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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20ソウル・サミット首脳宣言 附属書II 開発に関する複数年行動計画

[場所] ソウル
[年月日] 2010年11月12日
[出典] 外務省仮訳
[備考] 
[全文]

 以下は,中期的に実施され,発展させるべき具体的な行動と成果を示すものである。括弧内の日付は達成されるべき期限を表す。開発作業部会は活動を継続するとともに,シェルパへの報告により,複数年行動計画の進ちょくを監視する。

インフラ

 エネルギー,交通,通信,水及び地域インフラを含めたインフラの格差は,多くの途上国において成長の拡大・維持にとっての大きなボトルネックとなっている。我々は,途上国,取り分け低所得国(LICs)において,インフラ投資への障害を克服し,プロジェクト形成の流れを発展させ,能力を改善し,及びインフラ投資のための資金増加を促進することにコミットする。

行動1:包括的なインフラ行動計画の策定

 我々は,地域開発金融機関及び世界銀行グループ(以下,国際開発金融機関(MDBs)と総称)に対して,途上国,取り分け低所得国において,公的,準公的及び民間資金を増加させ,またエネルギー,交通,通信並びに水分野を含む国家及び地域のインフラプロジェクトの実施を改善する行動計画を準備するために協働するよう要請する。国際開発金融機関は,以下の5分野において取組を追求する。

情報及びニーズ評価

・特に地域及び地方のインフラに関する,インフラの格差,ニーズ,及び資金要件,並びに官民及び準公的連携を促進する機会を特定する(2011年6月)。

・途上国及び地域機関と協働し,既存のイニシアティブやファシリティ(例:インフラプロジェクト準備ファシリティ(IPPF),アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD),アフリカ水ファシリティ(AWF)及びアジア・インフラ金融イニシアティブ(AIFI))によって創出されたモメンタムを基に,融資可能で成長を支えるような地域連結プロジェクトを実施する(2011年11月)。

内部慣行

・インフラ融資,支出及びプロジェクト実施の速度を抑制しているボトルネックを克服するとの観点から,それらの融資ガイドライン,内部政策及び慣行について改善可能な点を特定する(2011年6月)。

・プロジェクトの準備,制度的な能力の開発及びリスク軽減のための内部資源が十分かどうかを評価する(2011年6月)。

国内インフラ投資環境の改善

・低所得国と需要主導ベースで協働しつつ,公的,準公的及び民間のインフラ投資を妨げている低所得国における制度,規制,政策及び公的部門の能力に関するボトルネックを評価し,原因を究明するとともに,以下を目的とする各国の開発目標及び戦略の文脈で,低所得国が行動計画を策定することを支援する。

(i)開発,新たなインフラへの投資に関するプロジェクトの全期間を通じた原価計算と計画,既存インフラの運用と維持,並びに老朽化したインフラの修復に対する障害の除去。

(ii)内部資源の動員についての改善と財政的対処の余地拡大。

(iii)費用対効果の高い再生可能エネルギー及び資源を最大限活用し,エネルギーの節約を支援し,エネルギー効率を高めるような,より持続可能な道程を支援することを含めたエネルギーへのアクセスの増大(2011年11月)。

地域統合のための特別措置

・地域プロジェクトの物理的・経済的ニーズに対処するための各国の政策及び地域の体制に必要な,特定の制度,規制及び政策の変更を特定し,勧告を行う(2011年11月)。

・ボトルネックを削減するための行動計画を伴った,限られた数の地域イニシアティブを特定し,同イニシアティブにおいて具体的な成果を達成する(2011年11月)。

・国境を越えた及び地域のインフラプロジェクトに対する投資を妨げている可能性のある,国際開発金融機関の制度面のボトルネックを特定する(2011年11月)。

透明性及び持続可能性

・既存の先駆的な取組と協調しつつ,調達,建設及びインフラ金融における透明性を著しく改善するために速やかに実行できるイニシアティブを策定する(2011年11月)。

・効果的かつ費用効率の高い方法で,環境セーフガードをインフラ開発に組み込む最善の方法について分析する(2011年11月)。

 国際開発金融機関行動計画の最終成果物は,ハイレベル・パネル(HLP)(下記参照)による支持と評価と共に,フランスにおけるサミットに報告されるべきである(暫定報告については2011年6月,最終報告については2011年11月)。

行動2:インフラ投資のためのG20ハイレベル・パネルの設置

 我々は,インフラ金融の規模拡大に対する支援を動員するために,インフラ投資のためのハイレベル・パネル(HLP)を創設した。ハイレベル・パネルは,フランスにおけるサミットまでの1年間にわたって存続する。

構成

・約12名のメンバーは,途上国における公的インフラ投資ニーズ,公的金融及び経済,低所得国における制約,政府系ファンドの投資基準,官民連携,プロジェクト・ファイナンス,革新的資金調達,並びにリスク管理の分野における,専門性と権威によって非常勤の身分で指名される(2011年2月,議長の任命については2010年12月)。

・運営面及び技術面での支援及び資源は,国際開発金融機関及び民間部門からの専従の専門家グループによって提供される。

付託事項

 インフラ投資のためのハイレベル・パネルの付託事項は以下のとおり。

・国際開発金融機関の政策枠組みをレビューするとともに,資金を拡大し,公的,準公的及び民間部門からのものを含め,インフラ需要のための利用可能な資金の調達源を多様化するための具体的な措置を特定及び提言する。

・民間及び準公的金融のリスク許容能力の限度,過去及び現在進行中のプログラムの成功及び失敗に関する教訓,ベスト・プラクティス,耐久性及びプロジェクトの全期間を通じた原価計算の重要性,並びに資金調達のリスクを軽減・仲介するための革新的な方法を考慮する。

・国際開発金融機関行動計画をレビューし,実行可能性,成果の最大化,並びに環境持続可能性及び透明性への焦点を確保するための回帰的プロセスにおいて,独立した評価を提供する。

・ハイレベル・パネルの最終的な成果は,フランスにおける財務大臣会合及び首脳会合に対して報告されるべきである(暫定報告については2011年6月,最終報告については2011年11月)。

人材開発

 人的資本の開発は,いかなる国の経済成長や貧困削減戦略にとっても,極めて重要な要素である。ミレニアム開発目標(MDGs)に関連する教育イニシアティブに加え,途上国,取り分け低所得国が投資及び人間らしい働きがいのある仕事の雇用を引きつけるためには,雇用主及び市場のニーズにより見合った職業関連技能を開発し続けることが重要である。

行動1:国際的に比較可能な技能指標の作成

 我々は,世界銀行,国際労働機関(ILO),経済協力開発機構(OECD)及び国連教育科学機関(UNESCO)に対し,以下に関して途上国,取り分け低所得国を支援するために,こうした国々における雇用及び生産性に係る技能の国際的に比較可能かつ実践的な指標を開発するために協働することを要請する。

・訓練を,途上国における雇用主のニーズ及び将来の労働市場での機会により見合うようにする。

・雇用に適した基礎レベルの技能習得のため,教育システムにおける格差を特定する。

・教育,保健問題,ジェンダー格差,及び生涯にわたる技能開発の間の関連性を特定する。

・低所得国における雇用に適した技能開発を評価するための監視手段として,国家間での比較が可能となるデータベースを構築する。

 関連機関は,中間報告書をフランスにおけるサミットに,技能指標に関する最終報告書を2012年夏までに,比較可能なデータベースに関する最終報告書を2014年終わりまでに提出する(2012年,2014年終わり)。

行動2:雇用に適した技能に係る国家戦略の強化

 国際開発金融機関, ILO, OECD及びUNESCOは,自選の低所得国から成るパイロット・グループが,技能を開発し,既存の職業における生産性を向上させ,新規雇用に対する投資を促進するための国家戦略を強化することを支援する目的で,統一的かつ調整されたチームを形成することに本日合意した。かかる行動は,以下を踏まえるべきである。

・国家・地域の職業教育・訓練機関及びプログラムの強化に焦点を当てる。

・トロント・サミットに提出されたG20訓練戦略を基に,ジェンダー格差や非感染性疾患のような健康問題の影響に関する検討等を通じ,技能開発や生産性に対する投資を拡大する上で障害となる既存の格差を特定することから開始する。

・実施した作業をレビューし,達成された結果を基に,低所得国及び中所得国に対するより広範なプログラムの展開を検討する(2012年)。

貿易

 貿易へのアクセスや能力なしに,成長や貧困削減を達成した国はない。貿易の能力及びこれへのアクセスが経済成長及び貧困削減において鍵となる要素であることを認識しつつ,我々は,途上国,取り分け低所得国を相手とした,及びかかる国々同士での貿易を促進することにコミットする。

行動:貿易能力及び市場へのアクセスの強化

・我々は,他の交渉に影響を与えることなく,特恵原産地規則に関するものを含めて,香港コミットメントに沿って,後発開発途上国(LDC)の産品のための無税無枠(DFQF)の市場アクセスに向け進ちょくを図ることに合意した。我々は,関係国際機関と協力しつつ,更なる改善余地と,このコミットメントの実施につながるG20諸国間の協力を追求する。

・2011年以降に,貿易のための援助が最低限2006年から2008年の過去3年間の平均を反映する水準に維持されるよう,我々はコミットする。我々はまた,南南貿易協力の役割を強化するとともに,これらの措置において民間部門の関与を強化することを決意する。これらのコミットメントの実施と並行して,他の部門への援助フローが維持されることを確保する(2011年以降)。

・我々は,関連機関,取り分け世界貿易機関(WTO), OECD,世界銀行及びその他の国際/地域開発機関による,これらのコミットメントを監視し,低所得国の貿易能力への影響を評価する現行プロセスに十分に関与する。我々は,2011年7月の貿易のための援助グローバル・レビューの結果を検討し,それに合わせて我々の開発に関する複数年行動計画を調整する(2011年)。

・世界銀行及びその他の国際開発金融機関を含む国際機関に対し能力を向上させ貿易円滑化を支援することを求めるトロント宣言をフォローアップするため,我々は,これらの機関に対し, 2011年の貿易のための援助グローバル・レビューまでに国際機関による集合的な対処を調整することを求める(2011年7月)。

・我々は,WTO貿易金融専門家グループ及びOECD輸出信用グループと共に,G20貿易金融専門家グループに対し,低所得国における貿易金融の現在のニーズを更に評価し,格差が特定された場合は,低所得国における貿易金融の確保を増加させる措置を策定し支援する。我々は,WTOに対し,現在の低所得国のための貿易金融プログラムの有効性をレビューし,2011年2月のG20開発作業部会を通じてシェルパによって検討されるべく,取組と提言について報告を行うことを求める(2011年2月)。

・地域貿易統合,特にアフリカ諸国間の統合の成功を支える,国家レベルまた地域レベルで追求できる実践方法を策定するため,我々は,アフリカ開発銀行(ADB)に対し, WTO及び国際開発金融機関と協力し,フランスにおけるサミット前までにアフリカにおける地域貿易統合への現在の障害・障壁を特定することを求める(2011年6月)。

民間投資及び雇用創出

 国内及び外国からの民間投資は,雇用,富の創出及び革新の鍵となる源泉であるとともに,途上国における持続可能な開発及び貧困削減にも貢献する。この分野における決定及び取組は,第一義的には,投資のための政策環境を改善する際の投資家自身,及び途上国のものである。開発及び雇用創出に対する民間投資の中核的役割を認識しつつ,我々は,投資家,途上国及び国際金融公社(IFC)及び国際開発協会(IDA)といった鍵となる開発パートナーが,民間投資の経済的付加価値をより良く活用・最大化し,また,世界的な競争力を有する産業を創出するよう支援・援助する。我々は,国連グローバルコンパクト,アフリカ投資環境ファシリティ,世界銀行ビジネス環境・指標年次報告書, MDG行動要請など,成功している既存のイニシアティブと協働する。

行動:付加価値を有する責任ある民間投資及び雇用創出の支援

・我々は,価値連鎖における責任ある投資に関する現行上最善の(開発,社会及び環境面での)基準,及びかかる基準への投資家の自主的なコンプライアンスを特定し,必要に応じて強化し,促進する(2011年6月)。

・我々は,国連貿易開発会議(UNCTAD),国連開発計画(UNDP), ILO, OECD及び世界銀行に対し,価値連鎖において民間部門の投資から発生する経済的付加価値及び雇用創出を計量し,最大化するため,定量化可能な鍵となる経済・金融指標をレビューし,責任ある投資のベスト・プラクティスと整合的な形で,策定することを要請する。かかる指標に基づき,上記国際機関は,途上国が自国経済に最も付加価値を有する投資につき,誘致・交渉することを支援するための勧告を作成すべきである(2011年6月,2012年9月)。

・我々は,世界銀行及び関連機関に対し,G20と連携し,社会的課題の解決を目指した起業家精神を評価し,示すための革新的な解決策に関するプラットフォームを提供するため,「G20革新チャレンジ」を立ち上げることを要請する(例えば,若年者失業に焦点を当てたビジネス戦略に係る革新的サービス)(2011年11月)。

 かかる成果に基づき,我々は,持続可能な方法で貧困層のニーズを満たす革新的なビジネス上の解決策を発見するため,民間部門を関与させる方法について提言する(2012年夏)。

・G20,国際開発金融機関, UNCTAD,UNDP, ILO, OECDは,上記及びその他の取組の成果に基づき,途上国,取り分け低所得国が,中小企業(SMEs)を後押しするために金融市場を強化し,ビジネス投資環境を改善し,民間投資の付加価値を最大化し,外国及び国内投資の規制枠組みを支援するために,行動計画を策定することを支援する。低所得国における投資を促進するために,G20各国と低所得国との間の既存の国際的な投資に関する取決めを強化する(2012年6月)。

食料安全保障

 我々は,農業開発のための投資と資金援助を増加させる必要性を強調し,世界農業食料安全保障プログラム(GAFSP)及びその他の多国間・二国間チャネルを通じて行われたコミットメントを歓迎する。我々は,国主導の計画を支援し,予測可能な融資を確保するために,民間部門,G20諸国及びG20以外の主体によるによる追加支援を奨励する。我々は,グローバルな政策の一貫性を向上させ,持続可能な農業生産性,食料へのアクセス,栄養及び危機予防に対するリスクを軽減するため,ローマ原則を支持する。

行動1:政策の一貫性と調整を向上させる

・既存の農業研究システムを強化するため,我々は,国連食糧農業機関(FAO)及び世界銀行に対し,国際農業研究協議グループ(CGIAR)による調査及び農業生産性の向上の事前購入制度のように,潜在性を有する革新的な成果ベースのメカニズムを調査し提言することを求める(2011年3月)。

・食料安全保障と持続可能な農業開発に係る既存のコミットメントを実行する必要性を強調する。我々は,G20コミットメントの進ちょく状況をレビュー及び監視し, FAO,世界銀行,OECDに対し,ラクイラ食料安全保障イニシアティブ(AFSI)と協力しつつ,進ちょく状況を監視し,フランスにおけるサミットで報告を行うことを要請する(暫定報告については2011年3月,最終報告については2011年6月)

・熱帯の農業技術や生産システムに係る能力構築への支援を呼びかける(中期)。

・我々は,世界食料安全保障委員会(CFS)を含む主要な国際機関に対し,ローマ原則に整合的な食料安全保障のための政策一貫性を高めるため,ボトルネックや機会を特定することを求める。この作業は,農業部門が持続可能な経済成長と貧困削減を進め,民間部門の関与を高め,南北協力・南南協力・三角協力を強化する潜在力を活用することに重点を置くべきである(暫定報告については2011年3月,最終報告については2011年6月)。

行動2:価格変動のリスクを軽減し,最も脆弱な人々の保護を強化する

・我々は,FAO,国際農業開発基金(IFAD),国際通貨基金(IMF), OECD, UNCTAD,国連世界食糧計画(WFP),世界銀行及びWTOに対し,他の鍵となる利害関係者と協働して,市場の行動をゆがめることなく,最終的には最も脆弱な人々を保護するために,食料及びその他農産品の価格変動に係るリスクをいかにより良く軽減し,対処するかについて,G20の検討のためのオプションを策定するよう要請する。我々は世界銀行に対し,関係する国際機関と協働して,各国及び地域の食糧備蓄及び食料生産見通しに関する情報を改善し,最も脆弱な人々への栄養介入を提供し,及び人道的供給に対するアクセスを確保するための措置を策定することを要請する(暫定報告については2011年3月,最終報告については2011年6月)。

・我々は,国内及び地域戦略に沿って,小規模自作農からの調達の増加を推進し,小規模自作農による市場へのアクセスの強化にコミットする(中期)。

・我々は,すべての国及び企業が,責任ある農業投資の原則を掲げることを奨励する。我々は,UNCTAD,世界銀行,IFAD, FAO及びその他適切な国際機関に対し,農業における責任ある投資を促進するためのオプションを策定することを要請する(暫定報告については2011年3月,最終報告については2011年6月)。

強じんな成長

 社会保護システム及び国際送金は,金融サービスへのアクセス改善とともに,途上国,取り分け低所得国の貧困社会に所得保障を提供し,貧困社会に外的ショックの影響へのバッファーを提供し,及び総需要の維持・増大に貢献するに当たって重要な役割を担う。最近の危機の期間における途上国の特定社会保護メカニズムの実績から教訓を得ることができ,かかる教訓を,南南協力を通じたものを含め,低所得国の利益のために適用することができる。また,この分野における現行の取組に基づき,国際送金の効率性を促進し高めるための措置をとることもできる。

行動1:途上国による社会保護プログラムの強化及び向上への支援

 世界的な金融危機にさらされる脆弱性を認識しつつ,我々は, UNDPに対し, ILO, 国際開発金融機関及びその他関係する国際機関と協議し,以下を行うことを求める。

・危機の期間及び危機以降において,途上国,取り分け低所得国における社会保護メカニズムの実施から得られる教訓を特定する。

・この経験に基づいて,ベスト・プラクティスのガイドラインを準備する。

・国家横断的な知識の共有及びプログラムの再生又は拡大を妨げる障壁をいかに克服するかについて勧告を行う。

 この作業の主な焦点は,脆弱な社会が外的ショックに対処できるよう支援することを通じて,強じんかつ包括的な成長を支援する社会保護メカニズムである。それは,国連のグローバル・パルス・イニシアティブの更なる実施を含め,貧困データの適時性及び正確性を改善するためのオプションを検討するべきである。

 この作業の成果,及びG20メンバー国による南北協力,南南協力又は三角協力の取決めの下でとられた関連プログラムの成果は,フランスにおけるサミットに報告される(暫定報告については2011年3月,最終報告については2011年6月)。

行動2:国際送金フローの促進

 我々は,国際送金フローを促進し,強じんな成長及び貧困削減への貢献を増大させるために効率性を向上させることの重要性を認識する。我々は,世界銀行,地域開発金融機関及び国際送金作業部会を含めた他の関連機関に対し,国際送金サービスに関する一般原則及び送金の世界的な平均費用を定量的に削減するための国際イニシアティブの実施を更に進ちょくさせるため,G20メンバー国及びG20メンバー国以外の各国と協力することを求める。この作業の成果は,フランスにおけるサミットに報告される(2011年11月)。

金融包摂

 20億人以上の成人が金融サービスから疎外され,また何百万もの零細及び中小企業(MSMEs)が融資の利用に関する深刻な制約に直面していることにかんがみ,金融包摂は,貧困層の生活を改善し,零細及び中小企業を支援するための基本となるものであり,経済成長及び雇用創出のエンジンとして機能するものである。

行動1:金融包摂グローバル・パートナーシップの立ち上げ

 我々は,金融包摂同盟(AFI),貧困層支援協議グループ(CGAP)及びIFCと緊密に協力して,G20金融包摂行動計画を実施するための体系的な体制を提供するために,金融包摂グローバル・パートナーシップ(GPFI)を立ち上げる(2010年11月)。

 金融包摂グローバル・パートナーシップは,(i)効率的かつ効果的な情報共有メカニズムを促進し,(ii)金融包摂に関する多様な取組を調整し,(iii)今後の進ちょくを体系的に監視する体制を提供し,(iv)必要に応じ,活動に対する融資面での支援を動員し,(v)特定の金融包摂に関する問題(例,金融包摂データ)に対処するためのタスクフォースを立ち上げ,調整する。金融包摂グローバル・パートナーシップは,APECのイニシアティブ及び他の金融包摂に関するイニシアティブと,その活動を調整する。

 金融包摂グローバル・パートナーシップに関する進ちょく及び年次報告書は,フランスにおけるサミットに報告される。

行動2:中小企業金融チャレンジ及び金融包摂のための融資枠組み

中小企業金融チャレンジ

  我々は,中小企業金融に民間資本を誘引するための革新的なモデルを提示する,中小企業金融チャレンジの14の優秀提案を発表する(2010年11月)。

金融包摂のための融資枠組み

  我々は,中小企業金融チャレンジにおける優秀提案のため,また成功裏に中小企業金融モデルの規模を拡大するために,贈与及びリスク資本を動員する融資枠組みを立ち上げることにコミットする。同枠組みは,既存の融資メカニズム,及び新たに創設された多国間の信託基金である中小企業金融革新基金を利用する。

行動3:金融包摂のための行動計画の実施

 我々は,革新的金融包摂に関する原則(「原則」)の適用,及び中小企業に関する現状評価作業から得た教訓を促進するために,G20金融包摂行動計画を採択する(2010年11月)。

 同計画において実施されるべき行動は,以下を含む。

(i)各G20メンバー国が,同原則のうち少なくとも一原則を実行するとのコミットメントを通じ,同原則の実施を推進すること,(ii)基準設定主体の取組に金融包摂に関する目的を更に含めるよう,同主体に奨励すること,(iii)金融サービスへのアクセスを増大するための民間部門による更なる活動を奨励すること,(iv)金融包摂を測定するためのデータの利用可能性,及び金融包摂に関する目標の設定を志向する国々のための方法論を強化し,拡大すること,(v)ピア・ラーニングによる能力開発及び訓練を支援すること,(vi)国家及び国際レベルでの調整を改善すること,(vii)金融評価プログラムへ金融包摂を統合すること。

 金融包摂グローバル・パートナーシップは,次回フランスにおけるサミットに対して,実施状況に関する進ちょく報告書を提出する(2011年11月)。

国内資金の動員

 包括的な成長及び社会的衡平のために持続可能な歳入基礎を提供し,財政の透明性及び説明責任を強化するため,途上国における租税制度及び財政政策を強化し続けることが不可欠である。

行動1:より効果的な租税制度の発展の支援

 我々は,拡大したOECD租税・開発タスクフォース,国連,IMF,世界銀行,租税行政のための汎米センターやアフリカ租税行政フォーラム等の地域機関及び関連機関に対し,以下の行動を要請する。

・租税制度に関して途上国が直面する鍵となる能力上の制約を特定し,(i)租税行政の効率性及び透明性の改善のための,及び(ii)税ベースを拡大し,税回避及び脱税に対処するための租税政策の強化のための能力構築に関する勧告を行う(2011年6月)。

・知識管理プラットフォームを発展させ,租税政策及び租税行政システムに関する途上国の能力を支援するための南南協力を促進する(中期)。

・途上国における租税制度の支援に関するすべてのG20メンバー国及び国際機関の活動について調査し,普及させる (2011年6月)。

・低所得国における租税行政システムの能力改善に関する進ちょくを測るため,客観的な指標を策定する(2011年6月)。

・途上国が効果的な移転価格税制を通じて多国籍企業(MNEs)に課税する方法を特定する(2011年6月)。

 この結果はフランスにおけるサミットに報告される(2011年11月)。

行動2:国内税収の浸食防止のための作業支援

 我々は,グローバル・フォーラムに対し,途上国の税基盤の浸食に対抗するための取組を強化し,特に非協力的な国・地域と開発との関係について報告書において強調することを要請する(中期)。

 この結果はフランスにおけるサミットに報告される(2011年11月)。

知識の共有

 南北協力,南南協力及び三角協力等を通じた開発経験の共有は,開発に関する最も適切かつ効果的な解決策の採用や適応に貢献する。我々は,知識共有のためのプラットフォームを運用している国連,世界銀行,OECD,地域開発金融機関(RDBs)等の国際機関に対し,成長及び開発に係る知識の源泉を強化・拡大することを奨励する。我々は,知識共有イニシアティブが,この複数年行動計画の各々の柱の主軸となるべきことに同意する。

行動:知識共有の有効性及び範囲の向上

 我々は,南南協力タスクチーム(TT-SSC)及びUNDPに対し,南北協力,南南協力及び三角協力を含めた知識共有の取組の規模をいかに拡大できるかについて勧告するよう要請する。これらの勧告は,知識の源泉を拡大し,仲介機能を改善し,ベスト・プラクティスの普及を強化し,資金オプションを拡大するための措置を含むべきである(2011年6月)。