データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20杭州サミット首脳コミュニケ

[場所] 中国 杭州
[年月日] 2016年9月5日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1. 我々G20の首脳は,2016年9月4日・5日に中国の杭州において会合した。

2. 我々の会合は,世界経済の回復が進捗し,一部の経済の強じん性が改善され,成長の新しい源泉が現れつつある中で行われた。しかしながら,成長は引き続き期待よりも弱い。金融市場における潜在的変動,一次産品価格の変動,停滞する貿易及び投資並びに一部の国における生産性及び雇用の鈍い伸びのため,下方リスクが引き続き存在している。また,地政学的な展開,増加する難民の流入並びにテロ及び紛争から生ずる課題が,世界経済の見通しを複雑なものにしている。

3. 我々の会合は,また,世界経済の環境及び成長のダイナミクスの輪郭が継続して変化し,大きく変動する中で行われた。これらの変動は,課題及び不確実性と並んで機会をもたらす。我々が共に行う選択は,今日の課題への対応の効果を決定付けるとともに,明日の世界経済を形づくることを助けるものである。

4. 我々は,G20構成国のより緊密なパートナーシップと共同の行動は,世界が共有する繁栄とそのより良い福利に貢献することにより,世界経済の成長に対する信認を高め,その原動力を助長し,そのための協力を強化すると確信する。

5. 我々は,持続可能な開発のための2030アジェンダ,アディスアベバ行動目標及びパリ協定を考慮しつつ,世界の成長と持続可能な開発という新しい時代を導くべく,革新的で,活力に富み,相互に連結され,包摂的な世界経済を助長する決意である。

6. この文脈で,我々G20は,国際経済の協力のための第一のフォーラムとして,強固で,持続可能で,均衡ある,かつ,包摂的な成長のための包括的で統合された考え方を作り出し,次の要素に基づく附属の政策と行動のパッケージ-「杭州コンセンサス」-を採択する。

・先見性:我々は,成長の新しい推進力を生み出すこと,開発のための新たな地平を切り開くこと,経済をより革新的で持続可能な形に変容させるため先導すること,そして現在と将来の世代が共有する利益をより良く反映することのため,G20の成長アジェンダを強化する。

・統合:我々は,財政,金融及び構造政策の間の相乗作用を生み出すこと,経済,労働,雇用及び社会政策の一貫性を高めること並びに需要の管理とサプライサイドの改革を,短期の政策と中長期の政策を,経済成長と社会の発展及び環境の保全を組み合わせることにより,革新的な成長の考え方と政策を追求する。

・開放性:我々は,開かれた世界経済を構築し,保護主義を拒否し,多角的貿易体制を更に強化すること等を通じて世界の貿易と投資を促進し,グローバル化した経済における成長の拡大を通じて広範な機会とそれに対する公衆の支持を確保するため,一層努力する。

・包摂性:我々は,誰も取り残されることのないよう,経済の成長が,より多くの質の高い雇用を生み,不平等に対処し,貧困を根絶することにより,あらゆる人のニーズに役立ち,全ての国と特に女性,若者及び不利な状態に置かれた集団を含む全ての人々の恩恵となるよう取り組む。

政策協調の強化

7. 我々の成長は,よく計画され,調整された政策によって支えられなければならない。我々は,強固で,持続可能で,均衡ある,かつ,包摂的な成長という我々の目標を達成するため,全ての政策手段―金融,財政及び構造政策―を個別にまた総合的に用いることを決意している。金融政策は,引き続き,中央銀行のマンデートと整合的に経済活動と物価の安定を支える。しかしながら,金融政策のみでは均衡ある成長につながらない。我々は,構造改革の重要な役割を強調しつつ,共通の成長目標を支えるために我々の財政政策が同様に重要であることを強調する。我々は,財政の強じん性を高め,債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せることを確保しつつ,財政政策を機動的に実施し,また質の高い投資を優先することを通じるなどして税制及び公共支出をできるだけ成長に配慮したものにしている。さらに,我々は,成長を支え,バランスシートのぜい弱性を含む潜在的なリスクに対応するためにG20諸国が必要に応じてとり得る政策オプションで,各国の状況に応じたものを引き続き模索する。我々は,為替レートの過度の変動や無秩序な動きは,経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。我々の関係当局は,為替市場に関して緊密に協議する。我々は,通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないことを含む,我々の以前の為替相場のコミットメントを再確認する。我々は,政策に関する不確実性を軽減し,負の波及効果を最小化し,透明性を向上させるために,マクロ経済及び構造問題に関する我々の政策行動を注意深く測定し,明確にコミュニケーションを行う。

8. 我々は,我々の成長戦略の実施に向けて更なる進捗を図っているが,一層の行動が必要である。経済成長と,ブリズベン・サミットで設定された我々の全体の成長目標を支えるために,成長戦略の速やかな,かつ,完全な実施が引き続き重要であり,実施に向けて優先的に努めている。こうした観点から,我々は,「杭州行動計画」を取りまとめ,相互に支え合って成長に寄与する,新しく,かつ,調整されたマクロ経済政策と構造政策を含めた成長戦略を改定した。我々は,また,経済成長の追求に当たって,過度の不均衡を縮小し,更なる包摂性を促進し,不平等を削減するために努力する。

成長のための新たな道の開拓

9. 我々の成長は,ダイナミックでより多くの雇用を創出するものとなるために,新たな原動力を得なければならない。我々は,短期的な成長を支えるため世界の需要の低迷に対処することの重要性を再確認しつつ,生産性を持続可能な形で向上させ,生産のフロンティアを拡大し,中長期的な成長可能性を解き放つために,サプライサイドの制約に対処することもまた不可欠であると確信する。

10. 我々は,長期的に見て,イノベーションが,個別の国及び世界全体の経済の双方にとって,成長の鍵となる原動力であることを認識する。我々は,イノベーションが,個別の国及び世界経済の新たな成長エンジンを特定するための我々の取組において鍵となる要素であると位置付け,ぜい弱な成長の根本原因の一つに立ち向かうことにコミットする。イノベーションは,また,新たな,より良い雇用を創出し,よりクリーンな環境を実現し,生産性を増大させ,地球規模の課題に対処し,人々の生活を改善し,そして,ダイナミックで,協力的で,包摂的なイノベーション・エコシステムを構築することに寄与する。我々は,このため,イノベーション,新産業革命及びデジタル・エコノミーの諸分野における,また,かかる諸分野を横断する政策及び措置を包含する新たなアジェンダとして,「革新的成長に関するG20ブループリント」を支持する。我々は,この文脈において,構造改革の重要性を認識する。我々は,国ごとの状況に従って,また,リーダーシップ,パートナーシップ,開放性,包摂性,創造性,相乗作用及び柔軟性に関する我々の考え方に沿って,ブループリントの勧告に基づき行動する。

11. 我々は,開発途上国を支援し,技能と人的資本を改善しながら,多元的なパートナーシップに関係する重要で横断的な行動にコミットする。我々は,今後の各G20議長国の優先事項に従って,また,これまでの成果との継続性と一貫性を確保し,かつ,G20の他のワーク・ストリームとの相乗効果を促進しながら,イノベーション,新産業革命及びデジタル・エコノミーに関するG20のアジェンダを推進するため,OECDその他の関係国際機関によって支援される「G20タスク・フォース」を設置する。

12. イノベーションによる成長と革新的なエコシステムの創出を達成するために,我々は,科学技術の革新を核としながら幅広い分野に及ぶイノベーションに関する対話と協力を支持する。我々は,「G20イノベーション行動計画2016」を実行する。我々は,イノベーション志向の戦略と政策を追求し,科学技術イノベーション(STI)に対する投資を支持し,STIのための技能訓練(この分野へのより多くの女性の参入の支援を含む。)とSTIに係る人的資源の流動性を支えることにコミットする。我々は,相互に合意された条件に基づく自主的な知識の拡散及び技術移転を促進する取組を支持する。このアプローチに沿って,我々は,オープン・サイエンスを促進し,FAIR(発見可能・アクセス可能・相互運用可能・再利用可能)原則に基づく,公的資金による研究成果への適切なアクセスを容易にするための適当な取組を支持する。以上のことを進めるに当たり,我々は,知的財産権の保護を通じて,イノベーションを促進するための開かれた貿易及び投資の枠組み並びに科学技術における人々の交流を改善することの重要性を強調する。我々は,既存のイノベーション政策プラットフォームにおけるオンライン上の「G20実践コミュニティ」の支持及び「G20イノベーション報告書2016」の発表によって,知識と経験の交流を促進することにコミットする。

13. 新産業革命(NIR)が産業,特に製造業及び関連するサービスに対して与える機会を捉えるため,我々は,「G20新産業革命行動計画」を実行する。我々は,行動計画でコミットしたとおり,NIRに関する交流,協力及び関連する研究を強化し,中小企業によるNIRの利益の活用を容易にし,雇用及び労働人口の技能に関する課題に対処し,基準,自らが締約国となっている既存の多数国間条約に沿った適切かつ効果的な知的財産権の保護及び新たな産業インフラに関するより一層の協力を奨励し,そして,工業化を支持することにコミットする。我々は,また,特にアフリカの開発途上国及び後発開発途上国における工業化を支持する。我々は,この変遷を通じて我々の労働人口を支えることにコミットし,また,NIRの利益が女性,若者及び不利な状態に置かれた集団を含む全ての人々に及ぶようにすることにコミットする。我々は,予想される技術変革及び産業変革の利益を最大化し,その負の影響を緩和するため,協力を求める。これら全ての取組において,G20は,開発途上国と先進国とで異なる機会及び課題を考慮する。

14. デジタル・エコノミーの潜在力を発揮させるため,我々は,アンタルヤで開始された作業に基づき,「G20デジタル・エコノミー開発・協力イニシアティブ」を実行する。我々は,広範でより良い,安価なブロードバンド・アクセス,プライバシーと個人情報の保護の尊重を確保した上での経済成長,信頼及び安全のための情報の流通,情報通信技術分野に対する投資,起業,デジタル・トランスフォーメーション,電子商取引に関する協力,強化されたデジタル包摂性,零細・中小企業の発展等を通じ,デジタル・エコノミーの発展のための良好な条件を助長し,デジタル・デバイドに対処することを目指す。我々は,アンタルヤ・コミュニケの第26パラグラフを再確認し,開放的で安全な環境のための政策的支援を提供することにコミットし,適切かつ効果的な知的財産権の保護及び執行がデジタル・エコノミーの発展にとって鍵となる役割を果たすことを認識する。我々は,デジタル・エコノミーの計量化に関するOECD,IMF,国家機関,その他国際機関による取組を歓迎し,更なる関連した研究や交流が必要であることを認識する。

15. 我々は,G20諸国において,生産性と潜在生産力を向上させるとともに,革新的な成長を促進する構造改革の重要な役割を再確認する。我々は,構造改革の選択と設計が国ごとの経済環境と整合的であることに留意し,「強化された構造改革アジェンダ」を実行する。我々は,国ごとの状況を考慮することを許容しつつ,構造改革の9つの優先分野と,同アジェンダで特定された,構成国にハイレベルの有益な指針を提供する一連の原則を支持する。我々は,また,構造改革と課題に関する取組及び進捗を監視し,評価する助けになる一連の指標で構成され,時間をかけて改善される量的なフレームワークを支持する。我々は,短期的,中期的及び長期的な措置から成る成長のための統合された戦略を整えつつある。我々は,「強化された構造改革アジェンダ」と「革新的成長に関するG20ブループリント」の関連する要素が明確であることを確保する。

より効果的で効率的な世界的な経済・金融ガバナンス

16. 我々の成長は,強じんなものとなるために,効果的で効率的な世界的な経済・金融アーキテクチャーによって支えられなければならない。我々は,この観点から作業を継続する。

17. 我々は,「より安定的で強じんな国際金融アーキテクチャーに向けたG20アジェンダ」を支持する。我々は,資本フローの分析と監視及び資本フローの過大な変動に起因するリスクの管理を引き続き改善する。我々は,資本フローへの対処に係る各国の経験と生じつつある問題についてのIMFによる見直し作業を本年末までに期待する。我々は,OECD資本自由化コードの見直しにつき継続中の作業に留意する。我々は,強固で,クォータを基盤とし,かつ,十分な資金基盤を有し,より効果的な貸出手段を備えたIMFを中心とし,また,それぞれのマンデートを反映したIMFと地域金融取極(RFA)とのより効果的な連携を伴った,グローバルな金融セーフティ・ネット(GFSN)を更に強化するための作業を支持する。この観点から,我々は,来るCMIM-IMF合同テストランを歓迎する。我々は,IMFの現在の貸出能力の維持という目的に沿って,参加国とIMFの二国間及び多国間の融資取極へのアクセスの維持を支持し,新たな取極を通じたものも含め,IMF加盟国の広範な参加を求める。我々は,2010年のIMFクォータ・ガバナンス改革の発効を歓迎し,新たな計算式を含む,第15次クォータ一般見直しを2017年の年次総会までに完了させることに取り組んでいる。我々は,第15次見直しにおけるクォータ・シェアの調整の結果,ダイナミックな国々のシェアが,これらの国々の世界経済における相対的な地位に沿って増加し,その結果,新興市場国・開発途上国のシェアが全体として増大することが見込まれることを再確認する。我々は,最貧国の声及び代表性を守ることにコミットしている。我々は,世界銀行グループが,合意されたロードマップ,時間的枠組み及び原則に従って,徐々に衡平な投票権を達成するため,投票権見直しを実施することを支持する。我々は,健全で持続可能な金融慣行の重要性を強調し,債務再編のプロセスを引き続き改善させていく。我々は,強化された契約条項をソブリン債券に組み込むための継続的な取組を支持する。我々は,幅広い国家債務問題に関するパリクラブの議論を支持し,二国間の公的債務を再編するための主要な国際フォーラムとして,より多くの債権者たる新興国の参加に向けてパリクラブが進めている作業を支持する。我々は,韓国のパリクラブへの参加及びブラジルのパリクラブに参加するという決定を歓迎する。我々は,中国のパリクラブ会合への継続した定期的な出席及び,参加の可能性に関する更なる議論を含む,より建設的な役割を果たそうという中国の意図を歓迎する。IMFの決定に従い,我々は,10月1日の人民元の特別引出権(SDR)構成通貨入りを歓迎する。我々は,強じん性を高める手段として,SDR建て表示でのより多くの公表,SDR建て債券の発行といった,SDRのより広い使用に関する継続中の検討を支持する。この文脈で,我々は,最近の世界銀行による中国銀行間市場でのSDR建て債券の発行に留意する。我々は,低所得国を支援する我々の取組を強化することを含む,地域通貨による債券市場の発展を支持するための国際機関による更なる作業を歓迎する。

18. 開かれた強じんな金融システムの構築は,持続可能な成長と発展を支える上で極めて重要である。このため,我々は,規制枠組みの残された重要な要素を最終化し,バーゼルIIIやTLAC(グローバルなシステム上重要な銀行の総損失吸収力)の基準及び国境を越えた破綻処理の効果的な枠組みを含む,これまでに合意された金融セクター改革の課題の適時,完全かつ整合的な実施に引き続きコミットしている。我々は,公平な競争条件を促進しつつ,銀行セクターにおける資本賦課の全体水準を更に大きく引き上げることなくバーゼルIIIの枠組みを2016年末までに最終化するためのバーゼル銀行監督委員会(BCBS)の作業に対する支持を再確認する。我々は,改革の実施及び影響に関するFSB(金融安定理事会)の第2回年次報告を歓迎し,重大で意図せざるいかなる影響にも対処すること等により,我々の全体的な目的との整合性を確保するため,改革の実施と影響に対する監視を引き続き向上させる。我々は,保険セクターにおけるシステミック・リスクの問題に引き続き対処する。我々は,国際的に活動する保険会社に対する国際資本基準(ICS)の策定に向けた作業を歓迎する。我々は,これまでに合意された店頭デリバティブ改革の課題の完全かつ適時の実施にコミットしており,取引情報蓄積機関への店頭デリバティブの報告及び当局のデータへの適切なアクセスに関する法的・規制上の障壁を取り除く。我々は,構成国に対し,「金融市場インフラのための原則」の実施におけるギャップを縮小することを奨励するとともに,中央清算機関の強じん性,再建計画及び破綻処理可能性を向上させるための決済・市場インフラ委員会,IOSCO(証券監督者国際機構)及びFSBによる報告を歓迎する。我々は,システミック・リスクを抑える効果的なマクロプル-デンス政策の重要性を認識しつつ,マクロプルーデンスの枠組みと手段に関する国際的な経験の調査を行い,効果的なマクロプルーデンス政策の促進に役立てるためのIMF,FSB及びBIS(国際決済銀行)の共同作業を歓迎する。我々は,資産運用業の活動がもたらす構造的なぜい弱性に対応するための政策提言案に関するFSBの協議を歓迎する。我々は,シャドー・バンキング,資産運用業及びその他の市場型金融活動に関連するものを含め,金融システムにおいて生じつつあるリスク及びぜい弱性を引き続きしっかりと監視し,必要に応じ対処する。我々は,送金,金融包摂,貿易及び開放性を支持するため,FSBが調整する行動計画を通じて,引き続きコルレス銀行サービスの減少に対処する。我々は,10月のFATF(金融活動作業部会)によるコルレス銀行業務に関するガイダンスの見直しを含め,必要に応じて,規制期待を明確化するための更なる取組を期待する。我々は,G20構成国,IMF及び世界銀行グループに対し,国際的なマネーロンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)やプルーデンス基準の遵守の改善を助けるため,国内の能力構築のための支援を強化することを求める。我々は,「デジタル金融包摂に関するG20ハイレベル原則」,更新された「G20金融包摂指標」及び「G20中小企業金融行動計画」の実施枠組みを支持する。我々は,各国に対して,特にデジタル金融包摂の分野において,より広範な金融包摂の計画を考案する際に,これらの原則を考慮することを奨励し,全ての人々の金融へのアクセスに関する進展を加速させるための具体的な行動をとることを奨励する。

19. 我々は,税源浸食と利益移転(BEPS),税に関する情報交換,開発途上国における税に関する能力構築及び成長と税の安定性を促すための租税政策について現在行われている協力の推進を含む,世界規模で公正な,かつ,現代的な国際課税システムを達成し,成長を促すための,国際的な税に関する協力を,引き続き支持する。我々は,G20/OECDBEPS包摂的枠組みの設立及び京都における同枠組みの第1回会合を歓迎する。我々は,BEPSパッケージの適時の,一貫した,広範な実施を支持し,未だBEPSパッケージにコミットしていない関係し,関心のある全ての国・地域に対し,BEPSパッケージへのコミットメントと,対等な立場での枠組みへの参加を求める。我々は,また,税の透明性に関する国際的に合意された基準の効果的で広範な実施についての進捗を歓迎し,遅くとも2018年までの自動的情報交換の基準の実施に未だコミットしていない,あるいは,多国間税務執行共助条約に未だ署名及び批准を行っていない,全金融センターを含む全ての関係する国・地域に,遅滞ないコミット並びに署名及び批准を求めることを再確認する。我々は,OECDがG20構成国と協働して作成した,税の透明性に関する非協力的地域を特定するための客観的基準についての提案を支持する。税の透明性に関して合意された国際的基準を,満足のいく水準で実施することに向けて十分な進捗が見られない地域のリストを,2017年7月のG20サミットまでにOECDが作成することを視野に入れ,我々は,OECDが2017年6月までに,財務大臣・中央銀行総裁会議に対し,各地域の税の透明性についての進捗と,グローバル・フォーラムが各国からの追加的審査の要請に応じて国別審査プロセスをどのように扱うかについて,報告することを要請する。リストに載った地域に対しては,防御的措置が検討される。我々は,開発途上国の税に関する能力構築を各国と国際機関が支援することを奨励し,IMF,OECD,国連及び世界銀行グループによる新たな「税に関する協働のためのプラットフォーム」の設立を認識する。我々は,アディス税イニシアティブの原則を支持する。我々は,不正な資金の流れの我々の経済への重大な悪影響を認識し,このテーマについてのG20における作業を前進させる。我々は,イノベーションによる包摂的成長を促進するためのサプライサイドの構造改革に租税政策の手段が有効であること,そして投資と貿易を促進する上で税の安定性が利益となることを強調し,OECD及びIMFに対し,成長志向の租税政策及び税の安定性の問題についての取組を継続することを要請する。これに関連し,中国は,国際税制の企画・研究のための国際租税研究センターを設立することで貢献する。

20. 特に法人及び法的取極めの実質的所有者情報に関し,金融の透明性及び全ての国・地域による透明性に関する基準の効果的な実施は,国際金融システムの清廉性を守り,これら法人及び法的取極めが,腐敗,租税回避,テロ資金供与,マネーロンダリングの目的で悪用されることを防止するために,極めて重要である。我々は,FATF及びグローバル・フォーラムに対し,法人及び法的取極めの実質的所有者情報の入手可能性及びその国際的な交換を含む,透明性に関する国際基準の履行改善のための方法についての初期提案を,10月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議までに,提示することを求める。

21. 我々は,環境的に持続可能な成長を世界的に支えるためには,グリーン資金を拡大することが必要なことを認識している。グリーン資金の発展は,とりわけ環境的外部性の内生化における困難,マチュリティのミスマッチ,グリーンに関する定義の明瞭さの欠如,情報の非対称性と不十分な分析能力を含む多くの課題に直面しているが,これらの課題の多くは,民間セクターとの連携によって策定された選択肢によって対処され得る。我々は,グリーン資金スタディグループ(GFSG)によって提出された「G20グリーン資金総合レポート」と,金融システムがグリーン投資に民間資本を動員する能力を高めるため,GFSGによって構築された自発的な選択肢を歓迎する。我々は,明確な戦略的政策のシグナル及び枠組みを提供し,グリーン資金のための自発的な原則を促進し,能力構築のための学習ネットワークを拡大し,ローカルなグリーン債券市場の発展を支持し,グリーン債券への国境を越えた投資を円滑化するための国際協調を促進し,環境及び金融のリスクの知識の共有を促進及び円滑化し,グリーン資金の活動及び影響の測定方法を改善するために努力が払われるべきであると確認する。

22. 我々は,腐敗や不正な資金フローが公的資源の衡平な配分,持続可能な経済成長,世界の金融システムの清廉性及び法の支配に及ぼす有害な影響を認識し,国際法,人権及び法の支配並びに各国の主権を十分に尊重しながら,腐敗に対する国際的な協力を高めるG20の取組を強化する。我々は,「腐敗関係の捜査対象者及び財産回復に係る協力に関するG20ハイレベル原則」を支持し,国際規範に沿って運営されることとなる「腐敗関係の捜査対象者及び財産回復に係るG20構成国における国際協力のための研究センター」の中国における設立に向けた中国のイニシアティブを歓迎する。我々は,腐敗公務員の入国拒否に関するG20専門家ネットワークの継続にコミットする。我々は,各国の国内法制度に沿って,国境を越えた協力並びに法執行機関及び腐敗対策のための機関と司法当局との間の情報共有に努める。我々は,全てのG20構成国による国連腐敗防止条約の批准を求め,同条約のレビュー・メカニズムの第2サイクルの開始を歓迎する。我々は,同条約その他の適用可能な国際条約における犯罪人引渡し,司法共助及び財産回復に関する規定の効果的な適用に努める。我々は,腐敗に対する許容ゼロ,制度の抜け穴ゼロ,そして行動に当たっての障壁ゼロという我々の姿勢を行動に移しつつ,公的部門及び民間部門の透明性及び清廉性を向上させるために,「G20腐敗対策行動計画2017-2018」を支持する。我々は,腐敗対策作業部会に対し,改めてハイレベルの関心と緊急性をもってこの取組を前進させるための柔軟な枠組みとして,2016年末までに実施計画を策定するよう要請する。我々は,また,2016年5月のロンドン腐敗対策サミット及び2016年3月のOECD閣僚会合の成果を歓迎する。

23. 我々は,「エネルギー協力に関するG20行動原則」に沿って,十分に機能する,開放的で,競争的で,効率的で,安定的で,透明性の高いエネルギー市場を構築すること,世界のエネルギー情勢の変化する現実をよりふさわしく反映するためのより効果的で包摂的なグローバル・エネルギー・アーキテクチャーを構築すること,そして,エネルギー資源と技術を活用しながら,安価で,信頼でき,持続可能で,温室効果ガスの排出の少ないエネルギーの未来を形成することへのコミットメントを再確認する。我々は,エネルギー・プロジェクトへの継続的な投資及び特に持続可能なエネルギー・プロジェクトにおけるより良い地域的な相互連結が,将来のエネルギー安全保障を確保し,また,経済的に不安定な価格急騰を防ぐ上で,引き続き死活的に重要であることを強調する。我々は,サブ・サハラ地域及びアジア太平洋地域の諸国と協力し,特に電気にアクセスする上での障壁に対処することによって,安価で,信頼でき,クリーンで,持続可能で,かつ,近代的なエネルギー・サービスへの普遍的アクセスの向上に努める。我々は,構成国に対し,各国の特有の必要性及び国内事情に基づきエネルギー効率を著しく改善させ,また,適切な生活スタイルの変更によりエネルギー保全を促進するよう,奨励する。我々は,エネルギー効率に関する国際協力のための革新的な協働作業の在り方を追求する。我々は,G20エネルギー大臣により発表された「エネルギー・アクセスに関するG20自主的協力行動計画」,「再生可能エネルギーに関するG20自主的行動計画」及び「G20エネルギー効率リーディング・プログラム」を支持し,G20エネルギー大臣に対し,これらの計画の実施のフォローアップのため定期的に会合するよう要請する。

24. 我々は,経済成長を促進するために,よりクリーンなエネルギーの未来と持続可能なエネルギー安全保障に向けたエネルギー協力の重要性を再確認する。我々は,「エネルギー効率リーディング・プログラム」に示された政策を考慮しつつ,国内事情に沿って,大型車の効率性を改善することを含む主要6分野におけるエネルギー効率に関する自主的な国際協働の進展を歓迎する。我々は,また,貧困層を支援する必要性を認識しつつ,中期的に,無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し,及び段階的に廃止するというコミットメントを再確認する。我々は,G20諸国のコミットメントに係る進捗を歓迎し,今後の更なる進捗に期待する。さらに,我々は,G20諸国に対し,自主的ピア・レビュー・プロセスへの参加を検討するよう奨励する。天然ガスが,より排出量の少ない化石燃料であることに鑑み,我々は,環境への影響を最小化するやり方での天然ガスの採掘,輸送及び加工を促進する解決策に関する協力を強化する。我々は,エネルギー源及び輸送経路の多様化の重要性を強調する。

強固な国際的な貿易と投資

25. 我々の成長は,強固なものとなるために,包摂的で,強固であり,かつ,持続可能な貿易と投資の成長によって強化されなければならない。我々は,世界的な貿易と投資の鈍化した伸びを懸念をもって留意し,貿易と投資の円滑化及び自由化に向けて取り組むことによって,開かれた世界経済を強化することにコミットする。我々は,より開かれた世界的な市場から恩恵を受けるため,開発途上国における経済の多様化と産業の高度化の重要性を認識する。我々は,7月9日・10日に上海において開催されたG20貿易大臣会合の成果を支持し,G20貿易投資作業部会(TIWG)の設置を歓迎する。我々は,貿易と投資に関するG20の協力を更に強化することにコミットする。

26. 我々は,今日の世界貿易において世界貿易機関が中心的な役割を担う多角的貿易体制が,ルールに基づき,透明性があり,無差別で,開かれ,包摂的であることを確保するとの決意を再確認する。我々は,ポスト・ナイロビの作業を,開発を中心として形づくるという我々のコミットメントを再確認し,農業の3本の柱(すなわち,市場アクセス,国内支持及び輸出競争),非農産品市場アクセス,サービス,開発,知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs)及びルールを含め,ドーハ開発アジェンダの残された課題に関する交渉を優先事項として進めることにコミットする。我々は,また,様々な課題が,今日の経済にとって共通の関心と重要性を持ち得,地域貿易協定(RTA)やB20において取り上げられるようなものを含め,WTOにおける議論にふさわしい課題となり得ることに留意する。我々は,切迫感と連帯感を持って,MC11及びそれ以降における前向きな成果を達成するために,全てのWTO加盟国と共に取り組み,また,WTOを更に強化するため共に努力する。

27. 我々は,貿易円滑化協定を2016年末までに批准することにコミットし,他のWTO加盟国が同様のことを行うよう求める。我々は,二国間及び地域的な貿易協定が,WTOルールと整合的であることを確保する必要性を認識しつつ,貿易の自由化及び貿易ルールの発展において果たし得る重要な役割に留意する。我々は,二国間及び地域的な貿易協定が多角的貿易体制を補完し,開かれ,透明性があり,包摂的で,かつ,WTOと整合的であることを確保するため取り組むことにコミットする。WTOと整合的で,広範な参加を得た複数国間の貿易協定は,世界的な自由化のイニシアティブを補完する上で重要な役割を担う。WTO環境物品協定(EGA)のG20参加国は,WTOのEGA交渉において達成された着地点を歓迎し,参加国の核心的な関心に対処する効果的な方法を見出した上で,残された懸隔を埋め,幅広い環境物品に対する関税撤廃を追求する野心的な未来志向のEGAを2016年末までにまとめるための努力を倍加するとの目標を再確認する。

28. 我々は,貿易と投資におけるあらゆる形態の保護主義に対する我々の反対の意を再確認する。我々は,保護主義的措置に関するスタンドスティルとロールバックへのコミットメントを2018年末まで延長し,そのコミットメントを実行する決意を再確認し,保護主義を監視するWTO,UNCTAD及びOECDの作業を支持する。我々は,貿易及び開かれた市場の利益がより幅広い人々により効果的に伝わり,恩恵の幅広い分配を確保するための適切な国内の政策を伴わなければならないことを強調する。

29. 我々は,「G20世界貿易成長戦略」を支持し,同戦略の下で,G20は,貿易コストを削減し,貿易投資政策の一貫性を強化し,サービス貿易を促進し,貿易金融を強化し,電子商取引の発展を促進し,貿易と開発に取り組むための模範を示すことにより主導する。我々は,WTOが発表した「世界貿易見通し指標」を,世界的な貿易の重要な先行指標として歓迎する。我々は,「G20グローバル投資政策に関する指導原則」を支持する。同指導原則は,投資のための開かれた,透明性と伝導性のある世界的な政策環境を醸成する。

30.我々は,また,全ての規模の企業,特に,女性及び若者の起業家,女性が率いる企業並びに中小企業が,グローバル・バリュー・チェーン(GVC)を十分に活用するよう奨励し,また,開発途上国,特に低所得国のより広範な参加,価値の付加及びGVCにおける上方への移行を奨励する政策を支持する。我々は,B20のデジタル貿易及びその他の作業を強化するとの関心を歓迎し,「電子的な世界貿易プラットフォーム」についてのB20のイニシアティブに留意する。

31. 我々は,一部の産業における過剰生産能力を含む構造問題が,世界経済の弱い回復と市場の需要の落込みによって悪化し,貿易と労働者に負の影響を与えていることを認識する。我々は,鉄鋼及びその他の産業における過剰生産能力が,共同の対応を必要とする世界的な課題であると認識する。我々は,また,政府又は政府支援の機関による補助金その他の支援措置が市場のゆがみを引き起こし,世界的な過剰生産能力に寄与し得ること及びそのため注目を必要とすることを認識する。我々は,コミュニケーション及び協力を強化すること並びに市場の機能を強化し調整を促すためにこの課題に対処する効果的な措置をとることにコミットする。この目標に向けて,我々は,G20構成国と関心あるOECD加盟国の積極的な参加を得つつOECDによって支援される鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの設立を通じた情報共有と協力の促進を求める。我々は,2017年にG20の関連する閣僚に対してグローバル・フォーラムの取組に関する進捗報告が行われることを期待する。

包摂的で相互に連結された開発

32. 我々の成長は,また,強固で,持続可能で,均衡あるものであるために,包摂的でなければならない。我々は,我々の成長の恩恵が,あらゆる人々に行き届くことを確保し,開発途上国及び低所得国の成長の潜在力を最大化することにコミットする。この文脈で,我々は,持続可能な開発をG20アジェンダにおいて重視する。

33. 我々は,持続可能な開発のための2030アジェンダの世界的なフォローアップと見直しが国連主導のプロセスであることを認識しつつ,G20の比較優位及び付加価値に基づき,また,国内の事情に従って,持続可能な開発に関する政策の一貫性を強化することを誓い,我々の作業と2030アジェンダ及び開発資金に関するアディスアベバ行動目標の普遍的な実施とを更に統合するというコミットメントを再確認する。我々は,広範な分野において,大胆で,変革的な共同の及び意図された各国の措置を通じ模範を示すことによって,2030アジェンダの実施に貢献することにコミットする。我々は,ハイレベルの原則も含む「持続可能な開発のための2030アジェンダに関するG20行動計画」を支持することにより,2030アジェンダの野心を達成するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は,アディス税イニシアティブに留意し,「技術円滑化メカニズム」の設立を歓迎し,持続可能な開発を達成するための技術に関する協力を強化する重要性を強調する。

34. 我々は,2014年から2016年までの期間に既に達成された我々の進捗を反映した「G20の開発に関するコミットメントについての杭州包括的説明責任報告書」を歓迎する。

35. 我々は,以下の自主的な政策オプションを通じて,包摂的な成長及び開発の潜在能力を強化する「アフリカ及び後発開発途上国の工業化の支援に関するG20イニシアティブ」を開始する。すなわち,包摂的で持続可能な構造転換の促進,持続可能な農業,アグリビジネス及びアグロインダストリーの発展の支持,ローカルな知識及び生産の基盤の深化,拡大及び高度化,再生可能エネルギー及びエネルギー効率を含む持続可能でかつ安定的なエネルギーへの投資の促進,産業生産性及び職業訓練に関する協力並びに持続可能で強じんなインフラ及び産業を発展させる方途の追求,WTOのルールに従った貿易を通じた工業化の支持,国内外の資金の活用及び女性や若者に焦点を当てた資金への衡平なアクセスへの支援並びに工業化の重要な手段としての科学,技術及びイノベーションの促進である。

36. 我々は,開発のための国内資源の動員を妨げる,意図的な貿易の帳簿操作を含む不正な活動から生ずる越境資金の流れに対処する作業を継続し,杭州サミット後にこの点に関しての研究報告のために世界税関機構と連絡し,調整することを歓迎する。

37. 我々は,開発におけるインクルーシブ・ビジネスの重要な役割を認識し,「インクルーシブ・ビジネスに関するG20グローバル・プラットフォーム」の設立及びその将来の行動を歓迎する。我々は,「2016年のサミットのためのインクルーシブ・ビジネスに関するG20報告」を歓迎する。

38. 我々は,第18次国際開発協会(IDA)増資及び第14次アフリカ開発基金増資を成功のうちに達成するために我々全体でのコミットメントを履行する。

39. 我々は,量と質の両面からインフラに焦点を当てた投資を促進するコミットメントを再確認する。我々は,11の国際開発金融機関(MDBs)による「インフラ投資を支援する行動に関する意図の共同表明」を歓迎する。これは,それぞれの組織のマンデートの中で質の高いインフラ・プロジェクトの量的目標を公表することの他,インフラ・プロジェクトの質の最大化,プロジェクト形成の流れの強化,既存の及び新しいMDBsの間での更なる協働,開発途上国におけるインフラ投資を可能にする環境の強化,並びに民間資金の導入促進のための取組を含む。我々は,社会・環境面での影響に対応し,経済・開発戦略と整合性をとりつつ,ライフサイクル・コストから見た経済性,安全性,自然災害に対する強じん性,雇用創出,能力構築及び相互に合意した条件での技術とノウハウの移転の確保を目指す,質の高いインフラ投資の重要性を強調する。我々は,「MDBsバランスシート最適化に関するG20行動計画」へのMDBの対応を歓迎し,同行動計画の更なる実施を求める。我々は,インフラ連結性が持続可能な開発と繁栄の共有を達成する上で鍵となることに留意する。我々は,様々なインフラ連結性プログラムの間での相乗作用と協力を包括的に強化するために今年設立された「グローバル・インフラ連結性アライアンス」を支持する。我々は,世界銀行グループに対し,同アライアンスの事務局として,グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH),OECD,その他のMDBs,及び関心のあるG20諸国と緊密に協働して同アライアンスの活動を支援するよう要請する。我々は,「インフラと中小企業のための金融商品の多様化に関するG20/OECDガイダンス・ノート」を支持し,開発途上国がインフラ・リスクをより良く評価することを助けるためにGIHによって完成された,「注釈つきの官民パートナーシップ(PPP)リスク配分マトリックス」を歓迎する。我々は,「G20/OECDコーポレート・ガナバンス原則」及び「中小企業金融についてのG20/OECDハイレベル原則」の効果的な実施を支持し,コーポレート・ガナバンスに関するFSBのピア・レビューによる情報提供を受けた,「G20/OECDコーポレート・ガナバンス原則」の評価方法の改定を期待する。

40. 質の高い雇用創出は,持続可能な開発のために不可欠であり,G20の国内的な及び世界的なアジェンダの中心にある。我々は,経済成長,グローバリゼーション及び技術革新からの利益が幅広く共有され,より多くのより良い雇用を創出し,不平等を減少させ,包摂的な労働力の参加を促進することを確保するよう取り組む。我々は,技能のニーズの変化に対処し,起業及び雇用可能性を支援し,ディーセント・ワークを促進し,グローバル・サプライ・チェーンにおいてを含めより安全な職場を確保し,社会的保護のシステムを強化するための有効な行動をとることによって,成長及び開発のアジェンダを強化するためのG20労働雇用大臣会合で作成された戦略,行動計画及びイニシアティブを支持する。我々は,「持続可能な賃金政策に関する原則」を支持する。我々は,起業が雇用創出及び経済成長の重要な推進力であることを認識し,「起業に関するG20行動計画」に対するコミットメントを強化し,「G20エコノミーの起業に関する研究センター」の設立における中国の貢献を歓迎する。我々は,また,実習制度の量,質及び多様性を増加させるという政策的な優先事項を伴う「実習制度の質を高めるためのG20イニシアティブ」を支持する。我々は,これらのコミットメントに取り組み,特に若者の雇用と女性の労働参加に関するG20の目標達成についての組織的で透明性のある進捗を監視するG20雇用計画を2017年に更に発展させる。我々は,強化された労働市場の制度と政策が,特に低所得の労働者のため,生産性を支え,ディーセント・ワークを促進し,それによってより高い持続可能な賃金の上昇を促進し得ることを認識する。我々は,適切に管理された移住が経済と社会に潜在的な利益をもたらし得る中で,労働力の移動を通じて労働市場にもたらされる機会と課題に対処することの重要性を認識する。

41. G20は,持続可能な開発のための2030アジェンダの実施に対する重要な貢献として,食料安全保障,栄養,持続可能な農業の成長及び農村開発に関する作業を引き続き優先する。我々は,G20農業大臣会合の成果を支持し,食料安全保障,農村開発及び貧困削減の手段としての技術的な,制度的な及び社会的な革新,貿易,責任ある投資等を通じ,持続可能な農業開発とフード・バリュー・チェーンを共同で促進するため,我々の農業大臣が定期的に会合することを奨励する。我々は,農業における科学者及び民間部門によるこの点に係る取組を増加させるよう支援し,「第1回G20農業起業家フォーラム」の開設を歓迎する。我々は,開発における家族経営及び小規模農家による農業の役割を認識し,G20構成国及びそれらを超えて有益であると証明され得る政策,施策及び手段を示す「家族経営及び小規模農家による農業に係るグッド・プラクティス」を歓迎する。我々は,「世界農業食料安全保障プログラム」を含む持続可能な農業開発を促進する施策及びイニシアティブによる貢献を歓迎する。

世界経済に影響する重要で世界的な更なる課題

42. 英国のEU加盟国地位に関する国民投票の結果は,世界経済の不確実性に付加するものである。G20構成国は,同国民投票に起因する潜在的な経済上及び金融上の結果に積極的に対処することができる立場にある。我々は,将来英国がEUの緊密なパートナーであることを希望する。

43. 我々は,持続可能な開発並びに気候変動に対処するための力強く効果的な支援及び行動に対するコミットメントを再確認する。我々は,各国の手続が許容する限りにおいて可及的速やかにパリ協定に参加するため,それぞれの国内手続を完了することにコミットする。我々は,同協定に参加したG20構成国及び同協定の2016年末までの発効を可能にするための取組を歓迎し,同協定の全ての側面についての適時の実施を期待する。我々は,パリでの結果に沿って緩和及び適応のための行動に関し開発途上国を支援するための資金的リソースを含む実施手段の提供についての先進国による国連気候変動枠組条約上のコミットメントが実施されることの重要性を確認する。我々は,緑の気候基金によって提供される支援の重要性を再確認する。我々は,「緩和及び適応のための行動の野心を高めるための気候資金の効率的で透明な提供及び動員を促進することに関するG20気候資金スタディ・グループ報告」を歓迎する。我々は,モントリオール議定書及び国際民間航空機関を含む関連する多数国間の枠組みにおける成果に期待する。

44. 第二次大戦以来前例のない,世界的に大規模に避難を強いられている人々,特に暴力的な紛争によって発生したものが,世界的な懸念となっている。我々は,難民危機に伴う負担を共有すべく,その影響,保護の必要及び根本原因に対処するため,世界が協調して取り組むよう,アンタルヤに続いて改めて呼びかける。我々は,難民及びその第三国定住のための人道支援を強化するよう呼びかけるとともに,全ての国が,特に長期化している難民を取り巻く状況について永続性のある解決を見出すための取組を強化し,この観点から,受入れコミュニティへの開発支援による貢献を強化しつつ,それぞれの能力に応じ,関連する国際機関が影響を受けた国々を支援する能力を向上させるための支援を増強するよう求める。我々は,継続する危機に対応するための国際的な取組を支持し,来る国連総会期間中のハイレベル会合に留意する。我々は,世界銀行が,低・中所得国において難民及び受入れコミュニティに支援を提供するためのグローバル危機対応プラットフォームを設けるため,他の国際機関及び出資国と取り組んでいることに留意する。G20は,具体的な行動を進展させるため,強いられた避難に2017年も引き続き取り組んでいく。G20は,2017年に,移住の問題についても検討する。

45. 我々は,国際の平和と安定に深刻な影響をもたらすとともに,世界経済を強化し,持続可能な成長と開発を確保するための我々の継続的な取組を危険にさらす,あらゆる形態及び目的によるテロを強く非難する。我々は,いかなる形態で,どこで起きるものであれ,テロとの戦いにおける団結と決意を再確認する。我々は,強奪,不法な課税,天然資源の密輸,銀行の略奪,文化財の略奪,外部からの寄付,身代金目的の誘拐など,テロ資金供与の全ての資金源,技術及びチャネルと戦っていく。テロと戦うに当たり,我々は,効果的な情報交換,テロリストの資産の凍結,テロ資金供与の犯罪化にコミットする。我々は,FATF基準及び国連安保理決議2253の規定を速やかに,効果的に,かつ,普遍的に全世界で実施することを要請する。我々は,FATFのテロ資金対策の新しい統合戦略の実施に関する進展を歓迎し,その実行計画の効果的な実施を求める。我々は,FATFに対し,FATFの牽引力強化及びFATFとFATF型地域体のネットワークの実効性強化を進展させる方法について,2017年3月までに考慮することを求める。

46. 薬剤耐性(AMR)は,公衆衛生,成長及び世界経済の安定に深刻な脅威を与えている。我々は,証拠に基づき耐性を防止し,緩和する方法を開発することによって包摂的な方法で薬剤耐性と戦う必要性を確認し,G20としての付加価値という視点から新規及び既存の抗微生物剤に関する研究開発を促し,世界保健機関(WHO),国連食糧農業機関(FAO),国際獣疫事務局(OIE)及びOECDに対し,経済的側面を含めこの問題に対処するための選択肢につき2017年に共同で報告するよう求める。この文脈で,我々は,抗菌剤の適正な使用を促進し,抗微生物剤の価格及びアクセスという大きな課題並びにその公衆衛生に対する影響を考慮する。我々は,WHO,FAO及びOIEの取組を強く支持し,国連総会期間中のAMRに関するハイレベル会合が成功裏に行われることを期待する。我々は,次期議長国の下でこれらの問題について議論が行われることに期待する。

47. 我々は,G20創設の精神は,主要な経済が平等な立場で集い,行動を起こすことにあることを再確認する。我々がひとたび合意すれば,それは必ず実行されなければならない。

48. 我々は,杭州サミットの主催とG20プロセスへの貢献について中国に感謝するとともに,2017年にドイツで,2018年にアルゼンチンで再び会合することを楽しみにしている。