データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本インド間の安全保障及び防衛に係る協力

[場所] 
[年月日] 2018年10月29日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 インド及び日本は,2008年の「日本国とインドとの間の安全保障協力に関する共同宣言」の発表以来,10年間で日印安全保障協力に向けた共同の取り組みを大きく進展させた。両国は,年次の防衛相会談,防衛政策対話,国家安全保障局長及び国家安全保障顧問間の対話,各軍種の幕僚間協議,海上保安当局間における対話,各軍種間の訓練及び海上保安当局間の訓練を含む既存の枠組みを通じ,二国間の安全保障及び防衛協力を更に深化させることを希望する。両国は,マラバール演習及び親善訓練等(PASSEX)並びに陸上自衛隊(JGSDF)とインド陸軍との間の初の対テロ訓練及び航空自衛隊(JASDF)のコープインディアへのオブザーバー参加を含むその他の共同訓練の重要性に留意し,価値観を共有する各国との協力の拡大を歓迎する。

 インド・太平洋地域における海洋状況把握(MDA)及び相互補給支援の拡大に資する交流の強化を通じた両国間の海洋安全保障協力は,同地域の平和と安定に寄与するものである。第13回目となる日印首脳会談において,両首脳は,「日本国海上自衛隊とインド共和国海軍の間の協力の深化に係る実施取決め」の署名及び日印物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた交渉の開始を歓迎した。これらの2つの文書は,二国間関係の戦略的深化につながるものである。また,日印間の防衛装備・技術協力は,将来の二国間協力に向けた広範で潜在的な可能性を秘めている。

日印安全保障防衛協力に係る枠組み

・ インドと日本との間の防衛協力は,2008年に署名された「日本国とインドとの間の安全保障協力に関する共同宣言」及び2014年に署名された「日本国防衛省とインド共和国国防省との間の防衛協力及び交流に関する覚書」に基づいて行われる。

・ 2015年に締結された「防衛装備品及び技術の移転に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協定」及び「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協定」は,既存の枠組みを更に強化するものである。

・ 2018年10月,「日本国海上自衛隊とインド共和国海軍の間の協力の深化に係る実施取決め」が署名された。

・ 上記取決めは,船舶情報の交換を含む情報共有,共同訓練の実施及び海洋安全保障及びMDAの強化につながるその他の海洋の分野における交流のための手段及び枠組みを提供するものである。

現在及び将来の協力

・ 年次の日印防衛相会談は,2006年5月に初めて開始され,前回の会談は,2018年8月にインドで開催された。防衛政策対話(DPD)は,2007年4月に東京で開始され,直近では,第6回目の防衛政策対話及び第5回目の日・インド次官級2+2対話が,2018年6月にニュー・デリーにて開催された。

・ 各軍種間の幕僚間協議が開催されている。2018年1月には,第7回目のインド海軍と海上自衛隊との間の幕僚間協議が,2018年6月には,第2回目のインド空軍と航空自衛隊との間の幕僚間協議が,それぞれニュー・デリーにて開催された。2019年初頭には,第5回目のインド陸軍と陸上自衛隊との間の幕僚間協議の開催が予定されている。

・ 2018年1月には,第17回のインド沿岸警備隊(ICG)及び日本海上保安庁(JCG)とのハイレベル対話が開催された。

共同訓練

・ インドと日本は,海軍種間の共同訓練を頻繁に実施しており,日米印の三か国共同訓練であるマラバールは,海軍種間における最も重要な訓練である。マラバール2018は,2018年6月にグアム沖で実施され,参加国から大規模な参加を得た。2018年10月には,ヴィシャーカパトナム沖インド海軍と海上自衛隊との共同訓練(JIMEX18)が約5年ぶりに開催され,日本のヘリコプター搭載護衛艦「かが」が参加した。PASSEXは,インド海軍艦艇及び海上自衛隊艦艇が両国を相互寄港する際,定期的に実施されている。PASSEXは,最近では2017年9月にインド西部沖にて,2017年10月に日本の九州西部沖にて,2017年11月に日本海にて,2018年1月ムンバイ沖及び2018年5月にヴィシャーカパトナム沖にて,また2018年9月にはアデン湾沖で実施された。2017年10月には,アデン湾における海賊対処任務に派遣された海上自衛隊のP-3C哨戒機が,その帰路にインドのゴア沖で,インド海軍のP-8I哨戒機との間で初の対潜戦訓練(ASW)を実施した。また,これに引き続き,2018年5月に同ゴア沖にて,インド海軍のP-8I哨戒機と海上自衛隊のP-1哨戒機との間で対潜戦訓練が実施された。2018年11月には,インド陸軍と陸上自衛隊は,初の対テロ訓練を実施する。また,2017年11月には,インド陸軍が日米共同統合防災訓練(TREX-17)にオブザーバーとして初参加し,インド海軍が2018年7月に実施された掃海訓練に参加した。また,HA/DR,平和維持活動,ヘリコプター搭乗員及び気象学に関する各軍種間の専門家交流が多数存在する。2018年1月には,インド沿岸警備隊(ICG)と海上保安庁(JCG)との間で共同演習がチェンナイ沖で開催された。

防衛装備・技術協力

・ 2018年4月にチェンナイで開催されたディフェンス・エキスポ18には,日本から防衛装備庁(ATLA)が参加した。

・ 2014年に設立された日印防衛装備・技術協力に関する事務レベル協議(JWG-DETC)は,これまで4回実施されており,2018年7月に第4回目のJWG-DETCがニュー・デリーにて開催され,インド国防研究開発機構(DRDO)及びATLAは,2018年7月に陸上無人車両(UGV)及びロボティクス分野における共同研究に関する取決めに署名した。

・ 2017年9月に東京にて,第3回JWG-DETCの開催に合わせて,初めてとなる日印・官民防衛産業フォーラムが開催され,これに続く同等のイニシアティブとして,第4回JWG-DETCの機会に国防省生産局(DDP)及びATLAの協力の下で,日本防衛装備産業がインドのベンガルール及びムンバイの国防産業を訪問し,産業間の交流が行われた。