[文書名] G20サンクトペテルブルク・サミット 首脳宣言
前文
1. 我々,G20首脳は,世界経済を強化するために協力していくとの継続的なコミットメントによって団結しつつ,2013年9月5日及び6日にサンクトペテルブルクにおいて会合した。
2. 成長を強化し,雇用を創出することは,我々の最優先課題であり,我々は,多くの雇用を伴い,強固で持続可能かつ均衡ある成長の道筋に戻るための断固たる行動をとることに完全にコミットしている。
3. 最初の会合からこれまでの5年間において,G20の協調した行動は金融危機に対処し,世界経済を回復軌道に乗せる上で極めて重要であった。しかし,我々の仕事はまだ完了しておらず,G20諸国が,現代史において最も長期化している危機からの恒久的な出口を見出すために,我々の全ての共同の努力を集中することは引き続き極めて重要であるとの点で一致した。
4. 我々にとって最も緊急に必要なことは,世界的な回復のモメンタムを増大させ,より高水準の成長とより質の高い雇用を生み出す一方で,長期的な成長の基盤を強化するとともに,回復を失速させ得る政策,あるいは他国の利益を犠牲にして成長を促進するような政策を回避することである。
5. 我々は,健全で持続可能な経済成長とは,投資の増大と予見可能性,信頼と透明性,更には市場における政策と慣行の一部としての効果的な規制に,確固として基づくものであると理解する。
6. 世界の経済大国の首脳として,我々は,開かれた,ルールに基づく世界経済システムを強化するとの責任を共有する。我々は,主要な世界経済の課題に対処するために協力して努力することにコミットしている。
・財政の持続可能性を確保しつつ,より強固な回復を実現すること。我々は,本日,強固で持続可能かつ均衡ある成長を実現するための我々の戦略を示すサンクトペテルブルク行動計画に合意した。
・特に若者の,失業及び不完全雇用。我々は一致して,より質が高く生産的な雇用を実現する決意である。調整され,統合された公共政策(マクロ経済,金融,財政,教育,技能開発,イノベーション,雇用,社会的保護)は,この目標を達成する上で重要である。我々は,本日,各国の異なる憲法上の状況に応じて適切に作成される国別の計画や行動を交換しつつ,包摂的な労働市場を支援するための努力を継続することにコミットした。
・経済成長,雇用創出,及び開発を強化するためのインフラや中小企業に対するものを含む,長期投資ファイナンスの重要性。本日,我々は,長期投資ファイナンスの確保やアクセスに影響を与える要因を評価することに資する作業計画を承認し,国内の投資環境を具体的に改善するための共同の措置や国別の措置を特定し,実施し始めることにコミットした。
・自由でルールに基づく貿易は経済的な機会を促進する。我々は,強固な多角的貿易体制が極めて重要であることを強調し,全てのWTO加盟国が必要な柔軟性を示し,本年の多国間貿易交渉において成功裏の結果に到達するよう求めた。我々は,保護主義的措置を控えるとの我々のコミットメントを延長し,地域貿易協定を含め,貿易の透明性向上を目指す。
・国境を越える脱税や租税回避は我々の財政を損ない,租税システムの公正性に対する国民の信頼を損なう。本日,我々は,これらの問題に対処する計画を承認し,租税回避,有害な慣行,及び濫用的なタックス・プランニングに取り組むための我々のルールを変更するための措置をとることにコミットした。
・我々は,危機を引き起こした主要な断層に対処するための幅広い金融改革に合意し,それらを実施しているところである。我々は,「大きすぎて潰せない」問題の終結に向けた実質的な進捗を生み,透明性と市場の健全性を向上させ,規制のギャップを是正し,シャドーバンキングのリスクに対処しつつ,より強じんな金融機関を構築している。我々は,人々のニーズに応える安全で信頼性のある金融システムを構築するための取組を追求する。
・G20諸国は,全ての人々に対して強固で持続可能かつ均衡ある成長から利益を得る機会を確保することに責任を有する。我々は,サンクトペテルブルク開発アウトルックを承認して,食料安全保障,金融包摂,インフラ,人材開発,及び国内資金の動員を向上させるための具体的な取組に共同の努力を集中することとした。
・腐敗は持続可能な経済成長や貧困削減を妨げ,財政の安定や経済全体を脅かす。我々は,G20腐敗対策行動計画を実施して,国内外からの贈賄と闘い,リスクの高いセクターにおける腐敗に対処し,国際協力を強化し,腐敗との闘いにおいて公的な清廉性や透明性を促進するとのコミットメントを維持していく。我々は,持続的かつ集中的な努力の必要性を認識しつつ,サンクトペテルブルク戦略枠組みを承認する。
・我々は,よりクリーンで効率的かつ信頼できるエネルギー源を開発するとともに,より透明な現物市場や金融商品市場を整備するとの共通の関心を有する。我々は,エネルギー協力を強化し,エネルギー市場に関するデータをより正確かつ入手可能なものとするとともに,市場の効率性を向上させ,より持続可能なエネルギーの未来への移行を促すための,よりクリーンで効率的なエネルギー技術の開発を支援するための措置をとることにコミットする。我々は,気候変動及び環境保護という,世界的な解決策を必要とする世界的な問題に協力して対処するとのコミットメントを強調する。
・我々は,財政の持続可能性の文脈において,より強固で持続可能かつ均衡ある成長を実現するための包括的な成長戦略を引き続き策定していく。
7. あまりに多くの人々が現在進行中の世界的な経済回復に依然として参加していない。G20は,強固で持続可能かつ均衡ある成長のみならず,全ての人々の才能を更に活用するような,より包摂的な成長のパターンのためにも努力する必要がある。
8. 協力,協調,及び信頼のために,我々は引き続き努力する。
世界経済と強固で持続可能かつ均衡ある成長のためのG20フレームワーク
9. 我々は多くの重要な政策措置をとり,それらは主要なテール・リスクを抑え込み,金融市場の状況を改善し,回復を持続させることに貢献した。米国では民間需要が強まり,日本と英国では成長が強まっている。ユーロ圏では回復の兆候が見られる。新興国では成長が続いているものの,これらのうちの一部の国では成長は減速している。2013年の世界の成長見通しは,昨年を通じて繰り返し下方修正され,世界のリバランスは不完全で,地域間の成長格差は開いたままであり,失業,特に若年層における失業が,許容できないほど高い水準にとどまっている。我々の行動にもかかわらず,回復は弱すぎ,リスクは依然として下方リスクの方が強い。ここ数ヶ月間で,金融市場の変動は増加している。
10. 我々は,世界経済にとっての主要な課題は次のとおりであると考える。
・弱い成長と依然として高水準の失業,特に若年層における失業,多くの国におけるより包摂的な成長の必要性
・欧州における金融市場の分断と銀行同盟の断固たる実施
・いくつかの新興国における成長の鈍化。これは,一部のケースでは,資本フローの変動,よりタイトな金融環境,一次産品価格の変動及び国内の構造的課題を反映している。
・市場が引き続き不確実なことや国内の硬直性などに起因する,多くの国における不十分な民間投資の水準
・いくつかの国,特に実際の債務対GDP比や予想される債務対GDP比の水準が最も高い国々において,短期的な回復を適切に支えつつも対処する必要がある, 高い債務水準とその持続可能性
・先進国において成長が強まり,その結果金融政策の再調整への期待が生じることに伴う資本フローの変動
・不完全な世界の需要のリバランス
・財政政策の審議に関する不確実性の継続
11. これらの課題に対処し,世界経済をより強固で,より持続可能かつ均衡ある成長の道筋に乗せるために,我々はサンクトペテルブルク行動計画に示したとおり,これまでの行動を踏まえ,新たな措置を策定した(付属書)。行動計画は,意欲的かつ的を絞った改革により, 強固で持続可能かつ均衡ある成長の基礎を強化すると同時に,経済活動と雇用創出を押し上げ,回復を支え,今後の見通しに対する短期的なリスクに対処するために策定されている。我々は共に行動し,我々の全てのコミットメントを適時に実施し,このプロセスを厳格に監視していく。
12. 我々の当面の焦点は,先進国における回復の兆候をとらえ,これが世界経済全体の利益のために持続的なものとなるよう,適時の行動により,成長と雇用を増加させる状況を創出することにある。
13. この点について,ユーロ圏は,銀行のバランスシートを強化し,金融市場の分断を縮小させ,遅延なく断固として銀行同盟に向けて前進するための更なる努力などを通じ,経済通貨同盟の基礎を強化することにコミットしている。G20の先進国は,引き続き持続可能な財政にコミットしつつ,財政戦略の実施に際しては機動的な姿勢を維持することで一致している。金融市場の変動の増加に直面し,新興国は,ファンダメンタルズを改善させ,外からのショックに対する耐性を高め,金融システムを強化するための取組を含め,成長を支え,安定を維持するために必要な行動をとることで一致している。
14. 金融政策は,中央銀行の各々のマンデートに従って,引き続き国内の物価安定と経済回復を支えることに向けられる。我々は,非伝統的金融政策を含む緩和的な金融政策が,近年,世界経済を支援してきていることを認識している。我々は,長期間の金融緩和から生じるリスクと意図せざる負の副作用に引き続き留意する。我々は,強化された持続的な成長は,いずれは金融政策の正常化に向けた移行を伴うものであることを認識する。我々の中央銀行は,金融政策のあり方の将来的な変更については,引き続き注意深く測定され,明確なコミュニケーションが行われる,ということにコミットしている。
15. 我々は,資金フローの過度の変動や為替レートの無秩序な動きは, いくつかの新興国において最近見られるとおり,経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。一般的に,これらの国における,より強固な政策枠組みは,これらの国がこうした課題により適切に対応することを可能とする。健全なマクロ経済政策,構造改革及び強固なプルーデンスの枠組みは,変動の増加への対処の助けとなる。我々は引き続き金融市場の状況を注意深く監視する。
16. 我々は,国内の成長を支えるために実施された政策が,世界の成長や金融の安定も支えることを確かなものにするとともに,これらの政策が他国に与える波及効果に対応するために協力することをコミットする。
17. 我々は,根底にあるファンダメンタルズを反映するため,より市場で決定される為替レートシステムと為替の柔軟性に一層迅速に移行し,為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避けるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は,通貨の競争的な切り下げを回避し,競争力のために為替レートを目標とはしない。我々は,あらゆる形態の保護主義に対抗し,我々の開かれた市場を維持する。
18. 我々はまた,財政の持続可能性を確保し,投資を促進し,生産性を向上させ,労働力参加を確保し,内外の不均衡に対処するために策定される意欲的かつ的を絞った改革の実施により,長期的な成長の基礎を強化することにもコミットしている。
19. 先進国において財政の持続可能性を確保しつつ,より強固で持続可能な回復を実現することは,引き続き極めて重要である。合意に沿って,全ての先進国は,信頼に足る意欲的な各国個別の中期的な財政戦略を策定した。これらの戦略は,債務対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ,経済成長と雇用創出を支えるため,短期的な経済状況を勘案し,機動的に実施される。多くの新興国も,財政の持続可能性を促進するための戦略の主要な要素を提示している。
20. 重要な構造改革をより緊急に進める必要性を認識しつつ,我々は,より関連性が高く,具体的で,的を絞った方針に沿って改革課題を再設定した。各国は,投資を促進し,基礎的な弱さに対処し,生産性及び競争性を向上させ,労働力参加を増大し,金融の安定性と信用へのアクセスを改善し,並びに内外の不均衡に対処することにより,長期間にわたる強固で持続可能かつ均衡ある成長のための基礎を強化するための幅広い改革にコミットしている。これらの改革は,潜在的成長力の継続的な向上,雇用創出,及び需要のリバランスの実現にとって鍵となる。
21. 我々は,広範にわたる世界の需要のリバランスに向けた更なる進展を実現することを決意している。多くの国における重要な改革を一部反映し,世界的な経常収支不均衡は縮小している一方,この進展の多くの部分は需要の圧縮によって生じている。世界の成長が強まるに伴い,持続的な改善を確保するため,我々は黒字国と赤字国との間における世界の需要のリバランス及び国内のリバランスに向け,更なる政策調整を実施することを決意している。この点に関し,大幅な黒字国においては,より強い内需の成長を実現し,赤字国においては貯蓄を増加させ,競争力を高め,そして,より柔軟な為替レートを実現することが不可欠である。我々は,これら全ての分野における行動にコミットしており,定期的に進捗を評価する。
22. サンクトペテルブルク行動計画は,強固で持続可能かつ均衡ある成長を実現するための我々の改革を示す。さらに,我々の説明責任評価は,これまでのコミットメントの進捗を記載している。我々は,対処すべき残された主要な障害や,より強固で,より持続可能かつ均衡ある成長を各国で達成するために必要な改革を特定する。我々は,我々の財務大臣に対し,包括的な成長戦略を更に策定し,ブリスベン・サミットにおいて提示することを求める。
質の高い雇用を通じた成長
23. 我々は,引き続き一致して,包摂的な成長とより多くの,より良い雇用を促進する決意である。
24. 多くの国における,特に若者の,失業及び不完全雇用は,引き続き,世界経済が直面する主な課題の一つであり,G20の最優先事項である。
25. 生産的でより質の高い雇用を創出することは,強固で持続可能かつ均衡ある成長,貧困削減及び社会的一体性の向上を目指す各国の政策の核である。我々は,強固で協力的なマクロ経済,貿易,投資,及び労働市場に関する政策,並びに持続可能な財政,健全かつよく規制された金融システム及び強じんで効果的な社会的保護システムは,持続可能な雇用を創出する経済成長の基礎であることに合意する。
26. より高い水準の雇用を下支えし,雇用創出,並びに雇用機会と技能の更なる適合を促進する政策改革は我々の成長戦略の中心である。我々は,より多くのより良い雇用を促進するために,各国の状況に応じて,広範囲にわたる行動をとることにコミットする。
・ビジネス環境を改善するとともに,雇用市場の柔軟性と効率性の促進,適切な労働者保護,また,適切な税制や国内状況に応じて必要とされるその他の政府イニシアティブによるものを含む,製品・労働市場において行われる成長を促進するような構造改革を通じて,正規で,より生産的かつやりがいのある雇用の創出を促進する。
・技能の可搬性及びより良い見通しを与え,また,雇用可能性を高めるとともに,流動性を促進するため,人々の技能や質の高い教育及び生涯学習プログラムへ投資する。
・求職者に仕事を探す支援をし,少数派及び脆弱層を労働市場へ参加させ,非正規雇用を減少させるため,労働市場インフラ及び効果的な雇用活性化政策を整えるための的を絞った投資を促進する。
・労働条件,賃金交渉の枠組み,賃金設定に関する国家的システム,及び社会的保護へのアクセスを通じて実現するものを含め,雇用の質を改善する。
・雇用に関する行動の国別の計画を策定し,我々は,その進捗についてブリスベンにて議論する。
27. 調整され,統合された公共政策は,強固で持続可能かつ均衡ある成長を達成し,世界経済への信認を回復させるために極めて重要である。我々は,より高い雇用水準,並びに失業,不完全雇用及び非正規雇用の持続的な現象を確保するため,労働における基本的原則及び権利を十分に尊重し,生産性を向上しつつ,質の高い雇用の創出を促進するため,国内政策(マクロ経済,金融,財政,教育,技能開発,イノベーション,雇用,社会的保護)を結集・調整・統合するための我々の雇用労働大臣及び財務大臣による提言を承認する。
28. 初めて開催された我々の雇用労働大臣・財務大臣会合は,労働,雇用及び社会政策と我々のマクロ経済及び金融政策の協調及び統合のための歓迎される一歩であった。我々は,我々の雇用労働大臣及び我々の経済・財務大臣に対し,質の高い雇用の創出及び豊かな雇用を伴う持続的な成長を促進するため,協調を継続することを求める。我々は,ILO,OECD及び世界銀行グループを含む関連する国際機関が,G20雇用労働大臣による将来の審議へのインプットとして,G20諸国の最近の経験を分析し,より多くのより良い雇用の創出,雇用の正規化の促進,不平等の削減,効果的な社会的保護と労働市場の柔軟性の確保のために最も成功したベスト・プラクティスを特定することを推奨する。
29. 若者の雇用促進は世界的な優先事項である。我々は,質の高い修習生制度及び職業訓練計画,例えば,適切な場合に賃金以外の労働費用を削減することによる,企業による若者の雇用を推奨するための革新的な方策の探求,様々な若年者層への早期介入措置や効果的な求職支援への移行,若者の起業・創業意欲の喚起にコミットしている。若者への保証アプローチ,起業を支援するような学校や大学カリキュラムの開発及びG20各国と社会パートナー間でのベスト・プラクティスの交換の促進を含む状況に応じた戦略は,この観点から極めて重要である。
30. 我々は,失業,不完全雇用及び非正規雇用を持続的に減少させると共に,より高い雇用水準の確保に貢献する,包摂的な労働市場,より良い労働市場情報及び効果的な雇用サービスを支援する取組の増進にコミットする。我々は,適切な労働市場政策と社会政策は,より良い社会的一体性,経済安定化や総需要への支援及び中長期的な成長を確保できるとの認識で一致する。国家の健全な社会的保護の基盤が必要であり,それらは,手頃で,効果的,効率的かつ社会的に適切なものが必要である。我々の社会的保護の政策は,必要な場合に支援を提供しつつ,雇用や求職活動を促進しなければならない。我々は,雇用創出及び労働吸収のためを含む包摂的な経済成長を作り出す上で,中小企業を含む民間セクターを我々の最も重要なパートナーとして奨励することにコミットする。我々はIMFや関連する国際機関に対し,成長,雇用及び所得分配の分野における研究を継続することを推奨する。
31. 我々は,少数派及び脆弱層に対し,生産的で働きがいのある仕事を探す動機づけ及び支援が与えられていることを確保する重要性を認識する。若者,女性,長期的失業者,低技能労働者,ひとり親,障害者や高齢労働者のように仕事を探し,仕事に留まることについて最も大きな障壁に直面するグループに対し,特別な配慮が与えられなければならない。したがって,我々は,これらのグループに応じた,失業者への収入支援と,各国の状況に応じた求職支援,職業体験,公共雇用計画,雇用補助金,条件付き異動や訓練及び雇用への障害の削減を通じた雇用機会の向上を組み合わせるような活性化政策を打ち出し強化することにコミットする。これらの措置は,正規雇用を手に入れるためのより良い機会を提供する,より一般的な取組とリンクされなければならない。我々は,雇用労働大臣及び財務大臣に対し,より包摂的な労働市場に向けた効果的な措置及びグッド・プラクティスを特定するために,また,ILO,OECD及び世界銀行グループによる支援を得て,このコミットメントの実施を実現し,ベスト・プラクティスを交換するため協力することを求める。
32. 我々は,我々のコミットメント達成の進捗の報告及び効果的な政策や措置に関する我々の経験の共有の重要性を確認する。我々は,G20雇用作業部会が作成したデータベースは,労働市場及び雇用の課題に対処するためのベスト・プラクティスや方法の共有を可能にし,経済分析や意思決定の際の重要な情報源となる重要な手段であると考える。これは,若者の雇用と技能開発にとって特に重要である。我々は,必要に応じ,国主体の,及び国別の監視の方法論を開発し,我々の国主体の,及び国別の政策を踏まえた対応をとる際にデータベースを使用するため,データベースの範囲を含め,引き続きこのアプローチに取り組み,拡大することにコミットする。
33. 我々は,B20やL20の貢献に感謝し,成長,雇用,社会的一体性の創出というG20の目標を達成する方法としての社会的対話が有する重要な役割を認識する。
34. 我々は,G20雇用作業部会に対し,その作業に感謝し,その任期をもう1年延長する。我々は,G20雇用作業部会に対し,経済並びに労働及び雇用に関する政策に関連する問題を引き続き研究するとともに,特に若者や長期失業者における構造的失業や国家の社会的保護システムに対処する戦略に集中することを求める。これは,ベスト・プラクティスの共有及び質の高い修習生制度について確認された主要な要素の進捗の見直しのためを含め,我々の雇用労働大臣によって提案された条件を基礎とするものである。我々は,作業部会に対し,ILO,OECD及び世界銀行グループと協力して,それぞれの憲法の下での状況に応じて適切に作成される雇用に関する国別の計画や行動について交換することを調整するよう求める。これらの文書は,G20各国が雇用問題に取り組むために利用される政策や計画の組み合わせに関する情報を含まなければならない。更に,危険な職場を原因として,世界中で繰り返される人命や財産の損失を踏まえ,我々は,作業部会に対し,各国と協議しつつILOと協力して,G20がいかにしてより安全な職場作りへ貢献できるか検討することを指示する。我々は,雇用及び枠組みに関する作業部会と開発に関する作業部会との間で,G20の下での労働問題に関する活動について更なる協力や協調が行われることを推奨する。
投資のためのファイナンス
35. 我々は,長期投資が,持続可能な成長及び雇用創出に果たす重要な役割を認識する。また,インフラや中小企業に対するものを含む長期投資ファイナンスを促進する環境を,各国の状況も考慮した上で整備することの重要性も認識する。とりわけ,我々は,長期資金を呼び込むための投資環境の重要性を認識するとともに,民間資金の動員にとっての障害を特定した上で,それに対処し,背景にある投資環境や公的投資の効率性を改善するための包括的なアプローチをとる。
36. 投資の促進によって,成長を引き上げ,雇用を創出するため,我々は,長期投資ファイナンスにとってより好ましいものとなるように国内投資環境を確実に改善するとともに,特にインフラや中小企業向けプロジェクト実施の効果的な増加につながるような,各国個別及び共同の措置をブリスベン・サミットまでに特定し,実施を開始することにコミットする。これらの措置は,各国の成長戦略の一部となる。
37. 我々は,G20投資ファイナンススタディ・グループが作成した投資のためのファイナンスに関する作業計画(付属書)を承認する。我々は,財務大臣及び中央銀行総裁に対し,関係する国際機関からインプットを得て,また,その他の関連するG20作業部会と協力し,根拠が確かであり,また証拠に基づいた政策イニシアティブを牽引するため,長期投資ファイナンスの確保に関連する課題の分析を広げることを求める。我々は,次回サミットにおいて,関係する国際機関の報告を受けた財務大臣からの提言を期待する。
38. 我々は,政府が,機関投資家のマンデートと慎重なリスク・テイクと整合的に,機関投資家による長期投資ファイナンスを円滑化し,奨励する政策を推進する必要があることに特に合意する。我々は,機関投資家による長期投資ファイナンスに関するG20/OECDハイレベル原則(付属書)を承認し,財務大臣及び中央銀行総裁に対し,OECD及びその他関心のある参加者と協働しつつ,これを実施するためのアプローチを次回サミットまでに特定することを求める。我々は,FSBが現在行っている,金融規制改革が長期投資ファイナンスの供給に与える影響のモニタリングに期待する。
39. 我々は,財務大臣に対して,国内の資本市場の発展を円滑化し,世界的な貯蓄がインフラを含む生産的な長期投資により良く仲介されるようにし,中小企業の金融へのアクセスを改善するための方策を次回サミットまでに特定することを求める。我々は,財務大臣及び中央銀行総裁に対して,民間及び資本市場からの資金がより良く動員される方策を探求するよう求める。我々はまた,民間資金のレバレッジなどにより既存の資金を最適に活用し,開発金融機関の貸出能力を強化するために,新たなアプローチを策定する開発金融機関の進行中の作業を利用することを期待する。我々は,特に新興国や途上国において,世界銀行グループと地域開発銀行による,インフラ投資のために追加的な資金を動員し,触媒するための進行中の作業に留意する。
40. 我々は,特にインフラ投資において,投資プロジェクトの優先順位付け,計画立案,及び資金調達に当たって,また,プロジェクト準備資金をより良く活用するに当たって,プロセスと透明性を改善することの重要性を認識する。生産的な官民パートナーシップ(PPP)による取組の計画立案と条件を改善する方策に特に留意する。
多国間貿易の強化
41. 自由な貿易及び投資,また,開かれ,ルールに基づき,透明性があり無差別なWTOに基づく貿易システムは,世界の成長の回復にとり極めて重要である。我々は,世界の及び各国の経済成長,持続可能な開発及び雇用創出の鍵としての貿易の重要性を強調する。
42. 我々は,多角的貿易体制が円滑に機能することの意義,すなわち,ルールの適切な執行を確保する上での重要性を再確認する。2013年12月にバリで行われるWTO閣僚会議(MC9)における貿易円滑化及び農業や開発課題の一部についての成功裏の結果は,多数国間の更なる貿易自由化及びドーハ開発アジェンダ交渉の進展に向けた足がかりとなり,ポスト・バリにおける成功裏のドーハ・ラウンド交渉に新たな信頼を与えることとなる。
43. 我々は,全WTO加盟国に対し,既存のギャップを埋め,MC9において,前向きかつ均衡のとれた成果を出すために必要な柔軟性を示すよう求める。我々は,MC9においてこのような成果を達成するとともに,成果の早期実施を実現し,WTOの交渉機能の信頼性を示すため,これら交渉において意義ある貢献をする用意がある。
44. 我々は,保護主義による景気の減速及び貿易の弱体化のリスクを認識する。我々は,我々のスタンドスティルのコミットメントを2016年末まで延長するとともに,世界の貿易及び投資に対する障壁や障害の排除について更なる進展を得ることに完全にコミットしつつ,新たな保護主義的措置を是正するとのコミットメントを再確認する。このようなコミットメントの下に,我々は,WTOを通じて保護主義を更に抑制することの重要性を強調し,その目的のために,ドーハ開発ラウンドの成功裏の妥結に向けたステップとして,また,その目標を達成するためのロードマップに関する交渉に勢いを与えるものとして,MC9を成功させるために努力する。
45. 我々は,WTO,OECD及びUNCTADによる,貿易・投資に対する制限的又は開放的な措置の監視を評価する。我々は,これらの機関に対し,保護主義に一層抵抗し,世界の貿易及び投資の自由化を促進するために,それぞれのマンデートと整合的に,この取組を継続し,強化することを求める。我々は,政府,民間セクター及び市民社会の利益のために,これら措置に透明性をもたらすWTOの公開ウェブサイトを歓迎する。
46. 透明性は,多角的貿易体制の礎である。我々は,WTO通報要件を時宜にかなった形で遵守し,既存のWTOルールを通じて透明性を向上することにコミットしている。
47. 我々は,地域貿易協定(RTA)及びその貿易・投資自由化への貢献の重要性を理解する。我々は,RTAが多角的貿易体制を支持することの確保にコミットする。RTAの透明性の向上,及びRTAとそれが多国間ルールの更なる形成に与える影響を理解することが全てのG20参加国にとり構造的な関心であることを認識し,我々は,WTOにおけるRTAに関する我々の作業を継続することにコミットしており,地域貿易協定の透明性向上への我々のアプローチを共有する(付属書)。
48. 我々は,新たな貿易機会を特定し,貿易の流れを促進するための貿易政策データや分析システムの自由な利用を提供する,アフリカ開発銀行,国際貿易センター(ITC),国連貿易開発会議(UNCTAD)及び世界銀行の間のパートナーシップである,貿易における透明性(TNT)イニシアティブを支持する。また,我々は,WTOの統合貿易情報ポータル(I-TIP)を歓迎する。
49. 我々は,グローバル・バリュー・チェーン(GVCs)の急速な拡大及びGVCsへの参加が成長,構造改革,開発及び雇用創出にもたらす影響を更に理解することの重要性を認識する。この点に関し,我々は,OECD,WTO及びUNCTADによってなされた作業を歓迎し,それら機関に対し,各国政府の見解を求めるとともに,GVCsの影響,特に貿易,経済成長,開発,雇用創出及びGVCsに沿った付加価値の分配への影響に関する研究を継続するよう求める。GVCsへの参加機会がもたらす機会と課題の特定,及び付加価値貿易の統計の整備は,やがて,各国が,GVCsから利益を得るために,適切な政策の選択肢を決定する助けとなり得る。我々は,OECDに対し,WTO及びUNCTADと協力し,2014年前半に,報告書を提出することを求める。
税源浸食・利益移転への対処,租税回避への取組,税の透明性と自動的な情報交換の推進
50. 厳しい財政再建や社会的困難を迎えている状況において,多くの国では,全ての納税者が応分の税を支払うことを確保することはかつてないほどの優先課題となっている。租税回避,有害な慣行及び濫用的なタックス・プランニングに対して取り組む必要がある。また,電子経済の発展は,国際課税への課題を提起している。我々は,適当な場合に計画を充実させるメカニズムとともに,税源浸食・利益移転に対処することを目的としたOECD策定の野心的で包括的な行動計画を全面的に支持する。我々はG20/OECD・BEPSプロジェクトの設立を歓迎し,全ての関心のある国が参加することを奨励する。利益を生み出す経済活動が行われ,価値が創出される場所で,利益が課税されるべきである。税源浸食・利益移転を極小化するために,我々は,メンバー国に対し,我々の国内法がどのように税源浸食・利益移転に寄与しているかを検証するとともに,多国籍企業が低税率の国・地域に利益を人為的に移転することによって支払う税の総額を削減することを国際的な及び自国の課税ルールが許容又は奨励しないようにすることを要請する。我々は,足の速い所得への効果的な課税は主要な課題の一つであると認識する。我々は,行動計画で特定された15の課題に対処するための提案及び勧告の進展状況についての定期的な報告を期待するとともに,国家主権の枠組みを考慮しつつ,必要な個別及び共同の行動をとることにコミットする。
51. 我々は,税の透明性の分野で達成された最近の進展を称賛し,多国間及び二国間の自動的情報交換のための真にグローバルなモデルに関するOECDの提案を完全に支持する。その他のあらゆる国・地域に,可能な限り早期に我々に加わることを求めつつ,我々は,新しい国際基準としての自動的情報交換にコミットしている。なお,当該基準は守秘義務と交換された情報の適切な使用を確保しなければならない。我々は,2014年2月までに,自動的情報交換のためのそうした新しい単一の国際基準を提示することを目的とした,G20諸国とともに行うOECDの作業を完全に支持し,2014年央までに効果的な自動的交換の技術的様式を完成させることにコミットする。並行して,我々は,2015年末までにG20諸国間で,税に関する自動的情報交換が開始されることを期待する。我々は全ての国に対し,更なる遅滞なく多国間税務行政執行共助条約に参加することを求める。我々は,世界規模で新しい基準が実際に完全に実施されることを期待する。我々は,グローバル・フォーラムに対し,要請に基づく情報交換の効果的な実施に関する包括的な国別評価を完了させるとともに,当該基準の実施の継続的な監視を確保することを奨励する。我々は,全ての国・地域,とりわけ,フェーズ2にまだ移行していない14の国・地域にグローバル・フォーラムの勧告に取り組むよう促す。我々は,グローバル・フォーラムが真の受益者に関してFATFの取組を活用することを勧める。我々はまた,グローバル・フォーラムに対し,自動的情報交換に関する新しい国際基準の実施を監視し,レビューするメカニズムを設立することを求める。
52. 国内の資金を動員することは開発の資金を調達するために極めて重要であるため,途上国がより透明性のある国際租税システムの利益を享受し,徴税能力を向上させることが可能となるべきである。我々は,税に関するより多くの情報交換から全ての国が利益を得られることの重要性について認識している。我々は,低所得国を含む全ての国にとって自動的情報交換を達成可能なものとすることにコミットしており,それらの国に対し能力構築支援を提供していく。我々は,開発作業部会に対し,財務トラックと協力して,途上国がいかにして自動的情報交換に関して策定中の新しい基準に参画することへの障害を乗り越えられるかを示すロードマップを策定し,サンクトペテルブルク開発アウトルックにある行動に沿って途上国が基準を満たすことを支援するために,OECD,グローバル・フォーラム及びその他の国際機関と協力することを求める。作業部会は我々の次回会合までに報告しなければならない。我々は,国際機関と協働しつつ,我々の専門的知見を共有し,能力構築を支援し,成功を確保するための長期の協力の計画に関与し続ける。この点に関し,我々は,途上国における税分野の知見の共有及び国内キャパシティの向上を目的としたOECDの国境なき税務調査官構想を歓迎する。最後に,我々は,個別の国のニーズを特定し,(自動的情報交換に加えて,)税務執行の分野での能力を強化しつつ,国際機関を通じたものを含め,途上国を支援し,そのような支援が途上国主導で行われることを奨励し続けることにコミットしている。
国際金融アーキテクチャー
53. 進行中のIMFのガバナンス改革を完了させることは,IMFの信頼性,正当性及び有効性を高めるために不可欠である。このため,2010年のIMFクォータ・ガバナンス改革の批准が緊急に必要である。我々は,新たなクォータ計算式に係る最終的な合意に到達するプロセスを,第15次クォータ一般見直しに統合するとの,IMF理事会の決定を引き続き支持する。我々は,ソウル・サミットで合意され,カンヌ及びロスカボスでも再確認されたとおり,クォータ計算式に同意し,2014年1月までに第15次クォータ一般見直しを完了することにIMFの全加盟国とともに引き続きコミットしている。我々は,2013年10月のG20財務大臣会合及びIMFC会合の時までを含め,これらの目標に向けた継続的な進歩を確保することを非常に重視している。我々は,計算式に基づくクォータ配分が,ダイナミックな新興国及び途上国のGDPの力強い成長によって大きく変化している,世界経済に占めるIMF加盟国の相対的な重みをより良く反映すべきとの,我々の従来のコミットメントを再確認する。我々は,このクォータ一般見直しの一部として,IMFの最貧国の声及び代表性を守ることの必要性を再認識する。
54. 我々は,効果的なグローバルなセーフティ・ネットの重要性を認識し,ロスカボスにおいて,多くの国によってIMFの一時的な利用可能資金を4,610億ドルまで増加するとのコミットメントを歓迎した。今日,我々は,これらコミットされた資金の大部分が,バイ融資や債券購入契約を通じて,IMFによって利用可能となったことを公表する。この幅広い協調の努力は,危機の予防と解決におけるIMFの役割を強化し,ひいては国際金融の安定を守ることに寄与するという国際社会の決意を示す。
55. 我々はまた,地域金融取極(RFAs)が現在のグローバルな金融セーフティ・ネットにおいて,重要な役割を果たし得ることを再確認する。我々は,それぞれの機関のマンデートと独立性を守りつつ,協力の重要性を強調する,カンヌで採択したIMFとRFAs間の協力のための一般原則を再確認する。我々は,この分野におけるIMFとG20双方による最近の作業を認識しつつ,確立したコミュニケーション・チャネルを通じ,IMFとRFAsの間で,柔軟かつ自発的な対話が継続的に行われることを期待する。我々は,柔軟かつ自発的な方法による,意見や経験の非公式の交換を促進するための,RFAs間での対話の重要性に留意する。この文脈において,我々は財務大臣及び中央銀行総裁に対し,IMFとRFAの協力及びRFAs間での対話における進展と進捗をフォローするよう求める。
56. 現在の公的債務管理の慣行を強化することは,より強じんな財政を達成するために重要である。我々は,最近の経験を踏まえ,「公的債務管理のためのガイドライン」を見直し,更新するためのIMF及び世界銀行グループによる進行中の作業を歓迎する。我々は財務大臣に対し,10月の財務大臣会合において,ガイドラインの更新に係る進捗を検討し,政府保証を含む公的債務の起債,管理,償還についての優れた慣行の更新に係るOECDの中間報告書を評価することを求める。
57. 近年の出来事は,全てにとって,債務持続可能性が重要であると示した。したがって,我々は,IMF及び世界銀行が,この問題を継続的に注視することを支持する。我々はまた,低所得国のためのIMF及び世界銀行による債務持続性フレームワークの実施を支持し,我々の慣行をより良いものとし,適切なチャネルを通じ,持続可能なファイナンス及び持続可能な成長と開発を促進するため,同フレームワークを考慮に入れる。我々は,持続可能なファイナンスに関するガイドラインを策定することの可能性を含め,これらの問題に関し,低所得国とのより包摂的な議論が必要であることに合意する。我々は,IMF及び世界銀行に対し,低所得国の求めに応じ,低所得国が堅実な中期的な債務管理戦略を策定し,その債務管理能力を向上させるための支援を継続することを求める。
58. 我々は,IMF及びBISによって行われている,価格と数量ベースの双方の手法を勘案し,グローバル流動性の状況を反映する指標の策定に係る作業に留意する。我々は,IMFに対し,グローバルな流動性指標を,いかにして,より広範にIMFのサーベイランス活動の中に組み込んでいくかについての提言の策定を目的とした更なる研究を実施するよう求める。
59. 我々は,十分発展した現地通貨建て債券市場(LCBMs)が,国内経済及び金融システムの強じん性を改善するために重要な役割を果たしていることを再確認する。我々は,LCBMについての診断フレームワークの作成を通じたものを含め,LCBMsの発展に関するG20行動計画を実施するための, IMF,世界銀行グループ,EBRD,OECD及び他の国際機関による作業を歓迎する。我々は,国際機関,その他の技術支援者,政府当局に対し,LCBMの発展を支援するため,改革と能力強化のための優先課題を特定し,これを設定するための診断フレームワークの活用について検討することを奨励する。
60. 我々は,国際開発協会(IDA)第17次増資及びアフリカ開発基金(AfDF)第13次増資の成功に貢献するとのコミットメントを達成する。
金融規制
これまでの成果と今後
61. これまでの5年間で,我々は国際的に一貫した金融システムの改革の実施において大きな進捗を見た。全ての主要な国・地域が,部分的に又は全体について,下記の措置をとった。
・国際的な資本基準(バーゼルIII)の実施
・OTCデリバティブの取引所取引又は電子取引プラットフォームにおける取引,中央清算及び取引報告のために必要な枠組みの整備
・グローバルなシステム上重要な銀行及び保険会社の特定,及びそのリスクを最小化するための,より高い健全性基準に関する合意
・大規模で複雑な金融機関の秩序ある破たん処理を納税者に損失を与えることなく実施するために合意された手段と手続の実施
・シャドーバンキング・システムから生じる金融の安定性に対する潜在的なシステミック・リスクに対処する上での進捗
・これらの改革を実施するための国際的な協調とコミットメントは過去に例を見ないものである。しかし,我々は更なる作業を行う必要がある。我々はその作業が終わるまで改革の姿勢を維持することにコミットしている。
強固で持続可能かつ均衡ある成長を支援する金融システムに向けて
62. 2008年11月のワシントンにおけるコミットメント以来,我々は,危機を引き起こした主要な断層に対処するための幅広い政策改革に合意し,それらを実施しているところであり,全ての金融機関,市場及び参加者が,規制され又は国際的に整合的かつ非差別的な形で,状況に応じて適切な監督の下に置かれることを確保している。我々の作業は実質的に進展したが,まだ完了していない。我々は,システミック・リスクに対処することに完全にコミットしている。我々は,「大きすぎて潰せない」問題の終結に向けた著しい進捗を生み,透明性と市場の健全性を向上させ,規制の格差を是正し,シャドーバンキングのリスクに対処しつつ,より強じんな金融機関を構築している。我々は,デリバティブ市場をより安全にし,市場インフラを強化し,信用格付会社を改革することにより,継続的に機能する金融市場を推進している。
63. 我々は,開かれて,統合され,強じんな世界的金融システムのもたらす利益を完全に実現することにコミットしている。この目的のために,我々は,合意された改革を整合的かつ非差別的な形で完全に実施するために必要な行動をそれぞれの国・地域において引き続きとっていく。我々は,協力と情報共有を強化する。
64. 我々は,モラルハザード及びシステミック・リスクの低減,並びに,持続的かつ均衡ある経済成長を支援する金融の安定促進を狙った金融規制改革を推進している。したがって,我々は,本年の,更なる財政的な自律性並びに金融規制政策の策定及び実施の強化された調整機能を有する法人としてのFSBの設立を歓迎する。また,我々は,我々のサミットのために準備された金融規制改革に関するFSBの全体版及び要約版の進捗報告書及び現在までに達成された著しい進展を歓迎する。我々は,FSBが自らの組織における代表構造を見直すとの意向を支持し,FSBに対し,その見直しについて次回のサミットにおいて報告するよう求める。
65. 我々は,FSBが基準設定主体並びにIMFや世界銀行グループと共同で,規制改革の進展が新興市場・発展途上経済に与える影響について,合意された改革を実施するとの我々のコミットメントを損なうことなく,その重大な意図せざる結果に対処するためにモニタリングすることについての進捗を評価する。我々は,IMF,世界銀行グループ,及び基準設定主体に対し,この分野におけるモニタリング,分析,及び支援を強化することを求める。最後に,我々は,FSBが,規制改革の進展が新興市場・発展途上経済に与える影響について,その実施モニタリングに関する全体的な枠組みの一部として,引き続きモニタリングし,分析し,報告することを奨励する。
66. 我々は,世界の金融システムの分断を避けるような方法で金融改革課題を完了させる決意である。我々は,全ての金融規制に係る問題で引き続き協力し,次回会合において財務大臣,中央銀行総裁,及びFSBが更なる進捗を示すことを期待する。我々は,金融規制改革が金融システムの強さ,安定と経済成長,更には長期投資ファイナンスの入手可能性に与える影響をモニタリングし,評価し続ける。
強じんな金融機関の構築と「大きすぎて潰せない」問題の終結
67. 我々は,国際的に合意された日程に従いバーゼルIIIを実施するという我々のコミットメントを改めて表明し,ロスカボス会合以降に達成された進捗を歓迎する。バーゼルIIIの基準が一貫して適用されることは極めて重要である。したがって,我々は,国・地域の規則とバーゼルIIIの整合性及び国・地域によるバーゼルIIIの実施についての最新の進捗報告書を評価するバーゼル銀行監督委員会(BCBS)の作業を歓迎する。また,我々は,リスク・アセットの規制整合性に関するBCBSの最近の報告を歓迎する。我々は,BCBSが,自己資本規制比率の比較可能性を改善するためのBCBSの取組に期待する。我々は,レバレッジ比率及び安定調達比率の国際的調和という,バーゼルIII枠組みの残りの部分に関する提案を合意された日程と手続に従って最終化させることを期待する。
68. 我々は,「大きすぎて潰せない」問題の終結に向けた進捗及び次のステップに関するFSBの報告書を歓迎する。我々は,システミックな問題を引き起こし得る,全ての金融セクターにFSBの「実効的な破たん処理枠組みの主要な特性」を完全に実施するために必要ないかなる改革をも行うというコミットメントを再確認する。我々は,クロス・ボーダーの破たん処理への障壁を排除するために必要な行動をとる。我々は,監督当局が,強固なマンデート,十分なリソース,行動に当たっての独立性を持つことを確保するというコミットメントを再確認する。我々は,基準設定主体と協議しつつ,2014年末までに,グローバルなシステム上重要な金融機関の破たんの際の損失吸収能力の充実性に関する提案を評価し,策定するようFSBに求める。我々は,銀行構造改革は破たん処理の実行可能性を促進し得ることを認識し,FSBに対し,IMF及びOECDと協働して,国毎の状況を勘案しつつ,クロスボーダーの整合性及び世界的金融安定性の影響を評価し,次回のサミットで報告することを求める。
69. 我々は,当初より破たん処理計画及びより密度の高いグループ監督が適用される,グローバルなシステム上重要な保険会社(G-SIIs)の最初のリストの発表を歓迎する。我々は,そのリストを毎年更新するとともに,2014年の次回G20サミットまでに,G-SIIsに対するより高い損失吸収力の要件の基礎となるものとして,保険監督者国際機構(IAIS)がグループの活動全てを対象とする簡明な資本要件を最終化することを期待する。更に,我々は,国際的に活動する保険グループに対する,定量的な資本基準を含めた,包括的なグループ一体としての監督規制枠組みを構築するためのIAISの更なる作業を期待する。
70. 我々は,FSBに,証券監督者国際機構(IOSCO)その他の基準設定主体と協議しつつ,2013年末までにグローバルなシステム上重要な非銀行・非保険金融主体の特定メソドロジーを市中協議のために策定することを要請する。我々は,支払決済システム委員会(CPSS)及びIOSCOに対し,システム上重要な市場インフラに関する作業を継続することを求める。
透明で,継続的に機能する金融市場の促進
71. 我々は,合意されたOTCデリバティブ改革を実施すべく加盟国が確認した行動やコミットしたスケジュールを含め,OTCデリバティブ改革の進捗状況をまとめたFSB報告書を歓迎する。我々は,残る規制の抵触,不整合,ギャップ及び重複の解決に向けた大きくかつ建設的な一歩として,OTCデリバティブ改革に係るクロスボーダー問題に関する,主要当局による直近の一連の合意を歓迎し,枠組みが整備され評価が可能となった時点で,これらの合意が早急に実施されることを期待する。我々は,国・地域及び規制当局が,本国の規制枠組みを十分尊重しつつ,効果の類似性に着目して,国によって差別されることなく相互の規制及び執行枠組みの質により正当化されるときは,相互の規制に委ねることを可能とすべきとの見解で一致する。我々は規制当局に対して,FSBおよびOTCデリバティブ規制当局者グループと協力して,クロスボーダー規制枠組みの重複や規制回避に関する残る問題を解決するためのスケジュールを報告するよう求める。
72. 我々は,指標及び信用格付会社に関するG20ハイレベルセミナーの成果に留意する。我々は,各国当局及び基準設定主体に対し,FSB行程表に従って,信用格付会社への依存低減に向けた進捗を加速させることを求める。我々は,信用格付会社間の透明性及び競争を向上させるための更なる行動を奨励し,IOSCOによる信用格付会社の行動規範の見直しを期待する。我々は,必要とされる金融指標改革のための作業を調整するFSBの公的部門運営グループの設立を支援する。我々は,IOSCOによる金融指標のための原則を承認し,IOSCO原則に沿って,銀行業界や金融市場で国際的に使用されている指標を必要に応じて改革することを期待する。
73. 我々は,健全な報酬慣行に関する原則及び基準の実施に関するFSBの進捗報告を歓迎する。我々は,これらの原則及び基準が整合性のある形で実施されることを確保するとのコミットメントを再確認し,FSBに対して,実施中のモニタリングを継続するよう求める。
74. 我々は,金融システムの回復力を高めるため,会計基準の収れんに関する継続中の作業の重要性を強調する。我々は,国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)に対し,2013年末までに,質の高い単一の会計基準を達成するための主要な未決着のプロジェクトに関する作業を完了させることを促す。我々は,開示強化作業部会(EDTF)が進めている作業を含め,直面するリスクについての金融機関による開示を強化するため,官民セクターによる更なる取組を奨励する。
75. 我々は,金融監督・規制に係る国際協力及び情報交換に関する基準について更なる進捗を求め,その遵守を奨励する。
シャドーバンキングによるリスクへの対処
76. 我々は,非銀行の金融仲介が経済を支援するための信用を提供する上で銀行に代わる選択肢を提供し得ることを認識しつつ,市場の潜在的なシステム上のリスクを軽減する重要なステップとして,シャドーバンキング・システムの監視及び規制に対する政策提言作成において達成された進捗を歓迎する。我々は,国別の状況を考慮しつつ,政策提言を時宜を得て実施するために努力する。我々は,FSBの本件についての報告を歓迎するとともに,問題となるシャドーバンキング主体や活動について,そのもたらすシステミック・リスクにふさわしい,強化され,包括的な監視・規制に向けた早急な進捗のための明確な期限や行動に係る作業を記載した明確なロードマップ(付属書)に合意した。
資金洗浄及びテロ資金供与との闘い
77. 我々は,FATFによる,資金洗浄及びテロへの資金供与との闘いへの取り組み,及び税に関する犯罪,腐敗,テロリズム及び麻薬密売のようなその他犯罪と闘うための重要な貢献に対する我々のコミットメントを再確認する。特に,我々は,各国によるFATF勧告の履行に対する前向きな進捗を認識しつつ,戦略的な資金洗浄・テロ資金供与対策(AML/CFT)上の問題を有する高リスク国・地域の特定及び監視を支持する。我々は,全ての国に対し,法人及び法的取極めの不透明性がもたらすリスクに対処することを奨励し,また,企業や租税目的にも関連する信託その他法的取極めの実質的所有者の特定に関するFATF勧告を確実に満たすための措置をとることにコミットする。我々は,この情報が法執行当局,徴税機関,及びその他の関連機関に対して,例えば中央登録機関,またはその他適切なメカニズムを通じ,秘密保護に関する法的要件に沿って適時に入手可能となることを確保する。我々は,財務大臣に対して,次回会合までに,企業及び信託のような法的取極の実質的所有者に関するFATF勧告を満たすためにG20諸国が範を示してとった措置について最新の状況を説明するよう求める。
金融包摂,金融教育,消費者保護
78. 我々は,金融包摂のためのグローバルパートナーシップ(GPFI)による金融包摂の推進及び消費者エンパワーメントと消費者保護の統合に関する進捗,特に消費者保護と金融リテラシー向上に取り組むGPFIサブグループの設立を通じた成果を歓迎する。我々は,より詳細な目標設定及びモニタリングを可能にするために, G20基本指標集をより包括的な金融包摂指標に拡張することを承認する。我々は,実施におけるパートナー,すなわち,金融包摂同盟(AFI),貧困層支援協議グループ(CGAP),国際金融公社(IFC),OECD及び世界銀行からの支援を受け入れる。我々は,本宣言に付属するGPFIの報告書における提言を承認し,翌年の議長であるオーストラリアのもとで我々の努力が継続されることにコミットする。我々は,独立した国際機関として組織を設立するとのAFIメンバー国の議論を歓迎する。
79. 成長の促進,雇用創出及び貧困削減のために,中小企業が果たす重要な役割を認識し,我々は,中小企業ファイナンス・チャレンジ及び中小企業ファイナンス・イニシアティブの実施,並びにAFIの中小企業ファイナンスに関するワーキンググループと協力して行う,中小企業ファイナンス・コンパクトを通じたピア・ラーニングへの支援により,中小企業がファイナンスへのアクセスに際して直面する特定の課題に対処するための国レベルでの進捗を歓迎する。中小企業のファイナンス・ギャップは世界中でいまだ大きく開いたままであり,我々は,国際金融機関及び開発金融機関に対し,金融市場のインフラを向上させ,中小企業のファイナンス課題と制約に対処するための革新的な手段の開発を支援することを求める。
80. 我々は,OECD金融教育に関する国際ネットワーク(OECD/INFE)及び世界銀行グループによって金融リテラシー及び金融教育プログラムの測定,評価を行うための実務的ツールを歓迎し,金融リテラシーに関する生徒の学習到達度調査(PISA)などの若年層の金融リテラシーを測定する手段と共にこれを多くの国に広く普及することを支援する。我々はまた,次回サミットまでにOECD/INFEが金融リテラシーに関する成人と若者のための国際的なコア・コンピタンスの枠組みを作成するよう期待する。我々は,OECD/INFE及び世界銀行グループによって作成された,金融包摂及び金融教育における女性及び若年層の障壁に関する報告書を歓迎し,また女性及び女子のための金融教育に関するOECD/INFE政策ガイドラインを承認する。我々は,女性の金融包摂を向上させるために,GPFI,OECD及び世界銀行グループが,有望かつ成功するイニシアティブの再検討を行うことを含め,「女性と金融に関する進捗報告書」における提言を承認する。我々は,ロシアがG20議長を務めたこと及びOECDが金融教育のための国家戦略を公表したことを歓迎するとともに,次回サミットまでに,OECD/INFEにより,金融教育のための国家戦略実施に関する政策ハンドブックが作成されることを期待する。我々は,金融消費者保護に関するG20ハイレベル原則の実施を支援する初めての効果的な一連のアプローチに関するG20/OECDの金融消費者保護タスクフォースの取組を支持し,2014年に,その他の原則に関する報告がなされることを期待する。我々は,国際金融消費者保護ネットワーク(FinCoNet)の組織の正式化プロセスに留意し,このプロセスの成果を期待する。
万人のための開発促進
81. 強固で,持続可能,包摂的かつ強じんな成長を支援し,開発格差を是正することは,雇用と成長のための我々の全体目標にとって引き続き極めて重要である。この点について,我々は,このフォーラムで本年達成された特に以下の進捗を歓迎する。
・食料安全保障:栄養確保ナレッジプラットフォームへの支持,「社会的セーフティ・ネットとリスク管理を通じた食料安全保障」に関するセミナーを通じたベスト・プラクティスの共有,第2回G20主席農業研究者会議の開催,さらに同会合により実施中の,世界的な研究の優先順位及び目標の特定や2014年の成果主義に基づく農業研究への支援のための取組
・インフラ:アフリカにおけるインフラプロジェクト準備ファシリティ(PPFs)の評価の完了,世界銀行及びアジア開発銀行による大・中規模都市における大量輸送インフラプロジェクトに係るツールキット,並びに世界銀行,米州開発銀行,アジア開発銀行による官民パートナーシップに関する資料集及びインフラに関するハイレベル・パネルの提言実施の進捗
・金融包摂:成果主義に基づく革新的なメカニズムを通じたものを含む,世界平均で送金費用の5%までの更なる削減に向けた取組,貧困層のための金融リテラシー及び消費者保護の強化の取組並びに成長,雇用創出及び貧困削減のための中小企業への投資のための資金調達へのアクセス促進の取組を含む,金融包摂を強化するための努力を追求するための,金融包摂に関するグローバル・パートナーシップ(GPFI)を通じたG20財務トラックとの一貫性の強化,更には国際金融公社との共同による女性ファイナンス・ハブの立ち上げ
・人材開発:雇用のための技能に関する世界的な官民の知識共有のためのプラットフォームの立ち上げ,並びに低所得国における雇用のための技能に関する国家行動計画の策定及び技能指標に関するデータベースの構築
・包摂的なグリーン成長:途上国とのワークショップを含む持続可能な開発の文脈における包摂的なグリーン成長のための政策オプションに関する非規範的かつ自発的なツールキットの更なる開発,普及及び実施,並びに持続可能な開発及び貧困撲滅のための包摂的なグリーン投資に関するG20対話プラットフォームの立ち上げ
・国内資金の動員:税源浸食と利益移転(BEPS)に関するOECD及びG20参加国の取組,自動的情報交換,税目的の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム,並びに「国境なき税務調査官」といった,二国間及び多国間のプログラムを通じた,途上国,とりわけ低所得国における税務行政を強化するための継続作業
82. 我々は,食料安全保障と栄養が引き続き我々の課題において最優先事項であることを認識する。我々は,経済成長と雇用創出を推進するため世界的な食料システムを強化するべく,農業における生産性,投資及び貿易を強化することの重要性を認識する。我々は,生産と生産性向上を支援する効果的な施策の特定と実施を推進するためG20における協調を強化し,また,特に低所得国に焦点を当て,とりわけ栄養に配慮した政策や包括的な社会的保護システムを通じて脆弱な人々のための食料安全保障と栄養を向上させることを通じ,飢餓,栄養不足及び栄養不良を更に削減させるための,農業部門における進行中の全ての取組を奨励する。我々は,脆弱な人々を保護するため注意深く的を絞った政策に関連するものを含め,食料安全保障に対する正当な懸念に貿易を歪曲させることなく対応するためのWTOでの議論を支援する。我々は,農業市場の現状に更なる注意を払う必要があり,また,農業市場情報システム(AMIS)が更なる透明性をもたらしつつも,同システムが完全に実施されるための更なる取組が必要であることを認識する。我々は,2011年にG20が承認した,食料価格乱高下及び農業に関する行動計画に規定されているものも含め,過去の全てのG20コミットメント及び既存のイニシアティブを実施するという我々の決意を再確認する。
83. 我々は,2010年開発に関する複数年ソウル行動計画(MYAP)の採択以降に達成した進捗を示すG20開発コミットメントに関するサンクトペテルブルク説明責任報告書を歓迎する。この報告書は,我々の開発コミットメントの多くが今や実施されたことを示し,教訓を提示し,また,達成された成功を強調する。説明責任報告書は,モニタリング継続の重要性を強調し,我々が引き続き取り組むべき分野とG20の開発アジェンダを強化し合理化するための機会を示す。
84. この精神の下, 我々は,主要な優先事項,新たなイニシアティブ及び継続中のコミットメントに言及したサンクトペテルブルク開発アウトルックを承認する(付属書)。2010年の共有された成長のためのソウル開発合意の基礎に基づき,この開発アウトルックは,我々の将来の取組に向けたアプローチを構成する。我々は,開発作業部会に対し,食料安全保障,金融包摂及び送金,インフラ,人材開発並びに国内資金の動員といった中核的な優先課題に係る具体的な行動に焦点を当て,ブリスベン・サミットにおいて,具体的な成果を達成することを求める。我々は,以下により,より効果的な成果のためにワーキング・プラクティスを向上させることにコミットする。
・途上国における包摂的で持続可能な成長を確保するために行動と改革が引き続き最も重要なより少数の主要分野への集中
・途上国へのより大きな影響を確保するための様々なG20ワークストリーム間の政策協調の強化
・監視及び協調を向上させ,作業の更なる透明性を確保するための,事前的説明責任プロセスの実施
・非G20諸国,(特に低所得国),国際機関,民間セクター及び市民社会を含め,利害関係者の関与とパートナーシップの拡大の継続
・新たな優先事項や状況に対応する柔軟なアプローチの確保
85. 我々は,2000年以降のミレニアム開発目標(MDGs)の実現に向けた実質的な進展,及び,世界的な又は各国において特定のターゲットを達成するための世界的な行動の活性化,特に極度の貧困の撲滅と開発促進の成功を歓迎する。しかしながら,MDGs全ての達成見通しは,国及び地域,また,国内及び地域内によっても大きく異なる。我々は,特に開発アジェンダを実施すること,及び,強固で,持続可能,包摂的かつ強じんな成長の促進に焦点を当てることを通じ,MDGs達成に向けた進捗を加速することに引き続きコミットしている。
86. 我々は,国連で継続中のポスト2015年開発目標策定の取組を支援する。我々は,このプロセスに積極的に参加し,新たな枠組みの方向性とその主要原則及び理念について,議論を行っていくとともに,時宜を得た妥結に向けて効果的に貢献する。最終的な成果物は,我々みなが参加する政府間プロセスを通じて決定されるが,多くの準備作業が未だ継続中である。我々は,いくつかの実際の目標例を掲げるポスト2015年開発目標に関するハイレベル・パネルにより作成された報告書の価値のある貢献に留意する。我々は,また,持続可能な開発目標に関する国連総会公開作業部会及び持続可能な開発資金に関する政府間専門家会合の進行中の作業を歓迎する。我々は,ミレニアム宣言,2012年リオ+20の成果文書「我々が望む未来」,イスタンブール宣言及び後発途上国に関する第四回国連会議の行動計画並びにその他の関連する国連会議及びサミットにおける経済・社会・環境分野の成果に示されている原則に基づき,国際開発協力を含めた共同行動が極めて重要であることを強調する。
87. 我々は,様々な国の現実や開発の程度を考慮しつつ,また,各国の政策や優先課題を尊重しつつ,極度の貧困を撲滅し,開発を促進することと,持続可能な開発の環境,経済, 及び社会の側面を均衡させることの双方を重視しながら,簡素で実施可能かつ測定可能な目標が設定される,統合されたポスト2015年開発目標の合意を求める。我々は,2015年以降のG20の活動が,新たな開発枠組みと整合的であることを確保することにコミットする。
88. 人命を脅かし,経済活動を混乱させる新たな病気の発生に対し,迅速かつ効果的な対応を向上させるため,我々は,各国に対し,世界保健機関の国際保健規則の遵守を強化することを求める。
89. 我々は,LDC産品の無税無枠の市場アクセスに関するG20諸国により既に達成された進捗を認識する。
持続可能なエネルギー政策と国際一次産品市場の強じん性
90. エネルギーへのアクセスは,生活のより高い質を実現し,世界経済の動向を好転させる主要な要因である。特に確実かつ受容可能な価格のエネルギーへのアクセスは,開発,貧困撲滅及び社会的包摂にとって極めて重要である。透明性があり,よく機能し,信頼性のあるエネルギー市場と十分な投資は,経済成長,雇用創出及び持続可能な開発を促進するために必要である。
91. 我々は,市場の透明性と効率性を高めるため,認知度の向上,より完全で包括的なデータ,アクセス改善と入手可能性の向上を確保し,キャパシティ・ビルディングへの支援を継続することで,石油に関する共同機関データ・イニシアティブ(JODI)を強化することにコミットする。我々は,ガスに関するJODIが可能な限り早急に立ち上がることを期待する。我々は,2013年5月に国際エネルギー機関(IEA),国際エネルギー・フォーラム(IEF)及び石油輸出国機構(OPEC)が作成した,ガス及び石炭の国際的な市場の透明性を向上させるための実践的な手段についての第二報告書に留意する。我々は,IEFが10月に開かれる次回のG20財務大臣・中央銀行総裁会議までに,これらの分野での進捗に関する報告書を提出することを求める。
92. 我々は,現物市場及び金融商品市場のより高い機能を促進するためのG20の作業を含む,エネルギー関連の問題に関する報告書を歓迎する。我々は,2013年7月20日のコミュニケで示された,適切な透明性と規制を通じて価格報告機関の機能を改善するため価格報告機関について行動を行うという財務大臣のコミットメントを歓迎し,2014年に進捗に関する更なる報告が得られることを歓迎する。我々はまた財務大臣に対し,商品デリバティブ市場の規制及び監督に関するIOSCOの原則の適切な実施状況を定期的に監視するよう要請し,集計された建玉のデータのより広範な公表と制限のないアクセスを奨励する。
93. 我々は,参加国の長期的な繁栄と,現在及び将来の世代の幸福を達成するために,持続可能な開発,エネルギー効率,包摂的なグリーン成長,クリーン・エネルギー技術及びエネルギー安全保障を促進することを目指した取組を歓迎する。我々は国際機関と引き続き協力し,持続可能な開発,クリーン・エネルギー,エネルギー効率及び関連する技術の開発,展開,広範な適用に関する各国の経験とケーススタディを共有し,該当する政策選択と技術についての作業を自発的に進める。我々は,開発途上国での確実かつ受容可能な価格のエネルギーへのアクセスの促進を目的とした世界銀行の新しい報告書「全ての人のための持続可能なエネルギーの将来に向けて」に留意する。また,この観点から,近代的なバイオエネルギーの持続可能かつ責任ある生産と利用と,国際バイオエネルギー・パートナーシップ(GBEP)が果たす役割の重要性を認識する。
94. 我々は,最貧困層を対象とした支援を提供する必要性を認識しつつ,中期的に無駄の多い消費を助長する,非効率的な化石燃料補助金を合理化するとともに段階的に廃止するという我々のコミットメントを再確認する。国別進捗報告書に記された,G20のいくつかの国で行われている取組を歓迎する。我々は,自発的なピア・レビュー・プロセスに向けた方法の開発と,各国主導のピア・レビューが開始されることを歓迎し,また,透明性と説明責任を高める有益な手段であるレビューへの広範で自発的な参加を奨励する。我々は,財務大臣に,第1ラウンドの自発的なピア・レビューの成果を,次回サミットまでに報告することを求める。我々は,不可欠なエネルギーサービスを必要とする人々に対し提供する重要性を認識し,財務大臣に,関連国際機関と協力して,社会的なセーフティ・ネットの強化を含む,最も脆弱な人々のエネルギーへのアクセスを確保するための過渡的政策の策定に向けた政策オプションを検討するよう求める。
95. 世界の成長と開発のために,民間からの投資を含む,G20及び他の国のエネルギーインフラに対する大規模な投資が今後必要とされている。よりスマートで低炭素なエネルギーのインフラ,特にクリーンで持続可能な電力インフラへの更なる投資を,実現可能な範囲で促進するため,現在存在する障害を評価し,機会を見出すことは,我々の共通の関心事項である。この観点から,我々は民間部門と国際開発金融機関のG20エネルギー持続性作業部会(ESWG)へのより緊密な関与を奨励するとともに,2014年にその基盤に基づき,クリーンかつ効率的なエネルギー技術への投資を含むエネルギー投資を妨げている要因を議論し,持続可能で受容可能な価格であり,また効率的かつ安定したエネルギー供給の促進のために必要とされる可能な措置を精査するために,関心を有する公共部門,市場関係者及び国際機関が一同に会する対話が開始されることを求める。
96. 他の政策手段の中で,規制は,投資に適した環境を形成する際に重要な役割を果たし得る。規制の役割は国によって異なり,また規制は国家が主導するプロセスであるも,地域的に統合された範囲内で共有されている場合もあることに鑑み,我々は,規制関連団体と国際機関の支援を得つつ,関心を有するG20諸国の電力規制当局者間で行われた対話を歓迎し,カザンで行われたG20アウトリーチ・エネルギー規制ラウンド・テーブルで合意された,エネルギーインフラに対する健全な規制と投資の促進について言及した声明に留意する。エネルギーインフラ,特にクリーンで受容可能な価格で供給され,かつ持続可能なエネルギーへの投資を促進し,また関心を有する全ての当事者を関与させるための我々の取組に鑑み,我々は関心を有する規制当局が規制当局者間の対話を継続するよう奨励し,またESWGにこの対話に留意するよう求める。
97. 多くの国が,再生可能エネルギー及び原子力,又はそのいずれかの促進などにより,エネルギーミックスとエネルギー利用を改善しようと試みている。原子力は低炭素のオプションであるが,資本集約的であり,また,原子力安全,核セキュリティ及び保障措置・不拡散に関する責任を伴うものである。G20諸国は,新規の,または確立された原子力生産国のいずれであっても,最大限高い水準の原子力安全を達成し,堅固な原子力安全及び核セキュリティの文化を醸成するよう努力すべきであり,また原子力安全に関する国際原子力機関(IAEA)行動計画において求められているように,原子力損害賠償責任に関する国際的な制度の実現に向けて多国間協力を進めるよう奨励する。
98. 我々は,G20地球海洋環境保護(GMEP)イニシアティブの設立後の進捗を評価し,海洋環境の保護,特に海洋油田・ガス田の探査及び開発並びに海上輸送における事故の未然防止と,事後の対応に関する各国のベスト・プラクティスの自発的な交換のためのGMEPメカニズムの重要な要素であるGMEPイニシアティブ・ウェブサイトの立ち上げを歓迎する。我々は参加国に対し,GMEPのマンデートに従い,関連する国際機関と協力し,G20の後援の下に,同ウェブサイトを最大限活用し,関連する情報を共有するよう奨励する。
99. 我々は,強じんなエネルギー市場を通じて世界のエネルギー安全保障に関する政策を推進する際の多国間の協力と調整を行うことの重要性を認識し,IEAが非加盟国への関与を深めるために現在行っている取組を歓迎し,この点に関する進捗を監視する。
気候変動との闘いの追求
100. 気候変動は,引き続き世界経済に決定的な影響を及ぼし,我々の追加的な行動が遅れる分だけコストは高くなる。我々は,気候変動と闘うための我々のコミットメントを改めて表明し,国連気候変動枠組条約第18回締約国会議の成果を歓迎する。我々はカンクン,ダーバン及びドーハでの成果の完全な実施にコミットしており,COP19で成功裏の結果を得ることを目指して,次期議長国のポーランドと連携する。
101. 我々は,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下での合意結果の完全な実施と現在継続中の交渉の支持にコミットしている。我々は,フランスが主催する用意があるCOP21の間に,2015年までに条約の下で全ての締約国に適用される議定書,法的文書または法的効力を有する合意成果を成功裏に採択することを目指して,2014年を通じて政治的意志を動員するための国連事務総長の取組を強く歓迎する。また我々は,経済的,技術的に実現可能な代替手段の調査に基づいた,ハイドロフルオロカーボン(HFCs)の生産と消費の段階的削減のための,モントリオール議定書の専門知識と機関の利用を含む多国間アプローチを通じた補完的イニシアティブを支持する。我々は,排出量のアカウンティングと報告に関して引き続きHFCsをUNFCCCと京都議定書の範囲内に含める。
102. これまでの進展に留意し,我々は,緑の気候基金(GCF)の運用を支持する。我々は,UNFCCCの目的,規定及び原則を考慮しつつ,効果的に気候資金を動員するための方途に関するG20各国の経験についての,気候変動資金に関するG20研究グル―プによる報告書を歓迎する。我々は,問題を検討し,気候資金へのアプローチを特定するために,財務大臣に対し,作業部会の報告書に基づいて作業を継続し,一年後に報告を行うよう要請する。
腐敗との闘いの強化
103. 腐敗は,持続可能な経済成長と貧困削減の重大な妨げとなり,財政の安定性と経済全体の脅威になりうる。腐敗は,公衆の信頼を損ない,資源の分配を歪め,法の支配を弱めるといった形で蝕んでいく。腐敗の影響を受ける国において,潜在的な経済力を妨げている要因をより理解するため,我々は腐敗対策と経済成長に関する分析資料を閲覧可能とし,OECDに対し世界銀行との協力の下で,この分野での取組を継続することを奨励する。
104. G20は世界の経済大国の集まりであり,腐敗を許容しないとの世界的な文化を,止められない動きとすることができる潜在力を有している。我々は,この目的に向け努力を倍加し,特に透明性を高め,実施と執行のギャップを縮小することに努める。
上記に関し,
105. 我々は,サウジアラビアによる国連腐敗防止条約(UNCAC)の批准を温かく歓迎する。我々は,全てのG20参加国に対し,UNCACの批准と実施を奨励し,適切な場合には,OECD外国公務員贈賄防止条約の遵守の可能性の検討を目的としてOECD贈賄作業部会への参加を呼びかける。我々は,UNCACのレビューメカニズムの付託事項の中の選択肢を任意により使うことで,UNCACレビューの透明性と包括性を強化し,これらの取組の模範を示すことにコミットする。
106. 我々は,国内外からの贈賄と賄賂の要求との闘いの決意を改めて表明し,拘束力を持たない外国公務員贈賄罪に係る法執行に関する原則,及び賄賂の要求の撲滅に関する原則を承認する。
107. 我々は,腐敗との闘いにおけるG20参加国間の協力を促進するため,引き続き枠組みを策定し強化させる。我々は,国内法令に従って,腐敗した公務員及び彼らを腐敗させた者のG20諸国への入国を拒否するため,情報を共有し協力するG20ネットワークを立ち上げた。腐敗による犯罪の捜査と訴追,及び腐敗による収益の回収に関する国際協力を強化するため,我々は法律上の相互援助に関するハイレベル原則を承認する。
108. 我々は,司法の独立を確保し,公益通報者保護に関するベスト・プラクティスの共有と法律の施行を行い,腐敗対策機関が不当な影響を受けることなく効果的であることを確保し,公務員の清廉性を促進することに改めてコミットする。
109. 我々は,腐敗を許容しないとの文化を形成し強化するために効果的な腐敗対策教育プログラムを実施し,啓発することを重視する。
110. 我々は,腐敗対策の分野で金融活動作業部会(FATF)が進めている取組への支持を表明する。腐敗対策における,マネーロンダリング対策(AML)及びテロ資金供与対策(CFT)の活用,税に関する犯罪に関する更なる協力及びタックスヘイブンが引き起こすリスクへの対処は,引き続きG20の腐敗対策の専門家とFATFとの間の協力が増大している重要分野である。
111. 我々は,腐敗のリスクの高い分野での腐敗との闘いに特別に注意を払う。我々は,スポーツ,文化やその他の主要な国際行事における腐敗との闘いの取組を称賛し,スポーツ分野の清廉性に関する国際連携の立ち上げに関するイニシアティブを歓迎する。我々は,政府調達と国有財産の民有化を含む,公的部門と民間部門の間の売買関係においても清廉性を促進することにコミットしている。我々は,採取産業透明性イニシアティブ(EITI)への自発的参加を含む,採取産業の透明性向上を目指したイニシアティブを歓迎し,進捗に留意する。我々は,G20腐敗対策作業部会にこの問題を更にフォローするよう求める。
112. 我々は,ビジネス界と市民社会との協力なしに,腐敗を許容しないとの文化を形成することは不可能と考える。我々は,G20腐敗対策作業部会とB20及びC20との間で強化された対話を維持・促進することにコミットし,これらの2つのグループの勧告に留意する。特に,ビジネス界による,腐敗対策の共同行動を強化し,民間部門における腐敗対策に関するコンプライアンスを促進するための組織的取組を発展させるイニシアティブを歓迎する。
113. 我々は,G20腐敗対策行動計画2013-2014の実施のためにG20腐敗対策作業部会が行っている取組の進捗を歓迎し,この声明に付属する作業部会の進捗状況報告を称賛する。腐敗との闘いは持続的かつ集中的な努力を必要とするとの認識に基づき,我々は腐敗対策作業部会の取組を導き,行動計画の基礎を成すサンクトペテルブルク戦略枠組を承認する。2014年には,既存のコミットメントを進めながら,世界的な腐敗との闘いにおけるG20の更なる行動について検討する。
結び
114. 我々は,G20議長国とサンクトペテルブルク・サミットを成功裏に主催したことについてロシアに謝意を示すとともに,オーストラリアの議長の下で,2014年11月にブリスベンで行われる次回会合に期待している。