データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20カンヌ・サミット最終宣言 “我々の共通の将来の建設:すべての人の利益のための改訂された集合的行動”

[場所] カンヌ
[年月日] 2011年11月4日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々の前回の会合以降,世界の景気回復は特に先進国において弱まり,失業は依然容認できない水準にある。主としてヨーロッパにおけるソブリン・リスクのため,金融市場の緊張が増大した。脆弱性の兆候が新興市場に現れている。一次産品価格の上昇は,成長を阻害し,最も脆弱な人々に打撃となっている。為替レートの変動は,成長と金融の安定性に対するリスクを生む。世界的な不均衡が依然として存在する。今日,我々は,協働に向けた我々のコミットメントを再確認し,我々は,経済成長を再活性化し,雇用を創出し,金融の安定性を確保し,社会的包摂を推進し,グローバリゼーションが我々の国民のニーズに資するようにすることを決意した。

成長と雇用のための世界戦略

2.世界経済が直面する喫緊の課題に対処するため,我々は,行動と政策を調整することにコミットする。我々は,成長と雇用のための行動計画に合意した。我々それぞれが,役割を担う。

雇用及び社会的保護の促進

3.我々は,雇用が,強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組みの下で我々が実施する,成長及び信認の回復のための行動及び政策の核心でなくてはならないと強く信じる。我々は,特に金融危機から最も影響を受けている若年者及びその他の者について,失業と闘い,人間らしい働きがいのある雇用を促進するとの我々の努力を新たにすることにコミットする。したがって,我々は,若年者の雇用に焦点をあてた,雇用についてのG20タスクフォースを設置すること及び2012年に議長国メキシコの下で開催されるG20労働雇用担当大臣会合に情報を提供することを決定する。我々は,国際機関(IMF,OECD,ILO,世界銀行)に世界の雇用見通し及びG20の枠組みの下での我々の経済改革アジェンダがどのように雇用創出に貢献するかを財務大臣に報告するよう指示した。

4.我々は,我々の国々のそれぞれにおいて,国ごとに決定される,医療へのアクセス,高齢者及び障害者のための所得保障,児童手当,並びに失業者のための所得保障及びワーキング・プアのための援助といった,社会的保護の床に投資することの重要性を認識する。それらは,成長の強じんさ,社会正義及び一貫性を促進するであろう。この点について,我々は,ミチェル・バチェレ氏が議長を務める社会的保護の床についての諮問グループによる報告書に留意する。

5.我々は,労働における基本的な原則及び権利の完全な尊重を促進し,確保することにコミットする。我々は,ILOが8つのILOの基本条約の批准及び実施を促進し続けることを歓迎し,奨励する。

6.我々は,グローバリゼーションの社会的側面を強化することを決意する。経済問題,通貨問題及び金融問題と並行して,社会及び雇用問題は,引き続きG20のアジェンダの不可欠な一部である。我々は,国際機関に対し,彼らの協調を強化し,より効果的にすることを求める。多国間行動の一貫性を拡大する観点から,我々は,WTO,ILO,OECD,世界銀行,及びIMFが,対話と協力を強化することを奨励する。

7.我々は,社会的対話の重要な役割を確信する。この関連で,我々は,議長国フランスの下で開かれたB20及びL20サミット並びにその共同声明に示されたこれらの会合の共働していく意志を歓迎する。

8.我々の労働雇用担当大臣は,2011年9月26日及び27日,これらの課題に取り組むためパリで会合した。我々は,この宣言に附属された彼らの結論を承認する。我々は,我々の大臣に対し,この議題の進ちょくをレビューするために来年再び会合することを求める。

より安定的かつ強じんな国際通貨システムの構築

9.2010年,G20は,より安定的で強じんな国際通貨システム(IMS)に向けて取り組み,世界経済のシステムの安定性を確保し,世界経済の調整を改善し,新興市場国の向上したウェイトをより反映した国際通貨システムへ適切に移行することにコミットした。2011年,我々は,このコミットメントの実現に向けた具体的な措置をとっている。

成長と発展を促進するため,金融の統合からの恩恵と資本フローの変動に対する強じん性を増加させる

10.我々は,各国及び世界的なレベルで金融の安定性と持続可能な成長を損なう可能性のあるリスクを予防・管理しつつ,金融のグローバル化からの恩恵を享受するため,各国の経験に基づく,資本フローの管理において我々を導く一貫した結論に合意した。

11.これらの目標を追求するため,我々は,現地通貨建て債券市場の発展と深化を支援するための行動計画を採択した。この行動計画においては,様々な国際機関からの技術支援を拡大し,データベースを改善し,及びG20への共同年次進ちょく報告書を準備することとしている。我々は,世界銀行,地域開発銀行,IMF,UNCTAD,OECD,BIS,及びFSBに対し,この計画の実施を支援するために協働し,我々の次回会合までにその進ちょくについて報告するよう求める。

変化しつつある経済の均衡と新たな国際通貨の出現を反映させる

12.我々は,根底にある経済のファンダメンタルズを反映するため,より市場で決定される為替レートシステムにより迅速に移行し,為替レートの柔軟性を向上させるとともに,為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避け、通貨の競争的な切り下げを回避することへのコミットメントを確認する。我々は、短期的な脆弱性を解決し、金融の安定を回復するとともに中期的な成長基盤を強化するための、成長と雇用のための行動計画に示された、為替レート改革へのコミットメントに従い行動することを決意している。我々の行動は、世界的な流動性の動向や資本フローの変動により作り出された課題に対応する上で助けとなり、したがって、為替レート改革の更なる進展を円滑化し、外貨準備の過度な蓄積を減らすであろう。

13.我々は,SDR構成通貨の構成が,世界的な取引及び金融システムにおける通貨の役割を引き続き反映し,通貨の変化する役割と特性を反映するために今後調整されるべきであることに合意した。SDRの構成の評価は既存の基準に基づくべきであり,我々は,IMFに対して,それらの更なる明確化を求める。拡大したSDR構成通貨は,SDRの魅力の重要な決定要素となり,結果として,SDRの世界的な準備資産としての役割に影響を与える。これは,適切な改革のための参考としての役割を果たす。我々は,2015年,そして通貨が基準を満たすにつれ,適切な場合にはそれより早く,SDR構成通貨の構成を見直すことを期待し,潜在的な発展に関するものを含め,この点についてのIMFの更なる分析作業を求める。我々は,SDRの役割についての作業を継続する。

我々の危機対処能力を強化する

14.より構造的な手法への貢献として,我々は,各国政府,中央銀行,地域金融取極及び国際金融機関がそれぞれのマンデートに従い及びその範囲中で役割を果たす,グローバルな資金セーフティ・ネットの更なる強化に合意した。この目的のために,我々はこれらの取組を継続することに合意した。我々は,東アジア等における地域的なスワップ・ラインの最近の改善で示されるように,中央銀行が世界及び地域のレベルでの流動性ショックに対処する主要な役割を担っていることを認識する。我々は,危機予防・対処に向けた取組を強化する,IMFと地域金融取極との間の協力のための共通原則に合意した。

15.この構造的な手法への貢献として,既存の制度及びファシリティに基づき,IMFが新たな予防・流動性ライン(PLL)を提案していることを我々は支持し,IMFに対し,それを迅速に完成させることを求める。これは,ケースバイケースで,システミックなものを含む外性的なショックに直面する強固な政策とファンダメンタルズを有する国への,大規模でより柔軟な短期流動性の供給を可能とするであろう。我々はまた,自然災害,脆弱な紛争後の国における緊急事態,その他の混乱を伴う出来事といった緊急のニーズに対して非譲許的な融資を提供する,単一の緊急ファシリティを導入するIMFの提案を支持する。

16.我々は,ユーロ圏の包括的な計画を歓迎し,各国の改革を含め,早期の具体化と実施を促す。我々は,信認と金融の安定を回復するとともに,資金市場と金融市場の適切な機能を確保するために,全ての資金能力と全ての制度上の能力を活用するというユーロ圏の決意を歓迎する。

我々は,2009年のロンドン・サミット以降すでに動員された大幅な資金を基に,IMFが加盟国全体の利益となるよう,システム上の責任を果たすために十分な資金基盤を持ち続けることを確保する。我々は,適時の方法で追加資金が動員されうることを確保する用意があり,我々の財務大臣に対して,次回の財務大臣会合までに,IMFへの二者間の貢献,SDR,管理勘定等IMFの特別な仕組みへの自発的な貢献を含む,様々な選択肢を並べる作業を行うことを求める。我々は,2010年のIMFのクォータとガバナンスの改革を迅速かつ完全に実施する。

IMFのサーベイランスを強化する

17.我々は,効果的で強化されたIMFのサーベイランスが国際通貨システムの効率性及び安定性にとって不可欠となるであろうことに合意した。この文脈において,多国間のサーベイランスの強化,二国間のサーベイランスとのよりよい統合,及び,セクター,国,地域をまたぐ相互連関の監視の向上が重要である。これを背景として,我々は,統合版マルチサーベイランスレポートとスピルオーバーレポートを含むIMFのサーベイランスの手法の最近の改善を歓迎し,IMFに対し,これらの取組と方法論を引き続き改善するよう求める。

18.我々は,IMFに対し,独立評価機関のサーベイランスに関する報告を考慮しつつ,特に,金融セクター,財政,金融及び為替政策を対象とする,より統合された公平で効果的なIMFのサーベイランス,並びにこれらの対外的な安定性への影響の分析の向上に向けた更なる進ちょくを求める。我々は,IMFに対し,国境を越える資本フローとその伝播のチャネルを定期的に監視し,各国が適用する資本フローの管理に関する措置をアップデートするよう求める。我々はまた,IMFに対し,各国の状況を考慮しつつ,外貨準備の蓄積の要因と評価基準についての作業を継続するよう求め,また,BISとともに,IMFのサーベイランスとその他の監視プロセスに将来的に組み込むことを見込んで,信頼できる指標に基づき,国際流動性の指標に関する作業を継続するよう求める。我々は,為替レートの継続的な不均衡を回避する。我々は,IMFに対し,為替レートの評価を引き続き改善し,その評価を適切に公表するよう求めた。

19.我々は,サーベイランスの強化に向けた取組を継続しつつ,二国間及び多国間のサーベイランスのよりよい統合の必要性を認識し,サーベイランスに関する新たな統合された決定について,来年早い時期のIMFによる提案を期待する。

20.我々は,IMFのサーベイランスの有効性の鍵となる要素であるオーナーシップと実効性を向上させる必要性に合意した。我々は,IMFCを通じてより良い戦略的ガイダンスを提供することにより,大臣と総裁の関与の拡大を確保することに合意した。IMFのサーベイランスの透明性を高めるため,我々は,すべてのIMF加盟国がデータの利用可能性を引き続き改善することの重要性を再確認し,対外バランスの多国間評価を公表するという専務理事の提案を支持し,サーベイランス報告書の適時の公表を提言する。我々は,G20のほとんどの国による4条協議報告書の公表を歓迎し,更なる進ちょくを期待する。

今後の措置

21.より安定的で強じんな国際通貨システムの構築は,長期的な試みである。我々は,世界経済のシステムの安定性と新興市場国の向上したウェイトをより反映した国際通貨システムへの適切な移行とを確保するため作業を継続することにコミットする。2012年,我々は,この方向で引き続き具体的な措置をとる。

金融セクター改革の実施及び深化

22.我々は,すべての金融市場,商品及び参加者が,それぞれの状況に応じ,国際的に整合的かつ非差別的な方法で規制又は監視に服することを確保するという,2008年11月のワシントンにおける我々のコミットメントを達成することを決意している。

特に銀行,店頭デリバティブ,報酬慣行,格付機関に関する我々のコミットメントの遵守及び不十分な点のモニタリングの強化

23.我々は,金融及び経済的なショックへの銀行の耐性を向上させることにコミットしている。今日までに達成された進ちょくに基づき,我々はリスクに基づくバーゼルⅡの枠組みの実施,市場での活動及び証券化に係るバーゼルⅡ-5の追加的要件の2011年末までの実施,そして,2013年から開始し2019年1月1日までに完全実施することとなっているバーゼルⅢの自己資本及び流動性の基準の観察期間と見直し条項を尊重しながらの実施,を完全かつ整合的に行うというコミットメントを遵守することを各国・地域に求める。

24.店頭デリバティブ市場の改革は,より強じんな金融システムを構築するために非常に重要である。2012年末までに,標準化されたすべての店頭デリバティブ契約は,適当な場合には取引所又は電子取引基盤を通じて取引され,中央清算されるべきである。店頭デリバティブ契約は,取引情報蓄積機関に報告され,中央清算されない契約は,より高い自己資本賦課の対象とされるべきである。我々は,規制の隙間及び重複を回避するための更なる協力に合意する。これらの課題のうちいくつかに対処するため,既存の店頭デリバティブ作業グループを補完する協調グループがFSBにより創設されつつある。我々は,改革の実施に関するFSBの進ちょく状況報告書を承認し,支払決済システム委員会(CPSS)と証券監督者国際機構(IOSCO)に対して,FSBと協働し,取引情報蓄積機関により提供され得る,また取引情報蓄積機関へ提出し得るデータの特定に関する作業を進展させること,取引情報蓄積機関により保有されるデータへの規制当局及び監督当局のアクセスに関する原則又は指針を定めることを求める。我々は,バーゼル銀行監督委員会(BCBS)及びIOSCOに対して,他の関係機関とともに,2012年6月までに,中央清算されない店頭デリバティブに対する証拠金に係る基準を市中協議用に策定するよう求めるとともに,FSBに対して,店頭デリバティブに関する我々のコミットメントの達成に向けた進ちょく状況の報告を継続するよう求める。

25.我々は,既に合意されている報酬に関するFSB原則・基準を実施することによって,過度なリスク・テイクをもたらす報酬慣行を抑止しようとする我々のコミットメントを再確認する。これまでの進ちょく状況は良好であるものの,幾つかの国においては,完全実施に当たって障害が残っている。したがって,我々は,FSBに対して,これらの基準を完全に実施する上で依然として残るギャップや障害に焦点を当てた継続的なモニタリングと対外公表を実施すること,個別の金融機関が有する公平な競争条件上の懸念に対処するための二者間の継続的な苦情処理プロセスを実施することを要請する。我々はFSBに対して,この継続的なモニタリングの結果に基づき,重大なリスク・テイカーの定義についての何らかの追加的なガイダンス,ピア・レビュー・プロセスの対象範囲・時期について考慮することを要請する。

26.我々は,当局及び金融機関の外部信用格付への依存を低下させるとのコミットメントを再確認し,基準設定主体,市場参加者,監督当局及び中央銀行に対して,合意されたFSB原則を実施し,外部信用格付へ機械的に依存する慣行に終止符を打つことを要請する。我々はFSBに対し,基準設定主体及び各国・地域によるFSB原則に照らしたこの分野での進ちょくについて,2月に行われる財務大臣・中央銀行総裁会議に報告することを要請する。

27.我々は,金融規制改革のモニタリングを強化し,その進ちょく状況を報告し,不十分な点を捕捉することに合意する。そのために,我々は,特にバーゼルの自己資本と流動性の枠組み,店頭デリバティブ改革,報酬慣行,グローバルなシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)政策,破綻処理の枠組み,シャドーバンキングといった重要分野を中心とした実施状況のモニタリングのためのFSBの協調枠組みを承認する。この作業は可能な限り,基準設定主体が実施するモニタリング活動に立脚していく。我々は,毎年FSBが作成する信号表スコアボードという方法を含め,モニタリング結果を公表することの必要性を強調する。我々は,この信号表スコアボードが本日初めて公表されることを歓迎するとともに,不十分な点が判明した分野については,進ちょくのために必要とされるあらゆる行動を採ることにコミットする。

大きすぎて潰せない問題への対処

28.我々は,いかなる金融機関も「大きすぎて潰せない」ことがないこと,納税者は破綻処理のコストを負担するべきではないこと,を確実にすることを決意している。この目的のため,我々は,破綻処理枠組みに関する新しい国際的な基準,より密度の高い実効的な監督,国境を越えた協力,再建・破綻処理計画の策定,G-SIFIsと特定された銀行に対する2016年からの追加的な損失吸収力の要件から構成されるFSBの包括的な政策枠組みを承認する。FSBは毎年11月に更新されることになる最初のG-SIFIsのリストを本日公表する。我々は,合意されたタイムラインの中でFSBの基準及び提言を実施するとともに,必要な法令改正を実施し,当局間の協力を進め,監督上の権能と権限を強化することにコミットする。

29.我々は,FSBに対し,BCBSと協議した上で,G-SIFIの枠組みを国内のシステム上重要な銀行に速やかに広げていくための方式の画定についての進ちょく状況報告書を4月のG20財務大臣会合までに提出するよう求める。また,我々は,国際的に活動する保険グループに対する監督の共通フレームワークについての作業を継続するよう保険監督者国際機構(IAIS)に求め,システム上重要な市場インフラについての作業を継続するようCPSSとIOSCOに求め,FSBに対してIOSCOと相談した上で,システム上重要なノンバンクの金融主体を特定する手法を2012年末までに用意するよう求める。

金融セクターの規制と監督におけるギャップへの対処

30.銀行類似の活動:シャドーバンキング・システムは規制裁定の機会を生み出すとともに,規制されている銀行セクターの範囲外においてシステミックリスクの蓄積を引き起こし得る。このため,我々はシャドーバンキング・システムに対する規制・監視を強化することに合意し,FSBの最初の11の提言と2012年のうちにこれら提言を更に進展させるための作業計画を承認した。これらは,銀行を通じた間接的なシャドーバンキング規制と,マネー・マーケット・ファンド(MMF),証券化,証券貸借・レポ取引,及びその他のシャドーバンキング主体を含むシャドーバンキングの活動に対する直接的な規制の間のバランスを取ったアプローチに立脚している。我々は財務大臣と中央銀行総裁に対し,4月の会合でこの分野における進ちょく状況をレビューすることを求める。

31.市場:我々は,市場が,我々の経済における投資及び貯蓄の効率的な配分に寄与すること並びに金融の安定にリスクをもたらさないことを確保しなければならない。この目的のため,我々は,高頻度取引及びダーク・リクィディティによってもたらされるリスクに対処する手法を含む,市場の健全性及び効率性に関するIOSCOの最初の提言の実施にコミットするとともに,2012年半ばまでに更なる作業を行うことを求める。我々はまた,IOSCOに対し,次回のサミットまでに,クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場の機能と当該市場が原資産の価格形成において果たす役割の評価を行うよう求める。我々は,金融取引の当事者を単一的に識別するグローバルな取引主体識別子(LEI)の創設を支持する。我々は,公共の利益を代表するグローバルなLEIに関する適切なガバナンスの枠組みに係る提言を次回のサミットまでに策定するための規制当局間の作業の調整を,主導的に支援するようFSBに求める。

32.商品市場:我々は,商品に関するG20研究グループの報告書を歓迎し,商品デリバティブ市場の規制及び監督に関するIOSCOの報告書及び共通原則を承認する。我々は,店頭を含む,商品の現物市場・金融市場の双方において,市場の透明性の向上を確保するとともに,これらの市場における参加者に対する適切な規制及び監督を実現する必要がある。市場の規制主体及び当局には,無秩序な市場に対処し,市場における濫用行為を抑止するための効果的な介入権限が与えられるべきである。特に,市場規制当局は,他の介入権限とともに,適当な場合には特に限月における事前の持ち高制限の設定権限を含む,持ち高管理に関する公式の権限を有し,行使すべきである。我々はIOSCOに対して,2012年末までにその提言の実施に関する報告を行うよう求めた。

33.消費者保護:我々は,金融消費者保護政策を規制・監督の枠組みに統合することが金融安定の強化に資することに合意し,金融消費者保護に関するFSBの報告書と経済協力開発機構(OECD)がFSBとともに作成した金融消費者保護のハイレベル原則を承認する。我々は,我々の国・地域におけるこれらの原則の完全な適用を目指し,FSBとOECDに対し,他の関連主体とともに,それらの原則の実施に係る進ちょくを将来のサミットへ報告し,適切な場合には更なるガイドラインを策定するよう求める。

34.その他の規制上の課題:我々は,金融セクターにおけるリスクの蓄積を制限するためのマクロ健全性政策の枠組みやツールを,FSB・IMF・国際決済銀行(BIS)のこの課題に関する進行中の作業を基に,策定しつつある。我々は,新興市場及び発展途上経済にとって特に関心の高い課題についてのFSB・IMF・世界銀行の共同報告書を承認し,国際機関に対し,新しい国際的な金融の基準や政策を設計するに際して,適切な場合には,新興市場及び発展途上経済に特有の考慮点,懸念点に配慮するよう求める。我々は,単一で質の高い国際的な会計基準を実現し,特に金融商品の評価に関する基準の向上に関し,2009年4月のロンドンサミットで設定した目標を達成するという,我々の目標を再確認する。我々は,国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)に会計基準の収斂プロジェクトを完了するよう求め,2012年4月の財務大臣・中央銀行総裁会合における進ちょく状況報告書を期待している。我々はIASBガバナンスの枠組みを改革するための提案の完了を期待している。

租税回避地域及び非協力的な国・地域への対処

35.我々は,租税回避地域や非協力的な国・地域によりもたらされるリスクから,我々の財政及び世界金融システムを守ることにコミットしている。もたられる損害は特に後発開発途上国にとって特に重要である。本日,我々は以下の3つの分野における進ちょくをレビューした。

 ・租税分野では,グローバル・フォーラムは今や105のメンバーを抱えている。700以上の情報交換協定が署名されており,グローバル・フォーラムは法的枠組み(フェーズ1)及び基準の実施(フェーズ2)の広範なピア・レビュー・プロセスを主導している。我々は,グローバル・フォーラムに対し,来年末までにフェーズ1のレビューの第1ラウンドを完了させ,フェーズ2のレビューを大きく進ちょくさせることを求める。我々は,次回の首脳会合において進ちょくをレビューする。グローバル・フォーラムによってレビューされた59ヶ国の多くは,完全にないしは概ね遵守しているか,或いは379の関連する提言の実施を通じて進ちょくを遂げている。我々は,すべての国・地域,特に現時点では枠組みが整っておらずフェーズ2への資格を有していない11ヶ国・地域に対し,レビューを通じて特定された不十分な点に取り組むことを求める。我々は,特に包括的な租税情報交換の重要性を強調し,能力のある当局が,その改善のための手段を評価し,より良く定義するためのグローバル・フォーラムにおける作業を継続するよう奨励する。我々は,多国間税務執行共助条約に調印するという我々すべてによるコミットメントを歓迎し,他の国・地域がこの条約に参加することを強く奨励する。我々は,この文脈において,適切かつ当該条約に規定されている場合には,任意に自動的な情報交換を行うことを検討する。

 ・健全性分野では,FSBが,国際的に合意された情報交換と協力に係る基準の遵守状況を評価するプロセスを主導し,声明を発表した。我々は,経済上及び金融上の幾つかの指標から見た重要性に基づき選定された61の国・地域のうち,既に41ヶ国・地域がこれらの基準を十分に強く遵守していることが示され,18ヶ国がそれに加わることにコミットしていることに満足の意を表する。我々は,非協力的と特定された国・地域に対し,FSBに要請された行動を取るよう促す。

 ・マネーロンダリング・テロ資金供与対策の分野では,資金洗浄に関する金融活動作業部会(FATF)が今般,戦略的な不備を有する国・地域の更新されたリストを公表した。我々は,すべての国・地域,特に遵守をしていない,或いは十分な進ちょくを遂げていない12の国・地域に対し,FATFと連携してマネーロンダリング・テロ資金供与対策システムを強化するよう促す。

36.我々は,すべての国・地域に対し,租税分野,健全性分野,マネーロンダリング・テロ資金供与対策分野の国際基準を遵守するよう促す。我々は,必要な場合には,これらの基準を満たさずにいる国・地域に対応するため,既存の対抗手段を用いる準備がある。FATF,グローバル・フォーラム及び他の国際機関は,これらの基準の実施において,透明性を高め,租税当局と法執行当局の間の協力を容易にするため,緊密に連携するべきである。我々はまた,FATFとOECDに対し,法人格を有する事業体の濫用を抑止するための更なる作業を行うよう求める。

FSBのキャパシティ,資源,ガバナンスの強化

37.FSBは,金融セクターの規制の構築と実施を促進するうえで,重要な役割を果たしてきた。

38.その役割の増大に合わせるため,我々は,FSB議長の提案を土台として,FSBのキャパシティ,資源,ガバナンスを強化することに合意した。議長提案は,以下の内容を含んでいる。

 ・FSBの継続的な組織基盤の確立: 我々はFSBに強い政治上の責務を与えてきており,BISとの間の既存の上手く機能している強い繋がりを維持しつつも,その責務に対応する法人格,財政上の自律性の向上を伴う組織基盤をFSBに与えるべきである。

 ・運営委員会の再構成: 多くの場合に大きな法令上の変更が求められるような政策の策定及び実施の段階に移行していくのに応じて,我々は,近く行われるFSB運営委員会の見直しにおいて,FSB 憲章と整合的なバランスのとれた形で,G20議長国やより大きな金融システムを有する国の政府の行政部門,更には現在代表されていない地域や金融センターが含まれるべきであることに合意する。

 ・機能の重複を回避し,各基準設定主体の独立性を認識しつつ,政策策定及び実施のモニタリングにおける他の基準設定主体との関係におけるFSBの調整の役割を強化すること。

39.我々は,最初のステップが本年末までに実施されることを求め,次回の首脳会合において改革の実施状況をレビューする。

食料価格変動への対処並びに農業生産及び生産性の増大

40.農業生産及び生産性の増加は,食料安全保障の促進及び持続可能な経済成長の促進に不可欠である。より安定し,予測可能で,歪みがなく,開かれた,そして透明性のある貿易システムは農業へのより多くの投資を可能にし,この点に関し,重要な役割を果たす。過度の食料及び農産品価格の変動を抑制することはまた,重要な取組である。これらは,すべての者にとっての十分で安全かつ栄養のある食料への安定的なアクセスに必要な条件である。我々は,すべての関連国際機関との密接な協力の下,並びに生産者,市民社会及び民間部門との協議の下,これらの重要な課題に対処するために,G20の能力を動員することに合意した。

41.我々の農業大臣は,2011年6月22-23日にパリにおいて初めて会合し,食料価格の変動及び農業に関する行動計画を採択した。我々は,この宣言に附属されたこの行動計画を歓迎する。

42.我々は,この行動計画の5つの目的,すなわち(1)農業生産及び生産性の改善,(2)市場の情報及び透明性の増大,(3)最も脆弱な人々への価格変動の影響の削減,(4)国際的な政策協調の強化,並びに(5)農産品デリバティブ市場の機能改善について行動することを決意した。

43.1. 我々は,農業生産及び生産性を持続的に増加させることにコミットする。2050年までに90億人以上に達すると予想される世界の人口を養うには,同期間に農業生産が70%増加する必要があると見込まれている。我々は,特に最貧諸国において,また小規模自作農の重要性に留意しつつ,責任ある公的及び民間の投資を通じて,農業に更なる投資を行うことに合意する。この点に関し,我々は,以下を決定する。

 ・国際開発金融機関に対し,水,食料及び農業に関する共同行動計画を完成し,次の我々のサミットまでにその実施についてアップデートを提供するよう要請する。

 ・農業生産性の研究及び発展に投資する。最初の措置として,我々は,2011年9月15日にパリで立ち上げられた「国際小麦改良研究イニシアティブ」(小麦イニシアティブ)を支持し,また,我々は,2011年10月13日にブラッセルで開催された農業生産性についてのG20セミナー並びに開発途上諸国と及びそれら諸国の間でイノベーションの共有を促進するために企画され,2011年9月12-13日にモンペリエで開催された,開発のための農業研究に関する初めてのG20会合を歓迎する。

44.我々は,農産品の国際市場をより効果的なものとするため,市場の情報及び透明性を改善することにコミットする。そのため,我々は,以下を立ち上げた。

 ・2011年9月15日のローマにおける,市場の情報の改善のための「農業市場情報システム」(AMIS)。これは,食料市場の予測情報の質,信頼性,正確性,適時性及び比較可能性を向上させるであろう。最初の措置として,AMISは,主要4作物,すなわち小麦,トウモロコシ,米及び大豆についての取組に焦点を当てるであろう。AMISは,G20諸国並びに,この段階において,エジプト,ベトナム,タイ,フィリピン,ナイジェリア,ウクライナ及びカザフスタンが含まれる。これは,国連食糧農業機関(FAO )内に置かれる共同事務局によって管理される。

 ・2011年9月22,23日のジュネーブにおける,「世界農業地理モニタリング・イニシアティブ」。このイニシアティブは,作物生産予測及び気象予報データを強化するため,世界の異なる地域の衛星モニタリング観測システムを調整するであろう。

45.我々は,適切に規制され透明性のある農産物に関する金融市場は,よく機能する現物市場及び危機管理にとっての鍵であることを認識する。我々は,財務大臣によって承認された一次産品についてのIOSCOの提言を歓迎する。

46.我々は,適切なリスク管理手段の発展を通じ,過度の食料価格の変動の,最も脆弱な人々に対する悪影響を緩和することにコミットする。これらの行動は,この最終宣言の開発のセクションで詳述される。

47.行動計画に従って,我々は,国連世界食糧計画(WFP)により非商業人道目的のために購入される食料への輸出制限又は特別な課税を撤廃することに合意し,将来においてそれらを課さないことに合意する。この点に関し,我々は, 2011年12月の閣僚会合において,WTOによる宣言が採択を奨励する。

48.我々は,2011年9月16日,ローマにおいて,政策を調整し,市場危機の際の共通の対応を策定する国際社会の能力を改善するため,「迅速対応フォーラム」を立ち上げた。

49.我々は,水不足及び関連する課題に適切な場において,いかに対処しえるのかに関する,国際機関による報告の作成を歓迎する。

50.我々は,FAO,経済協力開発機構(OECD),世界銀行グループ,国際農業開発基金(IFAD),国連貿易開発会議(UNCTAD ),国連世界食糧計画(WFP),世界貿易機関(WTO),国際通貨基金(IMF),国際食料政策研究所(IFPRI),国連食料問題ハイレベル・タスクフォース(UN HLTF)により,我々の課題を支持するために実施された共同の取組を賞賛し,これらの機関が引き続き緊密に共同して取り組むことを要請する。

51.我々は,食料価格の変動及び農業に関する行動計画の実施を進展させ続ける。

エネルギー市場の機能向上

52.我々は,持続可能かつ包括的な力強い成長を達成するため,よく機能し,透明性のある現物と金融のエネルギー市場,過度の価格変動の低減,エネルギー効率の向上及びクリーン技術へのより良いアクセスの重要性を強調する。我々は,持続可能な開発及びグリーンな成長を促進すること,並びに気候変動の課題に立ち向かう取組を続けることにコミットする。

53.我々は,より透明性のある現物と金融のエネルギー市場にコミットする。商品デリバティブは,金融規制改革の課題の一部として,取り扱われる。我々は,共同石油データ・イニシアティブ(JODI)における石油データベースの適時性,完全性及び信頼性を可能な限り早期に向上させるというコミットメントを進ちょくさせており,コミットメントを再確認する。我々はまた,JODI石油の信頼性を向上させるため,IEFとJODIの作業を支援することにコミットし,その提言を受けることを期待する。我々は,この分野における進ちょくを定期的にレビューし,評価する。

54.我々は,産出国・消費国間の対話の向上のためのIEF憲章のコミットメント及び2011年1月24日の短期,中期及び長期における石油市場の見通し及び予測に関するリヤド・シンポジウムの開催を歓迎する。我々は,これらの会議が年一回行われること,IEF,IEA及びOPECに対し,その成果を明確にした共同コミュニケ及び報告を発表することを求める。

55.我々は,新たなJODIガス・データベースに留意し,JODI石油・データベースと同じ原則に基づいて,JODIガス・データベースに貢献する作業にコミットする。我々はまた,ガス及び石炭に関する短期,中期及び長期の見通し及び予測に関する年一回のシンポジウム及びコミュニケを求める。我々は,ガス及び石炭市場の透明性に関する更なる取組を求め,IEA,IEF及びOPECに対し,2012年半ばまでに,この分野に関する提言を提出するよう求める。

56.価格報告機関が石油市場の適切な機能のために果たす役割を認識しつつ,我々は,証券監督者国際機構(IOSCO)に対し,IEF,IEA,及びOPECとの協調の下,2012年の年央までにその機能及び監督を改善するために財務大臣に提言するよう準備することを求める。

57.我々は,最貧困層に的を絞った支援を提供しつつ,無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を中期的に合理化し段階的に廃止するという我々のコミットメントを再確認する。我々は,非効率な化石燃料補助金を合理化し段階的に廃止するための戦略の実施に関する国別の進ちょく報告書と,化石燃料及びその他のエネルギーに関する支援措置に関するIEA,OPEC,OECD及び世界銀行からの共同報告書を歓迎する。我々は,財務大臣及びその他の実務者に対し,改革を進展させ,来年に報告することを求める。

海洋環境の保護

58.我々は,海洋環境の保護,特に沖合の石油・ガスの探査・開発及び海上輸送に関連する事故の予防と,事故の結果への対処のため,更なる行動をとることを決意する。我々は,沖合の石油・ガスの掘削,生産及び海上輸送に関連する事故及び災害の予防及び管理における法的枠組み及び経験に関するベスト・プラクティス及び情報の共有のためのメカニズムの設立を歓迎する。我々は,地球海洋環境保護ワーキング・グループに対し,OECD,国際規制者フォーラム及びOPECと協力して,来年,進ちょくについて報告し,2012年半ばまでに,これらのベスト・プラクティスを普及させるためにこのメカニズムを設立するよう求める。2012年半ばの時点で,このメカニズムはレビューされる。我々はまた,国際機関及び関連する利害関係者との対話を促進することにコミットする。

クリーン・エネルギー,グリーンな成長及び持続可能な開発の促進

59.我々は,我々の国々及びその他の国々におけるグリーンな成長の潜在性を最大限利用し,持続的な開発を確保するために,低炭素開発戦略を推進する。我々は,効率への障害を克服する,もしくはクリーン・エネルギー及びエネルギー効率(C3E)技術の革新及び展開を促進する効果的な政策を奨励することにコミットする。我々は,国連事務総長の「万人のための持続可能なエネルギー」イニシアティブを歓迎する。我々は,C3E技術の発展及び展開を支持する。我々は,よりよい政策形成の基礎として,これらの技術の展開に関する各国の現状の評価,及びベスト・プラクティスの共有という現在進行中の作業を歓迎する。

60.我々は,2012年,リオデジャネイロにおける,国連持続可能な開発会議の成功にコミットする。「リオ+20」は,成長,雇用創出,貧困削減及び環境保護のための長期的な解決策として,国際的なアジェンダの中核に持続的な開発を再び組み込むために必要な政治的意志を動員する機会となる。グリーンで包括的な成長は,新しい産業及び環境サービス,再生可能エネルギー及び貧困層への基礎的サービスの提供のための新しい方法といった分野において,広範囲の機会を創造する。

気候変動に対する闘いの追求

61.我々は,2011年11月28日から12月9日に開催される気候変動に関するダーバン会議の成功にコミットする。我々は,今回の会議の議長国として南アフリカを支持する。我々は,カンクン合意の実施及びダーバンにおけるすべての交渉分野における更なる進展を求める。

62.我々は,移行委員会の報告に基づいて,ダーバンのバランスのとれた成果の一部として,緑の気候基金の稼働に向けた作業を行う用意がある。

63.気候変動に対する闘いのための資金の調達は,我々の主要な優先事項の一つである。コペンハーゲンにおいて,先進国は,有意義な緩和行動と透明性の文脈で,途上国が気候変動の影響を緩和し,適応することを支援するために,2020年までにすべての資金源から年間1000億米ドルを共同で動員するという目標にコミットした。我々は,気候変動資金に関する世界銀行,IMF,OECD及び地域開発金融機関による報告を議論し,UNFCCCの目的,規定及び原則を考慮した,国際的な金融機関及び関連国連機関による作業の継続を求める。我々は,財務大臣に対し,気候変動資金に関する進ちょくを次のサミットにおいて報告することを求める。

64.我々は,気候変動資金が,革新的な資金源を含む,官民の,また二国間・多数国間の,幅広い種類の資金源からなることを再確認する。我々は,途上国における気候関連投資を支援する公的資金・政策の役割を認識する。我々は,とりわけ多様な市場に基づくメカニズムを通じた世界の気候関連投資の支援についての民間部門の重要な役割を強調し,また,国際開発金融機関に対し,民間資金の流れの動員効果を増大するような,新しくかつ革新的な金融制度を開発するよう求める。

保護主義の回避及び多角的貿易システムの強化

65.世界経済にとって極めて重要なこの時期に,保護主義を防止し内向きにならない方途として多角的貿易体制の価値を強調することは重要である。我々は,トロントで合意されたように,2013年末までスタンドスティルのコミットメントを再確認し,新たな輸出規制及び輸出を刺激するためのWTO 非整合な措置を含む,既にとられた可能性もある,いかなる新たな保護主義的措置も是正することにコミットし,WTO,OECD 及びUNCTADに対し,状況を監視し続けるとともに半年ごとに公に報告を行うことを求めることを求める。

66.我々は,ドーハ開発アジェンダ(DDA)マンデートを支持する。しかし,過去と同じように引き続き交渉を行えば,我々は,DDAを完結できないことは明白である。我々は,これまでに達成された進ちょくを認識する。信認への貢献のために,我々は,2012年に,後発開発途上国の関心事項及び,成果を得られるものについては,DDAマンデートの残る要素を含め,交渉を進めるために斬新で,信頼性のあるアプローチを追求する必要がある。我々は,閣僚に対し,来るジュネーブにおける閣僚会合において,このようなアプローチに取組むよう,また,グローバル化する経済の中での多角的貿易体制に対する課題及び機会に関する議論を行い,メキシコ・サミットまでに報告することを指示する。

67.さらに,より効果的でルールに基づく貿易制度への貢献として,我々は,貿易関係及び政策における透明性の向上と紛争解決メカニズムの機能強化についてより積極的な役割を担うべき,WTOの強化を支持する。

68.我々は,本年末までにロシアをWTO加盟国として歓迎することを期待する。

開発:世界の成長のための投資

69.成長と雇用のための全体目標の一部として,我々は,途上国,特に低所得国(LICS)における潜在成長力及び経済の強じんさを最大化することにコミットする。開発は,世界の景気回復及び将来の成長のための投資のための我々のアジェンダの鍵となる要素である。それはまた,世界中で人々の生活水準を改善するために必要な雇用を創出するために極めて重要である。開発は,すべてのG20諸国にとって共通の関心であり義務であると認識し,我々の閣僚は,2011年9月23日ワシントンにて,開発に関して初めて会合した。

70.我々は,この宣言に附属された,G20の共有された成長のためのソウル開発合意を実施する開発作業部会の報告を支持し,我々の複数年行動計画の迅速な実施を求める。

71.我々は,途上国の成長を阻害する最も深刻な障害と制約を克服するための行動をとる。この点に関し,我々は,食料安全保障及びインフラという二つの優先事項に焦点を当て,開発資金の問題に対処することを決定した。

アフリカの角における人道的危機は,食料不安への緊急及び長期的な対応を強化する必要性を強調する。我々の複数年の「食料価格の変動及び農業に関する行動計画」に従い,我々は以下を行う。

 ・パイロット・プロジェクトとして,焦点を絞った地域の緊急人道食料備蓄を創設する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)のイニシアティブ,及び「ASEAN+3」の緊急コメ備蓄イニシアティブを歓迎する。

 ・我々の次のサミットまでに,国際開発金融機関に対し,水,食料及び農業に関する共同行動計画を完成し,その実施についてアップデートを提供するよう促す。

 ・関係者に対し,ラクイラ食料安全保障イニシアティブ及び,世界農業食料安全保障プログラムを含むその他のイニシアティブの実施を支持する。

 ・農業の生産及び生産性を改善するための能力構築及び知識共有を強化する熱帯農業プラットフォームを立ち上げる。

 ・農業への小規模自作農に配慮した投資を促進し,バリューチェーンの中での小規模生産者の市場への包摂及びエンパワメントのための機会を検討する。

 ・過度な価格変動に対して最も脆弱な人々を保護するため,世界銀行グループ(IFC:国際金融公社)によって開発された農産物価格リスク管理商品の拡大を含む,商品のヘッジ手段,天候インデックス保険及び条件付資金調達ツールのようなリスク管理手段を支持する。我々は,諸国際機関に対し,低所得国にリスク管理に関する専門知識及び助言を提供するために協働することを求め,また,我々は,アフリカの農業政策にリスク管理を統合するためのNEPADイニシアティブを歓迎する。

 ・すべての国に対し,農業への持続可能な投資を確保するため,責任ある農業投資の原則(PRAI)を支持するよう奨励する。

 ・直接的な栄養介入と,すべての関連する政策への栄養の組み入れとの組み合わせを通じた,栄養の強化への我々のコミットメントを確認する。

73.特に低所得国(LICS)における,また限定はしないが,サブサハラ・アフリカに特に重点を置いた,途上国のインフラへの投資は,新たな成長源を開放し,ミレニアム開発目標(MDGS)及び持続可能な開発の達成に貢献するであろう。我々は,官民主導によるインフラ・プロジェクトのため,能力の向上及び資金動員の円滑化の取組を支持する。

74.我々は,ティジャン・ティアム氏(Tidjane Thiam)が議長を務めるハイレベル・パネル(HLP)に対し,インフラのための財源を拡大し多様化する方法を特定することを委託し,国際開発金融機関に対し,ボトルネックに対処する共同行動計画を策定するよう要請した。我々は,HLPの報告及び国際開発金融機関行動計画を歓迎する。その観点から,我々は,以下の提言を支持する。

 ・プロジェクトの供給と質を向上させ,それらを融資可能なものにするため,現地の能力開発を支援し,低所得国における雇用のための技能についての知識共有を強化する。この点に関し,我々は,ハイレベル・パネル研修プログラム及び国際開発金融機関による,地域の官民パートナーシップ専門家ネットワークの発展及び強化の取組を歓迎する。

 ・「ソコニ・アフリカ・インフラ市場」といった,プロジェクトの提案者と融資者をよりよく結びつけるオンラインの地域市場プラットフォームの設立及びインフラ・データの指標化を目指す,アフリカ国別インフラ評価の延長を通じて投資家にとって利用可能な情報の質を向上させる。

 ・プロジェクトの準備への資金供給を優先し,国際開発金融機関に対し,より多くの割合の資金を回転資金的に運用できる準備ファシリティに充てることを奨励し,また,国際開発金融機関に対し,既存の準備ファシリティの有効性を向上させることを求める。

 ・特に地域プロジェクトのための,官民のインフラ資金のための環境整備に貢献する。我々は,建設部門における透明性の向上や,投資と成長の連鎖を考慮に入れた債務持続性枠組みのレビューを支持する。我々は,国際開発金融機関に対し,調達ルールと運用を調和させることを求め,手続きと適格性ルールの相互承認へと進むことを支持する。

 ・特に,現地の仲介機関及び金融市場の強化や,信用補完・保証手段の活用を含む,国際開発金融機関の資本の効果的活用を通じ,資金へのアクセスを改善する。

75.我々は, HLPに対し,国際開発金融機関との協力の下,模範となる投資プロジェクトを特定するための基準を確立するよう委任した。我々は,この宣言に附属されたHLPの報告において言及される11プロジェクトの実施を強調する。これら11プロジェクトは,グローバル市場への統合及びアクセスの増加により,環境の持続可能性を十分考慮しながら,地域に変革的な影響をもたらす可能性を有している。我々は,国際開発金融機関に対し,関係国と協力し,地域の優先度(特に,アフリカ・インフラ開発計画)にしたがって,HLPの基準に合致するようなプロジェクトの実施を追求するとともに,プロジェクトの準備への資金供給,特にNEPADインフラ・プロジェクト準備ファシリティを優先づけるよう求める。

76.我々は,これら具体的な行動についてフォローアップすることの重要性を強調し,国際開発金融機関に対し,達成された進ちょくに関する定期的なアップデートの提供を求める。

77.経済ショックは最も脆弱な人々に不均衡に影響を与えることを認識し,我々は,より包括的で強じんな成長を確保することにコミットする。我々はしたがって,途上国,特に低所得国において,国別に設計される社会的保護の床の実施及び拡大を支持することを決意する。我々は,送金の平均費用を今日の10%から2014年までに5%に削減し,年間150億ドルが送金の受け手側の家族に追加的にわたるように貢献するよう取り組む。

78.全世界で25億の人々と数百万の中小企業(SMES)が正規の金融サービスにアクセスがなく,途上国がこの試練を乗り越えることの大いなる重要性を認識し,我々は,ソウルにて,野心的な金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)を立ち上げた。我々は,中小企業向け金融の発展を促進し,国際的な金融に関する基準に金融包摂の原則を含めるためのGPFIによる継続中の作業を賞賛する。我々は,この宣言に附属された報告書で提示された5つの提言を支持し,議長国メキシコの下,我々の取組を追求することにコミットする。

79.我々は,ビル・ゲイツ氏による,開発資金に関する報告の紹介を歓迎する。我々は,官民双方のすべての関係者の関与並びに国内資金,外部資金及び革新的資金源の動員の重要性を認識する。

80.ソウルで合意された複数年行動計画と整合的に,我々は,開発の主要な動力として,途上国の国内資源動員と効果的な管理を強く支持する。これには,税務管理及び歳入制度の設計及び効率的な管理や,特に鉱物及び天然資源への投資における透明性のための,技術支援及び能力構築が含まれる。我々は,多国籍企業に対し,透明性及び適用される税法の完全な遵守を強化するよう促す。我々は,移転価格法制の起草及び実施において,需要主導ベースで,途上国を支援するイニシアティブを歓迎する。我々は,すべての国に対し,税目的の透明性及び情報交換に関するグローバル・フォーラムに参加するよう奨励する。

81.我々は,政府開発援助の極めて重要な役割を強調する。先進国によってなされた援助のコミットメントは達成されるべきである。新興G20諸国は,他の途上国に対する支援の水準を拡大することを約束し,もしくは継続する。我々は,貧しい国々がイノベーションと技術進歩から急速に利益を得るよう確保することが強調されたことを歓迎し,また,優先度の高いイノベーションを進めるため,三角パートナーシップを奨励することに合意する。我々は,最も効果の高い介入に集中することにより援助の質と効率を引き上げ,開発についての具体的な成果と全体的な影響により焦点を当てることにコミットする。

82.我々は,開発のニーズに対応するために,徐々に新たな資金源を見出すことが必要となることに合意する。我々は,先進的な市場コミットメント,海外移民のための債券,船舶燃料への税制,たばこ税,及び様々な金融税制の仕組みといった,ビル・ゲイツ氏の強調した革新的な財源の一連の選択肢について議論した。我々の一部は,これらの選択肢の一部を実施済みであるか,もしくは検討する用意がある。我々は,我々の一部の国における,特に開発支援のための,金融取引税を含め,様々な目的のために金融セクターに課税するイニシアティブを認識する。

83.我々は,韓国・釜山で開催される,来る第四回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム(2011年11月29日-12月1日)を歓迎する。このフォーラムは開発の効率性に対処するためのより包括的なパートナーシップを確立するための機会である。

84.我々は,アジア開発基金と国際農業開発基金の増資成功に期待する。

腐敗との我々の闘いの強化

85.腐敗は,経済の成長及び発展にとって主要な障害である。我々は,G20腐敗対策行動計画の実施について重要な進ちょくを成し遂げた。我々は,各国及びG20共同で講じられた主要な措置を示すとともに,G20諸国が,行動計画について前向きな進ちょくを引き続き成し遂げることを確保するために求められるさらなる行動を規定する,この宣言に附属された専門家の報告書を承認する。

86.この文脈で,

 ・我々は,インドによる国連腐敗防止条約(UNCAC)の批准を歓迎する。我々はまた,ロシアによる経済協力開発機構(OECD)外国公務員贈賄防止条約への参加の決定を歓迎する。我々は,UNCACの批准及び実施の加速と,OECD贈賄作業部会内での任意のより積極的な参加にコミットする。我々はさらに,行動計画の精神に基づいて措置を講じているメンバー国を賞賛する。

 ・我々は,UNCACの実施についての最初のレビューを賞賛する。我々は,特に市民社会の参加と透明性に関し,メカニズムの付託事項にしたがって任意の選択肢を考慮することにより,UNCACレビューの透明性及び包括性の確保において模範を示すことにコミットする。

 ・我々は,戦略的なマネーロンダリング・テロ資金対策上の不備を有する国・地域を特定しこれに関与することを継続するとともに,越境電信送金,真の受益者,顧客のデューデリジェンス及び強化されたデューデリジェンスに関する透明性を求めるFATF 勧告をアップデートし実施するFATFの作業を支援する。

 ・我々は,2012年末までに具体的な結果を伴う,世界銀行の不正蓄財回収(StAR)イニシアティブを基礎とする財産回復のための枠組み,公益通報者の保護,腐敗した公務員の入国拒否,及び公平で透明な公共調達を含む公共部門の透明性を含む作業計画に同意する。

87.我々は,採取産業透明性イニシアティブ(EITI)への任意の参加を含む,民間部門と政府との関係において透明性を高めることを目指すイニシアティブを歓迎する。我々はまた,我々の一部の国が講じた,採取産業の企業に対し彼らが操業する国々において支払うものを公表するよう要請し,建設部門透明性イニシアティブ(CoST)を支持する措置を認識する。

88.我々は,腐敗との闘いへの民間部門の関与の強化を賞賛する。我々は,我々の行動計画を基礎とする,B20によるコミットメントを歓迎し,彼らに対し,具体的な行動をとるよう促す。

89.我々は,我々のコミットメントに責任を負うと共に,我々の次回のサミットにおいて進ちょくについてレビューを行う。

ガバナンス

90.我々は,グローバル・ガバナンスに関するデービッド・キャメロン英国首相の報告書を歓迎する。

91.国際経済協力に関する第一のフォーラムとして,G20は,先進国も新興国も主要経済国が一同に会し,政策を調整し,世界の経済的な相互依存という課題に取り組むために必要な政治的合意を生み出す点で独自である。G20は,首脳が主導する非公式なグループであり,そうあり続けるべきである。G20は,国際的ガバナンスの全体的な枠組みの一部である。

92.我々は,課題に対応するために必要とされる政治的合意を構築し,維持する能力を強化するために,G20が引き続き効率的,透明で,かつ説明責任を果たさなければならないことに合意する。これを達成するために,我々は以下を決定する。

 ・広範な世界経済の課題へ焦点を当て続ける。

 ・我々の課題と作業計画を効率的に遂行する能力を強化する。我々は,過去,現在,将来の議長国からなり,G20メンバー国との協議の下,G20の作業を運営するトロイカを公式化することを決定する。我々は,シェルパに対し,議長国メキシコの下でG20のための作業慣行を策定するよう求める。

 ・メンバー国以外の各国,国連を含む国際・地域機関及びその他の主体との一貫した効果的な関与を追求し,適切な場合には,我々の作業への貢献を歓迎する。我々はまた,市民社会への関与を奨励する。我々は,シェルパに対し,次回会合のために提言を策定するよう要請する。

93.我々は,主要経済国を対等な立場で集め,行動を触媒するというG20創設の精神が基本となるものであることを再確認し,それ故,我々の集団的な政治的意思をもって,経済上及び財政上の議題並びに関連国際機関の改革をより効果的な作業に置くことに合意する。

94.12月1日に,メキシコはG20の議長国を開始する。我々は,2012年6月に議長国メキシコの下で,バハ・カリフォルニアのロス・カボスにおいて会合する。2013年にロシアが,2014年にオーストラリアが,2015年にトルコがG20の議長国を務める。我々はまた,G20の改革の一部として,2015年の後は各年のG20議長国は,中国,インドネシア,日本,韓国からなるアジア・グループからはじまり,交替制の地域グループから選ばれることに合意した。地域グループの詳細は別添される。

95.我々は,フランスにG20議長国と成功裡に終わったカンヌ・サミットの主催について感謝する。