[文書名] 「持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップ」
1. 2018年10月18-19日のアジア欧州会合(ASEM),2019年4月25日の日EU定期首脳協議及び2019年6月28-29日のG20大阪サミットにおける文書を想起し,日本とEUとは,共有する価値としての持続可能性,質の高いインフラ及び対等な競争条件がもたらす利益に対する確信に基づく連結性パートナーシップを確立するとのコミットメントを確認する。
2. 日本とEUは,デジタル,運輸,エネルギー及び人的交流を含むあらゆる次元における連結性に,二国間及び多国間で共に取り組む意図を有する。パートナーのニーズと需要を十分に考慮し,かつその財政能力及び債務持続可能性に最大限留意して,日本とEUは,特に西バルカン,東欧,中央アジア,インド太平洋及びアフリカ*1*地域において,第三国パートナーとの連結性及び質の高いインフラに関するそれぞれの協力の相乗効果と補完性を確保し,活動を協調させるよう努める。
3. 日本とEUは,開放性,透明性,包摂性,連結性に関する投資家及び産業を含む関係者のために対等な競争条件を促進するために共働することを構想する。双方はまた,自由で,開放的で,ルールに基づく,公正で,無差別かつ予測可能な,地域的及び国際的な貿易・投資,透明性のある調達慣行,債務持続可能性と高い水準の経済,財政及び金融,社会及び環境上の持続可能性の確保を促進する意図を有する。この文脈に関連して,日本とEUは,質の高いインフラ投資に関するG20原則の支持を歓迎し,これらの原則を適用し促進する。双方は,2019年4月の首脳宣言で合意されたパリ協定の完全かつ効果的な実施に対するコミットメントを想起する。
4. ルールに基づく連結性を世界的に促進するとのコミットメントに鑑み,双方は,G7,G20,経済協力開発機構(OECD),世界銀行,国際通貨基金(IMF),欧州復興開発銀行,アジア開発銀行(ADB)といった国際的な場を含む国際及び地域機関と協力する意図を有する。双方はまた,21世紀における自由で,開かれた,ルールに基づく公正な貿易及び投資のための高い水準のルールのモデルである日EU経済連携協定の達成の観点から,規制に関する協力を,また,革新的な技術を高めるための政策協調を推進する。双方は,持続可能な開発のための2030アジェンダの実施に対する持続可能な連結性の積極的な貢献を強調し,投資を刺激する環境作りのためにパートナー国を支援する用意があることを想起する。
5. 日本とEUは,民間投資を活発化させるために手段やツールを動員する重要性を認識し,あり得べき共同事業等を通じて,民間部門の関与も得て,持続可能な連結性のための資金供給を促進するために協力する意図を有する。この関連で,双方は,国際協力機構(JICA)と欧州投資銀行(EIB)との了解覚書を歓迎する。同覚書は,両機関間の緊密な協力を強化し,開発途上国における民間部門資金の需要に応える投資を促進することが期待される。双方は,この目的のために,国際協力銀行(JBIC)とEIBとの間,日本貿易保険(NEXI)とEIBとの間を含む既存の協力取決め及び覚書の下での協力を促進していく意図を有する。適当な場合には日欧産業協力センターが関与する。
6. 日本とEUは,開発途上国において,デジタル及びデータ・インフラ,政策及び規制枠組み等を通じて,包摂的な成長及び持続可能な開発の力強い実現手段として,デジタル連結性の強化に協力する。日本とEUは,デジタル経済の発展は,開かれ,自由で,安定した,利用しやすい,相互運用性のある,信頼性の高い,安全なサイバー空間と,信頼性のある自由なデータ流通(DFFT:大阪でG20首脳が宣言したもの)に依拠することを強調する。2019年1月に採択された双方の十分性認定といったこれまでの協力に支えられ,日本とEUは,互いの規制枠組みを尊重しつつ,データ・セキュリティ及びプライバシーに関する信頼を強化する目的を含め,DFFTの概念を更に精査し,促進し,運用化するために共に取り組む意図を有する。日本とEUはまた,「大阪トラック」の下,デジタル経済に関する大阪宣言に定められたとおり,国際的な政策討議,特に電子商取引の貿易関連の側面に関するWTOにおける国際的なルール作りを進めるために共に取り組む意図を有する。日本とEUは,人工知能(AI),クラウド,量子コンピュータ及びブロックチェーンを含むイノベーションを加速する政策を引き続き促進する意図を再確認する。
7. 日本とEUは,規制枠組み同士のより深化した協力及び相乗効果,運輸回廊の相互接続及び運輸の安全性とセキュリティの強化を通じて,持続可能な運輸の連結性を強化するために引き続き共に取り組む。既存の日EU運輸ハイレベル協議は,あらゆる輸送手段及び横断的な課題に関与し協力する枠組みを提供する。
8. 双方は,水素及び燃料電池,電力市場の規制並びに液化天然ガスの世界市場といった分野において引き続き協力し,既存の日EUエネルギー対話に基づく持続可能なエネルギー連結性を引き続き支持する。双方は,低炭素エネルギーシステムへの転換を促進するため,地域的及びグローバルなエネルギー市場及びエネルギー・イノベーションを強化する観点から,持続可能なエネルギー・インフラへの投資について議論する意図を有する。
9. 日本とEUは,高等教育及び研究分野における機関間の国際的な人的交流を拡大するため共に取り組む。この文脈で,双方は,第1回日EU教育・文化・スポーツ政策対話での共同声明に基づく日EU共同修士課程プログラムの立ち上げ及び科学技術協力合同委員会を通じた取組を歓迎する。
10. 連結性パートナーシップの枠組みにおける協力は,可能な場合には,既存の対話及び協力枠組みを通じて,とりわけ日EU間の戦略的パートナーシップ協定及び経済連携協定の文脈において行われる。定期的に行う進捗状況のレビューは,日EU戦略的パートナーシップ協定の下に設置された合同委員会によって行われる。さらに,日EUハイレベル産業・貿易・経済対話は,連結性パートナーシップの下での戦略的議論の場として機能し得る。連結性パートナーシップは,日EUのいずれに対しても国際法又は国内法上の法的拘束力のある権利又は義務を創設すること意図するものではない。
{*1* TICAD並びに持続可能な投資及び雇用に関するアフリカ欧州同盟を通じて成果を最大化することを含む。}