データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明

[場所] インドネシア・ジャカルタ
[年月日] 2022年2月18日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 世界経済の回復は継続している。しかし、新型コロナウイルスの新たな感染拡大や、新たな変異株の出現は、回復のペースに影響を与えている。マクロ経済政策の余地がより狭く、不均等となる可能性が高まっている中、ワクチン・治療薬・診断薬に対するアクセス・輸送・接種にばらつきがあることが原因の一部となり、回復は非同期的なものとなると予測されている。供給の混乱や需給のミスマッチ、エネルギー価格を含めたコモディティ価格の上昇は、多くの国々においてインフレ圧力の高まりにも寄与し、世界経済の見通しに潜在的なリスクをもたらしている。我々は世界的なサプライチェーンの強靭性を引き続き高める。我々は、これらの課題が我々の経済に与える影響への警戒を続ける。我々はまた、発生中の地政を巡る緊張やマクロ経済や金融の脆弱性によるリスクを含め、主要なグローバルなリスクを引き続き監視する。我々は、気候変動から生じるマクロ経済リスク、及び異なる移行の費用と便益に関するより体系的な分析を実施する。我々は、成長及び雇用創出の回復における、開かれた公正な、ルールに基づく貿易の重要性を再確認し、保護主義と闘うとの我々のコミットメントを改めて表明し、世界貿易機関の改革のために協調して取り組むことを奨励する。我々は、我々の2021年4月の為替相場のコミットメントを確認する。

 我々は、特に女性、若者、非正規労働者、未熟練労働者などの最も影響を受けた人々や不平等に対する、パンデミックによる影響に対処するため、引き続き全ての利用可能な政策手段を用いる。我々は、より強固で、よりグリーンで、より均衡の取れた世界的な開発のために、G20行動計画で策定された先を見据えたアジェンダや、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を推進するという我々のコミットメントを再確認する。我々の経済回復の継続にともなって、我々は、引き揚げには慎重でありつつ、政策支援を適切に修正し、的を絞ったものとする。我々は、金融の安定と長期的な財政の持続可能性を維持し、下方リスクと負の波及効果を防ぐ。共に回復し、より強く回復するという我々が共有する野心を支援するために、我々は、各国固有の状況を適切に検討し、よく調節され、よく計画され、よくコミュニケーションの取られた、回復を支えるための出口戦略へのコミットメントを確認する。インフレ率は現在多くの国で上昇している。中央銀行は、政策スタンスに関する明確なコミュニケーションにコミットすることを継続しつつ、必要なところにおいては、物価の安定を確保するため、それぞれのマンデートに沿って行動する。中央銀行の独立性は、それらの目標を達成し、金融政策の信認を支えるために、極めて重要である。

 我々は、世界中でパンデミックを制御するため、共同かつ連携した行動が優先されることを強調する。我々は、特に低・中所得国において、ワクチン、治療薬、診断薬及び個人防護具(PPE)への安全、適時、公平かつ入手可能なアクセスを確保することに引き続きコミットし、ACT-Aへの支持と、ACT-Aの全てのピラーの資金ギャップに対処する必要性を再確認する。我々は、世界保健機関(WHO)、世界銀行(WB)及び実施パートナーに対し、より多くのワクチン接種を行うため、ワクチン展開戦略の障害を報告し、ワクチン接種を加速するために各国と更に協働することを求める。我々は、国際保健事業におけるWHOの重要な指導的役割を維持しつつ、パンデミックに対する予防、備え及び対応(PPR)に関係する課題についての対話と国際的な協力を強化し、パンデミックに対応するための共同行動を促進し、グローバル・ヘルス・アーキテクチャー(国際保健の枠組み)の強化に貢献することを目指す、G20財務・保健合同タスクフォースが合意した作業計画のアップデートを歓迎する。G20財務・保健合同タスクフォースは、財務省と保健省の間の連携体制の発展を目指す。我々は、WHOと世界銀行が提示したPPRのための資金ギャップに関する初期評価に留意し、パンデミックPPRのための既存の国際的な資金メカニズムの更なる詳細評価を含む最終報告書に期待する。この分析による報告を受け、我々は、現在のパンデミックに対応するための取組を更に強化するためにG20保健大臣と協働し、また、パンデミックPPRのための適切かつ持続的な資金調達を確保するために金融ファシリティを設立するための方途に関するタスクフォースの報告書を4月に検証する。

 2021年に合意された歴史的なOECD/G20の2本の柱の国際課税パッケージの迅速かつグローバルな実施を確保するため、我々は、「詳細な実施計画」で定められた工程に沿って、2023年に新たな課税ルールがグローバルなレベルで発効することを確保するため、モデル法制と多国間協定の策定にコミットする。我々は、第2の柱のグローバルな税源浸食対抗ルールのモデル法制の技術的な設計がOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」により採択されたことを歓迎し、その最終化とともに、共通アプローチとしてのグローバルなレベルでの一貫性のある実施を求める。また、我々は、第1の柱に関する多国間条約について、進行中の策定作業を歓迎する。途上国は、実施に向けた全ての局面において、各国に合わせた技術支援が利用可能となる。我々は、技術支援や能力構築を通じ、途上国の国内資金動員を改善させるための、グローバル並びにアジア太平洋地域を含む地域での取組を支持し、これらの課題について議論するG20大臣級シンポジウムを歓迎する。我々は、国際的に合意された税の透明性基準の実施における進捗を支持する。我々は、OECDに対して暗号資産の自動的情報交換枠組の作業を迅速に完成させることを求める。我々は、「税制とジェンダー平等」に関するOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」の報告書を認識する。

 我々は、持続可能な資本フローの促進及び現地通貨建て資本市場の発展を含む、国際金融アーキテクチャーの長期的な金融の強靭性を高めるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、波及効果と資本フローを含む、中央銀行デジタル通貨の国際通貨金融システムへのマクロ金融上のインプリケーションに対する理解をさらに深めるため、中央銀行デジタル通貨に関する議論を継続する。我々は、「統合的な政策枠組」に関するIMFの作業等を踏まえた、資本フローの自由化と管理に関するIMFの「機関としての見解」の見直しに期待する。我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心とした、強固で効果的なグローバル金融セーフティ・ネットを維持するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、IMFのクォータの十分性について再検討することに引き続きコミットし、2023年12月15日までに、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でIMFのガバナンス改革のプロセスを継続する。

 我々は、我々すべての国がともに回復することを確保するため、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けた脆弱な国々を引き続き支援する。我々は、特別引出権(SDR)の自発的な融通あるいは同等の貢献による600億ドルに上るプレッジを歓迎し、最もニーズのある国のために世界合計で1,000億ドルを自発的に貢献するという野心に向けたステップとして更なるプレッジを奨励する。我々は、IMFに対して、2022年の春会合までに強靭性・持続可能性トラスト(RST)を設立すること、2022年の年次総会までに稼働させることを確保するため加盟国と協力すること、並びに世界銀行と緊密に協働してRSTの支援を実施することを求める。我々は、貧困削減・成長トラスト(PRGT)への融資原資や利子補給金へのさらなる自発的な貢献を求める。我々は、国際開発金融機関(MDBs)を通じてSDRを自発的に融通するための実現可能な選択肢を検討する余地がある。融通されたSDRの準備資産としての性質は、国内の法的枠組を適切に考慮した上で保持されるべきである。我々は、2021年12月の国際開発協会第20次増資(IDA20)に係る歴史的な930億ドルの合意を歓迎する。我々は、民間セクターの参加の欠如に留意しつつ、2021年12月に終了した、パリクラブでも合意されている、G20による「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)」の下でのメンバー国の成果を歓迎する。DSSIの下での債務支払猶予の総額は、2020年5月から2021年12月までに推定129億ドルに上る。我々は、2020年4月から2021年12月にかけて、様々なファシリティを通じた、IMFからDSSI対象国に対する260億ドルのディスバースメント(純額では214億ドル)を歓迎する。我々は、「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」を期待する。我々は、MDBsにより承認された、2020年4月から2021年12月までの、DSSI適格国向けの合計1,001億ドルのコミットメントを歓迎する。このうち、660億ドル(純額482億ドル相当の移転)のディスバースメントが行われた。これらの取組は、パンデミック期間中の、新興市場国及び低所得国向け支援のコミットメントの一部であり、当初のコミットメントである2,300億ドルを上回る2,764億ドルに増加している。

 我々は、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」を進展させるための取組を歓迎し、「共通枠組」を適時かつ秩序だった方法で連携して実施するための取組を強化することへのコミットメントを再確認する。こうした強化は、債務国に一層の確実性を与え、IMFとMDBsによる資金支援の迅速な提供を促進する。我々は、債権者委員会が、債務措置を要請している国のために、ケースバイケースで、適切な解決策を議論し、見出し得ることに留意する。我々は、チャド、エチオピア、ザンビアが「共通枠組」の下での債務措置を要請していることを留意する。我々は、借入国と、公的債権者及び民間債権者との早期関与を引き続き支持する。我々は、関連する債権者委員会のチャド及びエチオピアの債務措置を完了するための取組を期待し、G20及びパリクラブの債権者が、ザンビアから要請された債務措置を適時に作業することを奨励する。我々は、民間債権者及び他の公的な二国間債権者が、措置の同等性の原則に沿って公平な負担を確保するため、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することにコミットすることの重要性を強調する。我々は、債務脆弱性の観点から、「共通枠組」に示されたMDBsの今後の作業を想起する。我々は、債務の透明性の向上に引き続き取り組むため、民間債権者を含む全ての関係者による協働の重要性を確認する。我々は、国際金融協会(IIF)/OECD共同のデータ保存ポータルの立上げを歓迎し、全ての民間セクターの貸手がこのイニシアティブにデータを提供することを奨励する。

 新型コロナウイルスのパンデミックは、政府や民間セクターによるインフラ投資を阻害した。我々がより強く回復することを確保するために、我々は「投資対象としてのインフラに向けたG20ロードマップ」や「インフラ投資における機関投資家及び資産運用者との協働」に沿い、また2021年のG20インフラ投資家対話の成果を考慮し、持続可能、包摂的、アクセス可能で負担可能な形で、インフラ投資を活性化することにコミットする。我々は、持続可能なインフラ開発を広げるべく、民間セクターの参加を梃入れするための行動を策定する。これは、公共投資やMDBsによる資金供給を含む他の資金源からの投資を補完する。我々は、社会的包摂を増進し、地方と都市の地域格差に対処するため、包摂的なインフラ投資を動員するための政策を策定する。我々は、デジタル・デバイドを縮小するため、デジタル・インフラ及びインフラ技術(インフラテック)への投資を増加させることへのコミットメントを再確認する。我々は、ポストコロナの社会変革的な投資に向けて官民部門の双方を支援するため、インフラ・トラッカー2.0をツールとして推進し、インフラに関する長期的な戦略と計画への洞察を提供する。我々は、「質の高いインフラ投資に関するG20原則(QII)」に関する作業を推進し、国際金融公社が準備している、自主的で義務的でなく、各国の事情を考慮した、「質の高いインフラ投資に関する指標」に関する作業を進め、2022年10月までに早期にこれを完了することを目指す。我々は、グローバル・インフラストラクチャー・ハブの将来について検討することを期待する。

 我々は、気候変動や、生物多様性の損失を含む環境保護のような、グローバルな課題への対処についての我々のコミットメントを再確認する。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定の目標達成、またCOP26における我々のコミットメントの遂行のために求められる世界的な取組を強化する文脈において、カーボンニュートラルとネットゼロに向けた我々の政策の組み合わせは、適切な場合には炭素に価格付けを行う仕組みやインセンティブの使用を含めた、あらゆる種類の財政、市場、規制メカニズムを含むべきであり、中期的に、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の段階的廃止及び合理化を図り、各国の状況に沿い、最も貧しく脆弱な層に的を絞った支援を提供しつつ、この目標を達成することにコミットするべきである。我々は、気候変動政策のマクロ経済・財政への影響に関するG20ファイナンストラックの政策対話が、更なる技術的作業から恩恵を受け得ることを認識する。我々はまた、途上国のニーズに対応するため、意味のある緩和のための行動と実施の透明性の文脈において、2020年まで、そして今後2025年にかけても共同で毎年1,000億ドルの気候資金を動員するという目標に向けた、先進国によるコミットメントを想起し、かつ再確認し、可能な限り早期にその目標を完全に達成することの重要性を強調する。

 サステナブル・ファイナンスは、グリーンで強靭かつ包摂的なグローバル経済の回復や、UNFCCC及びパリ協定に沿った「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の達成のために極めて重要である。我々は、「2022年G20サステナブル・ファイナンス報告書」におけるロードマップの優先事項への対応の進捗に関する報告や評価の実施等により、任意で、かつ、柔軟性のある「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」における行動を前進させている。我々は、温室効果ガスの低排出と気候変動に対し強靭な経済への秩序ある、公正で、かつ、負担可能な移行をトランジション・ファイナンスがサポートすることを可能とするための行動をとる。我々は、サステナブル・ファイナンスの市場を拡大するために行動し、開発途上国や中小企業を含む国や企業にとって負担可能な方法によるアクセスを改善する。我々は、持続可能な回復を加速させる上で、公的またはMDB資金とともに民間セクターの役割が増加していることを歓迎し、市場の外部性への対処、低排出技術のコスト削減及びグリーン・トランジションを促進する持続可能な投資への民間資金の参加の動機づけにおける、国際金融機関と公共政策上の手段の重要な役割を、各国固有の事情を考慮しつつ再確認する。

 我々は、公平な経済回復を確保し、金融安定を維持するためにパンデミックからの潜在的な傷跡化する影響を回避するため、グローバルな金融セクターの強靭性を強化することにコミットする。我々は、金融セクターにおける出口戦略及び傷跡化する効果への対処に関する金融安定理事会(FSB)の作業に期待する。我々は、ノンバンク金融仲介の強靭性をシステミックな観点を持って強化することにコミットするとともに、オープンエンド型ファンドや、米ドルによる資金調達と新興市場経済の脆弱性との相互作用等に関する更なる政策行動の必要性を検討する。我々は、ロードマップの定量目標に対する進捗のモニタリングを含めた「クロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップ」の継続的な実施と、「気候関連金融リスクに対処するためのFSBロードマップ」のアクションを前進させる更なる進捗に期待する。

 我々は、暗号資産市場がもたらすサイバーリスクや規制のギャップ及び裁定の可能性を含め、金融セクターにおける技術革新の急速な発展から生じる、グローバルな金融安定に対する潜在的な恩恵とリスクを、包括的な方法で引き続き評価し、対処する。我々は、急速に進展する暗号資産市場による金融安定リスクに関するFSBの更新された評価を歓迎し、効果的な規制監督がなければ、同市場が、これらの規模、構造的脆弱性及び伝統的な金融システムとの相互連結性の増加により、グローバルな金融安定に対する脅威になりうることに留意する。我々はFSBが、その他の基準設定主体との緊密な協調の下、裏付け資産を持たない暗号資産、ステーブルコイン、分散型金融及びその他形態の暗号資産に対する規制監督上のアプローチについて監視し情報を共有し、また、グローバルな金融安定を維持するための調和された適時の政策行動を提言すること等により、あらゆるギャップや裁定に対処するための作業を加速し、深め、これにより安全なイノベーションのために必要な環境を作ることを奨励する。我々はまた、リスクの進展に照らして、グローバル金融システムにおけるオペレーショナル・レジリエンスに関する効果的な規制慣行と協力を促進するFSBの取組を歓迎する。我々は、「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しの進捗に関するアップテート報告を歓迎する。

 新型コロナウイルスのパンデミックは、特に女性、若者及び中小零細企業(MSMEs)といった、最も財政的に脆弱で十分なサービスを受けられないグループの不平等を拡大させた。我々は金融包摂のアジェンダを前進させるというコミットメントを再確認し、我々は、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)が「G20の2020年金融包摂行動計画」に基づき、生産性向上を目標としてデジタル化の恩恵を活用するための金融包摂枠組みを開発し、女性、若者及びMSMEsのための持続可能で包摂性のある経済を育成することを期待する。

 我々は、マネーロンダリング(ML)・テロ資金供与(TF)・拡散金融(PF)を防止し、闘うための国際的な基準設定主体として、金融活動作業部会(FATF)への完全な支持を再確認する。我々は、FATF基準の効果的な実施が、金融市場の安定と信頼の構築、腐敗の抑制、及び、持続可能で包摂的な回復の確保に極めて重要であることを認識する。我々は、2021年10月に公表された、FATFの「暗号資産及び暗号資産交換業者に対するリスクベース・アプローチに関するガイダンス」改訂版を歓迎し、暗号資産及び暗号資産交換業者に係るFATF基準の実施、特に「トラベル・ルール」の実施へのコミットメントを再確認する。我々は、実質的支配者に係るFATF基準を効果的に実施することにコミットする。我々は、FATF型地域体が審査プログラムをスケジュール通り完了するよう支援することにより、FATFグローバルネットワークを維持・強化することへのコミットメントを再確認する。我々は、金融犯罪との闘いのためデジタル・トランスフォーメーションのリスクと機会にFATFが焦点を当て続けることを歓迎する。我々は、国際金融システムの健全性への新たな脅威と脆弱性に係るFATFの継続的なアセスメントを称賛する。