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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国際金融機関を通じた資金供給に関する宣言

[場所] ロンドン
[年月日] 2009年4月2日
[出典] 外務省仮訳
[備考] 
[全文]

我々、G20の首脳は、新興市場国及び途上国の経済を維持し、世界の成長を支えるために、これらの国々に資金が引き続き流入することを確保することにコミットしている。この目的のために、我々は、国際金融機関を通じて提供される資金を非常に大幅に増やし、国際金融機関が連携した包括的な方法で危機に対処するために必要な融資制度を有することを確保することに合意した。

我々は、景気循環緩和のための支出、銀行の資本増強、インフラ整備、貿易金融、国際収支支援、債務借換え、及び社会支援の財源調達を助けることにより、新興市場国及び途上国の成長を支えるため、国際通貨基金(IMF)及び国際開発金融機関を通じて8500億ドルの追加的資金を利用可能とすることに合意した。

IMFについて、我々は、下記を支持することに合意した。

当面の措置として、2500億ドルの各国からの二国間融資。

短期的には、各国からの当面の二国間融資を、拡大されたより柔軟な新規借入取極(NAB)に組み入れる。NABは、他のG20諸国を含み、最大5000億ドル増額されることとなる。我々は、春の会合までに実質ある前進を目指す。

需要に見合う水準まで資金を調達するため、他の資金調達手段と併せて必要な場合には、IMFによる市場借入を検討する。

IMFの低所得国向け譲許的貸付の能力と利用限度額を、債務持続性枠組みの範囲内で倍増する。我々は、新しい歳入モデルと整合的に、合意されている金売却からの追加的資金が、余剰収益とあわせて、今後2〜3年にわたり最貧国に譲許的かつ柔軟な追加的資金を60億ドル供給するために利用されることにコミットした。我々はIMFに対し、春の会合で具体的な提案を提出するよう求める。

上記手段に加え、我々は、国際流動性を増加させるため、2500億ドル相当の特別引出権(SDR)の一般配分を支持することにも合意した。この一般配分のうち、1000億ドルは新興市場国及び途上国に直接配分される。我々は、IMF協定の第4次改正を早急に批准することに合意した。

我々は、IMFの財政が国際金融システムのニーズに見合った持続可能な基盤に拠ることを確保するため、次回の出資比率見直しを、2011年1月までに完了するよう加速することに合意した。

国際開発金融機関(MDBs)について、我々は以下を支持することに合意した。

低所得国向けを含む貸出を大幅に1000億ドル増額し、今後3年間で総額約3000億ドルの貸出とする。

危機のニーズに対応するための貸出能力を追加するための、国際開発金融機関の最大限かつ例外的なバランスシートの活用

アジア開発銀行の200%の一般増資、及び米州開発銀行、アフリカ開発銀行及び欧州復興開発銀行における増資の必要性の検証。

国際開発金融機関による保証、債券保険、つなぎ融資の活用を通じるものを含む民間資本からより効果的なレバレッジを得る措置。

国際金融公社(IFC)が新たに創設する世界貿易流動性プール(GTLP)。GTLPは、民間セクターからの大規模な協調融資と併せ、今後3年間で最大500億ドルの貿易における流動性支援を行うもの(今後2年間で少なくとも2500億ドルの貿易金融の資金供給を確保する世界的な努力の一部)。この目標を達成するために、我々はGTLPに対し任意の二国間拠出として30-40億ドルを提供することに合意した。我々は更に、その他の国際開発金融機関が貿易金融支援の増加のためにとった措置及び我々の輸出信用及び投資機関を通じた中・長期のプロジェクト金融を歓迎した。

我々はまた、国際金融機関が現下の危機に対処するために必要な融資制度を有し、新興市場国と途上国のニーズに応えられることを確保することに合意した。このため、

我々は、IMFの改革されたより柔軟な融資及び融資条件枠組みの一環としての、適格性を有する国々のための新たなフレキシブル・クレジット・ライン(FCL)を歓迎する。これは、IMFの資金を保全しつつ、汚名の懸念への対処に資する。我々はFCLの早期の利用を期待し、FCLの適用を求めるメキシコの決定を支持する。

IMFは、そのサーベイランス及び融資制度が、各国の国際収支資金ニーズの基底にある原因、特に銀行および企業セクターへの外国資本フローの引揚げに効果的に対処できることを確保する措置を採るべきである。

我々は、任意の二国間拠出を通じ、インフラ危機ファシリティーと緊急社会対応基金を含む世界銀行脆弱性枠組みを支援する。

世界銀行融資の国別上限は、大きな国々が必要な水準の資金にアクセスでき、地域の安定と回復を支えられるよう、必要に応じ引き上げられるべきである。

債務持続性枠組みの既存の柔軟性を活用して、持続可能な債務状況と健全な政策を有するIDA低所得国は、資本市場へのアクセス喪失を補う世界銀行の非譲許的貸付への一時的アクセスを与えられるべきであり、IDA資金の貸付は前倒しされるべきである。

我々は、こうした資金及び融資制度が、国際金融機関の危機に対処する能力を増強すべきことに合意した。国際金融機関の有効性を高めるため、機関同士の協力と連携は強化されるべきである。新興国及び最貧国を含む途上国は、より大きな発言権と代表を有するべきである。