データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日印デジタル・パートナーシップに係る協力

[場所] 
[年月日] 2018年10月29日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 日印両国が新たな情報テクノロジー時代に向け共に躍進し,日本の「Society5.0」とインドの「デジタル・インディア」,「スマート・シティ」及び「スタートアップ・インディア」といった「生活向上のためのフラッグシップ・プログラムにおける相互補完性を活用し,両国は,人工知能(AI)やIoT等といった次世代テクノロジー分野において協力する。経済産業省(METI)及びインド電子情報技術省(MeitY)は,2018年までに計6回の共同作業部会を開催し,総務省(MIC)とインド通信省(MOC)は,2018年に開催した第5回共同作業部会にて,情報通信技術(ICT)分野における協力に係る共同議事録に署名した。

 両国の首相は,MeitY及びMETI間で署名された包括的な「日印デジタル・パートナーシップ(I-JDP)」に係る協力覚書を歓迎した。これは,既存の協力分野の推進に加え,デジタル分野での協力を特に協調したICT分野の新たなイニシアティブを模索するとともに,「日印スタートアップ・ハブ」を通じた取り組みを拡大していく。

 日印スタートアップ・ハブ: 2017年の首脳会談での日印共同声明に示された日印スタートアップ・ハブの設立に向けた両首脳のコミットメントを実現するために,日印双方は,日本のマーケットや日本の投資家向けにインドスタートアップを選定するなど,更なる協働のためのスタートアップや大企業間のインターフェースとして2018年5月に世耕経済産業大臣がインドを訪問した際に,JETROベンガルールに拠点を有する「日印スタートアップ・ハブ」の設立を含むスタートアップ・イニシアティブに係る共同声明に署名した。また「インベスト・インディア」により同様に日印スタートアップ・ハブのオンラインプラットフォームが設立され,協働を促進していく。

人材交流促進: インドと日本との間の人材交流は,両国の産業の競争力と経験を活かし合うために不可欠なものである。これを実現するため,I-JDPは,研修の機会やインターンシッププログラムの促進,ジョブフェア(日本キャリアフェア)の運営,高度熟練インド人技術者のためのスタートアッププログラム(「日本版高度外国人材グリーンカード」と高度外国人材のためのビザ)の導入,IT企業向けの寄附講座の拡大などを検討する。

研究開発に係る協力: インドにおけるAI研究のためのナショナルプログラムの先頭に立つNITIAayogと,「Society5.0」のもと新興技術の促進に焦点を当てるMETIとの連携を促進するため,NITI Aayog とMETIは意志表明に署名し,この下で,日本とインドは,独立行政法人産業技術総合研究所AI研究センターとインド工科大学ハイデラバード校との間の具体的な組織間の協力の可能性を模索する。

ICT 分野のセキュリティに係るプロジェクト: このパートナーシップの下,インドと日本は,先進的かつセキュリティ上安全な技術の必要性を認識し,次世代ネットワークのデジタルインフラのセキュリティや通信セキュリティの枠組みなどの分野で協力することを検討する。両首脳は,インドの Bharat Sanchar Nigam Limited(BSNL)と日本のNECが取り組むチェンナイアンダマンを結ぶ光海底ケーブルの敷設開始を歓迎し,さらに,海底ケーブルプロジェクトの戦略的重要性に鑑み,海底ケーブル事業の開発においてより一層協力していく。

エレクトロニクス・エコシステム: インド及び日本は,エレクトロニクス製造においてパートナーシップメカニズムを確立する。エレクトロニクスシステム設計や関連ソフトウェア技術,ロングテール市場のためのエレクトロニクス製造に関する,日印企業間の連携を促進する。

デジタル企業パートナーシップインド: インドと日本は,マッチングイベント,ビジネスミッションの派遣,インド通信省の公共事業部門(PSU)と日本のNTT-AT社との間で署名された電気通信に係る協力覚書などのイニシアティブを通じて,IT分野での企業間連携の促進を検討する。インドの全国ソフトウェア・サービス企業協会(NASSCOM)と広島県は,日本のハードウエアの技術とインドのソフトウェア開発技術を融合させグローバルマーケットを創出するため,日本で初めてとなる日印「ITコリドー」を設置した。