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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20ソウル・サミット首脳宣言 附属書I 共有された成長のためのソウル開発合意

[場所] ソウル
[年月日] 2010年11月12日
[出典] 外務省仮訳
[備考] 
[全文]

「開発の格差を是正し,貧困を削減することは,強固で持続可能かつ均衡ある成長の達成,及び万人のためのより強固で強じんな世界経済の確保という,我々のより広範な目標に不可欠である。」

トロント・サミット宣言 2010年6月26〜27日

 昨今の歴史の中で最も深刻な経済ショックを受け,G20は,強固で持続可能で包括的かつ強じんな成長に資する形で世界経済の再建に貢献する機会を有している。我々は,共有された成長のためのソウル開発合意を通じ,既存の開発コミットメント,特に最近のミレニアム開発目標(MDGs)首脳会合やその他の枠組みにおいてなされたコミットメントに価値を加え,補完することを追求する。

なぜ成長は共有されなければならないか

 ピッツバーグにおいて,我々は,個々の経済政策が強固で持続可能かつ均衡ある成長という成果を集合的に達成することを確保するため,前例のない相互評価のプロセスにおいて協働することに合意した。この枠組みは,世界が継続的に繁栄を享受するためには,総需要の新たな推進力及び世界の成長のより永続的な源を見いださなければならないとの認識に基づいていた。我々は,以下の理由により,この作業の不可欠な一部として,途上国,取り分け低所得国(LICs)の役割を強化する必要があることを認識する。

・第一に,繁栄を持続させるためには,繁栄が共有されなければならないためである。

・第二に,我々は,最近の危機の影響が,最貧国の最も脆弱な人々に過度に影響をもたらす世界的な相互連関を明らかにしたことを認めるためである。最近の危機の結果,2010年末までに6400万人が新たに極度の貧困(一日あたりの生活費が1.25ドル以下)に加わると推計されている。それゆえに我々は実施の責任を負う。

・第三に,国際経済協力に関する第一のフォーラムとして,G20は,援助国,国連システム,国際開発金融機関及びその他の組織による取組を補完しつつ,途上国,取り分け低所得国がMDGsを達成することを支援する役割を有しているためである。我々の役割は,世界の経済協力に関する我々のマンデートに関連しなければならず,途上国,取り分け低所得国において,高い水準の包括的な成長が継続することが,仮に十分でなかったとしても,極度の貧困の削減のために極めて重要であることを認識する。

・第四に,世界経済の残りの部分が,世界の需要源及び余剰の投資先の多様化に向けた探求において,直近の過去において新興市場が急速に成長したように,途上国,取り分け低所得国が世界の成長の新たな極となることを必要としているためである。

 低所得国が成長の水準と質を改善し維持することを助け,その結果,貧困を削減し,人権を改善し,人間らしい働きがいのある仕事を創出するという我々の包括的な目標は,高所得国,中所得国及び低所得国間の関係強化を必要とする。このことは持続可能な経済,社会及び環境の発展を伴い, 既存のパートナーシップの衡平性を尊重し,先進国,新興国及び低所得国の間により強固で効果的なパートナーシップを構築し,民間部門と市民社会を関与させ,低所得国の成長の阻害要因を排除することに優先度と努力を改めて集中する。さらに,開発の成功のための「すべてに当てはまる単一の」公式は存在せず,途上国は個別のニーズと状況に合わせた開発戦略の設計及び実施を主導しなければならないと我々は信じる。

G20開発原則

 我々はそれゆえ,かかる目標を達成するために複数年行動計画にコミットする。この計画は,我々の行動及び政策の鍵となる特徴を表現することを目的とする下記の原則に基づく。

1.経済成長への焦点 経済成長志向であり,開発格差の是正を求める,G20の強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組みと整合的であること。低所得国のより強じんで持続可能な経済成長もまた, MDGsを達成するための能力と共に進ちょくする。行動と政策は,包括的,持続可能かつ強固な平常以上の成長の見通しを大幅に改善する能力を有しなければならない。

2.世界的な開発パートナーシップ 途上国,取り分け低所得国のオーナーシップを尊重し,成功裏の開発の最も重要な決定要因はその国自身の開発政策であることを認識しつつ,かかる国を平等なパートナーとして関与させること。行動がG20と低所得国との間の強固で,責任を有し,説明可能かつ透明性のある開発パートナーシップを促進することを確保すること。

3.世界的又は地域的なシステミックな課題 鍵となる挑戦に関心を集め,国際開発金融機関のような国際組織に対応を要請することにより,G20が行動の促進を助け得る地域統合のような世界的又は地域的なシステミックな課題に対処する行動を優先すること。南南協力や三角協力を含め,開発の影響を最大化するための相乗効果を創出する集合的かつ調整された行動が必要とされるシステミックな課題に焦点を当てること。

4.民間部門の参加 開発に関する知識,技術及び雇用創出の豊かな源としての民間部門の独自の役割を認識しつつ,民間部門の関与及び革新を促進すること。リスクを削減し,投資環境及び市場規模を改善することを含め,開発のための民間資本の流れを刺激し,てこ入れする具体的な方法を奨励すること。

5.補完性 既存の開発についての取組を補完しつつ差異化し,重複を避けつつ,国際経済協力に関する第一のフォーラムとしての中核となるマンデートに集中して,G20が比較優位を有し付加価値を加えることができる分野に戦略的に集中すること。

6.成果志向 途上国の成長の見通しを大きく改善するための深刻な障害となっている明確な問題に対処するため,実現可能で,実際的かつ説明可能な措置に焦点を当てること。かかる措置は,目に見える成果を提供し,大きな影響をもたらす潜在性を持つべきであること。開発に関するG20の行動の実施は,適切な説明責任に関する枠組みを通じ監視されるべきであること。

 途上国及び低所得国のパートナー,並びに開発に関する専門性を有する関連する国際機関及び地域機関と緊密に協議しつつ,途上国及び低所得国の包括的かつ持続可能な経済成長と強じん性を確保するため,行動と改革が最も重要であると我々が信じる8つの分野すなわち,「鍵となる柱」を特定した。これらの分野とは,インフラ,民間投資,雇用創出,人材開発,貿易,金融包摂,強じんな成長及び食料安全保障,国内資源の動員,及び知識の共有である。途上国における強固で持続可能かつ強じんな経済成長にとって最適な条件を創出するため,これらの連結し相互に強化し合う鍵となる柱の各々すべてにおいて改革と変化が求められる。

 我々は,我々の開発原則に導かれ,及び鍵となる柱に方向付けられ,以下の開発に関する複数年行動計画を策定した。我々は,これらの行動計画が,途上国,取り分け低所得国の強固で持続可能な経済成長と強じん性にとって最も重大なボトルネックの幾つかに対処し,並びに開発格差の是正を促し,人権を改善し,及びジェンダーの平等を促進しつつ,人々の生活に変革的で根本的な転換をもたらす高い潜在性を有すると信じる。我々は,これらの行動計画を完全,適時かつ効果的に実施することにコミットするとともに,このために,2011年後半に韓国で開催される第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラムを含む他のプロセスとも相乗して,行動計画の進ちょくを緊密に監視し続ける。