[文書名] 共同プレス声明 安倍日本国内閣総理大臣のダーウィン訪問
概観
1. 安倍晋三日本国内閣総理大臣及びスコット・モリソン・オーストラリア連邦首相は,年次の日
豪首脳会談のため,本日ダーウィンで会合した。日豪間の年次会合は,共通の価値及び利益に基づく,両国間の深く,永続的で強靱な友情の象徴である。この関係は,日本及び豪州の人々の強いビジネス,コミュニティー及び教育にかかる絆の上に築かれている。
2. 安倍総理大臣の初のダーウィンの訪問中,両首脳は第二次世界大戦の戦没者及び犠牲者に思いを致し,地域の平和な未来を確実にするため,たゆみなく努力する決意を確認した。両首脳は,両国が今日共有する「特別な戦略的パートナーシップ」に反映されている,戦後の多大な進展,両国間の和解の速さ及び誠実さ並びに深い信頼の発展を強調した。
3. 両首脳は,インド洋と太平洋の結節点である北部豪州における会談の重要性に留意した。両首脳は,日本の自由で開かれたインド太平洋に関するビジョン及び豪州の2017年外交白書に表明されている,法の支配に支えられた自由で,開かれ,包摂的で,繁栄したインド太平洋地域の確保のための協力を深化させることに対するコミットメントを再確認した。
4. 両首脳は,地域及び国際機関の重要な役割を認識し,11月15日にシンガポールで開催された東アジア首脳会議(EAS)における地域の戦略的課題に関する実質的な議論を歓迎した。両首脳は,パプアニューギニアで開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議への出席に期待を表明した。
5. 両首脳は,地方レベルのものを含め,二国間関係の活力を下支えする両国間の人的交流を深化させ,拡大することの重要性を改めて表明した。この点に関し,両首脳は,研究者及び学生の交流の拡大に期待を示した。
経済協力
6. 両首脳は,世界の安定と繁栄のため,自由で開かれたルールに基づく多国間貿易体制への揺る
ぎないコミットメントを再確認した。両首脳は,市場歪曲的な補助金への対処や監視及び通報機能の支援,紛争処理機能の強化を含む改革を通じ,世界貿易機関(WTO)の機能を改善するために協力を強化することとした。両首脳は,世界の経済成長に対する電子商取引の重要性に照らし,交渉の開始を目指すことを含む,現在進行中のWTOの電子商取引イニシアティブの重要性を再確認した。
7. 両首脳は,保護主義への懸念が高まる中,自由貿易の重要性を支持し,国際貿易の自由化の実践的なイニシアティブを促進するため,引き続き連携していくことにコミットした。両首脳は,包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ(TPP11)協定の発効を確保する,日本と豪州を含む7か国による国内手続の迅速な完了を歓迎した。両首脳は,同協定の拡大を通じ,自由な市場をインド太平洋地域の内外に拡大させていくことへのコミットメントを確認した。両首脳はまた,より緊密な地域経済統合を促進する,質の高い東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の2019年内の交渉妥結に向けたコミットメントを共有した。
8. 両首脳は,日本が議長国を務めるG20の成功を確かなものとし,国際経済協調のための第一のフォーラムであるG20の役割を強化するため,緊密に協力していくとのコミットメントを再確認した。
平成30年11月16日
9. 両首脳は,日本と豪州の戦略的な経済的パートナーシップを強化することの重要性を認識した。両首脳は,本年7月に行われた第1回経済閣僚対話の意義を強調した。両首脳はまた,日豪経済連携協定(JAEPA)の前進中の成功に留意し,同協定の下で二国間経済関係をさらに深めることへの希望を表明した。
10. 両首脳は,開放性,透明性及び経済性といった国際スタンダードと原則にのっとった質の高いインフラの整備を通じ,インド太平洋地域の連結性を強化するため協力していくことにコミットした。両首脳は,債務の持続可能性及び透明性を含む財政の健全性が,持続可能な発展と主権のために必要不可欠であることを強調した。両首脳は,APECの枠組みの下でインフラ投資に関する国際スタンダードの発展が進展していることを歓迎し,この分野におけるG20での更なる連携にコミットした。
11. 両首脳は,インフラに関するファイナンス及び投資での協力を進展させるための,日本貿易保険(NEXI)と豪州外務貿易省(DFAT)・豪州輸出金融保険公社(Efic)の間の覚書の署名を歓迎した。両首脳はまた,日豪米の地域協力への強いコミットメントを反映する,国際協力銀行(JBIC),DFAT・Efic及び米国海外民間投資公社(OPIC)の間の覚書の署名を歓迎した。両首脳は,輸出信用に関する国際作業部会(IWG)での議論を加速する重要性を強調した。
12. 両首脳は,資源エネルギーに関する継続的で,持続可能な協力を期待するとともに,開かれ,競争的なエネルギー市場と,入手可能で信頼できるエネルギーへの普遍的なアクセスを達成するため,インド太平洋地域の第三国に協力を拡大することについて期待を表明した。両首脳は,二国間のエネルギー協力の発展を示すINPEX社の運営するイクシスプロジェクトの,初めてのガス生産とLNG出荷を祝した。両首脳は,エネルギー分野におけるさらなる科学面での協力に向けた,石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)の間の覚書の署名を歓迎した。
13. 両首脳は,北部準州でのエビの養殖や北クイーンズランドでの新種大豆に関する研究プロジェクト等,北部豪州を始めとする農業に関する二国間協力の進展を歓迎した。両首脳は,両国で季節が逆であることを利用した生産協力を通じた,両国の国際市場への農産物輸出拡大の潜在性を認識した。
戦略的協力
14. 両首脳は,より広範で深化した防衛協力を通じたものも含め,地域の安定と安全を支え続け
ることを決定した。両首脳は,2018年10月の日豪外務・防衛閣僚会議(「2+2」)で明確にされたイニシアティブを含む,二国間の安全保障関係の継続的な発展を歓迎し,各々の防衛大臣,国防大臣に実用的で効果的な防衛協力をより一層強化し,追求するよう指示した。
15. 両首脳は,日豪間の互恵的な防衛協力を深化させ,特別な戦略的パートナーシップを強化するため,共同運用及び演習を円滑化すべく,行政的,政策的及び法的手続を改善する相互訪問に関する協定を締結することの戦略的重要性に関する共通の見解を確認した。両首脳は,今日までになされた交渉の大幅な進展を歓迎し,関係する全ての閣僚に対し,望ましくは2019年の早い時期までに交渉を妥結させるため,交渉を加速するよう指示した。
16. 両首脳は,インド太平洋地域の安定における米国の役割及び各々と米国との間の同盟の重要性を再確認した。両首脳は,日本,豪州,インド及び米国の間の協力の進展を歓迎し,米国及びインドとの三か国及び四か国協力を一層強化することへのコミットメントを再確認した。
17. 両首脳は,ASEANの中心性とASEAN主導の地域枠組みへの強い支持を再確認し,インド太平洋の平和と繁栄を促進する上でのASEANの成果に留意した。2018年の日・ASEAN友好協力45周年を記念した日・ASEAN首脳会議及び豪・ASEAN首脳会議の成功に留意しつつ,日豪両国のASEAN諸国への関与をより一層拡大していくことを決意した。
18. 両首脳は地域における安定的で,安全な海洋秩序の重要性を認識するとともに,インド太平洋地域における海洋の安全と保安に関する日豪間及び,日豪米三か国間の協力の強化に期待を表明した。モリソン首相は日本の海上保安庁巡視船「えちご」のダーウィン訪問を歓迎した。
19. 両首脳は,関連国連安保理決議に従った,北朝鮮の全ての核兵器,その他の大量破壊兵器及び弾道ミサイルの完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な廃棄に対する国際社会のコミットメントを結束して支持する。両首脳は,米朝間及び南北間の現在進行中の議論を,北朝鮮に関する諸懸案の包括的な解決に向けた一歩として,歓迎した。両首脳は,北朝鮮に対して関連国連安保理決議の遵守に向けた具体的な行動を取ることを求めるため,国連安保理決議の完全履行の重要性を強調した。両首脳は,この目標に向けて北朝鮮籍船舶が関与する違法な瀬取りを含む疑わしい海上活動の監視活動を通じる等して協力することへのコミットメントを再確認した。両首脳は,2018年分の石油精製品の北朝鮮の輸入に係る国連の上限が違反されていることに留意し,全ての国連加盟国に国連安保理決議第2397号に従い,北朝鮮に対するこれらの製品の供給を直ちに止めるよう求めた。両首脳はまた,北朝鮮に対し,その人権侵害を終わらせ,北朝鮮による日本国民の拉致問題を即時に解決するよう求めた。
20. 両首脳は,国際法へのコミットメント及び海洋分野における平和と安定の維持に関する国際法の重要性を改めて表明した。両首脳は,南シナ海における情勢に引き続き深刻な懸念を示すとともに,航行及び上空飛行の自由並びにルールに基づく地域及び国際秩序の遵守の重要性を改めて表明した。両首脳は,海洋における紛争を平和的にかつ,国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法に従って解決することの重要性に留意した。両首脳は,全ての当事者に対し,係争のある地形の非軍事化を追求すること及び武力による威嚇又は武力の行使に頼ることなく法的・外交的プロセスを完全に尊重することを求めた。両首脳は,自制の重要性を強調し,現状を変更し緊張を高め得るあらゆる威圧的な又は一方的な行動に強い反対を表明した。
21. 両首脳は,関係国に対して,領土及び海洋に係る主張を国際法に基づき行いかつ明確にすることを求めた。両首脳は,南シナ海における行動規範(COC)に向けた最近の動向を認識し,COCについて,UNCLOSに反映されている既存の国際法と整合的であること,第三者の利益や全ての国の国際法上の権利を害さないこと,既存の地域的枠組みを強化すること,また軍事化を含む紛争を複雑化又は激化させる行動を止めることに対する当事国のコミットメントを強化するものであることを求めた。
22. 両首脳は,東シナ海における情勢について緊密な意思疎通を継続するとの意図を共有し,この地域において現状の変更を試み,緊張を高めるあらゆる威圧的で一方的な行動への反対を表明した。
23. 両首脳は,太平洋の経済的及び社会的な強靭性,安定性及び繁栄を支えるための,太平洋島嶼国との協働における日豪の緊密な協力の重要性を強調した。両首脳は,日本のPALMプロセスと豪州のこの地域に関する「ステップ・アップ」政策に関するものを含む,太平洋における協力を強化することにコミットした。
24. 両首脳は,開かれ,自由で,公正で,かつ,安全なサイバー空間に対するコミットメントを再確認するとともに,特に国家及びその代理主体によるサイバー空間の悪意ある使用を抑止し,対応するために,国連の場を含め,協力を深化させ,情報の共有を促進することを決意した。両首脳は,既存の国際法及び国家の責任ある行動に関する自発的な平時の規範がサイバー空間に適用されることを改めて表明した。両首脳はまた,重要インフラを情報通信技術(ICT)の脅威から守るための適切な措置をとること及びサイバーの脅威からのサプライチェーンの安全を確保することの重要性を認識した。
科学及びイノベーション協力
25. 両首脳は,2018年7月1日の豪州宇宙庁の設立に留意し,宇宙活動における日豪間の更
なる協力のための機会を認識した。両首脳は,日本の準天頂衛星システムによるサービスが2018年11月1日に正式に開始したこと及び同システムを活用して現在行われているプロジェクトを歓迎した。
26. 両首脳は,二国間のイノベーション・フレームワークの下での,医療,人工知能及びスマートシティのためのIoT等への協力拡大を歓迎した。両首脳は,低排出の水素パートナーシップの発展における重要な最初の開発事業として,本年の共同褐炭水素サプライチェーンパイロット実証プロジェクト開始を歓迎した。
27. 両首脳は,2018年10月17日に,日本医療研究開発機構(AMED)と豪州の国家保健医療研究会議(NHMRC)が医療研究開発分野における日豪間で初となる協力覚書に署名したことを認識した。
28. 本年の会合は,豪州建国200周年を記念して1988年に日本から豪州の人々に対して贈られた国立科学技術センターの設立30周年と時を一にする。その祝典は,成功裏に行われた広報外交プログラムであるオーストラリア・ナウの一環で行われた国立科学技術センターのサイエンス・サーカス巡回展を含む。モリソン首相は,国立科学技術センターの30年にわたり,科学研究に参加し,科学について学ぶよう豪州の人々に刺激を与えてきた貢献に関し,日本に感謝した。モリソン首相は,国立科学技術センターの3つの展示会を日本に贈ったことを喜ぶとともに,それが将来の世代の日本の科学者に刺激を与えることを希望した。
結語
29. 安倍総理大臣及びモリソン首相は,日本で開催する次の年次首脳会談に期待を表明した。