[文書名] G20エネルギー大臣会合コミュニケ(仮訳)
G20エネルギー大臣会合 コミュニケ
2018年6月15日 アルゼンチン バリローチェ
我々,G20エネルギー大臣は,これまでの議長国及び閣僚会合による貴重な成果を礎として,公正で持続可能な開発の促進にエネルギーが果たす役割を増進させるため,2018年6月15日,サン・カルロス・デ・バリローチェ(アルゼンチン)で会合を開いた。
我々は,様々な各国事情の中で,我々が共有する未来の形成に果たすエネルギーの極めて重要な役割,持続可能な開発のための2030アジェンダの精神に沿った,我々のエネルギーシステムの変革の必要性,及び,気候変動とエネルギー安全保障を含む地球規模の課題に対処するための持続的な行動の必要性を認識する。我々は,エネルギー転換,エネルギー効率,再生可能エネルギー,データの透明性,エネルギーアクセスとアフォーダビリティ等の重要テーマへの取組について,アルゼンチンが2018年G20議長国を務める間に達成された進展を歓迎するとともに,いくつかの名だたる国際機関の貴重な支援を得て作成された5つの議長文書に留意する。
我々は,持続可能でよりクリーンなエネルギーシステムに関するイノベーションの促進等を通じて,温室効果ガス低排出に向けて取り組むというコミットメントを強調する。エネルギー転換作業部会(ETWG)で強調されたように,我々は,エネルギー転換が,経済成長を温室効果ガス排出の削減と組み合わせるべき長期発展戦略の不可欠な要素であると認識する。我々は,排出削減を実現する上で,また,パリ協定を実施する決意のある国にとって,エネルギー転換が重要であることを認識する。我々は,エネルギー安全保障,経済成長及びよりクリーンな環境を提供する上で,低廉で信頼できるエネルギーを供給する各国主導のエネルギー転換と,エネルギー市場及びイノベーションの重要な役割との関連性について留意する。
よりクリーンで柔軟かつ透明性の高いシステムに向けたエネルギー転換
2017年にG20議長国を務めたドイツは,G20メンバーの支持を得て,エネルギー転換という議題を強調し,G20メンバーがこの転換を主導し,我々のエネルギーシステムを低廉で信頼でき,持続可能で温室効果ガス排出の少ないシステムへ可能な限り速やかに変革するため共同で取り組むべきことを宣言した。
我々は,「転換(複数形)」という用語の下で,持続可能性,強じん性,エネルギー安全保障を促進しながら,よりクリーンなエネルギーシステムを達成するための道筋が,国によって様々に存在しうるとしたG20議長国アルゼンチンのアプローチを歓迎する。この見解は,G20メンバーがそれぞれ,発展の段階に応じて,異なるエネルギー資源,需要のダイナミクス,技術,資本ストック,地理的環境及び文化を備えた,固有かつ多様なエネルギーシステムを出発点として持つとの事実を反映するものである。
世界的には,化石燃料が今なお主要な役割を果たしていると認識することが重要である一方,よりクリーンな技術への投資拡大,エネルギー効率での協力増進,再生可能エネルギーやイノベーションの展開により,成功裏にエネルギーシステムを変革する必要性を我々は強調する。我々は,需要側と供給側の双方における共同の取組を通じて,効果的なエネルギー転換プロセスを促進する上でのG20の主導的役割を再確認する。こうしたプロセスは,環境面だけでなく,社会的及び経済的な側面をもその設計の中に含む,費用対効果の高いアプローチを取り入れるべきである。我々は,経済的な成長と繁栄を強化する観点から,これらの課題に成功裏に対処するために緊密に連携することを目指す。
エネルギー効率エネルギー効率は,それが費用対効果の高い形で導入された場合には,エネルギー安全保
障,産業競争力,排出削減,経済成長,雇用創出及びその他の社会的な利益へ寄与することから,G20メンバーによって優先されてきており,また持続可能な開発のための2030アジェンダの柱の一つにもなっている。
G20等を通じた国際協力は,国家のエネルギー効率に関する政策やプログラムの設計及び履行を効果的に支援する上で不可欠である。我々は,様々な部門や用途におけるエネルギー効率リーディング・プログラム(EELP)のタスクグループの活動を認識する。我々はまた,エネルギー転換の達成を支えるため,全ての分野におけるエネルギー効率に対する官民の投資及び資金供給を著しく拡大することを奨励する。
2018年G20議長国アルゼンチンは,過去の成果を礎とし,これらの取組を支援し続け,また,「行動変化」イニシアティブのようなエネルギー効率の政策オプションの成功に貢献する,その他の重要な側面の検討及び推進を提案した。「行動変化」は,消費者及びすべての経済分野により大きな利益をもたらしながら,イノベーション,技術的な進歩と,国主導のエネルギー効率施策をつなぐ架け橋となることができる。我々は,現行のEELP実施計画に,「行動変化」を含める。
再生可能エネルギー
再生可能エネルギーの開発及び導入に関わるこれまでの進展は,イノベーション及びある程度は大幅なコスト削減(特に太陽光と風力に関しては,現在では多くの場合にコスト競争力がある)の恩恵を受け顕著であるが,より一層の進展が,G20メンバー国においてのみならず,世界的にも必要とされている。我々は,国の事情,必要性及び優先度に鑑み,再生可能エネルギー戦略を強化することを選択するG20メンバーが,必要に応じて,それらの履行を加速することを奨励する。
我々は,特に開発途上国にとって重要な,障壁の削減やリスク軽減のイニシアティブ等を通じて,再生可能エネルギー生産への投資及び資金供給の増大を促進する。
我々は,グリッドの地域統合,柔軟な発電プラント,電力貯蔵,デジタル技術を通じたグリッドの安定化,デマンドサイドマネジメント等,多くの要素を含む,変動型再生可能エネルギーのシステム統合が,電力安全保障や再生可能エネルギーの導入拡大に不可欠であると認識する。我々は,国際協力の恩恵を認識する。G20メンバーは,より高い比率の変動型再生可能エネルギーを統合できるよう促しながら,電力市場を適応させるために利用しうる市場設計の選択肢を率先して提供するための取組を強化する。我々は,国の事情や選好によっては,ベースロード発電は今なおエネルギー安全保障の不可欠な要素であることに留意する。この点に関し,多くの国で大規模水力発電が重要な役割を果たしている。
再生可能エネルギーの進展は,電力部門を超えて加速されるべきである。我々は,バイオエネルギー(バイオ燃料を含む),太陽,地熱エネルギー等,いくつかの再生可能エネルギー源が,いくつかのG20メンバー国において,国の事情や条件によっては,世界中の輸送,冷暖房,産業部門における排出削減に重要な役割を果たしうると認識する。
天然ガス
我々は,多くのG20諸国にとって天然ガスが現在果たしている重要な役割,及びその役割が今後数十年にわたって著しく拡大し,低排出エネルギーシステムへの移行を後押しする可能性を認識する。我々は,液化天然ガス(LNG)や貯蔵設備を含むサプライチェーンに関する地球規模の戦略的視点を持ちつつガス市場の機能,透明性及び競争力を向上すべく努める。我々は,より効果的で柔軟性のある天然ガスの利用に関する関連国際機関との対話の拡大を奨励していく。
その他の化石燃料
化石燃料の利用を継続することを選択するG20諸国は,排出削減に貢献する先進的でクリーンな技術の利用を通じてイノベーションの促進に努め,(二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)を含む)先進的でよりクリーンな化石燃料技術への投資や資金供給を奨励していく。我々は,化石燃料の生産,輸送及び消費による温室効果ガス排出を含む環境への影響に対処するため,最も先進的でよりクリーンな技術を利用することの重要性を再確認する。我々は,各国が利用可能な最善の技術を開発,応用するための協力を強化することを奨励する。
無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金
2009年のピッツバーグ首脳宣言により,最貧困層を対象とする支援を提供する一方で,無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を中期的には合理化し,段階的に廃止することが求められた。我々は,この共同コミットメントを再確認する。我々は,既に非効率な化石燃料補助金に関する自発的ピア・レビューに参加してきたG20メンバーが行ってきた努力を歓迎し,ピア・レビュー未実施の国が実現可能な範囲で早期にピア・レビューを開始することを奨励する。
原子力
原子力の利用を選択する国々において,原子力は温室効果ガスの排出削減とベースロードに資するエネルギーであり,(小型モジュールや新型炉を含む)著しいイノベーションの進展に留意した。我々は,これらの国々に対し,独立した効果的な規制当局に従うことを含め,最高水準の原子力安全性,核セキュリティ,核不拡散を確保し,その専門的な知見や経験を共有することを求める。
イノベーションの重要な役割
我々は,エネルギー転換プロセスの主要な推進力の一つとしてイノベーションを促進していく。我々は,革新的でよりクリーンかつ効率的なエネルギー技術が競争力を持ち,商業的に利用可能となる必要性を認識した上で,こうした技術の研究・開発・実証及び展開を奨励及び促進していく。我々は,利用可能な最善の技術の開発,共有及び応用におけるさらなる協力を奨励し,国際開発金融機関やその他の金融機関による投資と技術移転の促進も奨励する。我々は,柔軟性のあるエネルギーシステムや分散型発電能力を支援していく。
エネルギーデータの透明性及び市場のデジタル化
我々は,エネルギー転換に向けた課題に対応するために,より安定的かつ包括的なエネルギーデータが効果的な意思決定にとって重要であることを認識する。我々は,情報通信技術(ICT)の悪意のある利用からのリスクを最小化しつつ,システム全体にわたって柔軟性を向上させ,統合を可能にするとともに,何百万もの消費者・生産者・投資家に電力の販売または価値あるサービスのグリッドへの提供機会を開放することを目的として,市場のデジタル化を促進していく。我々は,G20メンバーに対し,エネルギーデータの収集及び管理の能力を構築し,実践するための研修プログラムを立ち上げるために,国際機関,地域機関及び各国の機関との間でより緊密な協力関係を発展させていくことを奨励する。
エネルギー安全保障
我々は,エネルギー安全保障が,我々のシステムの転換に向けた指針の一つであることを認識し,開かれ,柔軟で透明性が高く,競争力のある,信頼できるエネルギー商品及び技術の市場を促進するための政策の選択肢を推進し続ける。我々は,エネルギー源,サプライヤー及びルートの多様化の重要性,また,持続可能かつ低廉で,信頼でき,強靱でよりクリーンなエネルギーシステムを確保するために,投資を継続及び増加させるための適切な条件を促進する必要性を強調する。インフラに対する投資は不可欠であるが,根強い資金力ギャップが残る。我々は,官民双方の財源からの拠出の増大を奨励する。
エネルギーアクセス及びアフォーダビリティ
我々は,エネルギーが経済成長及び持続可能な開発の中心にあること,また,近代的なエネルギーサービス及びクリーンな調理設備へのアクセスが社会的及び経済的発展の前提条件の一つであることを認識する。我々は,エネルギー貧困を撲滅し,バリューチェーン全体にわたってジェンダー平等を確保することの必要性を特に重視しつつ,普遍的なエネルギーアクセスを促進するという我々のコミットメントを再確認する。災害被災地及び遠隔地におけるエネルギーアクセスに関する協力を促進することは特に重要である。我々はまた,避難民に対するエネルギーアクセス提供の必要性も認識する。
我々は,G20議長国アルゼンチンにより提唱された,アクセスに向けた課題に加え,エネルギーサービスコスト及びアフォーダビリティの問題に取り組む必要性を強調した「中南米カリブ諸国におけるエネルギーアクセス・アフォーダビリティ自発的行動計画」に留意する。我々は,G20による地域的な計画の実施の強化を通じ,エネルギーアクセスを一層高めるための方策を追究していくとともに,特に財源が限られている国において,アクセスのための国際的な資金供給を増加させるための方策を追究していく。
我々は,議長国アルゼンチンの精力的な努力及び素晴らしいリーダーシップに感謝する。我々は,2018年11月30日~12月1日にブエノスアイレスで開催予定のG20サミットにこのコミュニケを提出し,2019年の日本の議長国の期間に更なる進展を確保するための協力を継続していくことに合意する。
(了)