データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明

[場所] イタリア・ベネチア
[年月日] 2021年7月10日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 2021年4月の会合以来、世界経済の見通しは、主にワクチンの展開と継続的な政策支援を背景にさらに改善してきている。しかし、回復は、各国間・各国内の大きな差異に特徴づけられており、特に新型コロナウイルスの新たな変異株の拡大やワクチン接種ペースの違いなどの下方リスクに、引き続きさらされている。我々は、女性、若者、非正規労働者、未熟練労働者などの、特に最も影響を受けた人々に対する新型コロナウイルスの悪影響に対処するため、必要とされる間は、全ての利用可能な政策手段を用いるとの決意を再確認する。我々は、物価の安定を含む中央銀行のマンデートとの整合性を保ち、金融の安定と長期的な財政の持続可能性を維持し、下方リスクと負の波及効果を防ぎつつ、支援策のいかなる早まった引き揚げを回避し、引き続き回復を持続させる。我々は、「G20行動計画」を基礎として、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長へと世界経済を導くため、国際協力を継続する。我々は、我々の4月の為替相場のコミットメントを確認する。我々は、成長及び雇用創出の回復における、開かれた公正な、ルールに基づく貿易の重要な役割と、保護主義と闘い、世界貿易機関(WTO)の改革のために協調して取り組むことを奨励するとの我々のコミットメントを再確認する。

 我々は、あらゆる場所で可能な限り早期にパンデミックを制御することを引き続き決意し、グローバル・ヘルス・サミットにおけるものを含め、この野心的な目的を達成することへのコミットメントを歓迎する。我々は、新型コロナウイルスの予防接種が国際公共財として有する役割を認識し、現下の保健危機に対処するための全ての協働の取組、特に「新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス加速事業(ACT-A)」への支持を再確認し、公的部門と民間部門の双方に対して、安全で効果的で質が高くかつ手頃なワクチンを世界で公平に共有することを含め、残るギャップに対処することを促す。我々は、世界的なワクチン製造能力の多様化や、保健システムの強化に向けた取組を支援する。我々はまた、ワクチン・治療薬・診断薬の提供を加速することを優先し、新たな変異株や感染再燃に迅速に対処するための的を絞った対応を行い、特に途上国に向けたワクチンの提供・分配を支援する。我々は、世界銀行(WB)、世界保健機関(WHO)、国際通貨基金(IMF)及びWTOによって途上国向けの新型コロナウイルスのワクチン・診断薬・治療薬についてのタスクフォースが設立されたことを認識する。我々は、今後の保健への脅威に対しより良く備える喫緊の必要性を認識しつつ、「国際公共財としてのパンデミックへの備えと対応のための資金調達に関するG20ハイレベル独立パネル」の報告書を歓迎し、その提言に留意する。我々は、将来のパンデミックへの備えと対応を強化するための持続可能な資金調達についての提案を策定し、国際的なガバナンスと国際保健・財政の政策立案者間の協調を改善するため、我々の間で、及び国際金融機関や関連するパートナー、特にWHOとともに、協働することにコミットする。我々は、財務省と保健省の専門家に対し、10月のG20財務大臣・保健大臣合同会合で提示する具体的な提案によりフォローアップするよう指示する。

 長年にわたる議論を経て、昨年得られた進捗に基づき、我々は、より安定的でより公正な国際課税制度に関する歴史的な合意を成し遂げた。我々は、7月1日にOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」が公表した「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対応する二つの柱の解決策に関する声明」において示された、多国籍企業の利益の再配分と効果的なグローバル・ミニマム課税に関する2つの柱の重要な構成項目を承認する。我々は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」に対して、10月の次回会合までに、残された課題を迅速に解決し、2つの柱の詳細な実施計画と合わせて、合意された枠組みの範囲内で設計項目を最終化することを求める。我々は、国際合意にまだ参加していないOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」の全ての参加国・地域に対して、国際合意に参加するよう招請する。我々は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」への途上国の参加を通して得られた進捗の評価に関する途上国との協議プロセスを歓迎し、OECDによる報告書を10月に期待する。

 デジタル・トランスフォーメーションは、生産性を向上させ、回復を強化し、幅広い繁栄に貢献する潜在性を有する。我々は、メンバーから共有された政策経験に基づき、OECDとIMFによる分析の支援を受けた、「G20政策オプション・メニュー―デジタル・トランスフォーメーションと生産性の回復―」を承認する。これは、政策オプションを提供し、グッド・プラクティスを共有し、包摂性を促進し、デジタル化による成長機会を活用するための国際協力の重要な役割に光を当てるものである。この「メニュー」は、生産性に関する我々の将来の取組に貢献する。我々は、必要に応じて将来の政策のデザインを強化するため気候、保健、その他のリスクを体系的に統合することを通じて、また、確立された手法の活用を含め、ツール、分析、経験を共有することを通じて、引き続き、グローバルなリスクの監視及び備えを強化する。我々は、パンデミック、自然災害、気候変動の物理リスク及び移行リスクを含む将来のショックに対する強靱性を向上し、相互に関係する政策的課題に対処するため、引き続き緊密に協調する。我々は、環境・気候関連のマクロ経済リスクのより包括的な評価が、我々の経済をより持続可能で、強靭かつ包摂的なものにするための革新的な解決策の策定に役立つと認識する。我々は、回復を支えるため、優れたコーポレート・ガバナンス及びよく機能する資本市場の重要性を認識する。我々は、「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しに期待し、OECDに対し、2022年の最初の会合での進捗報告を求める。

 我々は、デジタル化によって生み出されたデータの蓄積を活用することが、我々の意思決定をより良いものとするために重要であることを再確認する。我々は、IMFが、金融安定理事会(FSB)と経済及び金融統計に関する当局間グループ(IAG)との緊密な協力の下で準備した、考え得る新たなデータギャップイニシアティブに関するコンセプトノートに留意する。我々は詳細な作業計画の策定の評価に期待する。

 気候変動及び生物多様性の損失への対処及び環境保全の促進は、引き続き喫緊の優先事項である。我々は、回復のためのパッケージや適応・緩和のための政策が、気候や環境、さらには雇用、成長、公平性に与える影響について、国際機関が更なる分析を行うことを期待する。我々は、気候に関する行動について、より緊密な国際協調が、我々の共通目標の達成に寄与しうるとの点に同意する。これにより、温室効果ガスの排出量が少なく、より豊かで、持続可能かつ包摂的な経済への移行を公正かつ秩序立った形で実現する適切な政策の組合せに関する議論を、各国の事情を勘案しつつ、より良いものにすることが出来る。この組合せには、脱炭素化及び循環型経済を促進する持続可能なインフラや革新的技術への投資や、最貧困層及び最脆弱層を対象とする支援を提供しつつ、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の合理化及び段階的な廃止や、適切であれば炭素に価格付けを行う仕組み及びインセンティブの活用を含むクリーン・エネルギー源を支援するための仕組みの設計等、幅広い範囲の手法が含まれるべきである。我々は、「税制と気候変動に関するハイレベル税シンポジウム」において行われた建設的な議論を歓迎し、気候変動に関係する課題に対処し、よりグリーンで、より持続可能な経済への移行を推進するための対話の重要性を認識する。我々は、これらの課題に関するIMF/OECDによる報告書を10月に期待する。我々は、国際開発金融機関(MDBs)を含む国際金融機関に対し、そのマンデートに沿って、国際連合の2030年アジェンダの達成への支援を継続しつつ、野心的な時間的枠組でパリ協定との整合性を追求し、新興・開発途上国(EMDEs)における持続可能な回復及び移行戦略、国が決定する貢献、並びに長期的な温室効果ガスの排出量が少ない開発戦略に対する資金供給の取組を強化するよう奨励する。国際的な気候資金は、開発途上国による気候変動への適応・緩和の取組を支援する上で極めて重要である。我々は、温室効果ガス排出量が少ない経済・社会への移行を促進するために必要な包括的な戦略について、共通の理解が深められることに、また、公正な移行を促す政策の組合せやグリーン投資、EMDEsにおける移行を支援する上でのMDBsの役割、気候変動関連の財務開示のための質の高い基準の促進、民間資金フローを動員しパリ協定に整合させるためのインセンティブにフォーカスする7月11日の国際気候会議に期待している。

 気候変動は、マクロ経済上の成果、規制対象の金融機関、金融安定に対する物理リスク及び移行リスクの増大をもたらしている。質の高いデータと比較可能な開示枠組は、気候関連財務リスクに対処し、サステナブル・ファイナンスを動員する上で不可欠である。我々は、これらのリスクに対処するため取り組むことの重要性に留意する。我々は、10月会合において、サステナブル・ファイナンス作業部会(SFWG)の統合レポート、及び当初気候に焦点を当てた複数年にまたがるサステナブル・ファイナンスに関するロードマップについて議論することを期待する。我々は、SFWGの活動に対する、国際機関、金融機関のネットワーク、民間部門の代表による支援を賞賛する。我々は、気候関連金融安定リスクに関するデータの入手可能性についてのFSB報告書を歓迎し、データギャップに対処するために取り組み、金融当局が、適切な場合には共通のシナリオを利用することを含め、シナリオ分析を検討することの重要性を強調する。また、我々は、国際的に一貫性のある、比較可能で信頼できる気候関連財務情報開示の推進に関するFSBの報告書とその勧告を歓迎する。我々は、民間部門の参加の広がりを歓迎するとともに、これらの分野での公共部門の参加と透明性の広がりに留意する。我々は、各法域の状況を考慮しつつ、ベースラインとなるグローバルな報告基準の策定を目指した将来のグローバルな協調の取組への道を開くために、FSBの気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組に基づく開示要件または指針について、国内の規制枠組に沿う形での実施の推進に取り組む。この目的のために、我々は、頑健なガバナンス及び公的監視の下で、TCFDの枠組及びサステナビリティ基準設定主体の作業を基礎とし、これらの主体を巻き込むとともに幅広いステークホルダーと協議してベストプラクティスを形成させて、ベースラインとなるグローバルな報告基準を策定する、国際財務報告基準財団の作業プログラムを歓迎する。我々は、気候変動による金融リスクに対処するためのFSBロードマップを歓迎する。これは生きた文書であり、SFWGが実施する作業を補完するものである。

 我々は、メンバー国のケーススタディが添付され、OECDと世界銀行の支援を受けた「インフラのメンテナンスに関するG20政策アジェンダ」を承認する。我々は、ライフサイクルを通じてインフラ資産を守り、損失や破損を最小化し、安全で信頼できる質の高いインフラサービスの提供を確保するため、強靱で、適切な資金提供を受け、よくメンテナンスされ、最適に管理されたシステムが不可欠であることを認識する。我々は、先進的でよく機能するデジタル・インフラは経済回復の重要な原動力であるとの認識の下、この分野でのOECDの貢献を認識し、10月の我々の会合まで、デジタル世界のための質の高いブロードバンド連結性の資金調達と促進に関する継続中の作業に期待する。我々は、「投資対象としてのインフラに向けたG20ロードマップ」に沿って、民間資金を動員するため、官民の投資家間の協働を引き続き更に発展させるとともに、我々の10月の会合における初めての「G20インフラ投資家対話」の成果文書に期待する。我々は、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に関する作業を推進することを歓迎する。我々は、質の高いインフラ投資について考え得る指標を探求することについての我々の以前の合意を想起し、この分野における国際金融公社の作業に関する次回のインフラストラクチャー・ワーキンググループ会合での議論に期待する。

 我々は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けた全ての脆弱な国々を引き続き支援する。我々は、準備資産の長期的かつグローバルな必要性に応じるため、6,500億米ドル相当の特別引出権(SDR)の新規一般配分に関するIMFの総務会への提案を支持し、8月末までの速やかな配分の実施を求める。我々はまた、SDRの準備資産としての性質を維持し、任意交換取極への参加を拡大しつつ、SDRの報告及び使用における透明性及び説明責任を強化するための提案を歓迎する。今回の配分の効果を増強するため、我々は、IMFに対し、脆弱国がより強靭で包摂的かつ持続可能な経済回復及び保健関連支出のための資金調達を行えるよう、例えば新たな信託基金の創設を通じて、各国が、配分されたSDRの一部を自発的に融通するための実施可能な選択肢を速やかに提示するよう求める。我々は、これらの選択肢及び考えられる貢献について、各国の国内法や規制に応じて探求すること、また、貧困削減・成長トラストを拡大することにコミットしている。我々は、脆弱国を支援するための野心的な目標に達するために、可能な全ての国々に対して貢献を求める。我々は、低所得国への支援能力を強化するための、IMFの譲許的資金及び政策の見直しの完了を期待する。我々は、IMFに対し、アクセス上限及びサーチャージ・ポリシーの見直しのアウトリーチを完了させ、その結果を我々に報告するよう求める。

 我々は、持続可能な資本フローの促進、現地通貨建て資本市場の発展、及び強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心とした、強固で効果的なグローバル金融セーフティ・ネットの維持を通じ、長期的な金融の強靭性を高め、包摂的な成長を支えるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、資本フローの自由化と管理に関するIMFの「機関としての見解」について、予定されている見直しに期待する。我々は、クォータの十分性について再検討することに引き続きコミットし、2023年12月15日までに、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でIMFのガバナンス改革のプロセスを継続する。

 我々は、債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)の下で達成された進捗を歓迎する。7月2日時点で、45か国がDSSIの最初の延長(2021年6月まで)の恩恵を受けることを要請し、2021年前半の債務支払猶予額は推定46億米ドルに上る。全ての公的な二国間債権者は、完全に、かつ、透明性高く、このイニシアティブを実施すべきである。我々は、MDBsが、新型コロナウイルスのパンデミックに対応する新興国及び低所得国向け支援の2,300億米ドルのコミットメントの一環として、2020年4月から2021年5月までの期間に、DSSI適格国向けに441億米ドルのディスバースメントを行ったことを歓迎する。我々は、債務脆弱性に協調して対処するため、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」を実施するとの4月に示したコミットメントを再確認する。我々は、チャドの債権者委員会の設立及びその最近の声明を歓迎する。我々は、他の全ての公的な二国間債権者及び民間債権者が、チャドに対して、少なくとも同程度の債務措置を遅滞なく提供するよう促す。我々は、チャドに想定されるIMFの高次クレジット・トランシュ支援プログラムのIMF理事会による速やかな採択を、今まさに期待している。我々はまた、「共通枠組」の下で、個別国の債務措置としてエチオピアのケースに適時に対処することを期待する。我々は、エチオピアのIMF支援プログラムの適時のレビューを支持する。我々は、「共通枠組」に基づく適格な要請に対処していく。我々は、民間債権者及び他の公的な二国間債権者が、措置の同等性の原則に沿って、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することの重要性を強調する。我々は、債務の透明性の向上に引き続き取り組むための、民間債権者を含む全ての関係者による協働の重要性を再確認する。我々は、債務脆弱性の観点から、「共通枠組」に示されたMDBsの今後の作業を想起する。我々は、債務データの質及び整合性を強化し、債務の開示を改善するためのプロセスに係る提案のIMF及び世界銀行グループによる進捗に期待する。我々は、「G20持続可能な貸付に係る実務指針」の実施に関する第2回目の任意の自己評価の成果と、国際金融協会(IIF)の「債務透明性のための任意の原則」の実施に関する、IIF/OECD共同のデータ保存ポータルの立上げに係るものを含めた更なるアップデートを期待し、全ての民間セクターの貸手がこのイニシアティブを遵守することを求める。

 MDBsの業務は、持続可能な開発目標の達成に向けた長期的な支援を確保するため、極めて重要である。我々は、IDA(国際開発協会)のバランスシートの持続可能な活用を含めた、2021年12月までの野心的かつ成功裏のIDA第20次増資を期待する。我々は、「バランスシート最適化に関するG20行動計画」及び信頼性が高く持続可能なリスク分担の手法の開発に関する進捗に留意し、MDBsが優先的に弁済を受ける地位や現在の格付を維持しつつ、利用可能な資源を最も良く活用するための方途を引き続き探求することを奨励する。我々は、民間セクターの開発資金を動員する革新的な手法を見出すための更なる取組の必要性を強調する。我々は、ベスト・プラクティスの共有を促進し、それぞれの機関の開発マンデートを考慮しつつ、MDBsのガバナンス、信用格付、優先的に弁済を受ける地位を侵害することなく、開発効果を最大化するため、「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」を開始することに合意した(付属文書I)。より良い協調は、MDBsの補完性と有効性を強化する。我々は、「マクロ経済の脆弱性に直面した国が資金供給を要請する場合のIMFとMDBsの効果的な協調に関するG20原則」に係るアップデートを歓迎し、「政策連動融資の利用に関する(補完的な)G20勧告」(付属文書II)を承認する。我々は、国主導の試行的なプラットフォームの実施の進捗に関するMDBsからのアップデートを歓迎し、MDBsに対し、ホスト国政府との密接な協力の下、国レベルでの調整を引き続き強化することを求める。

 我々の新型コロナウイルス感染症による危機への包括的かつ団結した対応において、我々は、金融セクターが金融安定を維持しながら、回復への適切な支援を提供するよう確保することに引き続きコミットする。我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから得られた金融安定の観点からの教訓に関するFSBの中間報告書を歓迎する。グローバル金融システムは、G20の金融規制改革と国際的な公的当局の断固とした対応に支えられて高まった強靭性により、これまでのところパンデミックを乗り切ってきた。しかしながら、資本・流動性バッファーの機能や、景気循環増幅効果の潜在的な原因など、規制枠組のいくつかの分野では、さらなる検討が必要であり、ギャップが残っている。我々は、金融危機後に合意されたG20規制改革の残された要素を完了することを含め、意図しない影響を回避しつつ、これらのギャップに対処することにコミットしており、10月の最終報告書を期待する。我々はまた、銀行セクターや実体経済との相互関連性を含むシステミックな観点から、ノンバンク金融仲介(NBFI)セクターの強靭性を強化することにコミットしている。我々はまた、新興市場経済の対外資金調達における、米ドルによるクロスボーダーの資金調達とNBFI関連の脆弱性との相互作用を考慮する。我々は、NBFI作業計画における進展を取りまとめるとともに、さらなる政策的検討を要する可能性がある領域を特定することとなる10月のNBFIに関するFSB進捗報告書を期待する。我々は、マネー・マーケット・ファンドの強靭性を強化するための政策提案に関するFSBの市中協議報告書を歓迎し、国際的なレベルでNBFIの強靭性向上を確保するために、単一のオプションでは全ての脆弱性に対応できないかもしれないことを認識しつつ、各法域固有の改革及び関連する国際機関による潜在的なフォローアップ作業に情報を提供するための適切な政策オプションを示す10月の最終報告書を期待する。我々はまた、LIBOR移行に関するFSBの進捗報告書を歓迎し、2021年末までにLIBOR指標から適切に頑健な代替指標へ円滑に移行することの重要性を再確認する。

 我々は、関係当局における「クロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップ」の適時かつ効果的な実施へのコミットメントを再確認する。我々は、コスト、スピード、透明性、アクセスに関する課題に対処するためのグローバルな定量目標を設定し、5月末に開始された市中協議へのフィードバックを考慮し、公的部門・民間部門から行動が求められている行動を強調する、10月に提出される予定のFSB報告書に期待する。我々は、決済・市場インフラ委員会、国際決済銀行イノベーションハブ、IMF及び世界銀行による、クロスボーダー決済のための中央銀行デジタル通貨に関する報告書に留意し、これらの課題及び国際通貨システムへのより広範なインプリケーションについて、10月に議論することを期待する。我々は、いかなるいわゆる「グローバル・ステーブルコイン」も、関連する全ての法律上、規制上及び監視上の要件が、適切な設計と適用可能な基準の遵守を通して十分に対処されるまではサービスを開始するべきでないことを再確認する。

 我々は、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップによる2020年金融包摂行動計画の推進の進捗を歓迎するとともに、どちらも10月に予定されている、パンデミック後の世界における新たな及び既存の脆弱性への対処に関するハイレベル・シンポジウムと、個人及び中小零細企業におけるデジタル金融包摂の強化のための政策オプション・メニューに期待する。我々はまた、「危機時と危機後における送金に関するワークショップ」の成果を歓迎するとともに、本年後半に発表される「各国送金計画」に期待する。

 我々は、人々、特に中小零細企業を含む最も脆弱で十分なサービスを受けられない人々のエンパワーメントのため、また、個人や社会の福祉、金融包摂、金融消費者保護及びポスト・パンデミック時代の変革を支えるために、金融リテラシーが不可欠なスキルであることを認識する。我々は、政府、その他の公的機関及び関連するステークホルダーが金融リテラシーに関する政策を設計、実施、評価する取組を支援するための、金融リテラシーに関する自発的で拘束力のない手段を示す、「金融リテラシーに関するOECD勧告」を歓迎する。

 我々は、金融活動作業部会(FATF)及び9つのFATF型地域体(FSRBs)への支持を再確認する。我々はそれぞれ、FATFが合意した優先事項に沿って、FSRBs及びその参加国・地域のマネーロンダリング、テロ資金供与対策の枠組を強化するため、必要に応じて、IMF及び世銀に対するものも含む追加的な貢献にコミットし、我々のコミットメントをFATFと共有する。我々は、他のFATFメンバー、IMF及び世銀に対しても、同様に、FSRBsへの財政的支援と技術的支援の両方またはいずれかを増加させるよう要請する。我々は、FATFで進められている環境犯罪によるマネーロンダリングのリスクに関する作業を歓迎し、気候及び生物多様性への脅威とその他の重大犯罪との関連性を認識する。我々は、それぞれの法域における実質的所有者の透明性及び暗号資産の規制・監督に関するマネーロンダリング、テロ資金供与対策の国際基準の完全な実施にコミットし、強化することを再確認する。我々は、FATFで進められている実質的所有者の透明性に関する勧告を改訂するためのプロジェクトを強く支持する。