データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・ニュージーランド首脳共同声明2019 〜日・ニュージーランド「戦略的協力パートナーシップ」を次なる高みへ〜

[場所] 
[年月日] 2019年9月19日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. 2019年9月19日,東京において,安倍晋三日本国内閣総理大臣とジャシンダ・アーデーン・ニュージーランド首相は建設的な首脳会談を行った。両首脳は,上向きの軌道にある二国間関係が両国の集中的な努力の結果であることを認識し,自由,民主主義,法の支配,人権などの共通の価値,平和と安全,自由貿易と投資及び持続可能な開発に対する強いコミットメントに立脚した日・ニュージーランド戦略的協力パートナーシップの更なる強化への大望を表明した。

2. 日本の「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」及びニュージーランドの「2018年戦略国防政策ステートメント」における両国の防衛関係の前向きな位置付けに留意しつつ,両首脳は,安全保障及び防衛関係を更に強化するとのコミットメントを再確認した。この文脈において,両首脳は,日本とニュージーランドが安全保障に関する情報共有のための国際約束の交渉に向けた共同研究を開始することを歓迎した。

3. 両首脳は,近年の二国間の前向きな農業分野における協力活動に基づき,両国間での食及び農業分野における連携強化の重要性を再確認した。

4. 両首脳は,世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏1. 5度高い水準までのものに制限するための努力を継続することを含むパリ協定へのコミットメントを再確認した。両首脳は,2018年10月に署名された水素に関する協力覚書に概説されている協力の推進を含む両国間の再生可能エネルギー分野における協力を歓迎した。両首脳は,日本とニュージーランドが国内面及び国際面で気候変動に対処するための協働を継続することを認識した。

5. 両首脳は,ラグビーワールドカップ2019の前日に会談し,2017年5月に署名されたスポーツ分野での協力覚書を通して促進されてきた,スポーツ分野における二国間協力の発展を歓迎した。両首脳は,日本で開催される2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会及びワールドマスターズゲームズ2021関西を通じて,人的つながりを拡大することへの高い期待を表明した。両首脳は,人的交流に資する,2019年9月2日のニュージーランドによる日本国民に対するeGATEへのアクセス拡大を歓迎した。

6. 両首脳は,法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を確保することを目的として,自由で開かれたインド太平洋地域を維持し及び促進するため,共に積極的に取り組むとのコミットメントを改めて表明した。

7. 両首脳は,日本が推進する日本と太平洋島嶼国との「活気があり,機会にあふれ,革新的な(碧い)未来」とニュージーランドの「パシフィックリセット」の下,太平洋島嶼国の優先事項を支援するため同地域と連携することへのコミットメントを強調した。両首脳は,再活性化された太平洋協議を歓迎し,太平洋における日・ニュージーランド間の調整及び協力を強化するため共同宣言を策定することを決定し,可能な限り早い機会に,両国の外相間で発出するものとする。両首脳は,特に太平洋島嶼国にとって重要な優先分野である気候変動,海洋問題,インフラに係る太平洋における日本とニュージーランドとの間の協力の着実な進展を歓迎した。右進展には,サモアの気候変動センター,南太平洋大学における海上法執行能力構築プログラム,2020年にパラオで開催されるアワオーシャン会議への支援,パプアニューギニアの電化等の協力が含まれる。両首脳はまた,2020年半ばに,日本が太平洋・島サミット第4回中間閣僚会合を太平洋島嶼国で初めて開催することを歓迎した。両首脳は,「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に沿った形で,質の高いインフラ投資を推進することを決定した。両首脳は,海洋プラスチックごみへの対処に向けた共通のコミットメントを強調した。

8. 両首脳は,国際社会の目標へのコミットメントを再確認するとともに,北朝鮮に対して,関連国連安保理決議に基づく,核兵器及びその他の大量破壊兵器並びに全ての弾道ミサイルの,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な放棄を要求した。両首脳は,全ての関連国連安保理決議の完全な履行及び支持への共通のコミットメントを強調した。アーデーン首相は,拉致問題の解決に向けた日本の取組に対する支持を表明した。

9. 両首脳は,全ての当事者に対し,埋立て,拠点の構築,建設及び軍事化を含む緊張を高め地域の信頼及び信用を損ない得るあらゆる行動を回避しつつ,国際法,航行及び上空飛行の自由を尊重し,阻害されない貿易を確保することを求めた。

10. 両首脳は,南シナ海の情勢に懸念を表明した。両首脳は,国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法に従った平和的な手段で紛争を解決する重要性を改めて表明した。両首脳は,国連海洋法条約を含む既存の国際法に整合的で,及び,第三国の権利又は利益を侵害することのない実効的で実質的な行動規範(COC)の最終化を奨励した。

11. 両首脳は,東シナ海における情勢に関し緊密な意思疎通を継続するとの意図を共有するとともに,緊張を高めるいかなる一方的な行動に対して懸念を表明した。

12. 両首脳は,環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の実施及び質が高く包括的な東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定の2019年末までの妥結を通じて,世界経済システムを維持及び強化することに対する継続的な支持を表明した。安倍総理は,ニュージーランドが議長を務める2021年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の成功に向けた支援を表明した。

13. 両首脳は,上級委員会の行き詰まりを含む世界貿易機関(WTO)が現在直面している制度的な課題に共に対処するためのコミットメント及び2019年中のWTO漁業補助金交渉の妥結に向けたコミットメントを改めて表明した。両首脳は,全ての不公正な貿易慣行を含むあらゆる形態の保護主義への反対を確認した。

14. アーデーン首相は,国際女性会議(WAW!)など女性のエンパワーメントに関して日本が取り組んでいる重要なイニシアティブを認識した。両首脳は,貿易が女性の経済的エンパワーメントを推し進める上で果たすことのできる価値ある役割を認識しつつ,貿易とジェンダーの問題及び日本とニュージーランドが他の同志国と共に協力イニシアティブを模索するためにいかに協力していくかについて意見交換した。

15. 両首脳は,サイバー空間,宇宙空間等の新たな領域における,ルールに基づく体制の発展及び強化の重要性を共有するとともに,これらの領域における緊密な連携の継続についての共通の利益を確認した。両首脳は,オンライン上のテロリスト及び暴力的過激主義に関するコンテンツを削除するための,「クライストチャーチ・コール・トゥ・アクション」を引き続き実施していくことにコミットした。両首脳は,多数国間の枠組み及び二国間のサイバー協議における協力を通じることなどにより,自由で開かれ,安全なサイバー空間のための取組を強化することを決意した。宇宙空間に関し,両首脳は,「宇宙活動に関する長期持続可能性ガイドライン」を実施する重要性につき一致するとともに,宇宙物体の登録に関する二国間の覚書についての進行中の議論に留意した。両首脳は,二国間の宇宙協力を拡大させたいという希望を表明した。このため,両首脳は,二国間の宇宙協力についてあり得べき連携に関する取決めに関する議論を奨励した。

(了)