データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明

[場所] ワシントンD.C.
[年月日] 2011年4月15日
[出典] 財務省
[備考] 
[全文]

1. 我々、G20財務大臣・中央銀行総裁は、喫緊の経済的な課題に対処し、我々の過去のコミットメントを進めるため、本日会合を行った。我々は、我々の優先的な目標が、経済と雇用の力強い成長を通じてすべての市民の生活水準を改善することであることを再確認した。我々は、悲劇的な出来事の後での日本の人々との連帯意識、必要とされる如何なる協力も提供する用意があること、日本の経済と金融セクターの強靭さへの信認を表明した。

2. 世界経済の回復は広がりを見せており、民間需要のより力強い成長により、より自律的なものとなっている。しかし、下方リスクは依然残っている。我々は、監視を続け、回復を強化しリスクを削減するために必要な行動をとることに合意した。 いくつかの中東・北アフリカ諸国と日本での出来事は、経済面での不確実性とエネルギー価格の緊張を増加させた。我々は、世界的なエネルギー需要を満たすのに十分な余剰能力があることに留意した。

3. 我々は、対外的な持続可能性を促進するための相互評価プロセスを強化するため、継続した大規模な不均衡に対処するための我々の作業の第1段階を完了する一連の参考となるガイドラインに合意した(別添参照)。我々は今、これらの不均衡の性質や調整の障害となっている原因をより詳細に評価する、このプロセスの第2段階を開始する。我々は、この分析、対外的な持続可能性に向けた進ちょくに関するIMFの評価、及び我々の相互評価プロセスのその他の側面に基づいて、我々の次回会合に向けて予防や是正に向けた措置を確認する。この措置は、強固で持続可能かつ均衡ある成長を確保する2011年版の行動計画となり、カンヌ・サミットにおいて首脳によって議論される。

4. 我々は、国際通貨システムを強化するため、短期的には我々の作業の焦点を以下の点に当てることに合意した:世界的な流動性の状況の評価、外貨準備の蓄積の原因に関する各国固有の分析、為替レートの無秩序な動きや継続したファンダメンタルズからの乖離を回避するための協調の強化、SDRの構成通貨を拡大するための基準に則った道筋、グローバルな資金セーフティ・ネットを強化するための諸制度の改善、IMFと地域金融取極の間の協力の強化、地域資本市場や自国通貨での借入れの発展、各国の経験を踏まえた資本移動への対処のための一貫した結論。我々はまた、特に、金融セクターの扱い、財政、金融、為替政策に関する、バイ及びマルチのIMFサーベイランスの有効性と一貫性の更なる強化の必要性に合意した。

5. 我々は、拡大された、より柔軟な新規借入取極(NAB)の発効及び発動を歓迎する。我々は、2010年のクォータ・ガバナンス改革の実施に必要なステップを2012年の年次総会までに完了すべく作業する。

6. 一次産品価格は増大する圧力に直面している。我々は、IEF、IEA及びOPECによる提言を歓迎し、JODI Oilデータベースの適時性、完全性及び信頼性を高めることをコミットした。我々は、食糧・農産品市場における過度の価格変動とその食糧安全保障への影響に対処するための国際機関の報告に関する作業を歓迎した。我々は、リスク管理と緩和方法を含む最終提言を受け取ることを期待している。我々は、商品デリバティブ市場の参加者が適切な規制・監督に従う必要性を強調し、IOSCOが以前提言していたように現物及びデリバティブ市場双方の透明性を強化することを求め、IOSCOに対し、適切な場合にポジションに係る事前規制を設定する権限やその他の介入権限を含むポジション管理に係る定型化された権限を通じることなどにより、特に市場の濫用・操作に対処するためのこの分野の規制・監督に関する提言を、9月までに最終化するよう求めた。

7. 我々は、FSBのキャパシティ、リソース、代表バランスを含めたガバナンスを強化するためのFSBの暫定的な提案を歓迎し、FSBに対し、我々の次回会合でレビューするためにFSB7月会合で具体的な提案を提示するよう求めた。我々は、グローバルなSIFIsの集団の特定に向けた進捗を点検し、より密度の高い監督・監視、実効的な破綻処理能力、より高い損失吸収力を含む多角的な枠組みについてFSBが提言を行うことを確認した。我々は、SIFIsに関する提言の市中協議に期待し、我々の次回会合でレビューすべくFSB及びバーゼル委員会のBIS及びIMFとの協働によるマクロ経済影響度調査を求める。我々は、シャドーバンキングの範囲に関するFSBの作業を歓迎し、シャドーバンキングシステムの規制及び監視に関しFSBが我々の次回会合に向けて用意する提言に期待する。我々は、店頭デリバティブ市場に関するFSB提言を実施するための法律・規制において、高水準で国際的に整合的かつ協調的で、無差別な要件を設けることにコミットし、規制の重複を避ける必要性を強調した。我々は、報酬に関するFSB原則・基準を全ての国・地域が完全に実施するよう促す。我々は、FSBにこの分野において継続的なモニタリングを実施するよう求め、我々の次回会合までに報酬慣行に関する第2回ピア・レビューの結果を評価する。我々は、我々の次回会合で、IASB・FASBによる2011年末までの会計基準の収れんに関するプロジェクトの完了に向けた進捗をレビューし、現在進行中のIASBガバナンスのレビュープロセスの結果に期待する。我々は、金融サービスにおける消費者保護について共通原則を策定するための、OECD、FSB及びその他関係国際機関による現在進行中の作業を歓迎した。

8. 我々は、非協力的な国・地域に取り組むための行動のモメンタムを維持し、G20腐敗対策行動計画を完全に実施することに合意した。我々は、グローバル・フォーラムに対し、租税情報の交換の有効性を高める方法について、我々に報告するよう求めた。我々は、地域開発金融機関と連携する世界銀行とIMFが、その他の関連機関と協働して、とりわけAGFレポートを活用し、国連気候変動枠組条約の目的、規定及び原則と整合的な、公的及び民間の資金、バイ及びマルチの資金、革新的資金を含む、気候変動資金の動員に関する分析を実施するよう指示した。我々は、緑の気候基金の設計のために設立された移行委員会の作業を支持する。我々は、共有された成長に関するソウル開発合意とその複数年行動計画を実施することの重要性を改めて強調する。我々は、インフラ投資に関するハイレベル・パネルから9月までに具体的な提言を受け取ることを期待している。

(別添)

継続した大規模な不均衡を評価するためのG20の参考となるガイドライン

1. 我々の目的は、対外的な持続可能性を推進し、G20メンバーが過度の不均衡を是正し経常収支不均衡を持続可能な水準で維持するのに必要な、あらゆる政策を追求することを確保することにある。

2. 我々は、2月に、統合された2段階のプロセスを通じて、政策措置を必要とするような継続した大規模な不均衡に焦点を当てることを可能にする一連の項目に合意した。これらの項目は、(i)公的債務と財政赤字、民間貯蓄率と民間債務、(ii)為替・財政・金融・その他の政策を十分に考慮しつつ、貿易収支、投資所得及び対外移転のネットフローから構成される対外バランスである。

3. 我々は、第1段階を完了するため、本日これらの項目それぞれを評価する参考となるガイドラインに合意した。政策目標となるものではないが、参考となるガイドラインは、それぞれの項目に対して、第2段階でのより詳細な評価を受ける国の特定を可能にする参照値を設定することになる。以下の4つのアプローチが使用される:

1-構造的アプローチ:経済モデル及び経済理論に基づき、大規模な一次産品生産者を含む固有の状況(例:人口動態、石油収支、成長トレンド)を考慮する方法により、それぞれの項目に関してG20メンバーを評価する。

2-統計的アプローチ:自国の過去のトレンドに基づき、G20各国を評価する。

3-統計的アプローチ:発展段階が類似した国のグループに対して、G20各国の過去の項目を評価する。

4-統計的アプローチ:データに基づき、すべてのG20メンバーに対して、G20各国の項目を評価する。

4. 統計的アプローチは、対外不均衡が大規模に積み上がる前の1990年から2004年までの期間(*1)のデータに基づく。1990年から2010年のデータに基づく参照値も、補完的に提供された。4つのすべてのアプローチにおいて、より詳細な評価が行われるべきか否かを判定するため、2013年から2015年までの期間における予測値がガイドラインの示す参照値と比較される。4つのアプローチのうち少なくとも2つのアプローチにおいて継続した大規模な不均衡があると判定された国は、第2段階において、不均衡の性質や原因を判断し、調整の障害を特定するため、より詳細に評価される。この評価を実施する際、我々は、各国の為替・金融政策の枠組みを適切に考慮する。自らのガバナンスの枠組みを持つユーロ圏諸国については、この評価に適切な当局が関与する。各国の状況もまた考慮される。第2段階の評価では、IMFの独立した分析はIMFの予測データに依拠する一方、各国自身の評価においては各国のデータを使用できる。

5. 第2段階へ進む国の判定に関して、G20のGDP全体に占める割合が(名目為替レートまたは購買力平価為替レートで)5%以上の国々に対する選別規定は、より大規模な経済主体からの波及効果はより大きい可能性があることを反映する。

(*1).民間債務は、データの利用可能性を反映して、1995年から2009年のデータに基づく。