データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明

[場所] 米国・ワシントンD.C.
[年月日] 2021年10月13日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 この数ヶ月間で、ワクチンの展開と継続的な政策支援に支えられ、世界経済の回復は強固なペースを継続してきている。しかし、経済活動の回復は、引き続き各国間・各国内で大きく差異があり、特に新型コロナウイルスの新たな変異株の拡大の可能性やワクチン接種ペースの違いなどの下方リスクにさらされている。我々は、特に女性、若者、非正規労働者、未熟練労働者などの最も影響を受けた人々や不平等に対する、新型コロナウイルスによる悪影響に対処するため、必要とされる間は、全ての利用可能な政策手段を用いるとの決意を再確認する。我々は、金融の安定と長期的な財政の持続可能性を維持し、下方リスクと負の波及効果を防ぎつつ、いかなる時期尚早な支援策の引き揚げも回避し、引き続き回復を持続させる。中央銀行は、現下の物価のダイナミクスを緊密にモニタリングしている。彼らは、一時的なインフレ圧力を見抜くが、政策スタンスに関する明確なコミュニケーションにコミットしつつ、物価の安定を含む自らのマンデートを果たすために、必要に応じて行動する。我々は、2021年4月に更新された、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長へと世界経済を導くためG20行動計画で設定された先を見据えたアジェンダを推進するというコミットメントを再確認するとともに、第4次進捗報告書(付表1)を歓迎する。我々は、我々の2021年4月の為替相場のコミットメントを確認する。我々は、成長及び雇用創出の回復における、開かれた公正な、ルールに基づく貿易の重要な役割と、保護主義と闘うとの我々のコミットメントを再確認し、世界貿易機関(WTO)の改革のために協調して取り組むことを奨励する。

 我々は、あらゆる場所で可能な限り早期にパンデミックを制御するとの決意を継続し、G20保健大臣宣言でのコミットメントを含む、パンデミックに対する予防、備え及び対応(PPR)に向けた取組を歓迎する。我々は、多国間リーダーズタスクフォースの取組に感謝し、新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス及び現場での提供の加速に取り組むことを奨励する。我々は、ワクチン・治療薬・診断薬への安全で公平かつ入手可能なアクセスを確保するという我々のコミットメントを再確認しつつ、今後数ヶ月間で、低・中所得国における新型コロナウイルス対応ツールのボトルネックや不足に対処するための支援に努める。我々は、新型コロナウイルスの予防接種の国際公共財としての役割を認識する。我々は、特に「新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス加速事業(ACT-A)」及びそのCOVAXファシリティを含め、全ての協働の取組への支持を再確認し、ACT-Aの全ての柱の資金ギャップに対処する必要性を強調する。我々は、将来のパンデミックに対する予防、備え及び対応を強化し、国際的なガバナンスと資金調達、及び国際保健・財政の政策立案者間の連携を改善するため、10月29日のG20財務大臣・保健大臣合同会合で具体的な提案について議論することを期待する。これは、国際保健事業における世界保健機関(WHO)の重要な指導的役割を認識する財務省・保健省間の連携体制の開発を探求することを含み得る。

 多国籍企業の利益の再配分と効果的なグローバル・ミニマム課税に関する2つの柱の重要な構成項目について、7月に歴史的な合意を達成したことを経て、我々は、10月8日にOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」が公表した「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対応する二つの柱の解決策に関する声明」及び「詳細な実施計画」に示された最終的な政治的合意を支持する。この合意により、より安定的で公正な国際課税制度が確立する。我々は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」に対して、2023年に新たな課税ルールがグローバルなレベルで発効することを確保するため、「詳細な実施計画」に示された通りに、また、同計画で定められた工程に沿って、モデル規定と多国間協定を迅速に策定することを求める。我々は、「新型コロナウイルス危機後における税と財政政策」に関する経済協力開発機構(OECD)の報告書を歓迎する。我々は、途上国がOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」への参加を通じて得られた進捗と、国内資金動員の取組を更に支援する可能性のある分野を明らかにする、途上国とOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」に関するOECDの報告書に留意する。我々は、この報告書に含まれる提言をフォローアップするために実施されるイニシアティブについて、定期的に更なる議論を行うことに期待する。

我々は、経済、社会、環境、技術、及び人口動態の主要な課題によりもたらされる影響を、我々の回復のための戦略を含めて、引き続き模索し対処する。我々は、「G20政策オプション・メニュー―デジタル・トランスフォーメーションと生産性回復―」を活用し、生産性の成長維持、及び国やセクターの間及びそれらの中で便益が均等に分配されることを確保するための政策について、引き続き議論していく。中小企業はイノベーション、成長、雇用創出及び社会の一体性に関する重要なエンジンであり、我々は、2022年の「G20/OECD中小企業に関するハイレベル原則」の見直しに期待する。我々は、回復を支えるために、優れたコーポレート・ガバナンスの枠組み及びよく機能する資本市場が重要であることを認識し、「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しに期待する。

 我々は、気候変動と環境保護といった地球規模の課題への対処、及び、よりグリーンで、より豊かな包摂的経済・社会への移行促進に協調して取り組むことに合意する。生物多様性の損失への対処は引き続き喫緊の優先事項である。気候についての行動に関する2021年7月の約束をフォローアップするため、我々は、G20の様々なワーク・ストリームが、それぞれのマンデートの範囲内で重複を避けつつ相乗効果を発揮し、各国の事情を考慮しつつ温室効果ガス排出の少ない経済に移行するための最も適切な政策の組合せに関する我々の議論に情報を提供することを求める。我々は、フレームワーク作業部会を通じ、気候変動から生じるマクロ経済リスク、及び異なる移行の費用と便益について、確立された手法の活用等により、より体系的な分析を実施することの重要性に同意する。我々は、リスク防止戦略や緩和・適応政策のマクロ経済・分配面への影響に関する更なる分析を期待する。G20メンバーにより実施された政策の共有も、我々の議論の情報として役立つ。我々は、回復のための持続可能なインフラへの資金調達に関する第1回G20インフラ投資家対話の成果文書に留意し、民間資金を動員するための官民の投資家間の更なる協働を期待する。クリーンエネルギーへの移行を支援するため、我々の政策の組合せは、最貧困層や最も脆弱な人々に的を絞った支援を提供しつつ、適切な場合には炭素に価格付けを行う仕組みやインセンティブの使用を含む、財政、市場、規制の幅広いメカニズムを含むべきである。我々は、租税政策と気候変動に関するIMF/OECDによる最終報告書に留意する。我々は、気候変動政策のマクロ経済・財政への影響に関するG20ファイナンストラックでの政策対話が、さらなる技術的な作業から恩恵を受け得ることを認識する。我々は、脱炭素化と循環型経済を促進する革新的な技術への気候資金、技術移転及び投資の重要性を認識する。我々は、国際開発金融機関(MDBs)を含む国際金融機関に対し、そのマンデートと内部承認手続に沿って、国際連合の2030年アジェンダの達成への支援を継続しつつ、野心的な時間的枠組でパリ協定との整合性を追求し、新興・開発途上国(EMDEs)における持続可能な回復及び移行戦略、国が決定する貢献、並びに長期的な温室効果ガスの排出量が少ない開発戦略に資金供給を行い、民間資金を動員するための計画を策定するよう奨励する。

 サステナブル・ファイナンスは、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びパリ協定に沿って、よりグリーンで持続可能な経済と包摂性のある社会への秩序ある公正な移行を促進するために極めて重要である。我々は、サステナブル・ファイナンス作業部会(SFWG)が作成した、G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ及び統合レポートを承認する。当初、気候に焦点を当てたロードマップは、自発的かつ柔軟性のある、複数年にわたる行動指向の文書となっている。ロードマップは、国際機関やパートナーの支援を受け、気候及び持続可能性に関するG20の広範なアジェンダ、SFWGの将来の作業計画、その他関連する国際的なワーク・ストリームに関する情報を提供する。これは、「気候関連金融リスクに対処するための金融安定理事会(FSB)ロードマップ」によって補完され、各国の事情を勘案しつつ、サステナブル・ファイナンスの進展しつつある状況と将来に向けたG20の優先事項に対応するように設計されている。我々は、今後数年間のG20メンバーの相互の合意に基づき、生物多様性や自然及び社会問題といった追加的課題を含むよう、徐々にG20サステナブル・ファイナンス・ロードマップの対象範囲を拡大することの重要性を認識する。責任あるイノベーションを促進する精神の下、我々は、グリーン・ファイナンス及びサステナブル・ファイナンスに関する実務上の課題に焦点を当てた、国際決済銀行(BIS)イノベーションハブとの共同イニシアティブである、2021年G20TechSprintが、成功裏に完了したことを歓迎する。

 我々は、普遍的、安全、手頃、先進的でよく機能するデジタル・インフラは経済回復の重要な原動力であるとの認識の下、OECDの支援を受けて作成された「デジタル世界に向けた質の高いブロードバンド連結性の資金調達と育成のためのG20ガイドライン」を承認する。我々は、グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)の「グリーンで循環型のインフラのための革新的な資金調達手法集」及び「インフラにおける循環型経済の潜在力を引き出すためのロードマップ」を、拘束力のない自発的なものとして歓迎する。我々は、これまでの取組に基づき、民間資金を動員するため、官民の投資家間の対話を柔軟に継続する。我々は、地方当局と中央政府の間での知識共有を促進するために2021年9月27日にジェノヴァで開催された、「地方のインフラ投資に係るG20ハイレベル会議」で行われた議論に留意する。我々は、包摂的なインフラの重要性を強調し、この点に関するOECDとその他の国際機関の貢献に留意する。我々は、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に関する作業を推進することを歓迎し、国際金融公社(IFC)により準備された質の高いインフラ投資について考え得る指標に係る作業に留意し、次回のインフラストラクチャー・ワーキンググループ会合でのこの分野におけるさらなる議論に期待する。我々は、「投資対象としてのインフラに向けたG20ロードマップ」や、「インフラ・データ・イニシアティブ」といったデータへのアクセスに関する国際機関による作業等を通じて、インフラ投資の意思決定に対してより良く情報提供を行う必要性を再確認する。我々は、GIHのマンデートを2024年末まで延長することに合意する。

 我々は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けた脆弱国を支援するための我々のコミットメントを新たにする。我々は、世界全体で6500億ドル相当の追加準備資産を利用可能にした、国際通貨基金(IMF)による2021年8月23日の特別引出権(SDR)の新規一般配分を歓迎する。我々はまた、SDRの報告及び使用における透明性及び説明責任を強化するための措置を歓迎する。我々は、脆弱国を支援するために、国内の法律や規制に従って、対外ポジションの強い国が配分されたSDRの一部を自発的に融通するための実施可能な選択肢の提供に向けた、IMFによる最近の進捗を評価する。我々は、貧困削減・成長トラストの融資能力の大幅な拡大の実施に取り組み、可能な国々に融資原資や利子補給金へのさらなる貢献を求める。我々は、IMFに対して、そのマンデートと整合的な形で、低所得国、小開発途上国、及び脆弱な中所得国が、パンデミックや気候変動から起因するものを含む将来の国際収支の安定にかかるリスクを減少させることができるように利用可能な長期資金を提供すべく、強靭性・持続可能性トラスト(RST)を設立するよう求める。この新たなRSTは、トラストを通じて融通されるSDRの準備資産としての性質を保持すべきである。我々は、IMFと世界銀行に対し、RSTによる融資を発展させ、実施するため、緊密に協力することを求める。我々はまた、SDRをMDBsに対し自発的に融通するための実現可能な選択肢を、引き続き検討する余地がある。我々は、市場の能力を強化するため、SDRの任意交換取極の締結を、より多くのIMF加盟国が検討するように求める。我々は、IMFに対し、サーチャージ・ポリシーのアップデートについて感謝し、プレコーショナリー・バランスの中間見直しの文脈においてIMF理事会でさらなる議論が行われることを期待する。

 我々は、パリクラブでも合意されているG20による債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)の下で達成された進捗を歓迎する。全ての公的な二国間債権者は、完全に、かつ、透明性高く、このイニシアティブを実施すべきである。我々は、MDBsが、新型コロナウイルスのパンデミックに対応する新興国及び低所得国向け支援の2,300億米ドルのコミットメントの一環として、2020年4月から2021年9月までの期間に、DSSI適格国向けに558億米ドルのディスバースメント(純額409億ドル相当の移転)を行ったことを歓迎する。我々は、2020年4月から2021年9月にかけて、大災害抑制・救済基金(CCRT)を含む様々なファシリティを通じた、IMFからDSSI対象国に対する240億ドルのディスバースメント(純額205億ドルの移転)を行ったこと歓迎する。我々は、IMFが、新型コロナウイルスや将来のショックに際して債務返済の猶予を提供するため、CCRTに対する更なるドナー資金貢献を確保することを支持する。

 我々は、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」の最近の進捗を歓迎する。我々は、「共通枠組」を適時かつ秩序だった方法で連携して実施するための取組を強化することにコミットする。こうした強化は、債務国に一層の確実性を与え、IMFとMDBsによる資金支援の迅速な提供を促進する。我々はまた、「共通枠組」のプロセスへの借入国と民間債権者の早期関与を支持する。我々は、債務脆弱性の対処に向けて引き続き取り組む。我々は、債権者委員会が、債務措置を要請している国のために、ケースバイケースで、適切な解決策を議論し、見出し得ることに留意する。我々は、他の公的な二国間債権者及び民間債権者が、措置の同等性の原則に沿って、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することの重要性を再確認し、特にチャドの民間債権者が迅速な行動をとることを求める。我々はまた、エチオピアの債権者委員会の設立を歓迎するとともに、交渉の進捗を期待する。我々は、IMFとザンビアの間の議論の進捗を期待する。我々は、債務脆弱性の観点から、「共通枠組」に示されたMDBsの今後の作業を想起する。我々は、債務の透明性の向上に引き続き取り組むための、民間債権者を含む全ての関係者による協働の重要性を再確認する。我々は、債務データの質及び整合性を強化し、債務の開示を改善するためのプロセスに係るIMF及び世界銀行グループによる提案の進捗に期待する。我々は、「G20持続可能な貸付に係る実務指針」の第2回目の任意の自己評価の結果によって強調されたように、その実施の改善を歓迎し、また、国内プロセスを尊重しつつ、継続的な進捗を奨励する。我々は、国際金融協会(IIF)/OECD共同のデータ保存ポータルの立上げを期待し、全ての民間セクターの貸し手が「債務透明性のための任意の原則」に沿って、このイニシアティブを遵守することを奨励する。G20は、民間セクターの債権者が関与する国家債務再編のアーキテクチャーを改善する方法について、IMFで継続中の作業に留意する。

 我々は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、MDBsの長期的な支援の極めて重要な役割を再確認する。低所得国の高い資金ニーズを認識しつつ、我々は、国際開発協会(IDA)のバランスシートの持続的な利用を含めた、2021年12月までの野心的なIDA第20次増資を期待する。我々はまた、将来、2022年の第16次アフリカ開発基金増資を期待する。我々は、「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」を期待する。我々は、G20の「アフリカとのコンパクト」の枠内で得られた進捗を歓迎し、このイニシアティブの支援の継続を改めて表明する。我々は、開発銀行連合を歓迎し、SDGsとパリ協定の目標達成に向けた公的開発銀行の重要な役割を認識する。我々は、10月19日、20日にローマで開催される2021年の開発銀行サミットに期待しており、当該連合がその進捗を報告するよう求める。

 我々は、持続可能な資本フローの促進、現地通貨建て資本市場の発展、及び強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心とした、強固で効果的なグローバル金融セーフティ・ネットの維持を通じ、長期的な金融の強靭性を高め、包摂的な成長を支えるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、「統合的な政策枠組」等を踏まえた、資本フローの自由化と管理に関するIMFの「機関としての見解」について、今後の見直しに期待する。我々は、クォータの十分性について再検討することに引き続きコミットし、2023年12月15日までに、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でIMFのガバナンス改革のプロセスを継続する。

 我々は、金融セクターが、金融安定を維持しながら回復への適切な支援を提供するよう確保することを目的とした、協力的アプローチに引き続きコミットする。我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから得られた金融安定の観点からの教訓及び特定した課題に対応するための次のステップの提案に関するFSBの最終報告書に期待する。グローバル金融システムは概ね強靭だが、資本・流動性バッファーの機能や、景気循環増幅効果の潜在的な原因など、規制枠組のいくつかの分野はさらに評価されることとなる。我々が、2008年の金融危機後に合意されたG20規制改革の残された要素を完了すること等により対処することにコミットしたギャップが残っている。我々は、2020年11月のFSBの作業計画を実施し、2020年3月の市場混乱により明らかになった脆弱性に早急に対処することにより、ノンバンク金融仲介(NBFI)セクターの強靭性を、システミックな観点を持って強化し、中央銀行による異例の介入の必要性を減らすことにコミットしている。第一歩として、我々は、マネー・マーケット・ファンド(MMF)の強靭性を強化するための政策提案に関するFSBの最終報告書を承認する。我々は、各法域の事情に措置を合わせる必要性を認識するとともに、クロスボーダーな検討を考慮しつつ、報告書の枠組み及び政策ツールキットを用いて、我々の法域におけるMMFの脆弱性を評価し、対処する。我々は、FSBに対し、証券監督者国際機構(IOSCO)と協働して、2023年末までに、MMFの強靭性を強化するための改革の採用に関する加盟法域の進捗をストックテイクし、続いて2026年までに、各法域が採用した措置の金融安定リスクへの対処における有効性の評価を行うことを求める。我々は、NBFI作業計画全体にわたる発見事項を取りまとめるとともに、NBFIに関するリスク監視の改善及びオープンエンド型ファンドにおける流動性リスクの軽減に向けたものを含め、NBFIの強靭性を強化するために更なる政策行動が必要な分野を特定する、NBFIに関するFSB進捗報告書を期待する。NBFIのクロスボーダーな性質を踏まえ、国際的な協力と協調が必要である。我々はまた、FSBが、新興市場経済の対外資金調達における米ドルによるクロスボーダーの資金調達とNBFI関連の脆弱性との相互作用を調査することを期待する。我々は、サイバーインシデント報告に関するFSB報告書を歓迎し、この分野における更なる収斂の達成に取り組む。

 我々は、「クロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップ」の適時かつ効果的な実施へのコミットメントを再確認する。我々は、設定された2021年のマイルストーンに関し報告された進捗を歓迎し、FSBの報告書において2027年までに設定された、コスト、スピード、透明性、アクセスに関する課題に対処するための野心的だが達成可能なグローバルな定量目標を承認する。この作業の成功は、公的部門と民間部門が協調して取り組むことにかかっている。我々はまた、「グローバル・ステーブルコイン」の規制・監督・監視に関するFSBの進捗報告書を歓迎する。我々は、いかなるいわゆる「グローバル・ステーブルコイン」も、関連する全ての法律上、規制上及び監視上の要件が、適切な設計と適用可能な基準の遵守を通して十分に対処されるまではサービスを開始するべきでないことを再確認する。我々は、各法域に対しFSBのハイレベル勧告の実施を進めることを、基準設定主体に対しFSB勧告を踏まえて基準又は指針を調整するか否かについて評価を完了させることを奨励する。この評価は、2023年のFSB勧告見直しに情報を与えるものである。この点に関し、我々は、ステーブルコインが移転機能を有し、かつ、当局によりシステム上重要と判断された場合、当該ステーブルコインが全体として、関連するすべての金融市場インフラのための原則を遵守することが期待されるとしている決済・市場インフラ委員会(CPMI)及びIOSCOによる協議報告書を歓迎する。我々はまた、暗号資産及び暗号資産交換業者に関する金融活動作業部会(FATF)基準のグローバルな実施についての今回の12か月レビューを歓迎し、同セクターにおけるリスクベース・アプローチに関する更新版ガイダンスに期待する。今回の12か月レビューによる発見に沿って、我々は、暗号資産に関する改訂版FATF基準の各法域における実施の重要性に留意する。我々は、CPMI、BISイノベーションハブ、IMFそして世界銀行に対し、クロスボーダー決済の改善における、中央銀行デジタル通貨の潜在的な役割と国際通貨システムへのより広範なインプリケーションに関する分析を引き続き深めるよう、奨励する。

 我々は、中小零細企業(MSMEs)を含め、脆弱で十分なサービスを受けられない社会の層のデジタル金融包摂を強化し、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)の取組を前進させ、「G20の2020年金融包摂行動計画」を実施するとのコミットメントを再確認する。我々はそれゆえ、政策立案者にパンデミック後の世界における新たな金融包摂戦略の基礎を築く取組における指針を提供することを目的として、デジタル金融リテラシー及び金融消費者とMSME保護のためのG20政策オプション・メニュー「新型コロナウイルス危機の先のデジタル金融包摂の強化」を承認する。我々は、2022年の「G20/OECD金融消費者保護ハイレベル原則」の見直しを期待する。我々は、「G20送金目標に向けた2021年首脳向け進捗アップデート」を歓迎する。我々は、GPFIが国別送金計画の監視を進めるとともに、より詳細なデータを収集することを支持し、送金の流れの継続的な促進及び平均的な送金コストの削減を強く奨励する。

 我々は、金融活動作業部会(FATF)への完全な支持を再確認し、マネーロンダリング、テロ資金供与、拡散金融対策の効果的な実施が、金融市場の信頼構築、持続可能な回復の確保、そして国際金融システムの健全性維持に必要不可欠であることを認識する。我々は、合法的なクロスボーダー決済を確保し、金融包摂を促進するという目的のため、FATF勧告におけるリスクベース・アプローチの妥当性を強調する。我々は、実質的所有者の透明性を向上させるためのFATF勧告の強化への支持を確認し、特にFATFの報告書の結果に基づいて行動することで、環境犯罪からのマネーロンダリングと闘うことを各国に要請する。最後に、我々は、FATF型地域体(FSRBs)への追加的な貢献を通じてグローバルネットワークを維持・強化することを目指した、2021年7月のベネチアでのコミットメントを再確認する。