データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20ハンブルク首脳宣言 相互に連結された世界の形成

[場所] ハンブルク
[年月日] 2017年7月8日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

前文

 我々G20の首脳は,主要な世界経済の課題に対処し,並びに繁栄及び幸福に貢献するため,2017年7月7日・8日にドイツのハンブルクにおいて会合した。

 我々の時代の課題を制し,相互に連結された世界を形成することは,国際経済協調のための我々の第一のフォーラムとしてのG20の共通の目標である。G20は,約10年前の世界経済金融危機の間,経済及び金融市場の安定化に極めて重要な役割を果たした際,その強さを示した。当時真実であったことは,引き続き当てはまる。我々は,単独で行動するよりも,共に行動することでより多くを達成することができる。

 G20における我々の共同の目的-強固で,持続可能で,均衡ある,かつ,包摂的な成長-を前進させることは,引き続き我々の最優先課題である。

 グローバル化及び技術の変化は,経済成長を推進し世界中の生活水準を引き上げるために顕著に貢献してきた。しかし,グローバル化は課題を創出し,その恩恵は十分に広く共有されるに至っていない。先進国と新興市場経済国を結集することにより,G20は,全ての人々が裨益するグローバル化を形成する決意である。最も重要なことに,我々は,我々の国民がその機会を捉えることがより良くできるようにする必要がある。我々は,持続可能な開発及び安定性の基礎として,テロ,避難,貧困,飢餓及び健康への脅威,雇用創出,気候変動,エネルギー安全保障並びにジェンダー間の不平等を含む不平等を含めた国際社会の共通の課題に対処する決意である。我々は,ルールに基づく国際秩序を基礎として,これらの課題に対処するために,開発途上国を含むその他の者と共に引き続き取り組む。

 我々は,これまでの議長国の成果,特に2016年のG20杭州サミットの成果の上に発展し,強じん性を構築し,持続可能性を向上し,及び責任を果たすとの三つの目標を前進させるため,具体的な行動をとることを今日決定する。

グローバル化の利益の共有

繁栄する世界経済

 成長は依然として望ましいペースよりも弱いが,現在の成長見通しは,心強いものである。我々は,さらに成長を強化し下方リスクから守るため,国際的な経済・金融協力へのコミットメントを再確認する。我々は,経済及び金融面の強じん性を高めつつ,強固で,持続可能で,均衡ある,かつ,包摂的な成長という我々の目的を達成するため,引き続き,全ての政策手段―金融,財政及び構造政策―を個別にまた総合的に用いる。金融政策は引き続き,中央銀行のマンデートと整合的に経済活動を支え,物価の安定を確保する。財政政策は,債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せることを確保しつつ,機動的に実施し,成長に配慮したものにする。我々は,構造改革への我々のコミットメントを強化する。我々は,我々のこれまでの為替相場のコミットメントを再確認する。我々は,世界の成長を支えるような方法で,過度の世界的な不均衡を縮小するために努力する。我々は,経済成長と雇用創出の追求に当たって,更なる包摂性,公正及び平等を促進する。これらの目的のため,我々は「ハンブルク行動計画」を支持する。

貿易と投資

 国際的な貿易及び投資は,成長,生産性,イノベーション,雇用創出及び開

 発のための重要なエンジンである。相互的かつ互恵的な貿易及び投資の枠組みの重要性並びに無差別の原則の重要性に留意しつつ,我々は開かれた市場を維持するとともに,全ての不公正な貿易慣行を含む保護主義と引き続き闘い,この点において,正当な貿易防衛制度の役割を認識する。この点において,我々は,特に貿易及び投資に好ましい環境を促進することによって,公平な競争条件を確保するため努力する。我々は,更に,予見可能で互恵的な貿易関係のための透明性の重要性を再確認する。この目的のため,我々は,WTO,UNCTAD及びOECDによる,各々の機関の既存のマンデートの範囲内での監視活動を評価する。我々は,G20の貿易及び投資に関する協力を更に強化することにコミットする。我々は,OECD,WTO,世界銀行グループ及びIMFに対し,貿易の影響についてより良く理解するための作業を継続するとともに,2018年にG20首脳に報告するよう求める。

 我々は,国際的な貿易及び投資の利益が十分広く共有されていないことを認識する。我々は,経済のグローバル化がもたらす機会及び利益を我々の国民がより良く捉えられるようにする必要がある。我々は,貿易及び投資の自由化並びに科学技術の変化に伴う調整コストの緩和,並びに適切な国内政策に関する経験を共有するとともに,包摂的かつ持続可能な世界の成長に向けて国際的な協力を強化することに合意する。

 我々は,ルールに基づく国際的貿易体制の極めて重要な役割を強調する。我々は,二国間,地域間及び複数国間の協定が,開かれた,透明性があり,包摂的なものであり,かつWTOと整合的であることの重要性に留意するとともに,それらの協定が多国間貿易協定を補完することを確保するよう取り組むことにコミットする。我々は,WTO貿易円滑化協定の発効を歓迎し,開発途上国への技術支援を含む,その完全な実施を求める。我々は,第11回WTO閣僚会議を成功させるために全てのWTO加盟国とともに取り組むことにコミットする。WTOの機能を更に向上させるため,我々は,貿易規則及びコミットメントの効果的で適時な執行を確保するとともに,交渉,監視,紛争解決制度に関わるWTOの機能の向上のために協力する。

 国際的な投資は,包摂的な経済成長,雇用創出及び持続可能な開発を促進するに当たって重要な役割を果たし得るものであり,開かれた,透明性があり,これらを促す世界的な政策環境を必要とする。我々は,直接投資を促進し,留め置くための戦略を特定することを追求する。

過剰生産能力

 産業部門における過剰生産能力が国内生産,貿易及び労働者に与える継続的な負の影響を認識して,我々は,この地球規模の課題に対処する集団的な解決策を見出すための協力を一層強化することにコミットする。我々は,政府及び関連主体による市場歪曲的な補助金及びその他の支援措置の撤廃を緊急に求める。我々それぞれは,真に公平な競争条件を促進するような集団的解決策を実行するために必要な行動をとることにコミットする。したがって,我々は,杭州サミットによりマンデートを与えられ,OECDにより支援される鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの構成国に対し,情報共有と協力の強化に関するコミットメントを2017年8月までに達成し,かつ,鉄鋼の過剰生産能力を減少させる具体的な政策的解決策を速やかに構築するよう呼びかける。我々は,目に見える迅速な政策行動の基礎として,2017年11月までに,具体的な政策的解決策を含む実質的な報告がなされることを,また,2018年中に進捗をフォローアップする報告がなされることを期待する。

持続可能なグローバル・サプライ・チェーン

 グローバル・サプライ・チェーンは雇用創出と均衡ある経済成長の重要な源泉となりうる。しかし,包摂的で,公正で,持続可能なグローバル化を達成する上での課題は残っている。持続可能で包摂的なサプライ・チェーンを達成するため,我々は,労働,社会及び環境上の基準の実施の促進並びに国連ビジネスと人権に関する指導原則やILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言のような国際的に認識された枠組みに沿った人権の促進にコミットする。OECD多国籍企業行動指針を遵守している国は,同指針を促進することにもコミットし,他国が後に続くことを歓迎する。

 我々は,自国において,ビジネスと人権に関する国別行動計画のような適切な政策枠組みを構築するよう取り組むとともに,企業がデュー・ディリジェンスを払う責任を強調する。我々は,児童労働を2025年までに撲滅し,また,強制労働,人身売買及びあらゆる形態の現代の奴隷制を撲滅するため,喫緊に効果的な措置をとる。我々は,職場に関連する死亡及び傷害を防止するためのビジョン・ゼロ・ファンドを歓迎し,企業等に参加するよう奨励する。

 我々は,公正で,ディーセントな賃金及び社会的対話が,持続可能で包摂的なグローバル・サプライ・チェーンの他の重要な要素であることを強調する。我々は,救済や,適切な場合には,OECD多国籍企業行動指針のための各国連絡窓口(NCPs)のような非司法的な異議申立てのメカニズムへのアクセスを支持する。我々は,多国籍企業に対し,適切に国際枠組み協約を締結するよう奨励する。金融包摂のためのグローバルパートナーシップ(GPFI)の進行中の作業を認識し,我々は,零細・中小企業が持続可能で包摂的なグローバル・サプライ・チェーンに統合する能力を向上させるような金融,技術,訓練に関するファシリティへのより良いアクセスを促進する。

デジタル化の活用

 デジタル・トランスフォーメーションは,世界の革新的で包摂的で持続可能な成長の原動力であり,不平等を削減し,持続可能な開発のための2030アジェンダの目標の達成に貢献できる。この目的のために,我々は,所得,年齢,地理及びジェンダーを含む複数の側面においてデジタル・デバイドを埋める必要がある。我々は,2025年までに全ての市民がデジタル上連結されることを確保するよう努め,この点に関し低所得国におけるインフラ開発を特に歓迎する。我々は,教育と生涯学習のあらゆる形態において,デジタル・リテラシーとデジタル技能を促進する。我々は,情報通信技術(ICT)が行政機関の近代化及び一層の効率化において果たす極めて重要な役割を認識する。我々は,中小企業と新興企業が,あらゆる新しく革新的なビジネス・モデルの開発に果たす重要な役割を認識し,財政資源及びサービスへのより良いアクセス及び起業家に一層配慮した環境を促進する。

 我々は,デジタル経済の発展にとって良好な条件の助長を目指し,投資とイノベーションの促進に効果的な競争を確保する必要性を認識する。我々は,全てのステークホルダーの効果的協力を引き続き促進し,デジタル化された生産,製品及びサービスに係る市場及び産業が主導する国際基準の策定と利用を引き続き奨励する。これら国際基準は,開放性,透明性及びコンセンサスの原則に基づくものであり,貿易,競争又はイノベーションへの障害となるものであってはならない。これらは,ICTの利用における相互運用性及び安全を促進し得る。

 デジタル技術に対する信頼は,効果的な消費者の保護,知的財産権,透明性及びICTの利用における安全を必要とする。我々は,プライバシー,個人情報の保護及び知的財産権に関する適用可能な法的枠組みを尊重しつつ,情報の自由な流通を支持する。デジタル化のためのG20ロードマップは,我々が将来の取組を導く上で助けとなる。

 我々は,全ての部門がその恩恵を享受できる安全なICT環境の確保を支援することにコミットし,ICTの利用における安全の問題に共同で対処することの重要性を再認識する。

 我々は,デジタル経済開発及び貿易を促進するため,電子商取引に関するWTOの議論及びデジタル貿易の様々な側面に関する責任を有するその他の国際フォーラムに建設的に関与する。我々は,デジタル貿易の予測可能で透明性のある枠組みを適切な場合に維持し改善する。開発途上国及び後発開発途上国がより全面的にデジタル貿易に関与する能力を高めるため,より強化された協調的な行動が必要である。

雇用の促進

 よく機能する労働市場は,包摂的でまとまりのある社会及び強じんな経済に貢献する。デジタル化は,技能,社会的保護及び雇用の質に関する課題をもたらすと同時に,新たな,より良い雇用を創出する機会を提供する。したがって,我々は,仕事の未来に必要な技能が備わるように人々を教育し訓練する必要性及び職業人生を通じて技能を再習得し向上する機会の重要性を認識し,各々の国内における社会的枠組みにしたがって,彼らが成功裡に変化に適応することを支援する。

 我々は,雇用形態がますます多様化していることを認識しつつ,この多様化が社会的保護及び労働条件に与える影響を評価し,新たな技術,人口構成の転換,グローバル化及び変化する労働関係が労働市場に与える影響を含め,地球規模の傾向を引き続き監視する。我々は,労働市場の転換の間のディーセント・ワークの機会を促進する。我々は,各国の経験と慣行の継続的な共有に期待する。

 我々は,労働市場へ若者を統合するための質の高い実習制度を含め,職業教育・訓練の重要な役割を認識する。この点,我々は,この訓練制度が,調和された質の高い学校教育及び職業教育を提供するとき,並びに政府,ビジネス界及び社会的パートナーの間の協調に基づくとき,特に効果的であることを認識する。

強じん性の構築

強じんなグローバル金融システム

 合意された国際基準に基づく,開かれた,強じんな金融システムは,持続可能な成長を支えるために極めて重要である。我々は,合意されたG20金融セクター改革の課題の最終化と,適時,完全かつ整合的な実施に引き続きコミットしている。我々は,公平な競争条件を促進しつつ,銀行セクターにおける資本賦課の全体水準を更に大きく引き上げることなくバーゼルⅢの枠組みの最終化に取り組む。我々は,金融システムにおいて生じつつあるリスク及び脆弱性を引き続きしっかりと監視し,必要に応じ対処する。我々は,シャドー・バンキングの強じんな市場型金融への転換に向けた金融危機以降の大きな進捗を強調するとともに,シャドー・バンキングから生じるリスクに対処するために利用可能な監視・政策手段に関するFSBの評価を歓迎する。我々は,金融規制改革の影響を評価するためのFSBの作業及び実施後の影響の評価のための構造的な枠組を支持する。情報通信技術(ICT)の悪意のある利用が金融安定を脅かしうることを認識し,我々は,FSBの作業の進捗を歓迎するとともに,2017年10月に現状調査に関する報告書を期待する。

国際金融アーキテクチャ

 我々は,成長及び持続可能な開発を支えるために,強固で,効果的で,代表的な,グローバル経済・金融機関を必要とする。「ハンブルク行動計画」で提示されたように,我々は引き続き,国際資本フローを支えるシステムを改善し,健全で持続可能な金融慣行を促進する必要性を強調する。我々は,国際金融アーキテクチャ,及び,強固で,クォータを基盤とし,かつ,十分な資金基盤を有するIMFを中心とする,グローバル金融セーフティネットを強化する。我々は,新たな計算式を含め,第15次クォータ一般見直しを2019年春の会合までに,また,遅くとも2019年の年次総会までに完了させることを期待し,IMFの貸出手段の実効性をさらに向上させるための,継続中の取組を支持する。我々は,民間資金動員のための国際開発金融機関(MDBs)の「共同原則」及び「目標」(「ハンブルク原則及び目標」)を支持し,バランスシート最適化並びにインフラ投資及び連結性の促進に関するMDBsの作業を歓迎する。

国際的な税の協力と金融の透明性

 我々は,世界規模で公正,現代的な国際課税システムのための取組を続け,成長志向の租税政策についての国際的協力を歓迎する。我々は,「税源浸食と利益移転(BEPS)」パッケージの実施に引き続きコミットし,全ての関連する法域に「包摂的枠組み」への参加を奨励する。我々は,「共通報告基準(CRS)」に基づく金融口座情報の初回の自動的交換が2017年9月に行われることを期待する。我々は,全ての関係法域が遅くとも2018年9月までに交換を開始することを求める。我々は,税の透明性に関して合意された国際基準の満足のいく水準での実施を達成するための各法域による最近の進捗を称賛し,次回のサミットまでに,実施に向けた更なる取組を反映したリストがOECDから提出されることを期待する。リストに載った法域に対しては,防御的措置が検討される。我々は,開発途上国の税に関する能力構築への支援を引き続き支持する。我々はまた,税の安定性向上に,そしてOECDと共同で経済の電子化によって惹起される課税上の課題に,取り組んでいる。腐敗,脱税,テロ資金供与,マネーローンダリングに対する我々の闘いにおける重要な手段として,我々は,国内及び国際的場面における情報の入手可能性を含む,法人及び法的取極めの実質的所有者情報と透明性に関する国際基準の効果的な実施を進める。

健康危機の予防及び保健システムの強化

 G20は,国際保健の課題に対する備え及び対応力を向上させる上で極めて重要な役割を有する。G20の公衆衛生上の緊急事態シミュレーション演習の結果に関連し,我々は,我々が現在行っている信頼を醸成する分野横断的な協力の価値を強調する。我々は,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジが2030アジェンダにおいて採択された目標の一つであることを想起し,強固な保健システムは健康危機に効果的に対処するために重要であることを認識する。我々は,国連に対し,国際保健を政治アジェンダにおいて引き続き重視するよう求め,保健従事者の育成を通じたものを含め,保健システムを世界的に強化するための協力的行動のために努力する。我々は,国際保健規則(IHR2005)の実施及び遵守が効果的な予防,備え及び対応の取組にとって極めて重要であることを認識する。我々は,ポリオを完全に撲滅するよう努める。我々は,人々の大規模な移動が重要な健康上の課題をもたらし得ることも認識し,各国及び国際機関に対しこの点について協力を強化するよう奨励する。我々は,特に保健に関する緊急事態に対する能力構築及び対応について,WHOが中心となって調整的役割を果たすことを支持し,その喫緊の改革を完全に実施することを奨励する。我々は,国際保健能力を強化するため,迅速な資金調達メカニズム及び世界保健機関(WHO)の健康危機プログラムを含め,十分かつ持続可能な財政的支援を提唱する。さらに,我々は,感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)といったWHO研究開発(R&D)ブループリントを指針とした世界的に調和されたモデルを通じて研究開発準備を促進する必要性を認識する。

薬剤耐性(AMR)対策

 AMRは,公衆衛生及び経済成長に対して増大している脅威である。人類,動物及び環境におけるAMRの拡散に対処するため,我々は,ワン・ヘルス・アプローチに基づく我々の国別行動計画が2018年末までにしっかりと実施段階に移されていることを目指す。我々は,全ての分野において抗生物質(注1)の適正使用を促進し,その動物の薬への使用は治療目的のもののみに制限するよう努める。食料生産用の動物に対する抗生物質の責任ある適正な使用には,リスク分析のない成長促進のための使用は含まない。我々は,治療が処方又は獣医に相当する者のみを通じて利用可能であるべきことを強調する。我々は,公衆周知活動,感染の予防及び抑制を強化し,環境における抗微生物剤の問題についての理解を向上させる。我々は,既存の治療に係る選択肢を維持する取組を通じることを含め,負担可能な価格で質の高い抗微生物剤,ワクチン及び診断薬へのアクセスを促進する。我々は,特にWHOによって特定された優先度の高い病原菌及び結核に関するR&Dを促進する重要性を強調する。我々は,既存及び新規の抗微生物剤の基礎及び臨床研究イニシアティブ並びに製品開発の効果を最大化するため,新たな国際的R&D連携ハブを求める。我々は,全ての関心のある国及びパートナーに対し,この新たなイニシアティブへの参加を招請する。同時に,OECD及びWHOからの者を含む関連する専門家と協力しつつ,我々は,実際的な市場インセンティブの選択肢を更に検討する。(注1)G20諸国において「抗生物質」の用語の定義が異なることに留意し,ここではWHOで定義される人用の医薬品において極めて重要な抗微生物剤を含め人の健康に影響する抗生物質を指す。

持続可能な生活の向上

エネルギー及び気候

 強い経済と健全な地球は,相互に補強し合うものである。我々は,持続可能なエネルギー源並びにクリーン・エネルギー技術及びインフラへのより多くの投資がもたらす,イノベーション,持続可能な成長,競争力及び雇用創出の機会を認識する。我々は,とりわけ持続可能でクリーンなエネルギー及びエネルギー効率に関する更なるイノベーションを通じて温室効果ガスの排出を緩和することに引き続き共同でコミットし,温室効果ガス低排出型エネルギーシステムに向けて取り組む。我々の経済及びエネルギーシステムを,持続可能な開発のための2030アジェンダと整合的なものに変革し強化するために,均衡が取れ経済的に実現可能な長期的な戦略を促進するなか,G20構成国は緊密に協力する。

 エネルギー協力に関するG20原則を想起しつつ,我々は,エネルギー安全保障を我々のエネルギーシステムの変革に向けた行動指針の一つであると考え,エネルギー商品及び技術の開かれた柔軟で透明性のある市場に引き続き取り組む。我々は,持続可能でクリーンなエネルギー技術の開発,普及及び商業化に関する国際協力を歓迎し,安価で,信頼でき,持続可能でクリーンなエネルギーへの普遍的アクセスを促進するための国際開発金融機関による資金供与を支援する。

 我々は,パリ協定から脱退するとの米国の決定に留意する。米国は,同国が現在の自国が決定する貢献の実施を直ちに停止する予定である旨を発表し,また,経済成長を支え,エネルギー安全保障上のニーズを改善しつつ,排出を低減するアプローチをとるとの強いコミットメントを確認する。米国は,その他の国の自国が決定する貢献におけるエネルギーへのアクセス及びエネルギー安全保障の重要性に鑑み,これらの国々による化石燃料へのよりクリーンで効率的なアクセス及び利用並びに再生可能エネルギー及びその他のクリーン・エネルギー源の普及を支援すべくこれらの国々と緊密に連携するよう努める旨表明する。

 その他のG20構成国の首脳は,パリ協定が不可逆的である旨表明する。我々は,パリでの結果に沿って緩和及び適応のための行動に関し開発途上国を支援するための財政資源を含む実施手段の提供についての先進国による国連気候変動枠組条約上のコミットメントを達成することの重要性を再確認し,OECD報告書「気候への投資,成長への投資」に留意する。我々は,パリ協定に対する我々の強いコミットメントを再確認し,各国の異なる状況に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力の原則を踏まえ同協定の完全な実施に向けて迅速に進み,この目標のため,別添に示されているG20ハンブルク成長のための気候及びエネルギー行動計画に合意する。

持続可能な開発への道の主導

 2030アジェンダの採択は,地球規模の持続可能な開発に向けた一里塚となった。我々は,各国に対し,国ごとの状況にしたがって,その野心的で統合された実施及び適時の実現に向けて努めるべく,ステークホルダーと共に取り組むよう求める。我々は,途上国及び公共財の供給への支援を含め,国内的にも国際的にも,我々の行動を持続可能な開発のための2030アジェンダ及びその不可欠な部分である開発資金に関するアディスアベバ行動計画と更に整合的なものにすることにコミットする。

 持続可能な開発のための2030アジェンダに関するG20の行動計画に基づき,ハンブルク・アップデートは,我々の共同の具体的なコミットメントを強調する。我々は,持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム及び持続可能な開発目標の達成に向けたその他の鍵となる国連プロセスの中心的な役割を支持する。我々は,2030アジェンダの実施に関する自主的なピア・ラーニングにも従事し,他の主体が自主的各国別レビューに向けた補完的な行動としてこの重要な取組に参加するよう求める。

 年次進捗報告は,2030アジェンダの実施に関する選定された以前のG20コミットメントに関する進捗を初めて記録する。我々は,貧困撲滅,雇用創出,ジェンダー間の平等及び女性のエンパワーメントを乗数的に増加させるものとしての金融包摂の重要性を認識しつつ,金融包摂のためのグローバル・パートナーシップによる進行中の作業を支持し,G20金融包摂行動計画2017を歓迎する。我々は,教育のためのグローバル・パートナーシップや教育を後回しにはできない(Education Cannot Wait)といったその他の既存のイニシアティブを考慮しつつ,教育のための国際金融ファシリティを設立するという国連事務総長の提案に留意し,これについて提言を行うため,アルゼンチンの議長の下で更なる詳細について検討することに期待する。

女性のエンパワーメント

 労働市場,財産,質の高い雇用及び金融サービスへの男女の平等なアクセスの強化は,ジェンダー間の平等を達成し彼らの権利を完全に実現するための基本であるとともに,持続可能で包摂的な成長の前提条件である。我々は,労働力参加における性別による格差を2025年までに25%減少するための我々の2014年のブリスベン・コミットメントの達成に向け前進しているが,更なる取り組みが必要であることに同意する。我々は,女性の雇用の質を改善し,雇用差別を撤廃し,性別による報酬の格差を減少させ,あらゆる形の暴力から女性を保護するため,更なる行動をとることについてもコミットする。我々は,質の高い教育及び訓練,支援インフラ,公共サービス及び社会的保護政策,並びに適切な場合には法制度改革の提供を通じて女性の労働市場へのアクセスを改善する。

 デジタル化及びICTへのアクセスは,女性及び女児の経済的エンパワーメント及び包摂のための力強い触媒としての役割を果たす。STEM(科学,技術,工学及び数学)関連の訓練及び職業へのアクセスは,したがって,女性のエンパワーメントを可能とする環境を確立するための鍵である。我々は,特に低所得国及び開発途上国において,デジタル経済における女性と女児に対する機会と平等な参画を促進するため,#eSkills4Girlsイニシアティブの開始を歓迎する(別添参照)。

 女性による起業への支援を拡大するため,我々は,世界銀行グループにより運営される女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)の立ち上げを歓迎する(別添参照)。We-Fiは,金融包摂への障害を減らし,資本,市場及び技術支援への女性のアクセスを増加させるためのG20の現在進行中の取り組みを支援し,また,G20アフリカ・パートナーシップ及び起業に関するG20行動計画の目標を達成することに貢献する。我々は,ビジネス・ウーマン・リーダーズ・タスクフォースも立ち上げる。これは,女性の経済への参加を拡大する方策を検討するためにW20やB20と緊密に連携してG20諸国のビジネス・ウーマンを結集し,女性の経済的エンパワーメントに関するG20のコミットメントの実施について来年のサミットにおいて提言を行う。

食料安全保障,水の持続可能性及び農村部の若者の雇用に向けて

 水は,不可欠で貴重な資源である。食料安全保障を達成するため,我々は,水及び水関連の生態系を保護し,管理し及び効率的に利用することを目指しつつ,農業における生産性と強じん性を持続可能な形で高めることにコミットする。ICTの潜在力を活用するため,我々は,農業におけるICTに関する協力の強化の必要性を強調し,農家の高速デジタルサービスへのアクセス及び適切に農村部にサービスが行き届くことの重要性を強調する。世界の食料市場の透明性を高めるため,我々は,農業市場情報システム(AMIS)の強化とその全ての加盟国の積極的な参加を求める。我々は,市場をより良く機能させることが食料価格の変動を削減し,食料安全保障を強化することに貢献できることを強調する。利益を生み出すこと及び消費者と共に国内,地域及び国際市場へのアクセスを有することは,農家にとって極めて重要である。

 我々は,G20農村部の若者雇用のためのイニシアティブを,アフリカに焦点を当てつつ,開発途上国において立ち上げる。このイニシアティブは,開発途上国の戦略に沿って,2022年までに1.1百万人分の新たな雇用を創出すること及び今後5年間に最低5百万人の若者に対し革新的な能力開発プログラムを提供することに貢献する。南スーダンの幾つかの地域における飢饉並びにソマリア,イエメン及びナイジェリア北東部における飢饉のリスクを認識し,我々は,生命を救うため及び持続可能な開発のための条件を支援するための協調的で包括的な対応として国連機関並びにその他人道支援機関及び開発機関を支援しつつ,必要な緊急性をもって行動することにかつてないほどコミットしている。我々は,人道支援に関する国連によるアピールに沿って様々なG20構成国から寄せられた,喫緊の必要のために受領された資金の3分の2超に当たる拠出金を認識する。我々は,今後更に我々の人道上の関与を強化し,また,繰り返し発生し,及び長期化している危機の根本的な原因に対処することへの我々のコミットメントを再確認する。

資源効率性及び海洋ごみ

 我々は,2030アジェンダの実施に貢献するため,及び持続可能な開発に対する我々のコミットメントを反映するため,別添に示されているように,2つのイニシアティブを立ち上げる。G20資源効率性対話では,ライフサイクル全体にわたる天然資源利用の効率性及び持続可能性を向上させるため,並びに,持続可能な消費生産形態を促進するため,グッド・プラクティス及び各国の経験が共有される。G20海洋ごみ行動計画は,その社会経済的側面を考慮することによるものを含め,海洋ごみの発生を予防し削減することを追求する。

責任を果たす

アフリカ・パートナーシップ

 我々は,アフリカ諸国における機会及び課題並びに2030アジェンダの目標に鑑み,G20アフリカ・パートナーシップを立ち上げる。我々の共同の取り組みは,アフリカ諸国のニーズと願望に答えるべく,持続可能で包摂的な経済成長及び開発を促進し,特に女性及び若者の一定水準の雇用を創出することに貢献し,それにより移住の根本原因である貧困及び不平等に対処することを支援することとなろう。パートナーシップは,#eSkills4Girls,農村若者雇用,アフリカ再生可能エネルギーなどの関連するイニシアティブを含み,別添に示される投資コンパクトを促進する。

 我々は,ベルリンにおいて開催された,持続可能なインフラを強化し,投資枠組みを改善し,教育及び能力構築を支援するための共同の措置の必要性を強調したG20アフリカ・パートナーシップ会議の成果を歓迎する。「投資コンパクト」に対する個別の優先事項は,コートジボワール,エチオピア,ガーナ,モロッコ,ルワンダ,セネガル及びチュニジアによって提唱された。アフリカ各国,アフリカ開発銀行,IMF及び世界銀行グループ並びにG20及びその他のパートナーの主導で,これらのコンパクトは,民間投資を動員し公的資金調達の効率的な利用を促進することを目指す。

 我々は,関心あるアフリカ諸国を支援する用意があり,その他のパートナーに対しイニシアティブに参加するよう求める。我々は,補完的なイニシアティブを通じてパートナーシップの目的を支援すると同時に,民間部門が持続可能な成長及び雇用創出を支援することにおいてアフリカの経済的な機会を捉えるよう奨励する。

 対等なパートナーシップに基づき,我々は,アフリカ各国のオーナーシップを強く歓迎し,我々の共同措置を地域的な戦略及び優先事項,特にアフリカ連合のアジェンダ2063及びそのアフリカインフラ開発プログラム(PIDA)と整合的なものとすることにコミットする。アフリカ連合及びその専門機関であるアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)は,その実施及び監視における重要なパートナーである。

避難及び移住に関する協調及び協力の強化

 世界は歴史的な水準での移住及び強いられた避難を経験している。移住は,多くの政治的,社会的及び経済的な状況変化による影響を受けるが,強いられた避難の主要な原因には,紛争,自然災害,並びに人権の蹂躙及び人権侵害が含まれる。移住及び強いられた避難の傾向は,出身国,中継国,目的国に大きな影響を及ぼす。安全で,秩序立った,正規の移住による社会的及び経済的な利益及び機会は大きなものになり得る。その一方で,大規模な強いられた避難及び非正規な移住は,しばしば複雑な課題をもたらす。

 我々は,移住のための道筋を構築することを選択する国を支持し,各国において決定される統合の重要性を強調し,また,正規移民及び認定された難民の公平で効果的な労働市場への統合に関するG20政策慣行を支持する。我々は,国家が自国の国境を管理し規制し,この点において,各国の国益及び国家安全保障に基づいて政策を決定する主権を強調するとともに,滞在する権利が無い移民の帰還及び再統合が,安全で,人道的なものであり続けることの重要性を強調する。我々は,移民の密航及び人身取引に対抗することにコミットし,密航者や人身取引を行う者に対して行動をとるよう決意する。

 我々は,避難の根本原因への対処を追求する。我々は,特に高い社会的,政治的,財政的圧力の下にある国や共同体に関して,協調された世界規模での努力と,調整され,一致した行動を求めるとともに,緊急アプローチと長期的なアプローチの双方を組み合わせることを求める。この目的のため,我々は,出身国及び中継国とのパートナーシップを構築することの重要性を認識する。我々は,これらの国における持続可能な経済開発を促進する。

 我々は,特に難民及び移民の出身地域に近接した地域において,適切な場合には母国に安全に帰還することを可能にするために,難民及び移民の個別のニーズに対応することにコミットする。同時に,我々は,危険のある女性や特に同伴者のない子供を含む脆弱な人々に特に焦点を当てるが,全ての人々の人権を,それらの人々が置かれた状況にかかわらず,保護する。

 我々は,移住に関するガバナンスの改善及び避難に対する包括的な対応の提供を求め,そのための手段と制度を構築する必要性を認識する。したがって,我々は,2018年に採択される予定の,難民に関する国連グローバル・コンパクト及び安全で秩序立った正規の移住に関する国連グローバル・コンパクトに向けた国連のプロセスの結果に期待する。我々は,地球規模の避難及び移住並びにその経済的帰結を注視する必要性を強調する。この目的のため,我々は,OECDに,ILO,IOM及びUNHCRと協力しつつ,毎年,傾向及び政策的課題を更新するよう求める。

腐敗との戦い

 我々は,引き続き,実際的な国際協力及び技術支援を通じたものを含む腐敗との戦いにコミットしており,G20腐敗対策行動計画2017-18の完全な履行を継続する。我々は,公的部門及び民間部門の清廉性を促進することを目的とした4つのハイレベル原則を支持する。法人の責任に関するハイレベル原則を支持することにより,我々は,個人の犯罪者だけでなく,腐敗から利益を得ている企業の責任も問うことを確保することにコミットする。我々は,自国の行政機関を腐敗に対してより強じんな組織にすることにコミットする。我々は,野生動物及び関連製品の違法取引に関連する腐敗に対する戦いを強化する。野生動物の違法取引は,地球の生物多様性,経済開発,そしてとりわけ保健及び安全保障に対する脅威であることに加え,高水準の腐敗がこれを助長しているものであり,G20はこれを容認することはできない。我々は,また,税関分野における腐敗に対処するためのハイレベル原則を支持し,民事訴訟及び行政訴訟における国際協力の要請に関する情報を公表する。我々は,スポーツにおける清廉性に対処する取組みを続け,国際スポーツ組織に対し,最高水準の世界的な清廉性と反腐敗基準を達成することで,腐敗との戦いを強化するよう強く促す。この点に関し,我々は,主要なスポーツ大会を誘致する際の汚職のリスクに関し,共通理解に向けて努力する。また,我々は,天然資源部門の契約を含め,契約における腐敗と戦うことにコミットする。我々は,全てのG20構成国による国連腐敗防止条約の締結及び実施を求め,レビュープロセスへの強い関与を求める。

 我々は,ハンブルク・サミットの主催とG20プロセスへの貢献についてドイツに感謝するとともに,2018年にアルゼンチンで,2019年に日本で,2020年にサウジアラビアで再び会合することを楽しみにしている。