データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20エネルギー大臣会合閣僚声明

[場所] 
[年月日] 2020年9月27-28日
[出典] 経済産業省
[備考] テレビ会議
[全文]

1. 我々、G20エネルギー大臣は、COVID-19のパンデミックがエネルギー市場を含む世界経済に対してもたらした未曾有の危機を前に、2020年9月27日及び28日に、非対面にて会合を開催した。

2. 我々は、昨今の危機により、直接的な健康、経済、及び社会への影響に加えて、国際的なエネルギー市場の不安定化がもたらされたことを認識する。我々はまた、エネルギーセクターの回復に際してはいかなる主体も取り残してはならないことを確認する必要があることを強調することとなった、最も脆弱な人々及び共同体に対して今回のパンデミックがもたらした不均衡な影響に留意する。

3. 我々は、今般の議長国下における任意的且つ短期的なエネルギーフォーカスグループの設立と、エネルギー安全保障及びエネルギー市場安定化の確保のためになされた取組に関して認識する。我々は、あらゆる主体に対して便益をもたらすエネルギーシステムの強靱性確保に際して、国際協調の重要性につき認識する。我々はまた、エネルギー市場の安定化のための、複数の生産者によるコミットメントと執られた措置、及び生産者と消費者の双方による取組につき認識する。我々は、2020年4月10日のG20臨時エネルギー大臣会合によってなされた、エネルギー業界が、COVID-19を克服し、その後の世界的な回復を促進するための、完全で効果的な貢献を継続することへのコミットにつき再認識する。このような観点から、我々は、包括的な経済活動を活発化させるような経済刺激策の重要性を強調する。

4. 我々は、経済成長の実現に向けた安定且つ不断のエネルギー供給の確保のために、各国の事情に基づいた様々な選択肢の調査や多様な技術及び燃料の活用を通じて、取組を前進させるという決意が、今般のパンデミックによって引き起こされた緊急の課題によって弱められることはない旨協調する。我々は、2019年の大阪サミットにおいて各国首脳によってなされた、3E+S(エネルギー安全保障、経済効率性、環境、及び安全)を実現するためのエネルギー転換の重要性を認識するというコミットメントを再認識する。我々*1*は、パリ協定を実施することをブエノスアイレスにおいて選択した国々による、同協定の完全な実施に向けてブエノスアイレスにおいてなされた、コミットメントの再確認に留意する。

よりクリーンで、持続可能なエネルギーシステムに向けた循環炭素経済

5. 我々は、CCEアプローチが、各国の優先順位や状況を反映の上で排出管理のために適用される、全体論的で、完全体で、包括的で、且つ実用的なアプローチであることを認識する。利用可能な広範な方法や選択肢を包含することによって、国際的な共通の目標を達成するために努力していく一方で、異なる国々の状況も考慮に入れる。

6. これまでの議長国及びG20エネルギー大臣会合においてなされた過去のコメントに基づき、我々は、CCEプラットフォームとその構成要素たる4Rのフレームワーク(Reduce, Reuse, Recycle, Remove)を承認し、同時にAppendixIを認識すると共に、特定の資源の付与、及び政治的で、経済的で、環境に配慮し、社会的で、危機を認識する開発の文脈、を含む、設備の効率性や各国の事情を考慮の上、温室効果ガスの削減が有する重要な役割を認識し、加えて、以下に留意する。

 a. Reduceの要素は、省エネや再エネ、原子力等の技術の利用及びイノベーションを通じて、エネルギー供給及び消費のよりよい管理を通じて、より低排出を追求する。加えて、以下の重要な役割を認識する。

  ・ 省エネ*2*は、エネルギーの浪費を避け、エネルギー生産性を高めることによって、エネルギー需要全体を削減する重要な役割を果たしている。我々は、エネルギー効率化に関するG20の協力が、潜在的なエネルギーの効率化を最大限活用するためのさらなる国際的な連携を推奨するということを認識する。

  ・ 再生可能エネルギー、とりわけ風力、太陽光、水力、地熱、海洋/大洋、近代的なバイオエネルギー及びバイオ燃料は、クリーンエネルギーシステムの提供のために重要である。

  ・ 原子力は、それを選択して利用する国にとって、エネルギー安全保障を確保するのみならず、クリーンエネルギーを提供する役割を果たしている。我々は、廃炉や放射性廃棄物の最終処分を含む課題に取り組むことの重要性に留意する。

 b. Reuseの要素は、「エミッション・トゥー・バリュー」及び「カーボン・リサイクル」を含む二酸化炭素回収・利用(CCU)、の展開によって、排出物を有用な工業用原料に転換させることを目指す。回収し、再利用することによって排出物による影響を最小化することを後押しするよりクリーンで高度な技術としてのCCUの潜在能力に留意する。

 c. Recycleの要素は、自然の循環、及びエネルギーシステムのために必要な物質の再利用を意味するものとして、バイオ燃料、バイオエネルギー等の再生可能エネルギーの利用、メタノール、アンモニア等のその他のエネルギーを含む、自然過程、分解および燃焼を通じて、排出物を再利用することを目指す。

 d. Removeの技術やアプローチは、排出物の循環の流れを終結させるべく、二酸化炭素回収・貯蔵

(CCS)や大気中からの排出物を除去することを目的とした直接回収(Direct Air Capture)を含む。

7. 我々は、キングアブドラ石油研究センターによって主導された取組、及び様々な国際機関(国際エネルギー機関、国際再生可能エネルギー機関、国際原子力機関、経済開発協力機構、グローバルCCSインスティテュート)による貴重な貢献につき認識する。それらの取組や貢献は、CCEガイドにおいて記載がなされている通り、CCEアプローチ及び4Rによって提供される様々な機会として編纂され、各国の事情に応じて解釈される。

8. 我々は、あらゆる主体のためのエネルギーを前進させるための、革新的で、大規模で、効率的な技術の開発及び展開を促進することの重要性につき認識する。参加国のインプットや経験に基づき、CCEアクセラレーターは、CCEの4Rに関連する機会を活性化させるための包摂的な手段を構成する。我々は、4Rに横断的に関わるクリーンなエネルギー源としての水素の潜在能力を認識し、その開発や利用、及び普及を促進するための国際協調を強化していく。我々はまた、4Rにおける近代的なバイオエネルギー及びバイオ燃料の横断的な役割に留意する。

9. 我々は、CCEアクセラレーターの一部を構成し、クリーンエネルギー大臣会合、省エネハブ、国際エネルギー機関、国際エネルギーフォーラム、国際再生可能エネルギー機関、ミッション・イノベーション、ガス輸出国フォーラムを含む、関係する国際機関やその他の団体からの援助を伴うものを含む、協調、協働、及び提携を更に強化する機会を任意に追求していく。我々は、公的及び私的な投資、革新的な公的及び私的なファイナンス、政策支援者、そして分野横断的な協調に関して、引き続きコミットする。

10. 各国及び地理的事情を考慮の上、我々は、あらゆる主体のための、低廉で、信頼でき、持続可能で近代的なエネルギーへの転換を促進するために、CCEプラットフォームや既存のG20のプログラムや枠組みを含む様々な機会を探求するべく努力していく。

エネルギーアクセス

11. 我々は、エネルギーへのアクセスが、社会及び経済の発展のための必須の前提条件の一つであることを認識する。我々は、あらゆる主体のための、低廉で、信頼でき、持続可能で且つ近代的なエネルギーのアクセスを確保することの進展につき歓迎する一方で、普遍的なエネルギーアクセスを充足し、脆弱なコミュニティへの影響を根絶し、持続可能な開発目標を達成するに際して、全世界が同様の段階ではないことに留意する。2018年時点で、およそ28億人の人々がいまだにクリーンな調理設備へのアクセスを確保できていない。加えて、およそ8億人の人々が現時点で電力設備へのアクセスを欠いており、さらに多くの人々が制限された、また信頼に欠けるアクセスしか得ていない。従って、可及的速やかにエネルギーアクセスを確保するために、我々は、技術の導入や投資を通じた、クリーンな調理設備と電化の更なる促進に向けて協働するためのコミットメントを再認識する。

12. 我々は、エネルギーに関する貧困を撲滅するための集約的な努力を継続し、また、疎外され、取り残された人々等の脆弱な人々における、エネルギーの貧困がもたらす不均衡な影響に対処する包括的な道筋を確保することを目指し、また、女性が世界規模のエネルギー分野における積極的な参加者となるための力を得ることを確証する。我々は、各国の事情に応じて、エネルギーアクセスにおける地域的な任意且つ協調的なアクションプランの実施を強化する効果的な方法を追求するためのコミットメントを再認識する。

13. 我々は、クリーンな調理設備及びエネルギーアクセスに関するG20イニシアチブ(AppendixⅡ)を承認する。我々は、来年度のイタリア議長国下における、クリーンな調理設備、エネルギーアクセス、及びエネルギーに関する貧困の撲滅の更なる目覚ましい進展を期待する。

エネルギー安全保障及び市場安定化

14. COVID-19による危機がもたらした影響に関して言及した通り、我々は、エネルギー安全保障が、経済活動に向けた重要な推進役となり、またエネルギーアクセスにおいて不可欠な要素であり、さらにエネルギー市場安定化のための基礎となることを認識する。我々は、エネルギー安全保障の重要性と供給網の遮断を防ぐことの必要性を再認識すると共に、開放的で、柔軟で、透明で、競争力があり、安定的かつ信頼できるエネルギー市場を促進し、さらにエネルギー源、供給者、及び供給ルートの多様性に関する重要性を強調する。我々は、2019年の大阪での首脳会合において認識された、強靱性、安全性、設備の開発、多様なエネルギー源、供給者、及び供給ルートに基づく不断のエネルギー供給網を含む、エネルギーシステムの転換に向けた基本理念の一つとしての国際的なエネルギー安全保障の重要性に関して、再認識する。我々は、G20エネルギー安全保障及び市場安定化のための協力

(AppendixⅢ)を承認する。

15. 我々は、昨今の投資の減少による様々な影響、及び専門的な技術の欠如が、急速な経済回復を支えるエネルギーセクターの機能の観点で懸念となっていることを認識する。我々は、イノベーションに関する投資の強化や、高い技術を備えた労働力の確保等を含めた、持続的な資金の投下のための環境を創出するために、また、エネルギー安全保障及びその持続可能性に関する長期的な視点での共通の目標を支持し、包括的な回復を達成するための幅広い手段の一部としてのエネルギー分野を再構築するために、協調を続けていく。

16. エネルギー安全保障及び市場安定化を強化するために我々の取組を加速させるに際して、我々は、以下の複数の場面にて引き続き協働する。

 a. データの可用性及び透明性を高めるために、我々は、国際エネルギーフォーラムに対し、エネルギー関連データの取扱い可能対象を拡大し、また地理的な観点でも対象範囲を拡大するための方法を探求するために、国際エネルギーフォーラムと連携しているJODIの構成員及び関連する機関と協働することを求める。

 b. ICT技術の悪意ある利用を通じた攻撃の危険性を最小化することを通じて、エネルギー市場の信頼性及び強靱性を高めること。

 c. エネルギー関連設備、技術革新、及びエネルギー安全保障を確保するための技術における適切な投資促進を奨励すること。我々は、開放的で、柔軟で、透明性があり、競争力があり、安定的で、信頼できるエネルギー市場の役割に加え、市場安定性と投資を促進する際の、予測可能で、公平で、無差別な規制の慣行を認識する。我々は、国際エネルギー機関、国際エネルギーフォーラム、国際再生可能エネルギー機関、石油輸出国機構、ガス輸出国フォーラム、そのほか関連する国際機関に対して、各国際機関の取組の範囲内で、上記の論点につきより一層検討することを求める。

EFG

17. 我々は、エネルギーフォーカスグループ(EFG)の設立及び、その参加国によってなされたエネルギー安全保障及びエネルギー市場安定化の確保のための貢献につき認識する。EFGでは、エネルギー生産の調整、消費及び供給備蓄の監視、情報透明性を含む広範な措置につき議論がなされた。EFGの取組はまた、短期的且つ長期的な世界規模のエネルギー安全保障及び安定化を後押しするための持続的な資金の投資の重要性に関して強調した。

18. 我々、EFG参加国のエネルギー大臣は、

 a. 実施された措置による参加国の貢献を承認し、EFGレコメンデーションを歓迎する(添付Ⅳ及び

Ⅴ)。

 b. IEFに対して、より包括的なエネルギー関連のデータ範囲のためにデータ透明性、及び他の国際機関及び地域間と協調した分析の不足を補うことを目的とする措置を取るために、JODIの傘下にて三者間の取り決めを基にIEA及びOPECとも協調のもと、取組を主導することを求める。

 c. 段階的な取組方法にてIEFが主導する形で、関心のある参加者に対し開かれた任意の取組として、短期的措置の問題に継続して取り組むという関係者の意図を認識し、また、IEFは、考慮すべき短期的事象に関連した分析の、将来のエネルギー持続可能性作業部会(ESWG)における補完的な現状の報告と同様に、エネルギー大臣に対し進捗を報告する。

19. 我々は、サウジアラビアの議長国としての並外れた努力とリーダーシップに感謝の意を表明し、2021年のイタリア議長国下における会合に向けた協調を継続する。

{*1* この観点に関するトルコの立ち位置は、議長声明において反映される。}

{*2* 我々は、エネルギー効率リーディングプログラムと省エネルギーハブにおいて実施されている取組、及び well to wheel 分析を含むグローバルベンチマーク等の国際機関によって実施される分析に関して留意する。}