[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明
1.我々は、いくつかの主要な国における、より力強い経済状況を歓迎する。しかし、世界経済の成長にはばらつきがあり、特に必要とされている雇用を十分に生み出すペースを下回ったままである。金融市場におけるリスクや地政学的緊張によるリスクを含め、下方リスクは残っている。世界経済は、依然として、継続的な需要の弱さに直面し、供給側の制約が成長を妨げている。我々は、これらのリスクから経済を守り、人々を仕事につかせるために、強固で持続可能かつ均衡ある成長、及び強固な金融セクターを必要としている。我々は、これらの課題への対応について団結し、決意している。
2.我々の対応の中で主たるものは、2018年までに、我々全体のGDPを2013年のサンクトペテルブルク・サミット時点の施策により達成される水準よりも2%以上引き上げることを目指し、新たな施策を策定する、という我々のシドニーでの宣言である。この観点から、構造改革は重要である。我々は、成長を促進し、良質な投資を増加・促進し、雇用と労働参加を引き上げ、貿易を向上させ、競争を促進する、一連の新しい具体的な施策を策定した。IMFとOECDによる暫定的分析によると、これらの施策は、重要な正の波及効果も含め、2018年までに我々全体のGDPを追加的に1.8%引き上げる。これらの施策は、マクロ経済政策とともに、世界の経済成長を引き上げ、世界的な需要のリバランシングに貢献するためのものである。これらの施策の実施はまた、人々の生活水準を向上させ、彼らにより多くの機会を与える民間部門の成長を促進するために重要である。我々は、ブリスベン・サミットに向けて、我々全体の成長目標を達成するために、一連の追加的な施策の特定を引き続き進める。我々は、これらの政策コミットメントの実施について互いに責任を持つ。
3.先進国における金融政策は、引き続き経済回復を支えており、中央銀行のマンデートと整合性を保ちつつ、必要な場面ではデフレ圧力に適時に対処すべきである。我々は、幅広く強固な成長の達成を目指しており、これは先進国における金融政策の将来的な正常化を促進する。我々は引き続き、我々の行動について適時に明確なコミュニケーションを行い、政策の在り方を調節し直す際には、世界経済への影響に留意する。我々は、特に、金利が低く資産価格の変動が小さい環境下において、金融市場に過度のリスクが蓄積する可能性に留意する。我々は、これらのリスクを注視し、今後とも、リスクを管理する上での最善の対応であるマクロ経済政策、構造政策、金融規制・監督政策の枠組み、及び他の補完的な施策の強化、及び我々のG20における為替相場のコミットメントの遵守を続ける。我々はまた、グローバルなセーフティ・ネットが引き続き有効であることを確保する。
4.我々は、引き続き、債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ、経済成長と雇用創出を支えるために、短期的な経済状況を勘案して機動的に財政戦略を実施する。我々は、成長に対する我々の財政戦略の貢献を高めるために、政府支出や税の構成及び質の変化について検討することに合意する。
5.投資は需要を増加させ、成長を引き上げる上で重要である。本日、我々は、良質な投資、特にインフラへの投資を増やす、グローバル・インフラストラクチャー・イニシアティブ(GII)に合意した。イニシアティブは、プロジェクトと潜在的な投資家とを結び付けることを助ける ための、知識共有のプラットフォームの構築、データ不足への対処、各国のデータベースとつながったインフラプロジェクトの統合データベースの構築を含む、複数年にわたるインフラの課題の実施を目指す。またイニシアティブは、民間部門の参加を呼び込むための我々の努力の中心となる、投資環境の改善に向けた我々の成長戦略の主要な施策を含む。我々の成長戦略の実施に当たっては、適切なリスク管理を維持しつつ、公的バランスシートの最適な活用を含め、良質な公共及び民間投資の支援を目指す。我々は世界銀行グループ、地域及び各国の開発銀行にバランスシートを引き続き最適に活用するよう慫慂する。イニシアティブ実施のための仕組みは11月に我々の首脳により公表され、既存の能力と組織を最大限に活用する。このイニシアティブを支えるため、我々は、良質な投資、特にインフラへの投資を促進し優先順位付けするための一連の自発的なリーディング・プラクティスについて合意し、モデル文書の準備も含め、それらの実施に向けた効果的なアプローチを策定する。これは、合意されたG20/OECD原則の実施、新たな効果的なアプローチと関連のチェックリストの自発的活用などを通じ、機関投資家からの長期資金を促進するための我々のこれまでの取組を補完する。更に、中小企業向けも含め、ファイナンスを促進するための、証券化市場の透明性や機能を改善する取組が、現在進行 中である。我々は、新興国や途上国において良質なインフラ投資を引き上げるため、開発銀行と民間部門との間の協調に向けたプラットフォームを提供する、グローバル・インフラストラクチャー・ファシリティを設立する世界銀行グループの取組を歓迎する。
6.我々は、世界経済の成長を支えるより強固でより強じんな金融システムを構築するために、2008年の金融危機の後に我々が行った中核的コミットメントの重要な面を達成した。今や銀行は、概して、資本をより充実させ、またより強固な流動性取極めが実施されている。ブリスベン・サミットに向け、資本に関する強化されたバーゼルⅢ規制の銀行への適用に際して、整合性を向上させる計画に関する作業が進行中である。我々は、大規模複雑で、相互に連関しているために、その破たんが経済及び金融セクターに大きな混乱を及ぼし、潜在的に納税者に深刻な損失を生じさせ得るような、グローバルな銀行及び保険会社を特定した。我々は、グローバルなシステム上重要な銀行に対しより厳格な資本の要件を定めてきた。我々は、こうした銀行が仮に破たんした際に納税者を一層保護する追加的な損失吸収力によって、大き過ぎて潰せない問題に対処するための提案の諸条件の明確化における、今日までに達成された大きな進展を歓迎する。我々は、FSBが、ブリスベン・サミットに間に合うよう提案を提出できる状況になるという、FSBの声明を歓迎する。この提案は、今後、市中協議及び定量的影響度調査が行われ、いかなる最終的な措置としての合意より前に、追加的な修正がなされる可能性がある。FSBは、ブリスベン・サミットまでに、そのシャドーバンクに係る枠組みの残っている中核的要素を達成し、この分野の潜在的なシステミックリスクに対処するための監視と行動を引き続き行うことを支持するために、2013年に合意されたロードマップを更新する。店頭(OTC)デリバティブ市場に対する我々の改革は、システミックリスクを低減させ、透明性を向上させる。我々は、こうしたOTCデリバティブ改革の実施における更なる具体的進展の達成を、規制当局に求める。我々は、各国・地域が、サンクト・ペテルブルク宣言に則り正当化される時には、相互の規制に委ねることを奨励する。
7.2014年より先、新たなリスクに引き続き注意を払う一方で、政策枠組みの残っている要素を最終化し、合意した金融規制改革を完全に実施することが重要である。我々は、2015年から開始する、FSBが改革の実施とその効果に関する包括的な年次報告書を準備するという計画を歓迎する。我々はまた、FSB及び国際的な基準設定主体が、それぞれ政策策定及び実施の検証プロセスを要約した情報を、2015年に公表するという計画を歓迎する。我々は、世界経済・金融システムにおいて新興市場国の役割が重要性を増していくことに対応し、またFSBの実効性を保ちつつ、FSBの作業が各国において最善の専門的知見ある当局により情報提供を受けることを確保するような、FSBの代表権構造の見直しが、ブリスベン・サミットまでに完了することを期待する。
8.我々は、成長志向の財政戦略や強靭な経済を税制が支えるため、国境を越える租税回避と脱税にグローバルな対応をすることに強くコミットしている。本日、我々は、2 年間に亘るG20/OECD税源浸食・利益移転(BEPS)行動計画の完了に向けて重要な進展が成されたことを歓迎するとともに、2015年中に全ての行動項目を取りまとめることにコミットする。我々は、国境を越える租税回避に対処し、またこれを抑止する我々の能力に変革をもたらす、相互主義に基づいた、税に関する情報の自動的な交換のための、最終決定された国際的な共通報告基準を承認する。我々は、所要の法制手続きの完了を条件として、2017年又は2018年末までに、相互に及びその他の国との間で自動的情報交換を開始する。我々は、全ての金融センターに対して、ブリスベン・サミットにおいて報告すべく、ベルリンにて開催されるグローバルフォーラム会合までにこのコミットメントを行うことを求めるとともに、新たな国際基準のグローバルな実施を監視するための努力を支持する。我々は、国境を越える税務上のアレンジメントに関与している事業体及び個人に対する法令順守活動についての、我々の税務当局間の一層の協調と協働を支持する。我々は、実質的所有者に関するFATF基準を満たす模範を示すとのサンクトペテルブルグ・コミットメントを実行するための、G20各国におけるこれまでの進捗を歓迎し、更なる措置を奨励する。我々は、途上国がその税源を保全し、増大させることを支援するための実際的な措置を引き続き講じるとともに、自動的情報交換への参加を希望する国を支援するよう準備する。我々は、BEPSの課題へ対応するにあたり途上国の関与を深化させるとともに、その懸念が対処されることを確保している。
9.IMFクォータ・ガバナンス改革はG20にとって優先課題であり、我々は、強固で十分な資金基盤を有するIMFを維持することにコミットしている。我々は引き続き、米国に、2010年に合意された改革を本年末までに批准することを促し、サンクト・ペテルブルクにおける首脳合意と2014年4月の我々の合意を再確認する。
10.我々は、エボラ熱の流行による人的コスト、影響を受けた国やより広い地域の成長及び安定に深刻な影響を及ぼす可能性を懸念し、協調した国際的対応の重要性を強調する。