データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20リヤド首脳宣言

[場所] 
[年月日] 2020年11月22日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々G20の首脳は、議長国サウジアラビアの下で二度目の会合を行い、今回の危機を克服するとともに、人々を活気付け、地球を守り、また新たなフロンティアを切り開くことにより全ての人々にとっての21世紀の機会を実現するために、協調した世界的な行動、連帯及び多国間協力がこれまでになく必要とされているとの信念において結束する。我々は、強固で、持続可能で、均衡ある包摂的なポスト・新型コロナウイルス(COVID-19)時代における世界を形づくることを主導することにコミットする。

A.課題に共に立ち向かう

2.新型コロナウイルスのパンデミック並びに生命の損失、生活及び経済への影響の両面における過去に例を見ない影響は、我々の備え及び対応の脆弱性を明らかにし、我々の共通の課題を強調する前例のない打撃である。我々は、3月26日に開催されたG20首脳テレビ会議のコミットメントを再確認し、同会議以後に達成された進捗を歓迎し、引き続き、人命を守り、最も脆弱な人々に特に焦点を当てた支援を行い、そして、我々の経済を成長へと回復させ、全ての人々の雇用を保護し、創出する道へ戻すためのあらゆる努力を惜しまない。我々は、このパンデミックとの闘いを継続するに当たって、医療従事者その他の最前線の従事者に対する感謝と支持を表明する。我々は、アフリカや小島嶼開発途上国に特有の課題を認識し、新型コロナウイルスによる保健、経済及び社会への複合的な影響に直面する全ての開発途上国及び後発開発途上国を支援することを引き続き決意する。

3.我々は、安全かつ効果的な新型コロナウイルスの診断、治療及びワクチンの研究・開発・製造及び分配を支援するための、国際保健における喫緊の資金需要に対応するために資金を動員した。我々は、イノベーションを奨励するG20構成国のコミットメントと整合的な形で、全ての人々による安価かつ公平なアクセスを確保するためのいかなる努力も惜しまない。この点に関し、我々は、全ての協働の取組、特に「新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス加速事業(ACT-A)」イニシアティブ及びその下のCOVAXファシリティ並びに知的財産権に係る自主的なライセンス供与の取組を完全に支持する。我々は、残る国際的な資金需要に対処することにコミットし、既存の多国間の取組に沿って新型コロナウイルス対応ツールへの各国のアクセスのための資金支援を強化する国際開発金融機関の取組を歓迎し、その更なる取組を奨励する。我々は、広範な予防接種が国際公共財として有する役割を認識する。

4.新型コロナウイルスのパンデミックの影響により2020年の世界経済は急速に縮小したが、経済が徐々に再開し、重大な政策行動の好影響が顕在化し始める中で、世界の経済活動は部分的に回復している。しかしながら、回復にはばらつきがあり、不確実性が高く、国によっては制限的な公衆衛生上の措置が再導入されるなど、いくつかのエコノミーにおけるウイルスの再流行によるものを含め、より大きな下方リスクにさらされている。我々は、世界経済の回復を支える鍵となる、ウイルスの拡散を抑える緊要性を強調する。我々は、下方リスクから守りつつ、人々の生命、雇用及び所得を守り、世界経済の回復を支援し、金融システムの強じん性を強化するため、必要とされる間は、全ての利用可能な政策手段を引き続き用いることを決意する。我々はまた、2018年3月に財務大臣・中央銀行総裁が行った為替相場のコミットメントを再確認する。

5.国際金融機関及び関連国際機関が新興国、開発途上国及び低所得国に対し極めて重要な支援を提供し続けることを確保しつつ、我々は、新型コロナウイルスのパンデミックと、それが保健、社会及び経済に複合的に与える影響に対処するために、政府及び中央銀行それぞれのマンデートと整合的な形で、前例のない財政政策、金融政策及び金融安定化政策の実施を通じたものを含め、即時かつ例外的な措置を講じている。国際労働機関(ILO)の試算に基づけば、一時的に社会的保護措置を拡大する我々の取組は、約6億4千5百万人の生活を支援した。

6.G20行動計画は、我々がこの危機を切り抜け、回復を支える措置をとり、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を達成するに当たり、国際経済協力を推進するための重要な原則とコミットメントを定めている。構成国が異なる危機対応の段階にあり、世界経済の見通しが進展し続けるとの認識の下、我々は、変化する保健及び経済の状況に迅速に対応し続けること並びに進行中の経済、社会、環境、技術及び人口動態の変化を最大限に活用することを確保するG20行動計画の本年10月の更新を承認する。我々はまた、行動計画のコミットメントに関する進捗の最新の情報を提供する第2次G20行動計画進捗報告書を承認する。G20行動計画は生きた文書であり、我々は財務大臣及び中央銀行総裁に対し、定期的にそれを見直し、更新し、実施を捕捉し、報告することを継続するよう求める。

7.我々は、その適格国が公的な二国間債務の支払猶予を得ることを可能とする債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)について、その2021年6月までの延長を含め、これを実施することにコミットする。我々は、これまでに達成された進捗を歓迎する。国際通貨基金(IMF)及び世界銀行グループ(WBG)による暫定的な報告は、DSSIが、例外的な資金供給とともに、パンデミック関連の支出増加を大きく支えていることを明らかにした。IMFとWBGは、債務データの質及び整合性を強化し、債務の開示を改善するためのプロセスに係る提案に引き続き取り組む。我々は、債務の透明性の向上のための債務者及び公的・民間の債権者双方による協働の重要性を再確認する。我々の財務大臣及び中央銀行総裁は、2021年のIMF・WBG春会合までに、経済・金融状況がDSSIの更なる6か月間の延長を必要とするかどうか検討する。これは、パリクラブでも合意されている。全ての公的な二国間債権者は、完全に、かつ、透明性高く、このイニシアティブを実施するべきである。我々は、DSSI適格国に対して最大限の支援を供与するため、その実施の継続に当たり、引き続き緊密に協働する。民間債権者の参加が欠けており、我々は、適格国から要請があった場合には、同等の条件で参加することを民間債権者に強く奨励する。国際開発金融機関は、その現在の格付けと低い資金調達コストを維持しながら、延長期間を含む猶予期間中DSSI適格国にネットでプラスの資金フローを供与すること等を通じ、共同してDSSIを支援する取組を更に進めることが奨励される。2020年11月13日時点で46か国がDSSIの恩恵を受けることを要請しており、2020年中の債務支払猶予額は推定57億米ドルに上る。

8.多くの低所得国における新型コロナウイルス危機の規模、顕著な債務脆弱性及び経済見通しの悪化を踏まえ、我々は、ケースバイケースでDSSIを越える債務措置が必要となり得ることを認識する。こうした中で、我々は、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」を承認する。これはパリクラブでも承認されている。

9.我々が続けている新型コロナウイルスによる危機への対応は、我々の歴史における決定的な瞬間である。我々は、相互連結性の恩恵に基づき、この危機により明らかになった脆弱性に対応し、より力強く回復するために必要な措置をとり、将来の世代がこれまでより安全であることを確保するため取り組む。

B.強じんで長期にわたる回復の構築

10.保健

我々は、世界的なパンデミックへの備え・予防・検出及び対応を進めることにコミットする。我々は、国際保健規則(IHR2005)を完全に遵守し、支援を必要とする国々の能力支援等を通じてその履行を改善し、適時のかつ透明性のある標準化されたデータと情報を継続的に共有することへのコミットメントを再確認する。我々は、現在進行中の評価、その透明性へのコミットメント及び全体的な実効性の強化の必要性を考慮しつつ、パンデミックへの世界的な対応を調整し、支援する上でのWHOを主とする国際連合(国連)システム及び機関の重要なマンデートと、そこでの加盟国による中心的な取組を強調する。我々は、関連国際機関が行ったパンデミックへの備えに係るギャップ評価に留意し、新型コロナウイルスに関する世界保健機関(WHO)総会決議で示されている「パンデミックへの備え及び対応についての独立パネル」及び「国際保健規則検証委員会」によるパンデミックへの世界的な保健対応の評価の作業に期待する。我々は、パンデミック・ツールへのアクセスの立上げに向けた提案を含め、議長国サウジアラビアが世界的なパンデミックへの備え及び対応におけるギャップに対処するための長期的な解決策の必要性に関する議論を開始したことを称賛し、また、イタリア議長国下でこの議論を推進することを期待する。

11.よく機能し、価値に根差し、包摂的で、強じん性のある保健システムは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けて極めて重要である。我々は、途上国におけるUHCファイナンスの重要性を再確認する。我々は、各国が任意で参加できる「保健の価値を高めるためのグローバル・イノベーション・ハブ」の立上げを歓迎する。我々は引き続き、ワン・ヘルス・アプローチに基づく薬剤耐性(AMR)及び動物由来感染症に対処し、新たな抗微生物剤の研究・開発を支援及び加速し、慎重な管理を推進しつつ既存の抗菌剤へのアクセスを確保し、感染症及び非感染性疾患への対処における取組を維持する。

12.貿易・投資 多角的貿易体制を支持することは、今やかつてなく重要である。我々は、自由で、公正で、包摂的で、無差別で、透明性があり、予見可能な安定した貿易・投資環境という目標を実現し、開かれた市場を維持するために努力する。我々は、ビジネスを可能とする環境を醸成するため、公平な競争条件を確保するよう引き続き取り組む。我々は、「新型コロナウイルスに対して世界貿易・投資を支えるためのG20による行動」を承認する。我々は、「世界貿易機関(WTO)の将来に関するリヤド・イニシアティブ」が、多角的貿易体制の目的及び基本原則について議論及び再確認し、また、第12回WTO閣僚会議に向けた取組を含め必要なWTO改革への我々の継続的な政治的な支持を表明するための追加的な機会を提供することで果たした貢献を認識する。我々は、開発途上国及び後発開発途上国の貿易体制への持続可能な統合を促すような、国内、地域内及びグローバルなサプライ・チェーンの持続可能性及び強じん性を高める必要性を認識するとともに、中小零細企業の国際貿易・投資への参加増大を含む包摂的な経済成長を促進するという目的を共有する。我々は、いくつかの部門における過剰生産能力等の構造的問題が負の影響を起こし得ることに留意する。

13.交通及び往来 我々は、国際的な輸送経路及びサプライ・チェーンが、開かれ、安全で、安定したものであり続けること、航空乗務員及び船員に対するものを含む新型コロナウイルスに関する制限的な措置が的を絞った、均衡がとれた、透明性のあるかつ一時的なものであり、また国際約束に基づく義務に則ったものであることを確保することにコミットする。我々は、公衆衛生を守る我々の取組を妨げない形で、人の移動を促進する具体的な方法を引き続き探求する。

14.国際金融アーキテクチャ 我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心とした、より強固なグローバル金融セーフティ・ネットを確保するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、クォータの十分性について再検討することに引き続きコミットし、2023年12月15日までに、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でIMFのガバナンス改革のプロセスを継続する。我々はIMFに対し、過去の危機からの経験を踏まえ、危機の動向に応じて加盟国のニーズを満たす追加的手段を引き続き探求するよう要請する。我々はまた、小開発途上国が直面する固有の課題に対処する際の助けとなるよう、IMFの支援強化を支持する。危機対応後については、我々は、IMFに対し、今後数年間の低所得開発途上国における対外資金需要と持続可能な資金調達の選択肢に関する分析を準備すること、また、WBGに対し、これらの国々へ民間資金を動員するため業務を拡充し、支援手段を新たな方法で活用することを求める。我々は、「効果的なカントリー・プラットフォームに関するG20参照枠組み」と、これまで実施されている国主導の試行的なプラットフォームを歓迎し、この分野における進捗に関する国際開発金融機関からの更なるアップデートを期待する。我々は、持続可能な資本フローの促進、国内の資金市場の発展等を通じ、長期的な金融の強じん性を強化し、成長を支える。

15.インフラ投資 インフラは成長と繁栄の原動力であり、経済回復と強じん性を促進するために重要である。我々は、投資の意思決定を改善し、価格に見合った価値を高め、社会・経済・環境面でより良い成果をもたらすよう質の高いインフラ投資を促進することを目的として、インフラにおける技術の活用を促進する「G20リヤド・インフラテック・アジェンダ」を承認する。「投資対象としてのインフラに向けたG20ロードマップ」に沿って、我々は、民間のインフラ投資に影響を与える問題や課題に関する投資家の視点を反映し、それらに対処するための政策の選択肢を提示する「インフラ投資における機関投資家及び資産運用者との協働に関するG20/経済協力開発機構(OECD)レポート」を歓迎する。我々は、柔軟に、かつ他のイニシアティブと重複しない形で、関心ある国際開発金融機関及び国際機関の参加の下、この作業を継続するための選択肢を模索することを期待する。我々は、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に関連する作業を前に進める。

16.金融分野の課題 我々は、国際基準と整合的に行動する必要性を含め、新型コロナウイルスへの国ごとの又は国際的な対応の支えとなる金融安定理事会(FSB)の原則にコミットし、FSBに対し、金融セクターの脆弱性の監視、景気循環増幅効果と信用力に関する作業、及び規制・監督上の措置の調整を継続することを求める。我々は、FSBによる2020年3月の混乱に関する包括的な確認及びノンバンク金融セクターの強じん性を向上させるための今後の作業計画を歓迎する。このパンデミックは、送金を含め、より安価で、迅速で、包摂的で、透明性のある決済を促進するために、グローバルなクロスボーダー決済の仕組みを改善する必要があることを再確認させた。我々は、クロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップを承認する。我々は、FSBが国際機関及び基準設定主体と協調して進捗を監視し、ロードマップを見直し、G20へ年一回報告することを求める。我々は、FSBが2021年に「大きすぎて潰せない問題」に対する改革の影響評価を完了することを期待する。さらに、我々は、2021年末より前にLIBORから代替参照金利へ秩序ある形で移行することの重要性を再確認する。サステナブル・ファイナンスの動員及び金融包摂の強化は、世界の成長と安定にとって重要である。FSBは、気候変動が金融安定に与えるインプリケーションの調査を継続している。我々は、こうした分野における民間部門の参加と透明性の広がりを歓迎する。

17.責任ある技術革新は金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得るものの、我々は注意深く進展を監視するとともに、既存の及び生じつつあるリスクに警戒を続ける。いかなるいわゆる「グローバル・ステーブルコイン」も、関連する全ての法律上、規制上及び監視上の要件が、適切な設計と適用可能な基準の遵守を通して十分に対処されるまではサービスを開始するべきでない。我々は、FSB、金融活動作業部会(FATF)及びIMFによって提出された、いわゆる「グローバル・ステーブルコイン」とその他の類似の取組に関する報告書を歓迎する。我々は、基準設定主体がこれらの報告書を踏まえ、既存の基準の見直しに取り組み、必要に応じて調整を行うことを期待する。我々は、デジタル通貨及び所謂「グローバル・ステーブルコイン」のマクロ金融上のインプリケーションに係るIMFの更なる取組に期待する。

18.我々は、新型コロナウイルスに関するFATFの報告書の中で詳述されているマネーロンダリング、テロ資金供与対策を支持し、マネーロンダリング、テロ資金供与及び拡散金融と闘い、これを防止するための国際的な基準設定主体としてのFATFへの支持を再確認する。我々はこれらの脅威の全ての資金源、技術及び経路に対処していくという我々の強いコミットメントを再確認する。我々は、相互審査における専門性に対する支援等により、FATF型地域体のグローバルネットワークを強化することに対するコミットメントを再確認し、世界全体でのFATF基準の完全、効果的かつ迅速な履行を求める。我々は、拡散金融対策のグローバルな取組を後押しするFATF基準の強化を歓迎する。

19.デジタル経済 連結性、デジタル技術及び政策は、パンデミックへの対応を強化し、経済活動の継続を促進する上で鍵となる役割を果たしてきた。我々は、「新型コロナウイルスの下での事業モデルのデジタル化を支援するための政策オプション」に留意する。我々は、普遍的、安全かつ安価な連結性は、デジタル経済を推進する基本的な要因であると同時に、包摂的な成長、イノベーション及び持続可能な開発のための触媒であることを認識する。我々は、信頼性のある自由なデータ流通(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)及び越境データ流通の重要性を認識する。我々は、開発のためのデータの役割を再確認する。我々は、プライバシー、データの保護、知的財産権及び安全性に関連する諸課題に対処しつつ、開かれ、公正で、無差別的な環境を促進するとともに、消費者を保護し、消費者に能力を与えることを支援する。関連する適用可能な法的枠組みと整合的な形でこれらの課題に引き続き対処することにより、我々は、データの自由な流通を更に促進し、消費者及びビジネスの信頼を強化することができる。我々は、世界的なインターネットの普及を加速化し、デジタル格差を克服することにより人類を結び付けるために関係者と共に取り組むことの重要性を認識する。我々は、デジタル経済の安全性を促進することの重要性を認識し、「デジタル経済におけるセキュリティに関するG20事例集」を歓迎する。我々は、「G20人工知能(AI)原則を推進するための国内政策例」に留意し、イノベーションとAIへの人間中心のアプローチを推進するための多様な関係者の議論を引き続き推進する。我々は、スマート・シティ及びスマート・コミュニティの福祉及び強じん性への貢献として「G20スマート・モビリティ・プラクティス」を歓迎するとともに、「デジタル経済を評価するための共通の枠組みに向けたG20ロードマップ」を歓迎する。

20.国際租税 我々は、世界規模で公正、持続可能かつ現代的な国際課税システムのための協力を継続する。我々は、G20/OECD「BEPS包摂的枠組み」によって公表のために承認された第1の柱及び第2の柱の青写真に関する報告書を歓迎する。この強固な土台に基づき、我々は、両方の柱における更なる進捗について引き続きコミットしており、G20/OECD「BEPS包摂的枠組み」に対し、2021年半ばまでにグローバルなコンセンサスに基づく解決策に至ることを目指して、残された課題に対処するよう求める。我々は、G20/OECD「BEPS包摂的枠組み」により承認された仮想通貨が租税政策にもたらす影響に関する報告書を歓迎する。我々は、国際的に合意された税の透明性基準の実施及び確立された自動的情報交換における進捗を歓迎する。我々は、開発途上国に対する持続可能な税収基盤を築くための税に関する能力強化に係る支援を継続する。

21.腐敗対策 我々は、模範を示すことにより国際的な腐敗との闘いを引き続き主導する。この点に関し、我々は、第1回G20腐敗対策閣僚会合を歓迎する。我々は、パンデミックへの対応において国際的な清廉性を引き続き促進し、G20腐敗及び新型コロナウイルスに係る「コール・トゥ・アクション」を承認する。我々は、国際機関、市民社会、メディア及び民間部門を含むマルチステークホルダー・アプローチをとり、また、促進すること、そして、腐敗を防止し、腐敗と闘うことにコミットする。我々は、「国際的な腐敗対策に係る法執行協力促進のためのリヤド・イニシアティブ」を歓迎する。我々は、「G20腐敗・経済犯罪・犯罪者及び没収した奪われた財産の回復に係る国際協力についての行動」を承認する。我々は、「G20腐敗対策説明責任報告書」に対する改革されたアプローチを歓迎し、「国家腐敗対策戦略の策定と実施」、「情報通信技術(ICT)の活用による公的部門の清廉性向上」及び「民営化及び官民のパートナーシップ(PPP)における清廉性向上」のためのG20ハイレベル原則を承認する。我々は、全てのG20メンバーによるOECD外国公務員贈賄防止条約へのあり得べき遵守に向けて、国連腐敗防止条約(UNCAC)第16条の規定に従い、2021年までに外国公務員贈賄の犯罪化及び外国公務員贈賄法令の施行に向けた具体的な取組を示す。我々は、サウジアラビアがOECD贈賄作業部会に参加することを歓迎する。

C.不平等に対処する包摂的な回復の確保

22.持続可能な開発

パンデミックによる社会的・経済的な影響により、貧困をなくし、不平等に対処し、誰一人取り残さないことを確保する取組の加速が、より差し迫って必要とされている。我々は、「開発途上国における新型コロナウイルス対応及び復興に向けたG20の支援」、「地域連結性のための質の高いインフラに関するG20ガイドライン」及び「持続可能な開発のための資金調達フレームワーク」を承認する。我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びアディスアベバ行動目標の時宜を得た実施に貢献することにおいて主導的な役割を果たすことを引き続き決意している。「持続可能な開発のための2030アジェンダに関するG20行動計画」に基づき、リヤド・アップデートとその新たな説明責任フレームワークは、G20による共同かつ具体的な行動を強調するもので、それによって2030アジェンダ及びその持続可能な開発目標の実施に貢献する。我々は、一層持続可能な資金調達の選択肢を追求することを含め、アフリカ諸国が危機を克服するために支援を行うことを決意している。我々は、「アフリカ及び後発開発途上国の工業化の支援に関するG20イニシアティブ」、「G20アフリカ・パートナーシップ」、「アフリカとのコンパクト」及びその他関連イニシアティブへの継続的な支援を再確認する。我々は、違法な資金フローに対処することに引き続きコミットする。

23.機会へのアクセス

この危機は、社会の最も脆弱な層に対して経済的及び社会的に過度の影響を与え続けており、全ての人々に対し機会へのアクセスを強化する必要性を強調する。我々は、包摂的な成長を促進するというこれまでのコミットメントを再確認しつつ、不平等削減のための取組を継続する。我々は、新型コロナウイルスのパンデミックへの迅速な対応を支援し、強固で、持続可能で、均衡のとれた、包摂的な回復に向けて前進するために活用できる、全ての人々にとって得られる機会を向上するためのG20の政策オプション・メニューを承認する。我々はまた、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)により作成された「若者、女性、中小企業のためのデジタル金融包摂に関するG20ハイレベル・ポリシー・ガイドライン」を承認する。我々は、GPFIの今後三年間の取組を導く「2020年G20金融包摂行動計画」を歓迎する。

24.雇用

何百万人もの労働者が失業及び収入喪失に直面し続ける中、パンデミックによる労働市場への壊滅的な影響に対処することは、引き続き我々の優先事項である。我々は、全ての人々、特に女性と若者のための人間らしい働きがいのある仕事を保護し、促進することの重要性を認識する。我々は、非公式経済にいる人々を含む全ての人々のための包括的で、強固で、適応的な社会的保護へのアクセスを支持し、「変化する就業形態を反映させるべく社会的保護を適合させるための政策オプション」の活用を承認する。我々は、雇用創出を支える雇用政策及び計画の重要性を認識し、社会的対話の活用を促進する。我々は、研修及び再教育政策を通じ、引き続き労働者を支援する。我々は、ILO及びOECDによる新型コロナウイルスによる世界労働市場への影響に関する報告書を認識する。我々は、労働市場から恒常的に取り残されてしまう危険が最も高い若者の割合を2025年までに15%削減するとのG20アンタルヤ・ユース・ゴールの達成を支持するため、「G20青少年ロードマップ2025」を承認する。我々は、ILO及びOECDに対し、これらの事項の注視を継続するよう要請する。我々は、児童労働、強制労働、人身売買及び現代の奴隷制を根絶するための取組を継続する。

25.女性のエンパワーメント

多くの女性が危機により不均衡に影響を受けてきたことから、我々は、パンデミックがジェンダー間の不平等を拡大させたり、ここ数十年間の成果が損なわれたりすることがないよう確保するべく取り組む。女性と女児のエンパワーメントのための国連における関連の宣言、プロセス及び行動要請を想起し、我々は、女性及び女児のエンパワーメントの重要性を我々の政策の全ての観点における横断的な課題として再確認し、女性が経済成長の重要な推進力であることを認識する。我々は、ジェンダー平等を引き続き促進し、固定観念と闘い、賃金格差を縮小させ、無償労働及びケアの責務の男女間における不平等な配分に対処する。我々は、女性の雇用の質を向上させながら、労働参加における男女間の格差を2025年までに25%減少させるというブリスベン・ゴールの達成に向けた取組を強化し、ILO及びOECDに対し我々の進捗を支えるインプットを引き続き提供するよう求め、次期議長国の下でのロードマップに期待する。我々は、女性の経済的参加及び起業に当たっての障壁を取り除くための措置をとる。我々は、サウジアラビア議長国の下での、指導的地位への女性の昇進のための「女性のエンパワーメントと経済参画促進のための民間セクターアライアンス(EMPOWER)」の開始を歓迎する。

26.教育

我々は、新型コロナウイルスのパンデミックが教育に及ぼす影響を緩和するための行動をとってきた。我々は、安全な対面学習、効果的で質の高い遠隔学習及びそれらの組み合わせによる教育・学習を確保する措置を適切に実施することにより、危機発生時における教育の継続の重要性を強調する。全ての人のための包摂的で、公正で、質の高い教育は、特に女児にとり、明るい未来を開き、不平等と闘う上での鍵となる。教育は、子供、若者及び成人が自らの潜在力を最大化するために必要となる知識、技能、価値及び態度を与えるものであり、自己開発の基礎となるものである。我々は、質の高い幼児教育へのアクセス及びそのアフォーダビリティを改善すること並びに十分な能力を備えた労働者を育成し、確保することの重要性を確認する。我々は、国内及び地域の法律、規則及び政策を尊重しつつ、教育の国際化を促進することの価値を認識する。

27.観光

我々は、旅行・観光部門のパンデミックからの回復を円滑化するために、民間部門を含む関係者と協力して取組を継続する。我々は、創造的経済を含め、部門回復の触媒として「観光コミュニティ・イニシアティブ」を歓迎する。我々は、「観光を通じた包摂的なコミュニティ開発のためのG20ガイドライン」を承認し、雇用を創出し、農村部をはじめとする地方コミュニティを後押しし、地球を保護し、文化遺産を保護するための「観光を通じた包摂的なコミュニティ開発に関するG20ウラー・フレームワーク」の活用を奨励する。我々はまた、「安全でシームレスな旅行に関する行動のためのG20ガイドライン」を承認し、G20観光作業部会の設置を歓迎する。

28.移住及び強いられた避難

我々は、難民、移民及び強いられた避難民を含む脆弱な状況にある人々へのパンデミックによる影響を軽減し、増大する人道的ニーズに対応し、及び避難の根本原因に対処するための共同行動の重要性を強調する。我々は、OECDがILO、国際移住機関(IOM)及び国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との協力の下作成した「2020年国際的移住及び強いられた避難の傾向と政策に関するG20に対する年次報告」に留意する。我々は、G20において、こうした問題の様々な側面に関し対話を継続する。

D.持続可能な未来の確保

29.環境、エネルギー、気候

環境劣化の防止、生物多様性の保全・持続可能な利用及び再生、海洋の保全、クリーンな大気と水の推進、自然災害及び異常気象現象への対応並びに気候変動への対処は、現代における最も喫緊の課題に数えられる。我々は、パンデミックから回復するに当たり、我々の地球を保護し、全ての人にとってより環境面で持続可能で包摂的な未来の構築にコミットする。

30.我々は、近く行われる生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)に先立ち、海洋環境及び陸域環境を保全するという我々の決意を強化する。我々は、サンゴ礁を保全するための「世界サンゴ礁研究開発促進プラットフォーム」及び、土地劣化を防止、停止、反転させるための「土地劣化の減少及び陸域生息地の保全強化に関する世界イニシアティブ」を立ち上げる。我々は、既存のイニシアティブに基づき、自主的に、2040年までに土地劣化を50%減少させるという野心を共有する。我々は、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」で示された、海洋プラスチックごみによる追加的な汚染を削減するとのコミットメント、そして、違法・無報告・無規制(IUU)漁業を終了させるとのコミットメントを再確認する。

31.我々は、パンデミックによりもたらされた課題への対応において、経済成長を達成するためエネルギーの安定的で途切れることのない供給を確保するとの我々の引き続きの決意を強調する。我々は、クリーン・クッキング(環境負荷の少ない調理方法)及び電気へのアクセスの確保を含め、各国の状況に応じ、燃料及び技術のオプションをまたぐイノベーションに依拠した、全ての人のための安価で信頼できるエネルギーへの普遍的なアクセスを促進することの重要性を認識する。この点に関し、我々は、国ごとの状況に応じ可能な限り幅広い燃料と技術のオプションを活用することの重要性及び「3E+S」(エネルギー安全保障、経済効率性及び環境+安全性)を実現するエネルギー転換を主導する重要性を認識する。我々は、開かれた、競争的で、自由な国際エネルギー市場を促進しつつ、エネルギーの途絶のない流れを維持し、また、強化されたエネルギー安全保障及び市場の安定につながる道を探求することの重要性を認識する。我々は、「クリーン・クッキング及びエネルギーアクセスに関するG20イニシアティブ」及び「G20エネルギー安全保障及び市場安定化のための協力」を承認する。我々は、エネルギー・フォーカス・グループ(EFG)に参加するエネルギー大臣により承認されたように、エネルギー市場をリバランスさせ、短期的及び長期的な投資を継続するための同グループの措置及び勧告を歓迎する。我々は、最貧困層を対象とする支援を提供しつつ、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を中期的に合理化し、段階的に廃止する共同のコミットメントを再確認する。

32.我々は、排出削減の重要性及び野心を認識し、また、システムの効率性及び各国の事情を考慮しつつ、循環炭素経済(CCE)プラットフォームとその4Rの枠組み(リデュース、リユース、リサイクル、リムーブ)を承認する。CCEは、エネルギー、産業、移動及び食料を含む全ての分野における排出管理を通じた環境管理を強化しつつ経済成長を促進するための自主的、包括的、統合的、包摂的、実用的及び補完的なアプローチである。我々はこの文脈において、CCEガイドにより強調された種々の自主的な機会及びその加速化を認識する。我々は、各国の状況に応じた気候変動を含む持続可能性に対処するツールボックスとして活用することができる気候管理作業部会議長報告書を認識する。我々はまた、自然に基づく解決策や生態系を基盤とするアプローチ等を通じたものを含め、適応と緩和の連関作用を促進することの重要性を認識する。

33.グラスゴーにおける国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第26回締約国会議(COP26)及び昆明におけるCBDのCOP15に先立ち、我々は、経済成長、エネルギー安全保障及び全ての人によるアクセス並びに環境保護を促進するに当たり、気候変動及び生物多様性の損失といった喫緊の環境課題に対処することへの支持を再確認する。大阪においてパリ協定の実施の決意を確認した同協定の署名国は、いま一度、各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力を考慮しつつ、同協定の完全な履行についてのコミットメントを再確認する。これらの署名国は、実施方法を考慮しつつ、パリ協定の下での義務に従い、できるだけ高い野心を反映した国が決定する貢献を通報又は更新するとのUNFCCCのCOP21の要請を想起し、また、国際協力の重要性を再確認しつつ、同条約及びパリ協定に整合的な形で途上国の適応と緩和に関する取組を支援するため多様な財源を提供及び動員することの重要性を強調する。これらの署名国はさらに、温室効果ガスについて低排出型の発展のための長期的な戦略を2020年までに提出する招請を再確認する。同協定の署名国は、開発途上国のニーズに対応するために2020年まで毎年共同で1,000億米ドルを動員するとの目標に向けた先進国のコミットメントを想起する。また、全てのG20メンバーは、将来世代のための環境管理の前進を目指す全ての可能なアプローチを引き続き活用し努力を支援するとともに、成長、人間らしい働きがいのある仕事及びイノベーションに資する健全な経済を維持しつつ、これらの課題に対処するために更なる国際的な取組が必要であることを強調する。

34.農業

我々は、特にパンデミックの影響を踏まえ、食料安全保障及び栄養の課題に対処するとともに、食料及び農業のサプライ・チェーンの効率性、強じん性及び持続可能性を強化するという我々のコミットメントを再確認する。世界中の人々に食料を供給するという課題に対処するためには農業及びフード・システムへの責任ある投資を大幅に増やすことが必要であり、我々は、「農業及びフード・システムへの責任ある投資の実施強化に向けたG20リヤド声明」を承認する。我々は、2030年までに世界全体の一人当たりの食料の損失・廃棄を半減させるという取組を強化するために、各国ごとに自発的に中間目標を設定するという目標を認識する。

35.水

我々は、安価で信頼ができ安全な水、衛生及び衛生サービスが人間の生活にとって不可欠であり、浄水へのアクセスがパンデミックの克服にとり極めて重要であることを認識する。我々は、ベスト・プラクティスを共有し、持続可能で、強じんで、統合的な水管理を促すイノベーション及び新技術を任意で促進するための基礎として、「水に関するG20対話」を歓迎する。

36.我々は、大規模な公のイベントの延期を通じて人々の健康を守るための取組を評価する。我々は、人類の力強さと新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証として、来年東京2020オリンピック・パラリンピックを主催するという日本の決意を称賛する。我々はまた、来年2020国際博覧会を主催するとのアラブ首長国連邦の決意を称賛する。我々は、北京2022冬季オリンピックを楽しみにしている。

37.我々は国際機関に対し、報告書及び技術的な助言を通じた有意義なインプットについて感謝する。我々は、国連創設75周年を記念する。我々は、G20エンゲージメント・グループによる貴重な作業に対し、謝意を表する。

38.我々は、サウジアラビアのリヤド・サミットの成功裏の開催及びG20プロセスへの貢献に感謝する。我々は、2021年にイタリア、2022年にインドネシア、2023年にインド、そして2024年にブラジルで開催予定の今後の会合を楽しみにしている。