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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20貿易・投資担当大臣臨時テレビ会議閣僚声明

[場所] 
[年月日] 2020年3月30日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 我々,G20及び招待国の貿易・投資担当大臣は,新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって引き起こされている壊滅的な人類の悲劇に深い悲しみを覚える。このパンデミックは,グローバルな挑戦であり,調整されたグローバルな対応が求められている。G20の首脳は,3月26日に開催された臨時会議で,「この共通の脅威に対して共同戦線を張る」ことにコミットした。今こそ国際社会は,人々の生命を守り,危機後の力強い経済回復,及び持続可能でバランスのとれた包摂的成長のための基盤を築くために,かつてないほどに協力と連携を強化すべきである。

 我々は,G20首脳から我々に課された任務として,パンデミックの貿易への影響の監視と評価を開始した。

 我々は,市民の健康を支えるために,国境を越える不可欠な医療物資及び機器,重要な農産品その他の必要不可欠な物品及びサービスの継続した流れの確保に積極的に取り組んでいる。我々は,各国の要件に適合する形で,それらの必需品の貿易の円滑化のため,即時に必要とされる措置を取る。我々は,国ごとの状況に応じ,インセンティブや的を絞った投資等を通じて追加生産を促進すること等により,入手可能な価格で,衡平に,最も必要とされている場所で,かつ,出来るだけ速やかに,不可欠な医療物資と医薬品を入手でき,それにアクセスできるよう支援する。我々は,不当な利益の獲得や正当でない価格の引上げを防ぐ。

 我々は,脆弱な開発途上国や後発開発途上国,特にアフリカ及び小島嶼国での新型コロナウイルスの影響を懸念する。我々はまた,労働者やビジネス,特にその中で最も脆弱なものが直面している困難な挑戦を懸念する。我々は,我々の共同対応が零細・中小企業を支援するものであることを確保するとともに,国際的な投資を強化する重要性を確認する。

 我々は,新型コロナウイルスに対処するための緊急措置は,必要と認められる場合には,的を絞り,目的に照らし相応かつ透明性があり,一時的なものでなければならず,貿易に対する不必要な障壁又はグローバル・サプライチェーンへの混乱を生じさせず,また,世界貿易機関(WTO)のルールと整合的であるべきであることに合意する。我々は,緊急物資の供給や人道的支援を他の国々が一層必要としていることを考慮し,国際的連帯の原則を支えるこのような措置を実施する。我々は,現在のような環境下における透明性の重要性と,採用されるあらゆる貿易関連措置をWTOに通報するとの我々のコミットメントを強調する。そのような方策は全て,この危機の中でグローバル・サプライチェーンが機能し続けることを可能とし,危機後の経済回復も加速する。

 我々は,このパンデミックと個別にかつ共同して闘い,国際貿易投資への影響を軽減しようとする中で,引き続き,自由で,公正で,無差別的で,透明性のある,予見可能でかつ安定した貿易・投資環境を生むため,また,開かれた市場を維持すべく協力する。

 我々は,グローバル・サプライチェーンの背骨たる物流ネットワークが円滑に引き続き機能することを確保する。我々は,ウイルスの拡散を防ぐ努力を阻害することなく,空,海及び陸を通じた物流ネットワークを引き続き開放されたものとし,保健関係者及びビジネス関係者の不可欠な越境移動を容易にする方法を模索する。

 我々は,貿易に対するパンデミックの影響を引き続き監視し,評価していく。我々は,国際機関に対し,新型コロナウイルスが国際貿易・投資及びグローバル・バリューチェーンに及ぼす影響について,詳細な分析を提供することを求める。我々は,調整されたアプローチを確立し,不可欠な物品及びサービスの流通を容易にする良き慣行(グッドプラクティス)を収集し共有するため,国際機関と共に引き続き取り組んでいく。

 我々は,必要に応じ,再び会合することとし,G20貿易投資作業部会に対し,これらの課題に緊密に対応し,新型コロナウイルスの広範な影響を軽減することに役立つと考えられる追加的に提案される行動や,多角的貿易体制を支え,経済回復を加速するためにとられるべきより長期的な行動を特定するよう指示する。2021年の次期G20議長国であるイタリアは,長期的な行動に関し議論する際には,国際的な貿易環境に最も高い注意を引き続き払うことを約束する。