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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 女性労働参画進捗報告書 エグゼクティブサマリー

[場所] 
[年月日] 2019年6月29日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

「男女間の労働市場参加率の格差を2025年までに25%減少させる(25by25)」というG20ジェンダー目標の達成に向けてさらなる進展が見られたが、全ての加盟国が軌道に乗っているわけではない

「男女間の労働市場参加率の格差を2025年までに25%減少させる」というG20ジェンダー目標の達成に向けて、2018年には、ほとんどのG20加盟国でさらなる進展が見られた。2012年以降は、近年のデータが入手可能なほぼ全てのG20加盟国で、ロシアを除き労働市場参加率の男女格差は縮小してきた。G20加盟国の約半数が、2025年目標を達成するための軌道に乗っている。これは、直線的な縮小を前提とした場合、当該国における実際の男女格差の縮小が、目標達成に毎年必要な縮小と一致しているか、それよりも大きな成果が出ていることを意味する。日本、アルゼンチン、ブラジル、韓国では、特に大幅な縮小が見られた。しかし、男女格差が特に大きな一部の国すなわちメキシコや及びサウジアラビアでは、目標達成は依然として困難なままである。

労働市場参加率以外の労働市場アウトカムにおいては、男女格差の縮小の状況はより複雑である

ほとんどのG20加盟国で、男女間の賃金格差は今なおかなり大きく、この格差の縮小は非常にわずかである。このことは、低賃金労働の割合、管理職への登用割合、パートタイム労働の割合において、引き続き大きな男女格差となって現れている。女性がより質の良い仕事を得る機会が増えることによって、より良いワークライフバランスをもたらし、福祉と経済的安定が向上するだろう。さらに、これによって、女性の労働市場への参加意欲が高まり、技能の不十分な活用が改善されるだろう。

労働市場における男女平等をさらに促進するため、一連の政策対応が行われている

昨年の報告書は、キャリア移行(特に出産育児後の仕事への復帰)プロセスを通じて女性を支援することを目的とした措置(注目が高まっている)にふれた。今年は、G20各国の取組は、家族関連休暇政策の向上とワークライフバランスの促進に収れんしている。

妊娠及び出産並びに仕事の世界における暴力とハラスメントを含むジェンダーに基づく差別との戦いの流れの中で、取り組みが再び活気を帯びていることも注目される。

デジタル化の進行、グリーン経済への移行、ケアサービスへの需要の高まりは、将来の雇用成長を促進すると思われる要因である。しかし、性別職域分離の是正のための多くのイニシアチブが取られたにもかかわらず、職域分離は今なお全てのG20加盟国の共通点である。ケアセクターでは女性の割合が多い一方で、STEM分野は男性の割合が多い。

さらなる対応が必要である

女性の労働市場への参加を促進し、仕事の質における男女格差を縮小するため、G20加盟国において多くの政策対応が取られた。それにもかかわらず、G20加盟国とステークホルダーは、以下の分野でさらなる対応の検討を望んでいるかもしれない。

 ・介護サービスの供給と介護休暇の付与を強化する。女性は、介護の負担を過度に担い続けているために、有償労働への参加がますます大きく制限されている可能性がある。そのため、介護サービスの供給の強化とともに男女双方が介護休暇を取得しやすくする必要がある。

 ・育児介護と家事に関する男女の固定観念と規範を変える。これは極めて重要だが、困難である。各国政府は、男性の育児介護に対する偏見を減らし、女性労働者による世帯収入とGDPへの多大な貢献を強調するための啓発キャンペーンを含む、一連の措置や手段を講じるべきであり、それによって、無償労働の男女間の公平な分担を促進すべきである。

 ・非標準的な雇用形態において労働者の権利が弱まらないことを確保する。自営業及びその他のより柔軟な雇用形態(プラットフォーム労働など)の促進は、女性に有益な労働市場の機会とより良いワークライフバランスをもたらしうるが、このことは差別に対する保護やその他の雇用及び社会的保護の権利を犠牲にして行われるべきではない。差別禁止要件及び母性(及び父性)を保護する法律を回避するために非標準的な雇用形態を用いるリスクについては、さらに検討すべきである。

 ・性別職域分離の是正に取り組む。労働力の男女混合を促進し、拡大するデジタルセクター、グリーンセクター、ケアセクターにおける雇用機会を生かすチャンスを男女に均等に提供するため、さらなる努力を払うべきである。根強く残る男女間の賃金格差に取り組み、より多くの女性が指導的地位に就けるようにするため、さらなる努力が必要である。

 ・労働市場における男女格差に関するエビデンスベースを高める。労働市場における男女格差の進展状況及び政策介入の効果について綿密に監視するために、全ての国において適時の比較可能なデータの利用可能性をさらに高めることが求められる。女性参加及び仕事の質を高めるための戦略に関するさらに詳細な各国報告と、企業における男女平等に関するより良いデータは、進捗のよりよい理解と評価に役立つだろう。