データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20エネルギ一大臣会合コミュニケ

[場所] イスタンブール
[年月日] 2015年10月2日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

我々,G20エネルギー大臣は,ブリスベンにおける首脳からの指示に従い,初めて会合を行い,今日及び将来のエネルギー分野の課題に対処するための包摂的なエネルギー協力に係るコミットメントを確認した。エネルギー協力の重要性を認識しつつ,G20首脳は,昨年,エネルギー協力に関するG20行動原則(以下,「原則」という。)を承認するとともに,我々に対して,会合を行い,本作業を前進させるための選択肢を報告するように求めた。我々は,エネルギーアクセス,省エネルギー,再生可能エネルギー,市場の透明性及び,貧困層を対象とした支援を提供する必要性を認識しつつ無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の合理化及び段階的廃止を実施するとの検討を通じた本原則への対処に係るトルコ議長下における進展を歓迎する。我々は,今後,G20を通じて,全ての原則の実施を支援するためのコミットメントを宣言する。

万人のためのエネルギーアクセス

1. 11億人以上の人々が電力へのアクセスがないまま生活し,その多くが遠隔で不利な地域に住んでいること,また,29億人の人々が調理に当たって伝統的なバイオマスの使用に依存していることを認識する。エネルギーアクセスはより良い生活の質を達成し,貧困を克服し,グローバルな経済のパフォーマンスを改善するための重要な要因である。我々は,「万人のために安価で,信頼できる,持続可能で近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」との目標が2030年の持続可能な開発課題に盛り込まれたことを歓迎する。我々は,この目標の前進に向けて協力する。バランスが取れた,クリーンで,安価で,実行可能であり,信頼できるエネルギー・ミックスは持続可能な開発にとって不可欠である。

2. 我々は,『G20エネルギーアクセス行動計画:エネルギーアクセスにかかる自発的な協力』を承認するが,その第一段階として,本問題が最も危急であるサブサハラアフリカにおけるエネルギーアクセスの改善に焦点を置く。我々は,10月1目に,アフリカのエネルギー大臣とともに開催されたサブサハラアフリカ・エネルギーアクセス会合における議論を歓迎する。我々は,入手可能な自国産エネルギー源を含め,各国の置かれた状況,ニーズ及び優先課題を考慮しつつ,投資と電力部門の持続可能な成長を助長する環境の重要性を認識する。我々は,長期的な自発的協力の枠組みを構築する本計画を通じ,エネルギーアクセスにおけるG20の調整と活動を強化することにコミットする。我々は,政策・規制環境,技術開発・展開,投資・ファイナンス,能力構築及び地域統合・協力を強化すベく,国家のニーズや事情を考慮の上,他の関連国際機関及び地域機関並びにサブサハラアフリカ各国と協力および連携しつつ,SE4ALL及びそのアフリカ・ハブ,並びに他のイニシアティブ及びドナーとともに取り組んでいく。我々は,規制当局によるエネルギーアクセスへの貢献を認識するとともに,規制当局間のコミュニケーション及び協力が増進することを奨励する。我々はまた,2015年6月にアフリカ連合サミットで提示されたとおり,アフリカにおける再生可能エネルギーへのアクセスを加速させ,エネルギーの貧困を低減させることを目的とする,アフリカが主導する「再生可能エネルギー・イニシアティブ」を歓迎するとともに支持する。

エネルギーに関する国際組織

3. 我々は,エネルギーに関する国際組織間の調整・協力と様々な国際及び地域機関の協働を容易にする効率性を促進するためのG20自身の貢献を認識する。我々は,引き続き国際及び地域機関と包摂的な態様で協働していくことを支持するとともに,その更なる協力を歓迎する。我々は,国際組織の特定の目的や使命を考慮しつつ,エネルギーに関する国際組織が,新興・途上国経済をより代表・包摂したものになるように取り組んでいくとともに,本目的に向けた進行中のプロセスに留意する。

市場の透明性

4. 我々は,透明で競争的なエネルギー市場はエネルギー安全保障及び投資促進の前提条件であると考える。市場の透明性及び効率性を促進するため,我々は,質の高いエネルギーデータの集積及び普及を促し,円滑化するとともに,キャパシティ・ビルディングへの支援を高めることで,国際機関共同データイニシアティブ(JODI)の更なる強化にコミットする。IEA,IEF,OPECとの協力によりIOSCOが準備した価格報告機関(PRA)の第2次レビュー報告書及びIEA-IEF-OPECによるIOSCO原則の市場影響に関する報告書は,協力,透明性及び規制を通じたPRA原則の機能に係る進捗を強調するものであり,我々はこれに留意するとともに、本取組みの継続的な進展をモニターする準備ができている。また,我々は,IEA,IEF及びOPECによる,エネルギーの見通し並びに現物市場及び金融市場の相互作用を更に理解するための共同作業を歓迎するとともに,市場の透明性に関して実りある協力を継続していくことを奨励する。我々は,ガス市場を含め、エネルギー市場の機能向上に向けた取組を支持する。また,我々は,あらゆるエネルギー資源の市場関連情報の公開の重要性を認識する。

エネルギー安全保障

5. 我々は,昨今のダイナミックで不確実なエネルギー展望に鑑み,持続可能なエネルギー安全保障の必要性と,緊急時対応措置等に関する協力と対話を通じてエネルギー安全保障を改善・向上させることへのコミットメントを強調する。我々は,エネルギー源の多様化の重要性を強調する。我々は,将来のエネルギー安全保障を確保する上での目下の投資の重要性を考慮しつつ,エネルギー分野への継続的な投資を支持する。

無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金

6. 我々は,脆弱なグループ及び彼らの発展の必要性を認識しつつ,関連する市場のひずみや環境被害の削減につながりうる無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の合理化及び段階的廃止のための多くの国による進展を歓迎する。我々は,各国の進捗報告に記載されているG20のいくつかの国において進行中の取組や現在実施中のピア・レビュー・プロセスを奨励する。我々は,より多くのG20国に対してピア・レビュー・プロセスに参加することを奨励する。貧困層に的を絞った支援を提供し,各国の置かれた環境に配慮しつつ,中期的に無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の合理化及び段階的に廃止するとの2009年以降のコミットメントに鑑み,我々は,将来のG20会合においてこのコミットメントの前進に向けて、更なる進展を示すよう努力する。我々は,IEA及びOECDが世界銀行,IEF及びOPECと協議しつつ策定した非効率な化石燃料補助金の改革の昨今の進展に係る改定報告書に留意する。

省エネルギー

7. 我々は,家計及び企業におけるコスト低減,更なる経済生産性及び成長,エネルギー安全保障の強化並びに環境的成果の改善を含む,省エネルギーの便益を認識する。我々は,各国の省エネルギーに関して相当の改善の必要性を認識する。我々は,それゆえに,『G20省エネルギー行動計画:2015年省エネルギーに係る自発的協力』の参加国が,その実施に関して2015年に達成した重要な進展を歓迎する。我々は,国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC)が,各ワークストリームの参加国とともに策定した省エネルギ一行動計画実施報告を歓迎する。

我々は,車両、特に大型車のパフォーマンスの効率性及び排出,ネットワーク機器,建造物,産業プロセス,発電に関する既存のワークスストリームに関して,2015年の成果を自主的に更に支援していくことで一致した。この観点から,我々は,G20の参加国のための自主的省エネ投資原則を歓迎する。我々は,経済において省エネを推進するべく,今後の自主的に協力し得る分野について更に検討する。加えて,我々は,同計画が長期的展望を持つものであるよう,更に取組む。

再生可能エネルギー

8. 我々は,再生可能エネルギー及びその長期的な潜在的成長の重要性を強調する。再生可能エネルギーの利用は上昇しており,本傾向は将来も続いていくものとみられている。我々は,市場,技術及び政策が各国によって異なる一方で,技術革新,リスク軽減及び良好な政策枠組みの普及を通じた再生可能エネルギーへの投資を、国家の優先課題及び事情に沿って増加させることが,環境に対して健全で,社会的及び経済的にも持続可能な開発の道筋に貢献しうることを認識する。

9. 我々は,更なる作業のための有意義な選択肢を設定した『G20再生可能エネルギー普及に係る自主的選択肢ツールキット』を承認するとともに,IRENAがIEA及びその他の国際機関と協力により策定した,その背景に関する報告書に留意する。我々は,各国の置かれた既存の状況を理解しつつ,全ての再生可能エネルギー源のための技術革新,エネルギー・ミックスにおける再生可能エネルギーの利用促進を奨励するための知識の共有,システム統合や安定的で国家的な政策・規制枠組みの果たす中心的な役割の重要性を強調する。

クリーン・エネルギー技術を含む革新的エネルギー技術

10. 我々は,困難に直面するエネルギー環境のなかで,安全で,安価で,信頼性があり,実行可能かつ持続可能なエネルギーを届けるため、革新的エネルギー技術の重要性を認識する。我々は,生産性,効率性及び持続可能な発展を向上させるために必要な投資の実施並びに技術及びグッドプラクティスの開発における民間及び政府部門の重要な役割を認識する。我々は,また,クリーン・エネルギー技術を含む広範なエネルギー源に亘り,研究開発,実証及び革新的エネルギー技術の普及への継続的な投資を支持する。加えて,我々は、クリーン・エネルギーの研究開発に関して,更なる国際的連携を支援する。係る行為は,エネルギー安全保障を向上させ,経済成長を促進し,雇用及びビジネス機会を創出し,高い水準でのエネルギーへのアクセスを助けるとともに,環境面での恩恵をもたらす。

気候変動

11. 我々は,2015年が気候変動及びその影響に取り組むための強力かつ効果的な行動をとる重要な年であり,省エネルギーの改善及びクリーン・エネルギー技術への投資の増加を含むエネルギーに関する行動が重要である。これに関し、我々は,これまでに提出された約束草案(INDCs)を歓迎する。我々は,気候変動問題の交渉を担う主要な国際政府問機関としての気候変動枠組み条約(UNFCCC)の作業を支持するとともに,2015年12月にパリで開催されるCOP21において,同条約の下で成功しバランスのとれた結果を達成するために協業する。

12. 我々は,我々の首脳の検討のために,本コミュニケをG20アンタルヤ・サミットに提示するとともに,今後も引き続き本原則に係る作業を前進させていくため,2016年に中国で集うことに合意する。

(了)