[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(2011年10月14-15日)
1.我々、G20の財務大臣・中央銀行総裁は、信認と金融の安定と成長を回復するために、世界経済に対する緊張の高まりと重大な下方リスクに断固として対処する必要がある時期に会合した。
2.我々がワシントン DC で 3 週間前に行ったコミットメントの実施は進展している。特に、我々は、欧州の経済ガバナンスについての野心的な改革の採用を歓迎する。我々は、また、EFSFの能力と柔軟性を高めるため 2011 年 7 月 21 日にユーロ圏の首脳が行った決定を実施するために必要な行動を、ユーロ圏諸国が完了したことを歓迎する。我々は、伝播を回避するため EFSF の影響力を最大化するための更なる作業、及び、包括的な計画を通して現在の課題に断固として対処するための 10 月 23 日の欧州理事会の結果に期待する。我々は、カンヌ・サミットにおける首脳による検討に向けて、協調的な政策についての我々のアクションプランについて進捗を見た。このアクションプランは、差し迫った脆弱性に対処し、強固で持続可能かつ均衡ある成長のための基礎を強化するための以下の一定の措置を含むこととなる。
- 先進国は、異なる各国の状況を勘案しつつ、信認を構築し成長を支えるための政策を採用し、財政健全化を達成するために明確で信頼に足る具体的な措置を実施する。大きな経常黒字を持つ国は、より内需に基づいた成長にシフトするための政策も実施する。大きな経常赤字を持つ国は、国民貯蓄を増加させるための政策を実施する。
- 新興市場国は、下方リスクに対して成長モメンタムを維持し、インフレ圧力を抑制し、変動する資本フローに対する強じん性を高めるよう努めるために、必要な場合は、マクロ経済政策を調整する。黒字の新興市場国は、需要をより国内消費へリバランスするための構造改革の実施を加速する。これは、より市場 で決定される為替レートシステムに移行し、経済のファンダメンタルズを反映するよう為替レートの柔軟性を一層高めるための引き続いての努力によって支援される。
- 全ての国は、潜在的な成長を高めるために更なる構造改革に取り組む。
- あらゆる行動において、我々は、成長と雇用創出を助長し、社会的包摂を促進するよう努力する。
我々は、銀行システムや金融市場の安定を保つために必要な全ての行動を取ることに引き続きコミットしている。我々は、現在のリスクに対応するために銀行が十分な資本及び資金へのアクセスを有していることを確保する。中央銀行は、最近、この目的のために断固たる行動をとっており、必要な場合に銀行に流動性を供給する準備がある。金融政策は、物価の安定を維持し、引き続き経済回復を支える。
3. 我々は、現在のストレスへの対処と、より長期的な安定の促進の双方にとっての助けとなる、より安定的で強じんな国際通貨システムを構築するための具体的な手段をとりつつある。我々は、国境を越えた資本フローのリスクに対処し、利益を享受するために、資本フローの管理において我々を導く一貫した結論に合意した。これらの目的に更に到達するため、我々は、現地通貨建て債券市場の発展と深化を支援するための行動計画に合意した。我々は、IMFのサーベイランスの最近の改善を歓迎し、カンヌ・サミットまでの更なる進展をレビューする。この進展は、とりわけ金融セクターの対象範囲、財政、金融及び為替政策に関する、特に、より統合され公平で効果的なサーベイランスの枠組に向けた強化についてのものである。我々は、IMF と地域金融取極の間の協力のための共通原則を採択した。より構造的なアプローチへの貢献として、我々は、IMF に対し、システミックな場合を含む外性的なショックに直面する国々に対し、既存の制度やファシリティーを基に、ケースバイケースで短期流動性を供給する新しい方法を更に検討することを要請し、カンヌ・サミットまでに具体的な提案を策定するよう求めた。これに加え、我々は、中央銀行が、グローバルな流動性ショックへの対処において主要な役割を果たすことを認識する。我々は、IMF がシステム上の責任を果たすために十分な資金基盤を持つべきことにコミットした。我々は、カンヌにおける本件の議論を期待する。我々は、IMF の 2010 年のクォータ及びガバナンス改革を、合意されているように、完全に実施することを求める。我々は、国際通貨システムの発展への貢献として、既存の基準に基づき、SDR 構成通貨を拡大するための基準ベースの道筋について、カンヌ・サミットまでに進捗を見ることを期待する。我々は、国際流動性の状況の評価、外貨準備の蓄積の要因に関する国ごとの分析、為替レートの継続した不均衡の回避、及び、SDR の役割についての我々の作業を継続する。
我々は、強固で安定した国際金融システムが我々の共有する利益であること、及び、市場で決定される為替レートに対する我々の支持を再確認した。我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えることを再確認する。
4. 我々は、我々の経済の要請により良く応えるため、金融セクターの改革をこれまでになく強く決意している。我々は、既に合意された店頭デリバティブの改革、銀行規制に関する全てのバーゼル合意の合意されたスケジュール通りの実施、そして、外部信用格付への過度の依存の抑制を完全に、整合的に、かつ差別的でない方法で実施するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、システム上重要な金融機関(SIFIs)がもたらすリスクを軽減するための包括的な枠組みを承認した。この枠組みは、監督の強化、実効的な破綻処理枠組みの主要な特性、国境を越えた協調の枠組み、再建・破綻処理計画、及びグローバルなシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)であると決定された銀行に対する追加的な損失吸収力の賦課を含む。G-SIFIs に適用される枠組みが合意された今、我々は、枠組みを全ての SIFIs に速やかに広げていくための方式を定めるよう金融安定理事会 (FSB)に要請する。我々は、シャドーバンキングへの規制・監視を強化するための最初の提言と作業工程に合意した。我々は、新興市場・発展途上国経済の金融安定上の課題に関する IMF・世界銀行(WB)・FSB の共同報告書を歓迎した。我々 は、金融消費者保護に関する FSB の報告書、及び経済協力開発機構(OECD)が FSB とともに作成した金融消費者保護の一般原則を承認するとともに、その実施上の課題についての更なる作業を要請した。我々は、適切な協調と作業の順位付けの確保を企図した FSB の店頭デリバティブ作業部会による進捗状況報告書を承認するとともに、中央清算機関で決済されない店頭デリバティブに関する証拠金の基準を設定するための作業の重要性に合意した。我々は、商品デリバティブ市場に関する証券監督者国際機構(IOSCO)の報告書を承認するとともに、その提言の実施状況を 2012 年末までに報告するよう IOSCO に求めた。我々は IOSCO の市場の健全性に関する最初の提言を承認し、2012 年半ばまでに更なる作業を求める。我々は、FSB・IMF・BIS によりマクロ健全性政策に関して行われた最初の作業を歓迎し、2012 年における更なる作業を期待する。我々は、公共の利益を代表した適切なガバナンス構造を有する、金融取引の当事者を唯一特定する国際的な法的主体識別子(LEI)システムへの支持を強調した。我々は、単一で質の高い国際的な会計基準を達成するという目標を再確認した。我々は、非協力的な国・地域及び租税回避地域への対処に関するこれまでの進捗についてカンヌで議論することを期待する。我々は、租税に関する包括的な情報交換の重要性を特に強調し、関係当局が、それを改善する手法を評価し、決定するための作業をグローバル・フォーラムにおいて続けることを促す。我々は、バーゼルII、II.5、IIIの実施モニタリングの強化、G-SIFI に関する施策についてのピアレビュー評議会の設立、店頭デリバティブ作業グループを補完する店頭デリバティブに関する協調のためのグループ、報酬に関する FSB の基準と原則の未実施部分と完全な実施を阻む障害に焦点をあてた報酬慣行に関する継続的なモニタリングと公表を含む、金融規制のアジェンダの実施モニタリングのための協調的な枠組に合意した。我々はまた、我々の首脳のために作業の進捗を確認するためのスコアボードをレビューした。我々は、FSB が我々の野心的な金融規制のアジェンダに歩調を合わせていけることを確保するため、FSB 議長の暫定的な提案を踏まえつつ、FSB のキャパシティ、資源、ガバナンスを強化することにコミットし、今年末までに最初の取組みを実施することを求める。
5. 一次産品市場が適切に機能することは、世界経済の持続的な成長にとっての鍵となる。我々は、データイニシアティブ共同機構(JODI)石油データベースの適時性、完全性及び信頼性を向上させるという我々のコミットメントを再確認し、国際エネルギー・フォーラム(IEF)、国際エネルギー機関(IEA)及び石油輸出国機構(OPEC)に対し、我々の進捗を定期的に評価することを求める。我々は、同様の原則に基づき、JODIガスデータベースに貢献する作業を行うことにコミットし、ガス及び石炭市場の透明性についての更なる作業を求め、2012年に進捗をレビューする。2011年1月のリアド会議を基に、我々は、石油、ガス及び石炭についての短期、中期及び長期の見通しと予測に関する年次シンポジウムの開催を求める。我々は、IOSCOに対し、IEA、IEF及びOPECと協働して、価格報告機関の機能と監督を向上させるための提言を2012年半ばに用意するよう求める。我々は、最貧困層に焦点を当てた支援を行いつつ、非効率な化石燃料補助金を中期的に合理化及び段階的に廃止するという我々のコミットメントを再確認する。
6. 我々は、国際開発金融機関(MDBs)のインフラ行動計画を歓迎する。また、我々は、投資可能な環境の促進、資金源の多様化、及び模範的インフラ投資プロジェクトの特定のための、カンヌで我々の首脳に提示されるインフラ投資に関するハイレベル・パネル(HLP)の提案を歓迎する。我々は、HLPにより定められた基準に従って、経済の変革を促すような地域インフラプロジェクトの実施を、関係する国々と協働して推進し、プロジェクト準備資金調達を優先させるよう、MDBsに求める。我々は、このアジェンダの重要性を強調し、達成の進捗についてのMDBsによる定期的なアップデートを歓迎する。我々は、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)の進捗報告を歓迎し、金融サービスへのユニバーサル・アクセスを達成するための更なる努力を奨励する。我々は、食料価格変動の影響を緩和する手助けとなるリスク管理手法のクライアントによる利用の拡大を支援するよう、MDBsに求める。
7. 我々は、各種の異なる金融税と、首脳により議論されることとなる革新的資金調達の選択肢について討論した。また、ビル・ゲイツ氏の開発のための資金調達についての報告を期待する。我々は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の原則を考慮しつつ、気候変動資金の動員に関する世界銀行、IMF、OECD及び地域開発金融機関(RDBs)の報告、及び、この報告に基づくトレヴァー・マニュエル氏の提案について議論した。我々はMDBsと国連諸機関による更なる作業を求める。我々は、ダーバンでのバランスのとれた結果の要素としての移行委員会の作業に基づく、緑の気候基金の効果的な設計に期待する。
8. 我々は、今年の財務大臣・中央銀行総裁会議を開催したフランスに感謝し、2012年の議長としてメキシコを歓迎する。