データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 鉄道における日印協力

[場所] 
[年月日] 2018年10月29日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道

 インドにおける連結性を変革し、高速鉄道を導入するため、インド及び日本は、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道(MAHSR)建設において協力している。本計画の重要性を踏まえ、本件は,インド側はラジブ・クマール行政委員会副委員長,日本側は和泉洋人内閣総理大臣補佐官が共同議長を務める合同委員会により統括されている。

 2018年9月17日にデリーで開催されたMAHSRに関する第8回合同委員会は,プロジェクトの着実な進展を確認し,また,プロジェクトの円滑な遂行に向けた相互努力を継続することで一致した。石井啓一国土交通大臣及び秋本真利同政務官は,それぞれ2017年12月と2018年5月に,駅周辺道路,駅前広場,複合統合計画等の駅周辺開発を含む高速鉄道計画を念頭に,それぞれインドを訪問した。

 2018年9月のJICAによるアプレイザル・ミッション及び9月28日にJICA・印外務省間でなされた第一期円借款のための借款契約の署名の完了を踏まえ,今般の首脳会談において,第二期となる円借款に係る交換公文及び借款契約が結ばれた。

現状

 インド高速鉄道公社(NHSRCL)は、本事業の実施機関である。本事業にかかる最終実地調査は既に完了している。決定された配置に基づき、すべての地下及び地上の施設が特定された。用地取得の手続きは,ムンバイ・アーメダバード間で,2018年12月までの完了を目標に開始されている。共同測量調査は、487kmのうち328kmまで完了した。高速鉄道研修施設を含む事業全体が,26の契約パッケージに分割され、そのうち4のパッケージが既に締結されている。多機能で持続可能な統合輸送網の重要な要素であるマルチモーダル交通統合計画が全12駅で進行中である。ゼネラル・コンサルタントのための覚書は、JICAによって鉄道省,NHSRCL,日本のコンサルタントのジョイントベンチャーとの間で署名され、事業工程において重要な進捗を示している。

DFC西回廊

 ジャワハルラール・ネルーポートターミナル(JNPT)からダドリ間1,522kmのDFC西回廊はムンバイー・デリー間における混雑を軽減し、JICAの資金を通じて実施されている。

現状

DFCは、土木パッケージ全体の48パーセントが実質的に進捗を達成し,802kmの軌道敷設工事が完了した。約99パーセントの土地取得が行われ、補償金は3万3千130カロール・ルピー(5,230億円)支給された。2018年8月15日にジャイプル北部鉄道ナショナル首都地域とムンバイ間で開催されたDFCの190kmに及ぶアテリ・プレラ区間でのインド鉄道貨物列車の試運転が成功裡に実施され、この大変革をもたらすプロジェクトにおける重要なマイルストーンとなった。

将来の協力

(1)メイク・イン・インディア

MAHSRプロジェクトにおいてメイク・イン・インディアを実現するために,インド商工省産業政策振興局DIPP,在インド日本大使館,NHSRCL,国土交通省,経済産業省からなるタスクフォースが構成され,土木工事、軌道工事、電気通信工事(信号及び電気通信を含む),車両工事の4つのサブグループに関する提案が合意された。また,全24編成のうち,インド国内で6編成の車両が組み立てられる。

(2)研修

 円借款を通じてヴァドーダラー国立インド鉄道キャンパスに新たな高速鉄道研修施設が建設中である。合計3つの契約のうち2つがすでに締結された。研修施設の最後の入札は、2018年7月に開始されて、2018年12月までに完了することが期待される。建設は開始されており,2020年12月までに公開される予定である。重要な高速鉄道建設事業の運営のための十分な人的資源を確有するために,第7回合同委員会で2018年から2019年度の間で480人の鉄道省及び120人のNHSRCL職員の訓練を行うことが合意された。すでに約287人のインド鉄道の若手職員が2017年から2018年の間で、高速鉄道技術に関する研修を行った。日本政府は、インド鉄道職員のために、日本の大学の修士課程について毎年20人の枠を提供した。現在,17人の職員が様々な大学において修士課程に属しており,2019年度においては20人分の枠がある。

(3)インフラの向上及び技術協力

 インド政府が鉄道の安全を確保することに重点を置いて取り組む中で,インドは,この分野におけるグッドプラクティスを学ぶために日本と協力している。JICAの技術協力の下,日本からの安全に関する専門家が,鉄道溶接実施及び安全管理の状況を調査するためインド国鉄を訪問した。「鉄道安全能力強化プロジェクト」は,安全性向上のための鉄道溶接技術や車両整備を含む鉄道網の安全性に関し,インド国鉄及び貨物専用鉄道公社の能力開発のための技術協力として実施される。