[文書名] 日本国政府及びタンザニア連合共和国政府との間の二国間クレジット制度に関する協力覚書
駐タンザニア連合共和国大使が正当に代表する日本国政府及び副大統領府事務次官が正当に代表するタンザニア連合共和国政府(以下個別に「政府」といい、「両政府」と総称する。)は、
両政府が、相互の利益のために、二国間クレジット制度における協力を促進することについて共通の関心を有することを認識し、
二国間クレジット制度における協力並びに相互利益のための連携及び調整、特に温室効果ガスの排出量の削減並びに両国間の優良事例及び健全な環境の促進を推進することを希望し、
二国間クレジット制度が両国の経済協力を促進することを強調し、
両政府間の良好な協力、調整及び連携の下に、二国間クレジット制度がより効果的に実施されることを認識し、
以下の認識に達した。
I. 二国間クレジット制度の創設
1. 日本国政府及びタンザニア連合共和国政府は、パリ協定第2条1(a)に規定される、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること及び世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏1.5度高い水準までのものに制限するために努力することを含むパリ協定の目的を追求し、並びに気候変動への対処における二国間協力を強化するため、二国間クレジット制度(以下「JCM」という。)を創設する。
II. 目的
2. この協力覚書の目的は、両政府間の協力を促進し、特に、先進的な脱炭素の技術、製品、システム、サービス及びインフラ等の普及や緩和行動の実施を促進し、これにより、タンザニア連合共和国における温室効果ガスの排出削減又は吸収及び持続可能な開発並びに日本国及びタンザニア連合共和国の国が決定する貢献の達成に貢献することを目的とする。
III. 合同委員会
3. 両政府は、JCMを実施するために、それぞれの政府の代表者から構成される合同委員会を設置する。
4. 上記パラグラフ3に基づいて設置される合同委員会は、プロジェクトサイクルの手続、方法論、プロジェクト設計書、モニタリング、第三者機関の指定、妥当性の確認及び検証並びにJCMに関連するその他の事項に関し、JCMの実施に必要な規則及びガイドラインを策定する。
IV. JCMクレジットの承認及び利用
5. 両政府は、パリ協定第6条2にいう協力的な取組に関する指針(以下「指針」という。)に適合する相当調整に基づき二重計上の回避を確保しつつ、排出量の削減及び吸収によって発行されるJCMクレジットの一部を日本国の国が決定する貢献の達成に利用することができること並びに当該JCMクレジットの残余がタンザニア連合共和国の国が決定する貢献の達成に寄与することができることを相互に認める。
6. 各政府は、日本国のJCM登録簿において発行されたJCMクレジットを、指針に適合する形で、国際的に移転される緩和の成果として日本国の国が決定する貢献の達成のために利用することを承認する。
7. 各政府は、JCMクレジットの一部を、指針に適合する形で、適当な場合には、他の国際的な緩和の目的に利用することを承認することができる。
V. 透明性
8. 両政府は、世界全体の温室効果ガスの排出量の削減及び吸収のための具体的な行動を促進するため、JCMの透明性及び環境十全性を確保するとともに、JCMを簡素かつ実用的なものに維持する。
VI. 能力構築
9. 日本国政府は、JCM実施のためにタンザニア連合共和国政府によるJCMの運営に必要となる技術的なかつ能力向上のための支援を促進する。
10. 両政府は、途上国の適応に関する取組を支援するための貢献を行うことを目指す。
VII. 秘密の保持
11. JCMの実施を通じていずれかの政府が取得した全ての情報は、秘密のものとして保持され、及び関係当事者の事前の書面による同意を得ない限り、JCMの実施の目的のためにのみ使用される。
12. この協力覚書が終了する場合には、両政府は、この協力覚書に基づく既存のプロジェクト又は活動について、引き続き秘密のものとして取り扱う。
VIII. 期間
13. この協力覚書は、署名の日から開始し、パラグラフ第14に沿って、いずれかの政府によって終了されるまで有効に継続する。
IX. 終了
14. いずれの政府も、外交ルートを通じて他方の政府に少なくとも6か月前に事前通告することにより、この協力覚書を終了させることができる。このような終了は、この協力覚書に基づく進行中のプロジェクト又は活動に影響を与えない。
X. 修正
15. この協力覚書の内容は、両政府間の書面による相互同意により、修正及び補足することができる。
XI. 相違の解決
16. この協力覚書の解釈、適用及び実施に関するいかなる相違も、両政府間の協議により友好的に解決される。
17. 両政府は、それぞれの国における有効な関連国内法令に従って、JCMを実施する。
XII. その他事項
18. この協力覚書は、法的拘束力を有するものではなく、また、いかなる法的な権利及び義務を生じさせるものではない。この協力覚書の内容は、適用可能な国際約束から生じる両政府のいかなる権利及び義務にも影響を及ぼさない。
東京において2025年5月28日に、英語による本書2通に署名された。
日本国政府
浅尾慶一郎
環境大臣
三上陽一
タンザニア連合共和国駐箚日本国特命
全権大使
タンザニア連合共和国政府
ハマド・ユスフ・マサウニ
副大統領府付国務大臣(連合・環境担当)