互利益に基づき貢献することを目的とする。

パラグラフ3

両政府は、それぞれの国における関連する有効な国内法令に従って、JCMを実施する。

パラグラフ4

両政府は、JCMを実施するために、それぞれの政府の代表者から構成され、それぞれの政府によってメンバーが決定される合同委員会を設置する。合同委員会は、合同委員会の手続、プロジェクトサイクルの手続、方法論、プロジェクト設計書、モニタリング、第三者機関の指定、妥当性確認及び検証並びにJCMに関連するその他の事項に関し、JCMの実施に必要な規則及びガイドラインを策定する。

パラグラフ5

合同委員会のメンバー及び合同委員会を支援する業務を委任された機関や人物は、同委員会において秘密の情報と表示されたものを保存し、並びにそのような秘密の情報の不適切な利用及び第三者への開示を行わない。

パラグラフ6

両政府は、パリ協定第6条2にいう協力的な取組に関する指針(以下「指針」という。)に適合する相当調整に基づき二重計上の回避を確保しつつ、排出量の削減及び吸収から発行されるJCMクレジットの一部を日本の国が決定する貢献の達成に利用することができること並びに当該JCMクレジットの残余がアゼルバイジャン共和国の国が決定する貢献の達成に寄与することができることを相互に認める。

パラグラフ7

各政府は、日本のJCM登録簿において発行されたJCMクレジットを、指針に適合して、国際的に移転される緩和の成果として日本の国が決定する貢献の達成のために利用することを承認する。

パラグラフ8

各政府は、JCMクレジットの一部を、指針に適合して、適当な場合には、他の国際的な緩和の目的に利用することを承認することができる。

パラグラフ9

両政府は、世界全体の温室効果ガスの排出量の削減及び吸収のための具体的な行動を促進するため、JCMの透明性及び環境十全性を確保するとともに、JCMを簡素かつ実用的なものに維持する。

パラグラフ10

両政府は、JCMの実施のために緊密に協力する。日本国政府は、アゼルバイジャン共和国政府によるJCMの運営に必要となる技術的な及び能力向上の支援を促進する。

パラグラフ11

本協力覚書は、法的拘束力を有するものではなく、また、いずれの政府に対してもいかなる法的な権利又は法的な義務を創設することも意図しない。

パラグラフ12

いずれの政府も、外交ルートを通じて他方の政府に少なくとも6ヶ月前に事前通告することにより、この協力覚書を終了させることができる。このような終了は、この協力覚書に基づく進行中のプロジェクト又は活動に影響を与えない。

パラグラフ13

本協力覚書は、署名の日から開始する。本協力覚書の内容は、両政府間の書面による相互同意により、修正の日を明示した上で、修正及び補足することができる。

パラグラフ14

この協力覚書の解釈、適用及び実施に関するいかなる相違も、両政府間の協議により友好的に解決される。

バクーにおいて2022年9月5日に、英語による本書2通に署名された。



日本国政府
和田純一
アゼルバイジャン駐箚特命全権大使


アゼルバイジャン共和国政府
ムフタル・ババエフ
環境天然資源大臣