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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国政府及びパプアニューギニア独立国政府との間の二国間クレジット制度に関する協力覚書

[場所] シャルム・エル・シェイク
[年月日] 2022年11月18日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

日本国政府(以下「日本」という。)及びパプアニューギニア独立国政府(以下「PNG」という。)(以下個別に「参加者」といい、「両参加者」と総称する。)は、

気候変動への対応における二国間協力の重要性を認め、

パリ協定、特に世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること及び世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏1.5度高い水準までのものに制限するために努力するという第2条1(a)の目的を追求するため、

持続可能な開発並びに環境十全性及び透明性を推進しつつ、国が決定する貢献の達成に向けた国際的に移転される緩和の成果の移転に関し、パリ協定第6条2に沿って任意の協力を行うことを希望して、

各参加者の一般的な法律及び政策に従い、

以下の内容に同意した。


目的と目標

1. この協力覚書(以下「協力覚書」という。)は、両参加者が二国間クレジット制度(以下「JCM」という。)を設立することに正式に同意し、両参加者間のJCMに関する協力の枠組みを提供することを意図する。

2. 両参加者は、それぞれの国における有効な関係国内法令に従って、JCMを実施する。

協力分野

3. 両参加者は、この協力覚書における協力が、JCMを設立し実施するためのものであり、少なくともそれぞれの国が決定する貢献(NDC)の達成のための炭素クレジット並びに温室効果ガス排出の削減・吸収に関する情報、技術的な知識、ベストプラクティス及び知見の共有を含むことができることを認識する。

二国間クレジット制度

4. JCMは、PNGにおける排出削減及び・吸収を達成するための両参加者間の協力の枠組みを提供し、国際的に移転される緩和の成果として、相当する炭素クレジットの日本への移転を提供するものである。

5. JCMは、先進的な脱炭素技術、製品、システム、サービス、インフラストラクチャーの普及及び緩和に関する行動の実施を促進し、これにより、PNGにおける温室効果ガスの排出削減又は吸収及び持続可能な開発並びに日本及びPNGの国が決定する貢献の達成に貢献することを意図とする。

6. 両参加者は、パリ協定第6条2にいう協力的な取組に関する指針(以下「指針」という。)に適合する相当調整に基づき二重計上の回避を確保しつつ、排出量の削減及び吸収から発行されるJCMクレジットの一部を日本の国が決定する貢献の達成に利用することができること並びに当該JCMクレジットの残余がPNGの国が決定する貢献の達成に寄与することができることを相互に認める。

7. 各参加者は、日本のJCM登録簿においてPNGによって発行されたクレジットを、指針に適合して、国際的に移転される緩和の成果として日本の国が決定する貢献の達成のために利用することを承認する。

8. 各参加者は、JCMクレジットの一部を、指針に適合して、適当な場合には、他の国際的な緩和の目的に利用することを承認することができる。

9. 両参加者は、世界全体の温室効果ガスの排出量の削減及び吸収のための具体的な行動を促進するため、JCMの透明性及び環境十全性を確保するとともに、JCMを簡素かつ実用的なものに維持する。

10. 両参加者は、JCMの実施のために緊密に協力する。実施文書

11. 両参加者は、この協力覚書における協力分野を運用するために、個別の実施文書を作成することができる。

技術的支援及び能力構築支援

12. 日本政府は、この協力覚書においてPNGによるJCMの運営に必要となる技術的支援及び能力向上の支援を提供、促進する。

合同委員会

13. 両参加者は、JCMを実施するために、それぞれの参加者の代表者から構成される合同委員会を設置する。

14. 合同委員会は、プロジェクトサイクルの手続、方法論、プロジェクト設計書、モニタリング、第三者機関の指定、妥当性の確認及び検証並びにJCMに関連するその他の事項に関し、JCMの実施に必要な規則及びガイドラインを策定する。

15. 合同委員会は、その会合に関する事務手続及びその他の措置を必要に応じて決定する。秘密性

16. この協力覚書に関連して参加者が他方の参加者から取得又は受領したすべての情報(以下「秘密の情報」という。)は、当該情報が秘密であると個別に指定されているか否かにかかわらず、秘密として保持され、明示された目的のためにのみ使用される。参加者は、秘密の情報が紛失及び不正アクセスから保護され、権限のある者のみが秘密の情報にアクセスできるよう、あらゆる合理的な措置を講じる。

17. 両参加者は次の場合を除き、いかなる第三者へも秘密の情報を開示しない。

a. この協力覚書又はその下で若しくは開始または実施される協力プロジェクト、プログラム又は活動を行う目的で、他の政府機関、業界、学術機関及び官民イニシアティブなど、参加者それぞれの関係者に開示される場合、又は

b. 参加者が、参加者の国内法又は権限のある当局により開示が要求される場合を含め、秘密の情報を提供する他方の参加者から、当該開示について書面による事前承認を得た場合。

法的効果

18. この協力覚書のいかなる内容も、国内法又は国際法に基づき、参加者に法的強制力を有する権利を生じさせ、又は法的拘束力を有する義務を課すものではなく、又、そのような意図を有するものではない。

19. この協力覚書は両参加者が相互に又はいかなる第三者と協力する権限を制限する意図を有するものではない。

費用

20. この協力覚書は各参加者が他の参加者に財政上の義務を課す意図を有するものではない。

21. 各参加者は、両参加者が相互に別段の同意をしない限り、この協力覚書の実施又はこの協力覚書における他の実施文書に関連する費用を自身で負担する。

紛争解決

22. この協力覚書の解釈、適用及び実施に関するいかなる相違も、両参加者間の協議により友好的に解決される。

評価と見直し

23. この協力覚書は、両参加者により相互に別段の同意がされない限り、その存続期間中、毎年見直すことができる。

24.この協力覚書の内容は、両参加者間の書面による相互の同意により、変更及び修正することができる。

開始、期間、終了

25. この協力覚書は、署名の日から10年の期間適用され、パラグラフ26に沿っていずれかの参加者が終了の通告を行わない限り、自動的に10年間延長される。

26. 各参加者は、外交ルートを通じて他方の参加者に少なくとも6か月前に事前通告することにより、この協力覚書を終了させることができる。

27. この協力覚書の終了は、両参加者が相互に書面により別段の決定をしない限り、協力覚書の終了時に進行中のこの協力覚書に該当するプロジェクト又は活動に影響を与えない。

シャルム・エル・シェイクにおいて2022年11月18日に、英語による本書2通に署名された。



日本国政府
西村明宏
環境大臣


パプアニューギニア独立国政府
シモ・キレパ
環境保全・気候変動大臣