データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組

[場所] 
[年月日] 2019年6月16日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳,別添8
[全文]

我々、G20メンバーは、既存の取組を強化しつつ、海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックを中心とする海洋ごみ問題に地球規模で対応する緊急性が増していることを認識(recognize)する。この点において、我々は、国連環境総会(UNEA)における「海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックに関する決議(UNEP/EA.4/L.7)」及び「使い捨てプラスチック汚染対策に関する決議(UNEP/EA.4/L.10)」を認め(acknowledge)、第14回バーゼル条約締約国会議での廃プラスチックを条約の対象とする決議に留意(note)する。

2017年のG20ハンブルクサミットで採択された「G20海洋ごみ行動計画」は、G20各国が海洋ごみに対処するための基礎を築くものであり、この「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」は、各国の適切な政策、アプローチ及び状況を考慮しつつ、自主的に、G20海洋ごみ行動計画に沿って、海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックを中心とする海洋ごみに対するさらなる具体的な行動を促進するためのものである。当該枠組は、UNEPの作業を補完することが期待される。

I. 行動計画の効果的な実施の促進

我々は、各国の政策、アプローチ及び状況に応じて、G20各国による自主的な行動の促進及びそれに関する情報共有と継続的な情報更新を通じて、G20海洋ごみ行動計画の効果的な実施を以下のように促進する:

1. 行動の実施

 ‐ G20海洋ごみ行動計画に沿って、各国の政策、アプローチ及び状況に基づき、また地域海条約及びその他の関連する組織や手段と連携しつつ、G20各国による行動の実施を促進する。

 ‐ 特に陸域(land‐based)を発生源とするプラスチックごみの海洋への流出(discharge)の抑制及び削減を緊急かつ効果的に促進するために、包括的なライフサイクルアプローチを特に次のような手段で促進する。環境上適正な廃棄物管理、海洋プラスチックごみの環境上適正な回収、革新的な解決方策の展開、各国の能力強化のための国際協力、プラスチック廃棄物の発生及び投棄の抑制及び削減、以下を含むがそれに限定されない持続可能な消費と生産の推進。資源効率性、循環経済、持続可能な物質管理、廃棄物の価値化アプローチ、海域を発生源とするプラスチックごみへの対策。

2. 情報共有と継続的な情報更新

 ‐ G20の各議長国の決定により、G20資源効率性対話及びUNEPの下に創設される関係者プラットフォームをはじめとする関連会議との共同開催の機会を活用し、関係する政策及び計画、並びにG20海洋ごみ行動計画に沿って自主的に実施された又は実施される対策についての情報の共有と更新を行い、ベストプラクティスに基づく相互学習を通じて政策と対策(measures)を促進する。

 ‐ 共有されるべき情報は、適応可能かつ入手可能な場合には、海洋に流出するプラスチックごみの抑制及び削減のための効果的な対策とその成果及び課題1を含むこととする。

 ‐ 日本の議長国下でのG20資源効率性対話の機会を活用し、第1回目の情報共有を行うとともに、効果的な情報共有と更新及びG20外への展開(outreach)のために、日本政府の支援により、ポータルサイトを構築する。

II. 協調行動と行動計画の実施のG20外への展開

Iに記載した内容に加え、我々は、特に、UNEPの作業との相乗効果を最大化し、重複を回避しつつ、関連する国際的及び地域的な組織やイニシアティブと協力し、またそれらの支援を受けながら、以下に示すG20各国間の協調行動及びG20以外への展開活動を行う:

1. 国際協力の推進

 ‐ 国際協力及び地域協力に従事するとともに、関連する取組、イニシアティブ及びプログラムを通じて、ベストプラクティスの共有を行う。必要に応じて、関連する地域海プログラム、地域漁業管理機関や他の地域のイニシアティブとの連携を通じた地域協力に重点を置く。

 ‐ 技術的な能力開発を必要とする政府、コミュニティー、民間部門への技術協力を含む、上記のI.1で言及された対策を進めるべく、これらの主体の能力強化するため、G20各国間及び他のパートナーとの協力を推進する。

 ‐ 関連する国際機関に対して、G20各国と連携して、特に、民間資金調達の障壁を取り払うための官民連携による能力開発やインフラ投資のためのベストプラクティスガイダンス等の政策ツール/オプションを開発するよう招請する。

2. 革新的な解決策の推進

 ‐ 世界循環経済フォーラム、循環経済加速化プラットフォーム、G20資源効率性対話、海洋プラスチックごみに対処するためのG7イノベーションチャレンジをはじめとする既存の国際フォーラム及びイニシアティブと連携して、海洋汚染への貢献とライフサイクル全体での環境影響を考慮に入れた製品設計、資源効率・循環型アプローチ、廃棄物管理の実践及び技術、廃水処理技術、環境上適正な製品等のための革新的な解決策を促進するべく、国際的な連携を強化する。環境・経済・社会に対する負の影響を減少させるための革新的な解決策の開発や市場への普及を図る際に、ライフサイクルアプローチを取ることを関係する主体に奨励する。

 ‐ 環境上適正な製品設計、資源効率的なビジネスモデル及びバリューリテンションを含む、革新的な解決策の進展についての民間部門による自主的な活動を国際的に奨励する。産業界と協力した関連ワークショップの開催等により、これらの活動を支援しさらに促進する方法を探求する。

3.科学的情報と知見の共有

 ‐ 特に海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックを中心とした海洋ごみの現状とその影響の測定とモニタリングのための調和化された/比較可能なモニタリング及び分析手法の促進及び試行的な実施により、科学的基盤を強化し科学的な能力を構築するために、GESAMP(海洋環境保護の科学的側面に関する合同専門家会合)の現在進行中の作業を奨励する。

 ‐ 地域海条約及び地域海プログラム、IOC‐UNESCOやUNEP、その他の関連機関やイニシアティブと連携し、調和された手法を用いて海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックを中心とする海洋ごみの地球規模のモニタリングの開発を奨励する。

 ‐ 使い捨てプラスチックと漁具が大きな発生源を構成していると報告されていることを留意しつつ、地球規模の陸域及び海域の発生源のインベントリの開発に向けて、科学コミュニティー及び関連する専門家に対して、プラスチック廃棄物の流出源、流出経路、及びその行く末を特定し推計するための手法の探求し、関連するワークショップの開催等を通じて行い、加えて、UNEPによる科学的及び技術的な作業に貢献することを奨励する。

 ‐ 社会経済的研究、ナノプラスチックを含むマイクロプラスチックに関する研究を含む科学的研究の国際協調及び人々の健康、海洋の生物多様性及び生態系等へのプラスチック汚染の影響等の科学的知見の共有を奨励する。

4.多様な関係者の関与及び意識向上

 ‐ 分野横断的に取り組むべく、G20以外の各国、地方政府、民間部門、市民社会組織、非政府組織(NGOs)及び学術界と連携、協力するとともに、それらの主体の能力強化し、また、それらの主体が地球規模の海洋ごみ問題に焦点を当てたパートナーシップやネットワークと連携することを含め、当該枠組に沿った行動を取ることを奨励する。

 ‐ 「世界環境デー」や「世界海洋デー」及び関連する各国の啓発デー等の機会を活用して、プラスチックごみの海洋への流出を抑制し削減するためのあらゆるレベルでの緊急かつ効果的な行動の重要性、資源効率性、循環経済、持続可能な物質管理、及び廃棄物の価値化を含むがそれに限定されない持続可能な消費と生産等の重要性について、世界規模の意識向上を行う。



(参考)G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組のイメージ

{図:<参考>海洋ごみに対するG20行動計画 省略}

【指標(例)】

・プラスチックごみ国内適正処理量

・海洋プラごみ回収量

・代替素材の生産能力/使用量及び公的な研究開発投資額

・国際協力により増加する「適正処理される廃棄物」の量

 等

 平成29年(2017年)7月のG20ハンブルクサミット(ドイツ)で、G20では初めて海洋ごみが取り上げられ、「海洋ごみに対するG20行動計画」の立ち上げに合意。

(1)海洋ごみを防止するための政策策定の促進

(2)廃棄物防止及び資源効率の促進

・廃棄物防止を第一に促進し、次いで再利用及びリサイクルを促進

・所要の資金調達に、生産者及び販売者等を関与させるメカニズムの促進

・マイクロビーズ・使い捨てレジ袋の使用削減

・製品イノベーション・デザイン・消費者行動に留意した発生源削減対策

(3)持続可能な廃棄物管理の促進

・インフラを含む統合された持続可能な廃棄物管理の支援

・廃棄物管理インフラへの投資の促進

・環境上適切な廃棄物管理に係る規制の枠組の促進

・廃棄物管理のためのクロスファイナンスの確保


{*1* それぞれのG20国の裁量に従って、関連する指標、データもしくは数値的な情報も含むこともできることとする。例えば、廃棄物の発生量、再使用量、収集量、リサイクル量、適正処分量;海洋ごみの回収量;研究開発投資を含む革新的な技術と素材の利用の規模;廃棄物の適正処分の拡大量を含む技術的な能力開発の必要な国への支援規模及び/又はその効果。(可能であれば、プラスチックごみ及び/又はマイクロプラスチックの割合/構成を示すことが推奨される)}