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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20アンタルヤ・サミット 首脳コミュニケ

[場所] アンタルヤ
[年月日] 2015年11月15-16日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

前文

1 我々G20首脳は,我々の国民の繁栄を高めるための強固で,持続可能な,かつ,均衡ある成長を達成することに向けた更なる共同の行動について決定するため,2015年11月15日及び16日にアンタルヤにおいて会合を開催した。我々は,成長が強固で,包摂的であり,また,より多くの,かつ,より質の高い雇用を生み出すものとなることを確保することを固く決意している。我々は,包摂的な成長を推進し,かつ,信頼を定着させるためには,全ての政策手段の活用及び全ての利害関係者との強い関わりが必要であることを認識する。

2 我々は,我々の目的を追求するに当たり,約束したことは実行するという我々の過去のコミットメントを断固として実施し,成長の強力な原動力としての投資を促進し,また,成長の利益が全ての人に共有されるように我々の行動における包摂性を促進するという三つの柱を中心とする包括的なアジェンダを本年採択した。我々はまた,我々のこのアジェンダの実施の一部として,低所得開発途上国との対話を拡大した。

回復の強化及び潜在力の向上

3 いくつかの主要国における前向きな見通しにもかかわらず,世界経済の成長は,ばらつきがあり,また,依然として我々の期待する水準に達していない。金融市場におけるリスクや不確実性は残っており,また,地政学的な課題は,ますます世界的な懸念となっている。さらに,世界的な需要の不足及び構造的な課題は実際の及び潜在的な成長に負荷を与え続けている。

4 我々は,強固で,持続可能な,かつ,均衡ある成長を達成するために,健全なマクロ経済政策を引き続き協力的な形で実施していく。我々の金融政策当局は,そのマンデートと整合的に,引き続き物価の安定を確保し,経済活動を支える。我々は,債務対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ,成長及び雇用創出を支えるため,短期的な経済状況を勘案して機動的に財政政策を実施するという我々のコミットメントを再確認する。我々はまた,生産性,包摂性及び成長を支えるために我々の歳出及び歳入の構成を考慮する。我々は,世界的なリバランスを促進することに引き続きコミットしている。我々は,不確実性を緩和し,負の波及効果を最小化し,かつ,透明性を促進するために,特に金融政策その他の主要な政策決定を行うに当たり,我々の行動を注意深く測定し,明確に説明する。巨額で変動しやすい資本フローに起因するリスクを背景として,我々は,金融のグローバル化の利益を享受すると同時に,十分な世界的金融セーフティ・ネットの確保によることを含め,適切な枠組みを通じて金融の安定を促進する。我々は,我々の以前の為替相場へのコミットメントを再確認し,あらゆる形態の保護主義に抵抗する。

5 我々は,昨年ブリスベンで表明したとおり,2018年までにG20全体のGDPを追加的に2%引き上げるという我々の野心的な目標の実現に引き続きコミットしている。我々の最優先事項は,需要を支える措置並びに実際の及び潜在的な成長を引き上げ,雇用を創出し,包摂性を促進し,及び不平等を減らすための構造改革を含む我々の成長戦略の適時の,かつ,効果的な実施である。我々は,我々の複数年にわたるコミットメントの半分を実施し,我々のコミットメントの履行に向けて昨年以降重要な進展を遂げた。IMF,OECD及び世界銀行グループの分析は,我々のこれまでの実施が,我々全体の成長の野心の3分の1以上に当たることを示している。しかし,我々はまた,更なる取組が必要であることを認識する。我々は,残るコミットメントの実施を促進するため,更に努力し,迅速な行動をとる。我々は,将来に向けて,本年策定した強固な枠組みを通じ,コミットメントの実施を引き続きしっかりと監視する。我々はまた,進化する経済状況,政策上の優先事項及び構造的な課題,特に鈍化した生産性の向上にとって,成長戦略が引き続き重要であること並びにそれが我々全体の成長の野心と整合的であることを確保するため,成長戦略の見直し及び調整を継続する。アンタルヤ行動計画は,我々の調整された成長戦略及び主要なコミットメントについての実施計画から成り,世界経済の課題を克服するという我々の決意を反映している。

6 我々は,成長が,包摂的で,多くの雇用を伴い,かつ,我々の社会の全ての層の利益となることを確保することにコミットしている。多くの国において拡大する不平等は,社会的一体性や我々の国民の幸福にリスクをもたらす可能性があり,また,負の経済的影響を与え,成長を引き上げるという我々の目的を阻害し得る。経済,金融,労働,教育及び社会政策を組み合わせた,包括的で,かつ,均衡ある一連の政策は,不平等を減らすことに資する。我々は,雇用労働大臣宣言を承認するとともに,G20労働分配率と不平等に関する政策優先事項により概括されているとおり,労働市場をより包摂的にするため,同宣言の優先事項を実施することにコミットする。我々は,我々の財務大臣及び雇用労働大臣に対し,不平等へ対抗するための行動を強化し,かつ,包摂的な成長を支援するため,我々の成長戦略及び雇用計画を見直すことを求める。社会的な対話が我々の目標を前進させるために不可欠であることを認識し,我々は雇用,成長及び人間らしい働きがいのある仕事に関するB20及びL20の共同声明を歓迎する。

7 失業,不完全雇用及び非正規の仕事は,多くの国において不平等の重大な原因であり,かつ,各国経済の将来の成長見通しを損ない得る。我々は,質の高い仕事の促進に関するG20フレームワークに沿って,より多くの,かつ,より質の高い仕事を促進すること及びG20技能(スキル)戦略を通じて,スキルを改善し,これに投資することに焦点を当てている。我々は,起業の促進によることを含め,労働市場への若者のよりよい統合を支援することを決意している。我々は,以前のコミットメントに基づき,かつ,各国の国内状況を勘案しつつ,労働市場から永久に取り残されてしまう危険が最も高い若者の割合を,G20諸国において,2025年までに15%削減するとのG20の目標に合意する。我々は,この目標の達成に向けた進捗を監視する上で,OECD及びILOに対し,我々を支援することを求める。我々は,持続可能なグローバル・サプライ・チェーンにおいても,我々の雇用計画の実施及び参加に関するジェンダー・ギャップを縮小し,また,より安全で,かつ,健全な職場を作り出すとの目標を引き続き監視する。

8 我々は,労働力の国際的な流動性及び人口の高齢化といった問題を通じて労働市場に生じている現在の機会及び課題に対処する。労働力の国内的な流動性は,いくつかのG20諸国において,重要な労働市場問題である。我々は,シルバー・エコノミーの繁栄の潜在性を認識し,更に探求する。我々はさらに,我々の雇用労働大臣に対し,進捗につき,2016年に我々に対して報告を行うことを求める。

9 特に民間部門の参加を通じての,投資を促進する強い推進力を与えるため,我々は,投資エコシステムを改善し,公的部門によるものを含む,効率的で,かつ,質の高いインフラを育み,中小企業を支援し,知識共有を促進するための具体的な政策及び行動を結集する,野心的な国別投資戦略を策定した。OECDの分析によれば,これらの戦略は,G20全体の投資の対GDP比を,2018年までに,見積もりで1%引き上げることに貢献する。

10 我々の投資の準備,優先順位づけ及び執行プロセスを改善するため,我々は,官民パートナーシップ(PPP)モデルのためのガイドライン及びベスト・プラクティスを策定した。我々はまた,中小企業へのより良い仲介及びインフラ投資を促進するため,アセット・ベースの金融及び簡素で透明性の高い証券化を含む,代替的な金融構造を検討した。我々は,将来に向けて,我々の大臣に対し,投資エコシステムを改善し,長期ファイナンスを促進し,機関投資家の関与を促進し,代替的な資本市場商品及びアセット・ベースの金融モデルの発展を支援し,並びに国際開発金融機関(MDBs)に対し,資金を動員し,MDBsのバランスシートを最適化し,民間部門の資金調達を触媒することを奨励するよう作業を続けることを要請する。我々は,各国がインフラ・プロジェクトのより良い準備,優先順位付け及び資金繰りを行うための方途を開くため,取組を進め,ツールキットを開発している。我々は,グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)が,これらの取組に大きな貢献を果たすことを期待する。我々は,民間投資を支援する力強いコーポレート・ガバナンスの枠組みを確保することを助けるべく,G20/OECDのコーポレート・ガバナンス原則を承認する。我々は,中小企業のための長期ファイナンスを促進することに特別な焦点を当ててきており,共同中小企業資金調達行動計画,指針としての中小企業ファイナンスに関するG20/OECDハイレベル原則並びに成長と雇用に対する中小企業の貢献を促進するために世界規模の団体として機能する新たなイニシアティブである,民間部門主導の世界中小企業フォーラムの設立を歓迎する。

11 世界の貿易及び投資は,雇用を創出し,また,幸福及び包摂的成長に貢献しながら,引き続き経済成長及び開発の重要なエンジンであり続ける。我々は,世界貿易の成長は,依然として危機前の水準を下回っていることに留意する。これは,経済循環的及び構造的な要因の結果である。したがって,我々は,調整された成長戦略(AGS)を通じて行うものを含め,貿易と投資を強化する我々の取組を更によく調整するという我々の強いコミットメントを再確認する。包摂的なグローバル・バリュー・チェーン(GVCs)は世界貿易の重要な原動力である。我々は,経済発展のいかなる段階にある国においても,全ての規模の企業,特に中小企業が,GVCに参加し,これを完全に活用できるようにするための政策を支持し,開発途上国のより広範な参加および価値の付加を奨励する。我々はさらに,保護主義的措置を停止し,かつ,後退させるという長期にわたる我々のコミットメントを再確認するとともに,我々の進捗を監視することによって警戒を続ける。このため,我々は,WTO,OECD及びUNCTADに対し,貿易及び投資の制限措置に関する報告を継続することを求める。我々は,我々の貿易大臣に対し,定期的に会合を行うことを求めるとともに,支援作業部会について合意する。

12 WTOは,多角的貿易体制のバックボーンであり,経済成長及び開発を促進する上で引き続き中心的な役割を果たすべきである。我々は,強固で,かつ,効率的な多角的貿易体制に引き続きコミットしており,その機能を改善するために協働するとの我々の決意を再確認する。我々は,ドーハ開発アジェンダに関するものを含む一連の均衡ある成果をもたらし,かつ,ポスト・ナイロビ会合の作業に対して明確な指針を提供するナイロビにおけるWTO閣僚会議の成功に向けて協働することにコミットしている。我々はまた,農業,開発,備蓄並びに貿易円滑化協定の迅速な批准及び実施を含め,バリ・パッケージの全ての要素を実施する努力を増加させる必要がある。我々は,我々の二国間,地域間及び複数国間の貿易協定が相互に補完し合い,透明性を持ち,かつ,包摂的であり,また,WTOのルールの下でのより強固な多角的貿易体制に整合的であり,かつ,寄与することを確保するための我々の取組を継続する。我々は,世界的な開発努力における貿易の重要な役割を強調し,能力構築支援を必要とする開発途上国における貿易のための援助のようなメカニズムを引き続き支持する。

強じん性の向上

13 金融機関の強じん性の強化及び金融システムの安定性の向上は,成長及び発展を支える上で極めて重要である。グローバル金融システムの強じん性を向上させるため,我々は,金融規制改革の課題の中核的な要素を更に完了させた。特に,我々は,「大きすぎて潰せない」問題の終結に向けた重要なステップとして,グローバルなシステム上重要な銀行の総損失吸収力(TLAC)についての共通の国際基準を最終化した。我々はまた,グローバルなシステム上重要な保険会社の資本上乗せ基準の最初のバージョンに合意した。

14 より強固で,かつ,より強じんな金融システムを構築するために,決定的に重要な作業が残っている。特に,我々は,中央清算機関の強じん性,再建計画及び破綻処理可能性に関する更なる作業に期待し,また,FSB(金融安定理事会)に対して,我々の次回会合までに報告することを求める。我々は,その多くが銀行セクター外で発生する可能性がある,金融システムにおいて新たに生じつつあるリスク及びぜい弱性を引き続き監視し,必要に応じ対処する。この点に関し,我々は,市場型金融の強じん性を確保するため,そのシステミック・リスクに見合うような方法で,シャドーバンキングの監視・規制を更に強化する。我々は,コルレス銀行サービスの減少について,適宜評価し及び対処することに関する更なる進捗を期待する。我々は,国・地域に対し,サンクトペテルブルク宣言に則り,正当化されるときには,相互の規制に委ねることを奨励することを含め,店頭(OTC)デリバティブ改革の実施における更なる進捗のための我々の取組を加速する。将来に向けて,我々は,合意されたスケジュールに沿って,グローバルな金融規制枠組みを完全に,かつ,整合的に実施することにコミットしており,各国・地域間でばらつきのある実施を引き続き監視し,これに対処する。我々は,改革の実施及びその影響に関するFSBの最初の年次報告を歓迎する。我々は,引き続き,グローバルな規制枠組みの頑健性を見直し,かつ,特に新興市場・発展途上経済(EMDEs)に対する,重大で意図せざるいかなる影響にも対処することを含め,規制改革の実施及び影響並びに我々の全体的な目的とそれらとの継続的な整合性を監視し,評価する。

15 世界規模で公正な,かつ,現代的な国際課税システムを達成するため,我々は,野心的なG20/OECD税源浸食・利益移転(BEPS)プロジェクトの下で策定された措置のパッケージを支持する。広範で,かつ,首尾一貫した実施は,特に国境を越える税のルーリングに関する情報交換に関するプロジェクトの有効性にとって極めて重要である。したがって,我々は,このプロジェクトの適時の実施を強く求めるとともに,開発途上国を含む全ての国・地域に対して参加を奨励する。BEPSプロジェクトの実施状況をグローバルに監視するため,我々は,OECDに対し,2016年の早い時期までに,開発途上国を含め,BEPSプロジェクトの実施にコミットする関心のある非G20諸国・地域の対等な立場での関与を得つつ,包摂的な枠組みを策定することを求める。我々は,関心のある開発途上国に対し,それらの国が直面するBEPSによるものを含む国内資金の動員の課題に対処するための適切な技術支援を提供するIMF,OECD,国連及び世界銀行グループによる取組を歓迎する。我々は,関心のある非G20開発途上国における実施のタイミングは他の国々と異なり得ることを認識し,その枠組みの中でそれらの国の状況が適切に対処されることを確保するようOECD及びその他の国際機関に期待する。我々は,我々の課税システムの透明性向上に向けて前進しており,要請に基づく情報交換を行い,また,2017年又は2018年末までに自動的情報交換を行うとの我々のこれまでのコミットメントを再確認する。我々は,他の国・地域の参加を招請する。我々は,国際課税の諸課題における開発途上国の関与の強化のための取組を支持する。

16 我々は,成長及び強じん性に関する我々のアジェンダの支持に当たり,G20腐敗対策行動計画2015-2016の効果的な実施を通じ,腐敗を許容しないとの世界的な文化を形成することに引き続きコミットする。我々は,我々の企業が,倫理と腐敗対策に関するグローバルな基準を遵守する助けとなる,民間部門における清廉性と透明性に関するG20ハイレベル原則を承認する。我々の公共部門の清廉性及び透明性の確保は必須である。この関連で,我々は,G20腐敗対策オープン・データ原則及び政府調達における清廉性の促進に関するG20原則を承認し,資産公開に関する枠組みについて現在行われている作業を歓迎する。我々は,贈収賄と効果的に闘い,また,財産の回復並びに腐敗公務員及び腐敗させる者に対する安全な逃避先の否定を支援するための重要な手段として,適切で,かつ,国内法制度と整合的な場合には民事上及び行政上の手続に関するものを含む国際協力の強化に更に取り組む。我々は,実質的所有者の透明性に関する実施計画の発表を歓迎し,この点に関する我々の取組を継続する。

17 我々は,2010年に合意されたIMFクォータ・ガバナンス改革の実施が遅れ続けていることに引き続き深く失望している。2010年改革は,引き続きIMFに対する我々の最優先課題であり,我々は,米国に対し,これらの改革を可能な限り早期に批准することを強く促す。2010年改革の目的に留意しつつ,我々は,IMFに対し,クォータ・シェアを可能な限り速やかに,かつ,可能な限り第14次クォータ一般見直しにおいて合意された水準まで有意義に収れんさせるような暫定的な解決策についての作業を完了するよう求める。第14次見直しは,新たなクォータ計算式を含む第15次見直しへの取組の基礎として用いられるべきである。我々は,強固で,クォータを基礎とし,かつ,十分な資金基盤を備えたIMFを維持するという我々のコミットメントを再確認する。我々は,全ての国際金融機関の長及び上級リーダーは,開かれた,透明性のある,かつ,能力本位の選任プロセスを通じて任命されるべきであるとの我々の合意を再確認し,これらの機関におけるスタッフの多様性を高める重要性を改めて表明する。我々は,特別引出権(SDR)構成通貨の構成が,世界的な取引及び金融システムにおける通貨の役割を引き続き反映すべきであることを再確認し,SDR価値決定手法のレビュー完了に期待する。

18 我々は,公的債務再編プロセスの秩序及び予見可能性に貢献するものとして,国際的な公的債券契約における,強化された共同の行動及びパリパスに関する条項の実施について達成された進展を歓迎する。我々は,IMFに対し,他の締約国と協議しつつ,そのような条項の利用を引き続き促進し,また,国際的な公的債務の発行済み株式への統合を加速するための市場原理に基づく方法を更に探究することを求める。我々は,低所得国のためのIMF及び世界銀行による債務持続性フレームワークの次回レビューに期待する。我々は,アディスアベバ行動目標で強調された,持続可能な資金調達慣行の改善に向けた既存のイニシアティブを認識する。我々はまた,公的債務の債権者と債務者との間の対話の促進により,包摂性の更なる増進に貢献するパリ・フォーラムのイニシアティブに留意する。

持続可能性の強化

19 2015年は,持続可能な開発にとって極めて重要な年であり,我々は,我々の行動が,低所得開発途上国における成長を含めて,包摂的で,かつ,持続可能な成長に貢献することを確保することに引き続きコミットする。持続可能な開発目標(SDGs)及びアディスアベバ行動目標を含む2030アジェンダは,世界的な開発努力のための変革的,普遍的及び野心的な枠組みを定めている。我々は,貧困を撲滅し,また,何人にとっても包摂的で,かつ,持続可能な未来を構築するための我々の取組において,誰一人取り残されないことを確保すべく,その結果を実施することに強くコミットしている。我々は,開発における我々の対話及び関与を強化するG20LIDCフレームワークを採択する。我々は,我々の作業を2030アジェンダと更に整合的なものにするための行動計画を2016年に策定する。

20 我々の本年の取組は,エネルギーへのアクセス,食料安全保障・栄養,人材開発,質の高いインフラ,金融包摂及び国内資金の動員といった,持続可能な開発のための主要な分野を支持する。我々は,世界的な食料安全保障及び栄養を改善し,また,我々が食料を生産し,消費し,及び販売する方法が経済的,社会的及び環境的に持続可能であることを確保するという我々のコミットメントを強調する食料安全保障及び持続可能なフード・システムに係るG20行動計画を承認する。我々は,農業及びフード・システムへの責任ある投資を促進し,市場の透明性を改善し,所得及び質の高い雇用を増大させ,並びに持続可能な生産性向上を促進することに引き続き焦点を当てる。我々は,小規模農家や家族農家,農村の女性及び若者のニーズに特別の注意を払う。我々はまた,食料の損失及び廃棄を世界的に削減することにコミットする。我々は,「地球に食料を,生命にエネルギーを」をテーマとしたミラノ国際博覧会を歓迎する。また,我々は,我々及び他の諸国が食料の損失及び廃棄を測定し,かつ,減少させることができる方法を向上させるための新しいプラットフォームを設立するという我々の農業大臣の決定を歓迎する。

21 民間部門は,開発及び貧困撲滅において力強い役割を担う。我々は,我々のインクルーシブ・ビジネスに係るG20リーダーズ・コールを通じて,低所得の人々及び社会が買い手,供給者及び消費者として市場に参加する機会を促進するために全ての利害関係者が協働する必要性を強調する。本年策定された我々のG20国別送金計画は,SDGs及びアディスアベバ行動計画と整合的なものとするために世界平均の送金費用を5%まで削減するという我々のコミットメントに向けた具体的行動を含む。我々は,支払,貯蓄,信用貸し及びその他のサービスへのアクセスを開放することを助けることによって,金融包摂を促進している。我々は,金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)における金融包摂に関する継続的な作業を歓迎する。

22 我々は,エネルギー協力に関するG20行動原則に引き続き焦点を当て,我々のエネルギー大臣の初めての会合を歓迎する。我々は,世界的に11億人を超える人々が電気へのアクセスがなく,29億人の人々が調理にあたって伝統的なバイオマスの使用に依存していることを認識しつつ,問題が極めて危急なサブサハラ・アフリカにおける電気へのアクセスを高めることに,その最初の段階の焦点を当てるG20エネルギー・アクセス行動計画:エネルギー・アクセスに係る自発的な協力を承認する。その計画は,エネルギー・アクセスが開発を促進する極めて重要な要因であることを認識しつつ,G20の協調を強化することを目指し,また,その他の地域に時間をかけて適用され得る長期的,かつ,自発的な協力枠組みを設立する。この第一段階において,我々は,政策及び規制環境,技術開発及び展開,投資及びファイナンス,能力構築並びに地域的な統合及び協力に関し,国のニーズや事情を考慮しつつ,アフリカの諸国及び関係の地域・国際機関と協力し,かつ,協調する。

23 我々は,エネルギー効率を改善させ,クリーン・エネルギー技術への投資を増大し,及び関連の研究開発活動を支援することを含むエネルギーに関する行動が,気候変動及びその影響に対処する上で重要であることを認識する。我々は,G20再生可能エネルギー普及に係る自主的選択肢ツールキットを承認する。我々はまた,エネルギー効率に関する我々の協力の進展において参加各国により本年中に達成された進捗を強調するとともに,車両,特に大型車の効率性及び排出のパフォーマンス,ネットワーク機器,建造物,産業プロセス及び発電並びにエネルギー効率への資金供与に関する既存のワーク・ストリームについての2015年の成果を,自発的に更に支援することに合意する。我々は,ガス市場を含め,透明性のある,競争的な,かつ,よく機能するエネルギー市場を引き続き推進する。我々は,エネルギー源の多様化及び継続的な投資が,エネルギー安全保障の拡大のために重要であることを強調する。我々は,貧困層を対象とした支援の必要性を認識しつつ,中期的に,無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し,及び段階的に廃止するという我々のコミットメントを再確認する。我々は,このコミットメントを前進させることにおいて,更なる進捗を図る。我々は,我々のエネルギー大臣に対し,エネルギー協力に関し,エネルギー協力に関するG20行動原則の継続的な実施について2016年に再び報告することを求める。

24 気候変動は,現代における最大の課題の一つである。我々は,2015年は,気候変動及びその影響に関する効果的で,強力な,かつ,共同の行動を必要とする極めて重要な年であることを認識する。我々は,気候行動のためのリマ声明に示された摂氏2度未満の目標を再確認する。我々は,気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で全ての締約国に適用可能な議定書,他の法的文書又は法的効力を有する合意された成果を採択するという我々の決意を確認する。我々の行動は,成長及び持続可能な開発を支援する。我々は,パリ合意は,公平で,均衡のある,野心的で,持続的で,かつ,ダイナミックなものとなるべきであることを確認する。我々は,パリにおいて,各国の異なる状況に照らした,共通に有しているが差異ある責任及び各国の能力の原則を反映した野心的な合意に到達することへのコミットメントを強調する。我々は,UNFCCCが気候変動について交渉するための第一義的な政府間機関であることを再確認する。我々は,全てのG20諸国を含む160を超える締約国が,自主的に決定する約束草案(INDC)をUNFCCCに提出したことを歓迎するとともに,その他の締約国に対し,パリ会議に先立ってそうすることを奨励する。我々は,我々のINDCを実施する用意がある。我々は,交渉担当者に対し,パリにおいて前進する道筋に到達するために,特に,緩和,適応,金融,技術の開発及び移転並びに透明性といった主要な事項について議論すべく,今後,建設的,かつ,柔軟に取り組むことを指示する。我々は,COP21の成功裏の結果に向けて協働することにコミットする。

25 現在進行中の難民危機の規模は,多大な人道的,政治的,社会的及び経済的な影響を伴うグローバルな懸念である。この危機及びその長期的な影響に対処するため,調整された,包括的な対応を行う必要がある。我々は,世界各地における,かつてない数の難民及び国内避難民に対する保護及び支援を提供し,並びに恒久的解決を見出すための全ての努力に対する我々の支援を更に強化し続けることにコミットする。我々は,全ての国に対し,この危機への対応に貢献し,かつ,難民の再定住化,他の形態の人道的な受入れ,人道支援並びに難民がサービス,教育及び生計の機会にアクセスできることを確保するための取組を含め,この危機に関連する負担を分かち合うことを呼びかける。我々は,避難の根本原因に対処する必要性を強調する。我々は,この点に関し,紛争の政治的解決及び開発のための協力の増加の重要性を強調する。我々はまた,難民及び国内避難民が安全に,かつ,自発的に故郷へ帰還することを可能にするための環境を作り出す重要性を認識する。我々は,他国とともに,我々の長期にわたる備え並びに移民及び難民の動きを管理する能力の強化に取り組む。我々は,全ての国に対して各国の能力に応じ,この危機への対処に当たり,影響を受けた国々を支援する関係国際機関の能力を強化するため,それら国際機関に対する支援を拡大することを求める。我々は,民間部門及び個人に対しても,難民危機に対応する国際的な取組に加わることを奨励する。

26 我々は,世界の成長に機会と課題の双方をもたらすインターネット・エコノミーの時代に生きている。我々は,ICTs(情報通信技術)のセキュリティ及びその活用におけるセキュリティへの脅威が,世界中で経済成長及び経済発展を支えるためにインターネットを活用する我々の集団的な能力を損なう危険を有することを認識する。我々は,我々自身がデジタル・デバイドを埋めることにコミットする。ICT環境においては,その他の全ての場所と同様に,国家は,安全性,安定性及び他の国家との経済的なきずなを促進する特別な責任を有する。その目的を支持するため,我々は,いずれの国も,企業又は商業部門に競争上の優位性を与えることを意図して,ICTにより可能となる,営業上の秘密その他の企業秘密に係る情報を含む知的財産の窃盗の実行又は幇助をすべきでないことを確認する。全ての国は,ICTsの安全な使用を確保するに当たり,デジタル通信の文脈におけるものを含め,違法で,かつ,恣意的なプライバシーの妨害からの自由の諸原則を尊重し,保護すべきである。我々はまた,規範の策定において国連が果たす主要な役割に留意するとともに,この文脈において,国際安全保障の文脈における情報と電気通信分野の進歩に関する国連政府専門家会合2015年報告書を歓迎し,国際法,特に国連憲章が,ICTsの使用に係る国家の行為に適用されることを確認し,また,全ての国家が,国連総会決議A/C.1/70/L.45に従い,ICTsの使用について責任ある国家の行動規範を遵守すべきであるとの考え方にコミットする。我々は,全てのアクターがICTsの安全な使用の利益を享受することができるような環境を確保することを助けることにコミットしている。

結び

27 我々は,我々の経済の現実の及び潜在的な成長を引き上げ,雇用創出を支援し,強じん性を強化し,開発を促進し,並びに我々の政策の包摂性を高める我々の共同の行動を続けることを引き続き固く決意している。我々は,本年,G20議長国を務め,アンタルヤ・サミットを成功裏に主催したことに対し,トルコに感謝する。我々は,中国の議長の下で2016年9月に杭州で開催される我々の次回会合に期待している。我々はまた,2017年にドイツで会合することにも期待している。