データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(2009年11月6-7日)

[場所] セントアンドリュース
[年月日] 2009年11月7日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文]

1. 我々G20の財務大臣・中央銀行総裁は、ピッツバーグにおいて我々に付託された任務を果たすため、危機からの回復において極めて重要な時期に、会合した。

2. 危機への我々の調和した対応の後、経済及び金融の情勢は改善した。しかし、回復は一様でなく、政策支援に引き続き依存しており、高い失業率は主要な懸念事項である。世界経済と金融システムの健全性を回復するために、我々は回復が確実となるまで、回復のための支援を維持することに合意した。

3. 経済協力への我々の新しいアプローチを強調するため、我々は強固で持続可能かつ均衡ある成長のためのG20の枠組みを立ち上げ、詳細な予定表を採択し、我々の政策が我々の合意された目的を集合的に達成するかどうかを評価するための新しい相互評価の協議プロセスを開始した。我々は、我々の評価において、IMFと世界銀行の分析や、必要に応じ、FSB、OECD、MDBs、ILO、WTO及びUNCTADを含む他の国際機関からのインプットによる支援を受ける。我々は以下のコンパクトに合意した。

 ・ 2010年1月末までに、我々の国及び地域の政策枠組み、計画及び予測を提示する。

 ・ 2010年4月に、我々の制度的あり方を考慮しつつ、我々の国及び地域の政策の我々の共通目的との集合的な整合性についてのIMF及び世界銀行の分析による支援を受けて、我々の協力的な相互評価プロセスの最初の段階を実行する。

 ・ 2010年6月の次回サミットにおいて首脳が検討するために、目的を達成するためのまとまった政策オプションを作成する。

 ・ 2010年11月のサミットにおいて、首脳のために我々の相互評価を再検討し、より詳細な政策提言を作成する。

4. 枠組みを活用する際の我々の最初の課題は、危機対応から、持続可能な財政、物価の安定、安定的、効率的で強靭な金融システム、雇用創出、貧困削減という我々の目的と整合的な、より強固でより持続可能かつ均衡ある成長への移行である。回復が確保されるまで経済への支援を引き続き提供する一方、我々はまた、我々の例外的なマクロ経済支援策及び金融支援策の解消のための我々の戦略の作成を続けることにコミットする。我々は、我々の戦略に起因するあらゆる波及を考慮し、可能な場合相談し情報を共有しつつ、協力し調整することに合意した。信頼性を確保するため、我々の計画は慎重な前提に基づき、迅速に透明性を持って伝達される。我々は、国及び地域による経済回復のペースや市場の状況の差異や、異なる政策分野間での複雑な相互作用を十分に考慮しつつ、我々の計画を柔軟に実施することに合意した。IMFとFSBは、戦略と実施の検討、調和がとりわけ重要な分野の特定、及び世界経済と金融システムへの集合的な影響の評価の提供において、引き続き我々を支援する。我々は、IMFとFSBの出口原則の作成の作業を歓迎する。

5. 国際金融機関(IFIs)は、持続可能な成長、安定性、雇用創出、開発、貧困削減を確保するための我々の作業の支援に重要な役割を有する。それゆえ、我々がその適切性、対応力、有効性及び正当性を引き続き高めることが決定的に重要である。このため、我々はピッツバーグで合意された代表権とガバナンスの改革を実現するとのコミットメントを再確認し、世界銀行は2010年の春の会合、IMFは2011年1月という期限を繰り返した。我々は、2008年のクォータとボイス改革を完了すること、有効性を確保するための改革を条件に世界銀行と地域開発金融機関の十分な資金確保のための資本のレビューを、2010年前半までに完了すること、IMFのマンデートの見直しを進展させること、将来の危機に対処し、予防する能力を強化することへのコミットメントを再確認した。我々は、IDA及びアフリカ開発基金の野心的な増資とIDAの危機対応ファシリティの効用の追求の取組み、失われた財産の回収プログラム(StAR)に関する作業に期待する。我々は、IEA、OPEC、OECD、世界銀行に対し、エネルギー補助金についての共同レポートを次回会合のために作成するよう求め、エネルギー担当大臣と協働しつつ、次回会合で、各国の状況に基づき、無駄な消費を助長する非効率的な化石燃料補助金を合理化し段階的に廃止し、対象を特定した支援プログラムを提供するための実施戦略とスケジュールを用意する。我々は、一次産品価格の過度の変動を防止する方策への取組みを仕上げるよう関連機関に求め、各国データの公表というコミットメントを再確認する。

6. 世界的な金融システムを引き続き強化するために、我々は改革プログラムのモメンタムを維持し特に以下の分野における完全で時宜を得た着実な実施及び公平な競争条件を確保するために、金融安定理事会(FSB)と協働することに合意した。

 ・ 健全性規制を強化するため、我々はバーゼル委員会が2010年末までにより強固な基準を策定し、2012年末までを目標に金融情勢が改善し景気回復が確実になった時点で段階的に実施されることの必要性を強調した。我々は監督当局に対し、必要に応じて銀行が貸出しを継続するために現在の利益についてより多くの割合を資本構築のために留保することを確保するよう求める。

 ・ 報酬政策と慣行が金融の安定を支援し長期的価値創造と整合することを確保するために、我々はFSBの基準を各国の枠組みに早急に組み込むことにコミットし、また金融機関に対しこれらの健全な報酬慣行を即時に実施するよう求める。FSBは実施の評価を遅滞なく開始し、必要に応じて2010年3月までに更なる提案とともに報告する。

 ・ 我々は、IMF/BIS/FSBの金融機関、市場、商品のシステム上の重要性評価に関する新たな報告及びシステム上重要な金融機関からもたらされるモラル・ハザードを減少させるためのFSBの取組みを歓迎する。我々は国際的に整合性がとれた、各社別の再建・破綻計画および手段の2010年末までの早期の策定を求める。我々は、次回の会議において、金融セクターが銀行システムの修復のための政府の介入に関連した負担の支払いにどのように貢献できるかについての選択肢のIMFによる検討を議論することを期待している。

 ・ 我々は、税の透明性と情報交換についてのグローバル・フォーラムによる進展と多国間の仕組みの活用可能性を歓迎する。非協力的国・地域(NCJs)への対処を続けるため、我々は既になされた進展を歓迎し、グローバル・フォーラム、FSB、FATFに対し、そのピアレビュープロセスを完了し、国際基準遵守を評価することを求める。我々は、関連する国際機関に対し、ピッツバーグで合意された時間的尺度に沿って、NCJsのリストを公表することを通じることを含め、必要に応じインセンティブと対抗措置を更に発展させ、途上国の努力を支援するための能力構築の仕組みを見直すよう求める。

7. 我々は気候変動の脅威に立ち向かうための行動を取ること、また、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の目的、条文及び原則の範囲内で、コペンハーゲンにおける野心的な成果に向けて作業することを約束した。我々は気候変動ファイナンスのオプションを議論し、野心的な国際的合意を実施するために必要となる資金の規模と予見可能性を大幅かつ緊急に増加させる必要性を認識した。公的資金は、相当な民間投資を誘発する。炭素市場の範囲を増やすことは先進国、途上国の政策枠組みと、先進国の側の排出量削減の深さ次第である。この資金供給を実施するため、調和が取れた、公平で透明で効果的な制度的あり方が必要である。各国主導の計画への支援の調和とこの支援の報告が、多国間、地域間、二国間の全ての資金供給経路にわたり確保されるべきである。我々は幅広いオプションを議論し、ファイナンスがコペンハーゲンでの成果を導くために重要な役割を果たすことを認識しつつ、気候変動ファイナンスについて更なる作業を行い、ファイナンスのオプションと制度的あり方を定義することにコミットする。

8. 我々は、ホスト国英国に対し本年のG20の議長国を務めたことへの謝意を表明し、韓国を2010年の議長国として歓迎した。我々は、フランスが2011年の議長を務めることに合意した。