データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20環境コミュニケ

[場所] イタリア・ナポリ
[年月日] 2021年7月22日
[出典] 環境省
[備考] 仮訳
[全文] 

前文

1. 我々G20環境大臣は、気候変動、生物多様性の損失、汚染、生息地の損失、劣化と断片化、侵略的外来種、土地の劣化と砂漠化、海洋の健全性の低下、淡水やその他の自然資源の持続不可能な利用といった、相互に関連する課題に対処するための努力を継続し、強化することにコミットするために、2021年7月22日にナポリで実際に、また遠隔で会した。我々は、これらの課題を克服することが、人間の福利(well-being)、包括的で持続可能な経済、持続可能な生産と消費の前提条件である健全な地球に不可欠であると確信している。このような課題には、サイロ・アプローチを避け、相乗的、補完的な方法で取り組む必要がある。G20メンバーがこれらの課題に対処する上で果たすべき役割を認識し、2021年が変革的な行動を触媒し、その規模を拡大するための重要な年であることを念頭に置き、我々は持続可能な開発のための2030アジェンダとその持続可能な開発目標(SDGs)及びターゲット、アディスアベバ行動目標、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定、生物多様性条約(CBD)及び砂漠化対処条約(UNCCD)の目標に対する我々のコミットメントを再表明する。

2. 我々は、生物多様性の保全、保護、持続可能な利用及び回復がSDGsの達成及び生物多様性の損失を食い止め、反転させることが不可欠であることを強調する。我々は、「国連生態系の回復の10年」(2021-2030年)による、2050年までに「自然と共生する世界」というビジョンを達成するための特別な推進力を歓迎する。現在進行中の多国間交渉を予断することなく、また各国の優先事項や政策に従って、生物多様性に関する「愛知目標」を達成するために各国が様々な進展を遂げていることを認識し、我々は、野心的で、バランスのとれた、実用的で、効果的かつ強固なポスト2020生物多様性枠組を、実施するための努力を引き続き支持し、全ての生物多様性条約の締約国に採択を呼び掛け、また、生物多様性に関する2050年ビジョンを達成するために必要な変革を促進するため、必要に応じて、責任、報告の強化を含む透明性、及び支援メカニズムの実施強化を引き続き奨励し、支援する。いくつかのG20メンバー及びその他の国は、「リーダーによる自然への誓約」を支持しており、いくつかの国は、少なくとも陸地の30%、世界の海洋の30%が、2030年までによく連結された保護地域とその他の効果的な地域をベースとする保全手段によるシステムを通じて保全又は保護されることに自発的にコミットしている。自発的なコミットメントをしたG20メンバー国は、他の国々が同様に野心的なコミットメントを行うことを奨励し、支持する。

3. 我々は、人間における一部の新興感染症や人獣共通感染症の潜在的な根本原因の一部が、生物多様性の損失、土地の劣化、気候変動を促進する原因と同じであり、そのような原因を対象とすることでパンデミックのリスクを下げることができることを認識する。我々は、2020年IPBES生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書の科学的貢献に留意する。我々は、ワン・ヘルス・アプローチやその他の包括的なアプローチを、全ての関連する政策や意思決定プロセスに統合し、また、優れた安全性、人獣共通感染症の波及、将来のパンデミックを含む課題に対処することにコミットする。我々は、WHO、FAO、OIE、UNEPによるワン・ヘルスに関する専門家パネル(OHHLEP)の設立を歓迎し、さらなる緊密な連携と協力を奨励する。

4. 我々は、違法伐採や野生生物の違法取引に加え、環境悪化、汚染、生物多様性の損失、土地劣化と砂漠化、森林劣化と森林減少及び気候変動の原因となる、違法・無報告・無規制(IUU)漁業や廃棄物の違法取引などその他の有害な活動を含む、自然に対する違法な脅威や環境に影響を与える犯罪を終わらせるための努力を再表明し、強化していくことを決意している。同時に、我々は、金融活動作業部会のグローバルな基準と勧告を実施することを含め、環境に影響を与える犯罪に由来する不正な資金の流れと闘うために、関係閣僚との協力を強化する。

5. 我々は、以下のような方法で2030年アジェンダに沿って「より良い復興(Building forward better)」に努める:経済や社会が依存している我々の自然生態系を保護、保全、回復する;持続不可能な森林管理、砂漠化、森林や土地の劣化など、生息地や生物多様性の損失を助長せず、防止する;包括的で持続可能かつ公正な低炭素経済への移行を加速させる;気候変動の影響に対するコミュニティの強靭性を高める;各国の優先事項や状況に応じて循環型アプローチによる資源効率性を高める。さらに、ポストコロナの枠組みにおいて、生物多様性の損失、土地劣化、気候変動が、より幅広い環境的に持続可能で包摂的で復興計画や行動の一環として、共に取り組まれるように努める。

I. 気候変動、生物多様性の損失、貧困に対処するための自然を活用した解決策又は生態系を活用したアプローチ

6. 我々は、生物多様性の損失に対処し、劣化した土地を回復させ、強靭性を高め、気候変動を緩和し、これに適応するために、経済、社会、環境分野を通じて複数の利益をもたらしつつ、自然を活用した解決策又は生態系を活用したアプローチの力を活用することを目指す。我々は、これらはパリ協定の目標に沿った形で温室効果ガスの排出量を緊急に削減するために必要な優先行動に取って代わるものではなく、これらの努力とともに必要とされる重要かつ補完的なツールであることを強調する。我々は、生物多様性と気候変動に関するIPBES—IPCC合同ワークショップ報告書の成果の貢献に留意する。我々は、社会的包摂と環境面でのセーフガードによる保護を確保しつつ、我々の社会と経済の主要部門において、また都市部を含む全ての生態系において、自然を活用した解決策又は生態系を活用したアプローチを拡大し、実施する必要があることを認識する。我々は、適宜関連する国内法や国際文書に従い、彼らの権利を認め、地域の意思決定に、地域コミュニティ、先住民及び関係するステークホルダーの全面的かつ効果的な参加の重要性を強調する。我々は、自然を活用した解決策及び生態系を活用したアプローチに関するワークショップを開催し、これらのアプローチを実施した各国の経験を共有し、そのような行動の可能性、利点、影響についての認識と理解を深め、2022年のG20に報告することに合意する。

II. ユネスコ国際環境専門家ネットワーク

7. 我々は、2020年12月に「ユネスコ国際環境専門家ネットワーク」の設立につながったイタリアのイニシアティブを称賛する。本ネットワークは、指定地域のユネスコスタッフに、生物多様性の保全、持続可能な利用、生態系の回復に関する情報を提供し、技術支援と能力開発を行っている。我々は、本ネットワークが任意の参加と貢献を受け付けていることに留意する。

III. 劣化した土地の保護、保全、持続可能な管理、回復のための行動の呼びかけ

8. 我々は、2020年に議長国サウジアラビアのもとで立ち上げられた「土地劣化の減少及び陸域生息地の保全強化に関する世界イニシアティブ」について、イタリアの議長国が主催するワークショップが成功裏に開催されたことを歓迎する。我々は、このイニシアティブへの支持を改めて表明し、自主的に、イニシアティブの目的に沿って、土地の保護、保全、持続可能な管理、回復のイニシアティブとプログラムについて、引き続き主導し、協力を強化し、投資をさらに促進し、適切な実施手段を提供し、経験を共有していく。

9. 我々は、国連生態系回復の10年が、森林を含む土地及び水資源を保護・保全し、回復させ、持続的に管理するための重要な機会であることを強調する。我々は、既存のイニシアティブに基づき、自主的に、2040年までに土地劣化を50%減少させるという野心を共有する。我々は、SDGs目標15.3及び多くの関連する持続可能な開発目標・ターゲットを推進するために、砂漠化と闘い、劣化した土地や土壌を回復させ、2030年までに土地劣化の中立性を達成するための努力を継続する。我々は、COVID19後の復興計画と戦略に、土地の保全、回復、持続可能な管理を組み込むことを奨励する。我々は、健全な生態系、とりわけ森林、草原、乾燥地、放牧地、耕作地、泥炭地、マングローブ、土壌、ツンドラ、カルスト、及び湿地が、生物多様性の持続可能性、食料安全保障、及び人間の健康と福祉を支える上で不可欠であることを強調する。このことは、世界の食料安全保障と将来のショックに対する強靭性の両方にとって、陸域生態系及びそれが提供するサービスの重要性を強調している。この文脈において、我々は、「食料安全保障、栄養及び食料システムに関するG20マテーラ宣言」を歓迎し、国連食料システムサミットに向けて関連閣僚との連携に適宜貢献する。我々は、国の優先事項や政策に従って、土地や生態系を保護・保全するための、世界的及び国家的な自主的な取組を支持する。我々は、劣化した陸域の生態系及び生息地の保護・保全、持続可能な管理及び回復のために進行中の多国間の取組みと我々の行動を連携させることを目指す。

IV. 持続可能な水管理のための行動の呼びかけ

10. 我々は、需要の増大、気候変動、汚染、不十分な衛生サービスなどの人為的な圧力により、水資源が世界的に危機に瀕していることを認識し、SDG6及びその他の関連するSDGsの達成に向けたコミットメントを再表明する。我々は、水、気候、海洋、土地、生態系の間の相互関連性を認識し、水資源を持続的に管理し、多目的に利用し、水域の生態系を保護し、あるいは回復させるために、セクター横断的かつ統合的なアプローチを推進する。

11. 我々は、持続不可能な消費を防止し、水域関連の生態系の劣化及び生物多様性の損失を反転させ、水質を回復させる十分な行動を奨励する上で、G20水に関する対話などを通じた近隣諸国間の協力の利点を認識し、また、各国の状況やアプローチに応じて、自然を活用した解決策又は生態系を活用したアプローチ、持続可能なインフラから得られる利益を促進し、流域規模での持続可能で強靭な統合的水資源管理を改善・強化するために、イノベーション及びベストプラクティスの共有を含む協力と連携を強化することにコミットする。我々は、他の関係閣僚と協力して、全ての人、特に脆弱で十分なサービスを受けられないグループが、手頃な価格で飲料水、衛生施設に公平にアクセスできるような対策を進めることにコミットする。

V. 我々の海洋に関する行動の呼びかけ

12. 我々は、大気中の排出量の増加、気候変動、その他の人為的なストレス要因の悪影響により、我々の海洋の健全性が深刻なリスクにさらされていることを深く憂慮する。我々は、気候変動への適応と緩和のための行動を含む、海洋、海、海洋資源の保全、保護、回復、持続可能な利用のための行動を、国連海洋法条約(UNCLOS)に反映された適用可能な国際法と整合的に、あらゆるレベルで強化することを求める。我々は、「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」(2021-2030年)を歓迎し、その目目標を支持するとともに、特に行動のための協調的な海洋科学が必要であることを認識する。我々は、G20議長国サウジアラビアの下で立ち上げられた世界サンゴ礁研究開発促進プラットフォームへの支持を再確認し、熱帯・冷水域のサンゴ礁やその他の主要な海洋・沿岸の生態系や生息地の保全、保護、回復、持続可能な利用のための行動を強化することを求める。我々は、地域的側面の役割を促進し、地域海条約・行動計画(RSCAP)及び地域漁業管理機関(RFMO)が他の権能を有するアクターとともに、新たな課題に対処し、全ての適切なレベルでの海洋関連のSDGsの達成を支援するために、協力と調整を強化することを奨励する。

13. 我々は、過剰漁獲、違法、無報告、無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行、またIUU漁業、過剰漁獲・過剰漁獲能力につながる漁業補助金が、我々の海の健全性と海洋資源の持続可能性に対する深刻な脅威であり続けていることを認識する。我々は、SDG14.6に沿って、有害な漁業補助金に対して効果的な規律を伴う意味のある合意に達するために、現在行われているWTOの漁業補助金交渉を支持する。我々は、SDG14のターゲット及び関連する国際法に従って、IUU漁業を終わらせるというG20大阪首脳宣言で表明された我々のコミットメントを再確認する。我々はまた、関連する国際文書の効果的な実施に取り組みつつ、生物多様性を含む海洋環境を保全し、海洋資源の持続可能な利用を確保することにコミットする。

14. 我々は、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関し、UNCLOSの下の野心的でバランスのとれた国際的な法的拘束力を有する文書に向けた継続中の交渉を進展させることの重要性を強調する。国際海底機構(ISA)の文脈において、我々は、予防的アプローチに沿った、海洋環境の効果的な保護をもたらす国際海底鉱物資源の開発に関する規則の策定を支持する。

15. 南極条約システムの文脈において、我々は、海洋保護区(MPA)が、特に東南極、ウェッデル海及び南極半島において、条約区域を代表する繊細な生態系を保護するための強力なツールとして機能しうることを認識しつつ、南極海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)の長年にわたるコミットメントを全面的に支持し、その実施に向けた更なる進展を奨励する。

VI. 海洋プラスチックごみへの取組の再認識

16. 我々は、海洋ごみ、特に海洋プラスチックごみが、とりわけ海洋生態系、沿岸域、漁業、及び観光に与える深刻な影響を認識し、G20海洋ごみ行動計画、G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組、及び大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの実施へのコミットメントを再確認する。我々は、日本がとりまとめた、G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組に関する第3次報告書を歓迎し、G20以外の国及びその他ステークホルダーと協力しながら、グローバルレベルで取り組むというコミットメントを再確認する。我々は、UNEA決議3/7により設置され、UNEA5.2に向けてUNEA決議4/6で延長された「海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックに関する専門家会合(AHEG)」の活動を歓迎し、海洋プラスチックごみに対処するための、既存の手段や多様なステークホルダーの関与の強化並びに新たな国際的な合意又は手段の策定といった提案されたオプションについて、UNEA5.2の機会に決定的な一歩を踏み出すことを目指し、議論に全面的に関与する。

17. 我々はまた、関連するステークホルダー、組織、イニシアティブと協力して、全ての国による国内、地域、国際的な取組に基づいて、陸域源の不適切な管理や、ゴースト・ギア(Ghost Gear)としても知られる逸失・投棄漁具を含む、海洋プラスチックごみの発生源に取り組む行動の強化を呼びかける。我々は、廃棄物ヒエラルキーを遵守し、包括的なライフサイクル・アプローチを実施することにより、但し、これに限定されずにプラスチック汚染に対処する必要があることを認識し、また、一部の国・地域において国内での拡大生産者責任制度の実施が好影響を与えていることに留意する。我々は、不必要な使い捨てプラスチック製品を大幅に削減するために、国民の認識と教育及び適宜その他の行動の強化を促進する。また、プラスチック廃棄物の削減に努めるほか、適宜、関連する環境分野での多国間協定に沿って、プラスチック廃棄物の越境移動がプラスチックによる海洋汚染に寄与しないように働きかけていく。

VII. 持続可能で循環的な資源利用のための行動の呼びかけ

18. 我々は、資源効率性と循環経済が、持続可能な開発を達成するために利用可能な重要な手段であり、持続可能な消費と生産に加え、気候変動、生物多様性の損失、土地劣化、汚染への対応にも大きく貢献できることを認識する。G20としての我々のビジョンは、上記のような複数の成果を達成し、SDG12やその他の関連するSDGsの達成に貢献するために、この分野での行動を推進することである。したがって、このビジョンを達成するために、我々は以下のことを奨励する:国の優先事項や政策に従って、製品の寿命を確保し、修理・再利用・リサイクルやその他の価値保持アプローチを可能にするイノベーション・設計・製造、天然資源の持続可能な利用、廃棄物や排出物の最小化、生態系の再生、持続可能なサプライチェーン、持続可能で社会的に包括的なビジネスモデルを構築する。また、我々は関連する国際的・地域的な組織やプロセスからの貢献を認識しつつ、全てのステークホルダーによるこれらの目標を達成するための関連する十分な行動を奨励する。

19. 資源効率性と循環経済に関する知識とベストプラクティスの交換を促進する上でのG20資源効率性対話の貴重な役割を認識し、我々はこの形式での協力を継続することにコミットする。既存のイニシアティブに基づいて、若者を強力な変革の担い手として関与させ、我々は、国レベルの拡大生産者責任に係る情報共有を含む対話、協力、パートナーシップ、共同学習を促進することで、循環経済の実践とアプローチを奨励する。これには、特に、国の政策と優先事項に従って、建設・建築、食品廃棄物の防止、繊維産業を含むファッションと繊維のバリューチェーンに関する情報の共有が含まれる。我々はG20議長国イタリアが、これらのテーマのワークショップを開催し、議論の場を提供してくれたことに感謝する。我々は、耐久性があり、リサイクル可能な製品の高品質なデザインを促進し、必要なスキル、イノベーション、インフラを構築するために、産業界、国際機関、関連するステークホルダーとの協力関係を強化する。我々は、G20資源効率性対話に対し、政策開発を強化するために、これら全ての分野における関連指標、目標及びベストプラクティスに関する情報を共有し、そのポータルサイトをさらに発展させることで、行動を強化することを要請する。我々はまた、G20資源効率性対話に対し、IRP(国際資源パネル)、OECD、UNIDO、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を含む(これらに限定されない)関連する国際的なパートナー、ステークホルダー及びプログラムの参加を得て、パラグラフ18に詳述されているビジョンを反映したロードマップの見直しと調整を行うことを要請する。我々はまた、「より資源効率性の高い循環経済を目指して(Towards a more resource efficient and circular economy)」というOECDによるG20報告書の調査結果に留意する。

VIII. 持続可能で循環型の都市

20. 我々は、持続可能な消費と生産パターン及び循環経済などを通じた持続可能な開発の推進者、促進者、実現者としての都市の役割を認識し、政府の様々なレベルにおける調整の重要性を強調し、G20で進行中の作業を歓迎する。我々は、SDGs、特にSDG11とSDG12、そして「ニュー・アーバン・アジェンダ」に沿った社会的に包括的な方法で、都市がこれらの目標に向かって前進することを支援する関連手段やインセンティブを導入する努力を奨励する。したがって、我々は、G20資源効率性対話などを通じて、資源効率と循環型アプローチを改善する都市の努力を支援することにコミットする。

IX. 教育、能力強化、研修

21. 我々は、あらゆるレベルの環境関連プロセスに若者を参加させ、持続可能な消費と生産の促進に貢献するために必要なスキルとツールを与え、若い世代をエンパワーしていくことが極めて重要であることを認識する。我々はまた、環境教育・研修を実施するための革新的なアプローチの必要性を認識するとともに、若い世代がいかにして変化の担い手となり、経済的移行を支えることができるかについて、関連機関を再指導する(Re-orient)必要がある。したがって、我々は、他の大臣と協力して、若い市民が、フォーマル、ノンフォーマル及びインフォーマル教育を通じて環境意識を高め、維持し、日常生活や経済において持続可能な慣行を採用・促進するための十分な知識、考え方、スキル、能力を有するよう、協力を強化し、より効果的な措置を促進することにコミットする。

X. 持続可能なファイナンス

22. 我々は、生物多様性、海洋、土地劣化及び気候に関する目標を達成し、生態系サービスを向上させるためには、資金の流れを持続可能な開発に整合させるとともに、多様な資金源からの追加的な資金の流れが緊急に必要であることを強調する。我々は、気候、生物多様性、生態系のための資金の流れには、多くの相乗効果があることを強調し、共同便益を最大化するためにこれらの相乗効果を強化する。この文脈において、我々は自然関連の財務情報開示に関する作業の重要性を認識し、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の設立に関心をもって留意する。

23. 我々は、金融機関及び全ての関連アクターに対し、財務及び企業の意思決定と報告において、環境の保全と持続可能な利用を考慮することや、自然、生物多様性、生態系を含む持続可能な開発のための資金の流れを、地域の文脈や状況を考慮しながら増加させることを目的とした進行中の議論に参加することを招請する。我々は、開発金融機関がその資金提供に自然への配慮を含め、2030アジェンダを羅針盤として使用することで果たすことのできる役割を認識し、近日開催される第2回開発銀行サミットに留意する。

24. 我々は、G20サステナブル・ファイナンス作業部会(SFWG)や、複数年にまたがるG20サステナブル・ファイナンス・ロードマップに関する進行中の作業などを通じたものを含め、気候や生物多様性の世界的な目標を含む持続可能な成長に沿った資金の流れの再編成を支援する上でのG20としての役割及び新たなフォーカスを歓迎する。我々は、ロードマップが当初は気候に焦点を当てているが、パリ協定の目標や、2030年アジェンダ、開発、気候、自然に関する各国の目標に対するMDBsの継続的かつ拡大した支援に合わせて、将来的には自然を含む持続可能性の幅広い側面を考慮することに適応可能であることを認識する。我々は、EDM、SFWG、その他の関連するG20グループ間の協力を含め、自然への資金提供に関する問題について最良の専門知識を用いて議論を強化することを期待する。我々は、UNDPが両プロセスを支援していることを歓迎する。これは、この2つの取組を橋渡しし、補完性を確保し、重複を避けるための手段となるからである。

結語

25. 我々は、貧困、保健、経済、環境の課題が相互に関連していることを念頭に置き、各国の異なる開発レベルと能力を考慮しつつ、誰一人取り残さない、持続可能な経済への公正かつ公平な移行にコミットする。我々は、開発途上国、特に後発開発途上国に対して、資金、技術、能力開発の支援を行うことを奨励し、既存のガバナンスの枠組みを最大限に活用し、新たな革新的な解決策を見出すよう努力する。リオ宣言の原則を想起し、我々が異なる課題に直面していることを認識しつつ、我々は持続可能な開発に向けた国際協力を強化する。

ナポリ2021年7月22日



{*1* トルコはUNCLOSの締約国ではない。}

{*2* トルコはISAのメンバーではない。}