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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 貸出の回復―金融の修復と回復のための枠組み

[場所] 英国・ロンドン近郊
[年月日] 2009年3月14日
[出典] 財務省
[備考] 財務省仮訳
[全文]

我々、G20財務大臣及び中央銀行総裁は、金融システムにおける貸出を維持し、支援するために協力して取り組みを続けることの必要性に同意した。我々は、必要な場合には、決定的な行動をとり、金融市場の機能が完全に回復するよう、とりわけ国内及び国際的な信用の流れを支えるためにとりえるすべての方策を利用することにコミットした。

これを達成するための行動には必要に応じ以下が含まれ得る。

○金融機関の負債に対する政府保証等を通じた流動性支援の提供

○金融機関に対する資本注入

○貯蓄及び預金の保護

○不良資産処理等を通じた銀行のバランスシートの強化

現時点における主要な優先分野は銀行がバランスシート上に保有する資産価格の不確実性であり、それが銀行の貸出に対する重大な制約となっている。この不確実性や銀行がさらなる潜在的な極度の損失から自身を守るため資本を保持しようとすることにより、企業や家計に対する貸出の回復が妨げられており、経済に悪影響を及ぼしている。

各国当局による不良資産処理スキームに関する協力的かつ整合したアプローチは、次の原則に基づくべきである。

国際協力

1.国際金融システムが相互連関性を持っていることから、これらの措置の効果を最大化し、金融保護主義を拒絶する上で国際的な協力は重要である。協力は、これらの措置の利点を最大化するための潜在力を持ち、効果的に対応することにより、納税者の利益を守りつつ、特に、金融の安定に対する信認を増し、市場の歪みを最小化し、同等な競争条件を維持し、開発途上国や新興市場国の経済を支援している。

プログラムの設計

2.プログラムは銀行システム、法的・財政的枠組みの特性に応じたものとなるべきである。悪影響の波及に取り組む上で国際協力は極めて重要である。プログラムは、迅速、包括的に実施され、その実施期間は限定されるべきである。

適格資産及び機関

3.バランスシート構成は多様であり、状況は国毎に異なり、また、不良資産の額及び種類は金融セクターによって異なるものであるため、支援対象資産の適格要件は柔軟性を持たせるべきである。プログラムの発表に先立ち特定の対象期間が定められるべきである。金融の安定に対しシステム上重要な金融機関が優先されるべきである。

リスク移転及び負担の分担

4.銀行部門から政府へのリスクの移転が行われる場合には、政府の損失を制限し、モラルハザードを防止し、参加機関に適切なインセンティブを提供し、また、国内及び国際的な金融機関の同等な競争条件を維持するため、手数料等を通じて公正な価格、適切なリスク分担の下で行われるべきである。銀行の株主は、政府の介入前に、損失やリスク引受けに最大限貢献が求められるべきである。

透明性と情報開示

5.健全性の観点とも整合的であるよう、銀行のバランスシートの毀損状況について十分かつ透明性のある情報開示を行うべきである。ストレステストは潜在的な損失へのエクスポージャーと将来の存続可能性に関する厳格かつ最新の評価を含むべきである。その際、国際的な歪みを回避するため、貸出の継続能力や潜在的な損失を吸収する能力に対する評価も含むべきである。

政府は、透明性の高い方法にて不良資産処理計画を管理する。市場の信頼を構築するため、政府は不良資産管理計画のプロセス、基準及び結果を公表する。

価格評価

6.価格評価の方法論は資産処理計画案により異なるが、国や金融機関を越えて同等な競争条件を促進し、潜在的な損失へのエクスポージャーを限定しつつ、健全性目的を進めるためには、その方法は透明性が高く、客観的、一貫してかつ協力的に適用されることが重要である。監督当局は、価格評価プロセスを認証する上で重要な役割を持っている。これにより、政府の損失を制限し、参加機関に適切なインセンティブを提供し、また、市場の歪みを最小化するため、銀行部門から政府のバランスシートへのリスク移転において、公正な価格、適切なリスク分担が確保されるべきである。

運営

7.民間部門やスキームに参加していない機関に対する効果的な信用供与が歪められることを避けるため、支援を受ける金融機関は経営原則に基づく運営を継続するべきである。利益相反やモラルハザードを抑えるため、支援の条件には、価格づけや補償、再編に関することが含まれるべきであり、また、銀行が参加するインセンティブ及び対象銀行に課される条件が公共政策目的に適うよう設計された支援とする必要がある。

再編

8.再編は、あらゆる政府支援の効果及び金融機関の長期的な存続可能性を最大化することに焦点を当て、また、期待損失に応じた価格設定や銀行が残存するエクスポージャーに耐える能力、銀行の他の支援に対するアクセスに基づくべきである。国境を越えるM&Aによって健全な再編が支えられる場合は、関係外国当局との緊密な協働が不可欠である。

条件

9.政府支援は特別な恩恵であることから、商業上の基準に基づき需要に適切に応えるため信用供与を継続するコミット、ガバナンスの改善、経営者の報酬上限、配当政策の制限、また、競争条件の歪みを制限するため必要がある場合にはそのような措置を含め適切な再編のための条件を含む。

モニタリング

10.納税者の利益は保護されなければならない。資産支援計画に参加する金融機関は、緊密な監視を受けるべきである。

タイミング

11.政府支援は時限的であり、明確な出口戦略とインセンティブを伴うべきである。

公的支援

12.政府の支援措置は持続可能な中期的な財政戦略の一部であるべきである。