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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(2010年6月5日)

[場所] 釜山
[年月日] 2010年6月5日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々G20財務大臣・中央銀行総裁は、世界経済の回復をしっかりと確保し、経済の課題及びリスクに対処するために極めて重要な局面において、会合した。

2.各国・地域間でペースに違いはあるものの、世界経済は予想されていたよりも速いペースで回復を続けている。しかしながら、最近の金融市場の変動により、我々は重大な課題が依然としてあることを再認識し、国際協力の重要性が強調されている。危機に対するG20の強固な政策対応が、成長の回復において極めて重要な役割を果たしており、我々は回復を確保し、成長と雇用の見通しを強化する用意がある。我々は、欧州連合、欧州中央銀行、IMFにより採られた断固とした行動を歓迎する。我々は十分に調整された経済政策を追求する。最近の出来事は、持続可能な財政の重要性と、各国の状況に即して差別化された、財政の持続可能性を実現するための信頼に足る、成長に配慮した措置を、我々各国が導入する必要性を強調している。深刻な財政課題を抱える国々は、健全化のペースを加速させる必要がある。我々は、幾つかの国による2010年に赤字を削減し財政の枠組み・制度を強化するとの最近の発表を歓迎する。各国は、その余力の範囲内で、マクロ経済の安定を維持しつつ、成長の国内における源を拡大する。これは進行中の回復を確実なものとする助けとなろう。更に、構造改革、とりわけ最貧国を支援する開発政策、貿易・投資障壁引き上げを自制し保護主義的措置に対抗する努力の継続が必要である。金融政策は物価の安定を達成するために適切なものであり続け、それにより回復に貢献する。

3.強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み(フレームワーク)は、世界経済の回復を支え、「フレームワーク」における我々の中期的な共通目標を達成するという差し迫った課題への対応で我々が協働するために鍵となるメカニズムである。その実施を前進させるため、我々は、OECD、ILO及び他の国際機関からのインプットを受けたIMFによる政策シナリオ案及び世界銀行による中間報告を検討した。両者はともに、4月に示した我々のガイダンスに従って用意されたものである。これらの報告を基礎として、我々は協力的な相互評価のプロセスを実施し、より強固で、より持続可能で、より均衡のとれた成長を達成するための一連の政策オプションを策定した。我々は、これらのオプションを首脳による検討のために、2010年6月のトロント・サミットに提出する。「フレームワーク」の順調な進捗を継続するため、我々は各国主導の協力的な相互評価のプロセスとソウル・サミットに至るまでの我々の作業の予定表を改良している。

4.我々は、これまでの進展に加え、我々の努力を強化し、金融の修復及び改革を加速するというコミットメントを確認した。それゆえ、我々は、

 ・ 金融の修復のさらなる進捗が世界経済の回復に極めて重要であると合意した。このために、銀行のバランスシートのより高い透明性やさらなる強化、金融機関のより良いコーポレート・ガバナンスが求められる。

 ・ 我々の改革のアジェンダの中核として、より強固な資本・流動性基準について迅速に合意に達することにコミットし、バーゼル銀行監督委員会の作業を完全に支持し、同委員会に対し、2010年11月のソウル・サミットまでに、銀行資本の量と質の双方を改善し、過度なレバレッジとリスク・テイクを抑制する国際的に合意されたルールの提案を求めた。我々の銀行規制当局が、グローバルな金融システムの将来の停滞に金融機関が耐えうるよう十分強固な資本・流動性規制ルールを策定することが、極めて重要である。我々が合意したように、これらのルールの実施は、2012年末までを目標に、金融情勢が改善し景気回復が確実になった時点で段階的に行われることとなろう。我々は、水準や段階的な実施をそれぞれ調整する定量的及びマクロ経済への影響度調査の進捗を歓迎する。我々は、合意されたルールの国内実施にあたって、透明で調和した方法で協働することにコミットする。これらの新たなルールの実施は、強力な監督で補完されるべきである。

 ・ システム上重要な金融機関におけるモラルハザードを減少させる必要性を強調し、全ての金融機関について、実効的な破たん処理の手段及び枠組みを国際的に合意された原則に基づいて策定するという我々のコミットメントを強化した。我々は、トロント・サミットへのFSBの中間報告を期待している。

 ・ 金融セクターが、銀行システムの修復または破たん処理の資金を提供するための政府の介入が行われた場合には、それに関連するあらゆる負担に対し公平かつ実質的な貢献をすべきことに合意した。このため、様々な政策手法があることを認識しつつ、我々は、納税者を保護し、金融システムのリスクを減少させ、与信の流れを好況及び不況時に保護するという必要性を反映した原則を、各国の状況及びオプションを勘案し、公平な競争条件の促進に資するよう、策定することに合意した。IMFは、トロント・サミットに最終報告を提出する。

 ・ ヘッジファンド、信用格付会社、報酬慣行、店頭デリバティブの透明性や、規制・監督を、国際的に整合的で無差別な方法で改善する強力な措置の実施を加速することにコミットした。我々はFSBに対し、これらの分野における国及び地域の実施をレビューし、グローバルな政策の一体化を促すよう求めた。また、我々は、一次産品市場の機能及び透明性を改善することにコミットした。

 ・ 単一の質の高いグローバルな会計基準を実現することの重要性を表明し、国際会計基準審議会及び米国財務会計基準審議会がその目的のための努力を倍増することを強く促した。我々は、国際会計基準審議会が利害関係者の関与をさらに改善することを慫慂した。

 ・ FSBメンバー間の国際的な評価や相互審査への我々のコミットメントを再確認した。我々はまた、支援を提供することを含め、非協力的国・地域に対処し、基準遵守を確保するための措置・仕組みを活用することに改めてコミットする。我々は、税の透明性及び情報交換についてのグローバル・フォーラムによる報告、相互審査プロセスの進捗、全ての国に開かれた情報交換のための多国間の仕組みの開発を歓迎した。我々は、資金洗浄やテロ資金供与に対する闘い、戦略上の欠陥を有する国・地域の公表リストの定期的な更新についての金融活動作業部会の作業を完全に支持する。我々は、全ての国・地域における健全性に関する情報交換と国際協力の基準の遵守に関するFSBの評価プロセスの実施を歓迎した。

 ・ 国際的な企業と金融機関の行動に関する適切性、健全性及び透明性に関する統合的な原則の広範な適用を進めるために協働する必要性を認識した。

5. 我々は、途上国・体制移行国の投票権を3.13%増加させる世界銀行のボイス改革の合意を歓迎した。我々は、各国の経済的ウェイトの変化や世界銀行の開発使命を主に反映するダイナミックな計算式への到達により、極めて小さな貧困国を保護しつつ、衡平な投票権へ徐々に移行し続けることにコミットした。我々は、野心的なIDA16及びアフリカ開発基金の増資に向けた作業にコミットした。我々はまた、世界銀行、米州開発銀行、欧州復興開発銀行、アフリカ開発銀行の大規模な増資及び制度改革の合意を歓迎した。

6.我々は、ピッツバーグでのコミットメントに従い、ソウル・サミットまでにクォータ改革を完了し、その他のガバナンス改革を並行してまとめるために、IMFが今後行う必要のある多くの作業の加速を求めた。我々は、IMFが世界経済においてその重要な役割を果たすことができるよう、必要な資金をIMFが有していることを確保する決意を強調した。我々は、IMFのクォータ・投票権改革の2008年4月合意の一刻も早い実施が必要であることを改めて表明した。我々は、拡大された新規借入取極(NAB)を速やかに実施するよう全ての参加国に強く促した。

7.我々は、フィナンシャル・セーフティ・ネットにおける進捗を慫慂し、資本の変動に対処し、最近の出来事により示されたような危機の伝播を予防するための、国・地域・多国間の努力の必要性を認識した。また、グローバル・フィナンシャル・セーフティ・ネットを、健全なインセンティブに基づき改善するための政策オプションを検討することに合意した。この努力に関連して、我々はIMFが、適切な場合には、その発展・強化を視野に入れつつ、その融資制度の見直しを早急に進捗させることを求めた。

8.我々は、革新的な金融包摂の原則の立案や中小企業への資金支援における成功事例の吟味など、金融包摂における大きな進捗を歓迎した。我々は、関連する国際基準設定団体に対し、彼ら各々の使命と整合的に、いかにして金融包接の促進に更に貢献できるかを検討するよう求める。我々は、中小企業金融チャレンジの立ち上げを含め、トロント・サミットにおける金融包摂に関する具体的成果を期待する。成長、貧困削減、食糧安全保障における農業の重要性を認識しつつ、我々は世界農業食糧安全保障プログラムの立ち上げを歓迎し、基金への更なる自発的な拠出を期待する。我々は、ハイチの国際金融機関に対する債務の全額帳消しへの支持を再確認した。我々はこの帳消しの完了を期待する。

9.我々は、多くのG20メンバー国により提供された、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し、段階的に廃止するための戦略と予定表を歓迎する。我々は、エネルギー補助金の範囲の分析や、ピッツバーグでのコミットメント実施のための提案に関するIEA、OPEC、OECD、世界銀行による最終報告を議論している。

10.我々は、2010年11月のソウル・サミットに先立って、2010年10月22-23日に韓国慶州で次回会合することに合意した。