データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日米財務大臣会談に係る共同声明

[場所] 東京
[年月日] 2022年7月12日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. インドネシア・バリにおけるG20財務大臣・中央銀行総裁会議に先立ち、我々、日本の鈴木俊一財務大臣兼金融担当大臣と、米国のジャネット・イエレン財務長官は、東京において、対面での二国間会談を開催した。我々は二国間の結束をさらに強化することに合意し、国際社会が直面する困難な課題への対応において、両国が果たす極めて重要な役割を再確認した。

2. 我々は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争により悪化した食料、エネルギー、コモディティ価格の上昇及び高まる食料不安を含む世界及び国内経済が直面する課題に対処する、強力なコミットメントを新たにする。我々は国際金融機関(IFIs)に対し、「食料不安に対処するための行動計画」におけるコミットメントを実施するように求める。我々は、価値観を共有する国々や国際機関と緊密に協働して、的を絞った支援を提供し、より強靭で強力なサプライチェーンを構築する。ロシアの侵略による経済的な影響が為替相場の変動を高めており、これは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得る。我々は、G7及びG20のコミットメントに沿って、引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、為替の問題について適切に協力する。

3. 我々は、ウクライナへの支援の継続と同国との連帯を堅持する。我々は一致団結して、ロシアの、いわれのない、不当で、不法なウクライナに対する戦争を強く非難するとともに、経済・金融制裁の遂行により、その戦争に関するロシアの代償を引き続き高める。我々は、最も脆弱で影響を受ける国々のエネルギー市場へのアクセス維持を確保するための緩和メカニズムについて検討しつつ、適切な場合にはプライスキャップの実現可能性を含め、エネルギー価格の上昇を抑制する方策を引き続き探求するG7の取組を歓迎する。我々は、ウクライナの極めて重要な短期的経済課題に対処し、マクロ経済の安定性を守るため、二国間および多国間の支援を調整し、その効率性と効果を最大化すべく、国際社会と協力する。また、我々は、国際金融機関の支援を受けて作成される明確な青写真に基づき、ウクライナの将来の復興を支援することにコミットする。

4. 国際保健について、我々はパンデミックへの予防、備え、及び対応(PPR)における資金ギャップへの対処に特化した新たな国際的な資金メカニズムである金融仲介基金(FIF)が世界銀行に設立されたことを歓迎する。FIFは、既存の機関の取組を補完し、国内、民間、慈善団体、そして二国間からの資金調達の触媒となる。我々は、FIFが今年9月までに立ち上がり運用を開始する必要性を強調する。我々は、財務・保健大臣及びG20財務・保健合同タスクフォースを通じた有意義で継続的な協働を高く評価する。我々は、この連携を更に強化し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた前進を加速すること等を通じて、強靭なグローバル・ヘルス・アーキテクチャー(国際保健の枠組み)を構築することにコミットする。

5. 気候変動について、我々は、2050年までの経済全体における排出のネット・ゼロ達成に向けてのコミットメントを再確認する。我々は、全ての主要排出国を含めた包摂的な国際協力を通じて、気温上昇を摂氏1. 5度に抑えるという目標を射程に入れ続ける公正な移行を推進する。我々は、それぞれの国の排出プロファイルと文脈に適切に合わせたあらゆる種類の気候緩和策を通じて炭素集約度を削減することに焦点を当てる。我々は、インドネシアにおける公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)の進展を引き続き主導する意思を共有する。

6. 債務問題について、我々は、G20「共通枠組」の下で債務措置を要請した国々について、予見可能性を一層高めながら、成功事例を迅速に作り出すことの重要性を強調する。我々は、中国のような非パリクラブ国を含む、債務持続可能性の課題に直面している低所得国に対して多額の債権残高を有する全ての関連する債権国に対し、必要な債務措置に建設的に貢献することを求める。我々は、脆弱な中所得国、とりわけスリランカの債務措置において、全ての債権者間で公平な負担を確保するにあたっての債権者の協調の重要な役割を強調する。我々は、債務者・債権者間の債務データ突合を通じて正確なデータを確保するために、全ての公的二国間債権者に対して、世界銀行とIMFに貸付データを共有することを求める。

7. インフラについて、我々は、アジア太平洋及びその他の地域のインフラ・ギャップの縮小のため、質の高い、透明性のある、持続可能なインフラ投資を推進することの重要性を再確認する。我々の投資の質と価値を確保するため、質の高いインフラ投資に関するG20原則(QII)に基づいてプロジェクトを実施し、我々のパートナーにQII原則の活用を奨励する。我々は、二国間で、G7の国々と「グローバルインフラ投資パートナーシップ」のもと多国間で、そして、同様の志を持ったパートナーとの間で協力を続ける。

8. 国際課税について、我々は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」による二つの柱の解決策の適時かつ効果的な実施に対する強いコミットメントを再確認する。我々は、第一の柱の技術的な詳細における進捗を歓迎し、包摂的枠組みで合意された改訂タイムラインに従い、その導入に向けて取り組むことにコミットする。我々は、第二の柱の迅速な実施に向けて引き続き取り組むとともに、包摂的枠組みに対して、実施枠組みを迅速に最終化することを期待する。

9. 我々は、「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しを強く支援し、ポストコロナ時代の経済回復に寄与する健全なコーポレート・ガバナンスの枠組みが果たす役割を確認する。

10. 歴史上重要な転換の局面において、日本及び米国は、世界の二大民主経済大国として、力強く、強靭で、持続可能な経済成長の促進と、ルールに基づく世界経済秩序を強化していくことを決意する。