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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20議長総括 環境・気候大臣会合

[場所] バリ
[年月日] 2022年8月31日
[出典] 経済産業省
[備考] 
[全文] 

G20環境・気候大臣会合(JECMM)は、2022年8月31日にバリ島で開催され、インドネシア共和国環境・林業省のシティ・ヌルバヤ・バカール大臣が議長を務めた。

本会合は、多くの大臣が現地で、また一部の大臣がオンラインで出席するハイブリッド方式で招集された。

会合において、各国大臣は、環境大臣代理会合及び気候持続可能性作業部会におけるインドネシアG20議長国の優先課題、すなわち、i)より持続可能な復興の支援、ii)環境保護及び気候目標を支援するための陸上及び海上での行動の強化、iii)環境保護及び気候目標の取組を支援するための資源動員の強化について議論し、支持を表明した。インドネシア議長国は、JECMMの議論に情報を提供するために、独自に依頼したいくつかの重要な調査結果も活用している。

第I部

我々は、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の世界的流行、気候、環境、及び生物多様性の危機、そして人類、地球、繁栄、平和に広く影響を及ぼす紛争と地政学的緊張の高まりの中で、脆弱で不透明な世界の社会経済の見通しを背景に会議を開催している。

この点で、我々は、ウクライナを含む、世界各地において進行中、及び増加する紛争に深刻な懸念を抱いている。この点についてロシアを非難するメンバー国もいれば、環境大臣代理会合及び気候持続可能性作業部会は、地政学的問題を議論する適切な場ではないと考えるメンバー国も存在する。メンバー国は、平和、敵対行為の停止、戦争の終結を訴えてきた。我々は、現在の状況の継続が、食料安全保障、エネルギー安全保障、気候変動及び環境の悪化、加えて持続可能な開発目標の達成に悪影響を及ぼすことを強調する。

第II部

以下の事項について、大筋で合意があった:

環境

1. 我々は、2040年までに土地の劣化を自主的に50%減少させるというG20の野心と、関連する多くの持続可能な開発のための2030アジェンダの持続可能な開発目標とそのターゲットに向け、SDG15. 3に基づき、2030年までに土地の劣化の中立性を達成するために、砂漠化、土地劣化、干ばつと闘い、劣化した土地を回復するため、我々の努力を継続し、その規模を拡大する。

我々は、2030アジェンダを達成するために、各国が自主的な土地劣化報告書を作成し、実施することの重要性を強調する。

2. 我々は、気候変動との戦いと生物多様性の損失を止めることの追求に当たり、保護、保全、回復、持続可能な土地管理を包含する「国連生態系回復の10年」に沿って、官民連携を伴うことにより、あらゆる種類の生態系における土地と森林の回復を含む生態系の回復を、回復政策と計画に落とし込むことを積極的に推進し、一層主流化する。国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(UNFCCCCOP26)で発表された「森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言」に賛同したメンバー国は、持続可能な開発を実現し、包括的な農村の変革を促進しながら、2030年までに森林の損失と土地の劣化を削減し、反転するために一丸となって取り組むことに引き続きコミットする。

3. 我々は、サウジアラビア議長国時に立ち上げられたG20「土地劣化の減少及び陸域生息地の保全強化に関する世界イニシアティブ」を引き続き支持し、土地の保護、保全及び回復を促進し続けるとともに、砂漠化対処条約第15回締約国会議(UNCCDCOP15)における最近の決定27に沿った、各国の法律に合致した形での共通の土地保有に関する課題に対処し、世界イニシアティブの実施に関する進展に積極的に貢献することにより、包括的で持続可能な土地管理を促進する。我々は、民間セクター及び市民社会、先住民族、地域社会、女性、若者及び子ども、障害者及び脆弱な立場の人々、学術界、必要に応じて全てのレベルにおける政府を含む社会全体が、関連するプログラム及びプロジェクトを含む、持続可能な土地管理、保護、保全及び土地回復に、より有意義で包摂的に参加できるようにすることにコミットする。我々は、伝統的知識と先住民族の知識の重要な役割、及び、持続可能な土地利用と森林減少の防止、生物多様性の保護、保全、持続可能な利用と回復における重要な担い手としてのその役割を認識する。

4. 我々は、泥炭地やマングローブを含む全ての多様な湿地が独自の生態系であり、気候変動の緩和と適応においてのみならず、多くの生態系サービスの提供において特に重要であることを認識する。我々は、湿地の保護、保全、持続可能な利用及び回復のための措置を実施し、湿地の持続可能性と回復力を確保するための我々のコミットメントを強調する。我々は、湿地に関するラムサール条約、泥炭地の保全及び持続可能な管理に関するUNEA決議4/16、マングローブの世界的な健全性のための持続可能な管理に関するUNEA決議4/13に基づく保全及び賢明な利用義務と整合的な、湿地のための国家行動計画に沿った湿地の保護、保全、持続的利用及び回復に貢献するためにメンバー国によりとられた重要な措置を認識する。我々は、特に、コミュニティと生態系の回復力を構築するための早期警戒システムなどを含む、モニタリングと評価システムの確立又は改善のために一層努力する。

5. 我々は、リオ3条約の目的を達成するために、持続可能な管理と土地の回復の役割を認識する。我々は、多国間環境協定の土地劣化の目標及びその他の目標を達成するためのシナジーを見出し、補完的な行動を促進することの重要性を強調し、自然を活用した解決策及び生態系を活用したアプローチが土地劣化中立性を達成する手段として重要な役割を果たすことができることを認識する。

6. 我々は、健全な生態系、淡水、土地、土壌が、持続可能な食料システム及び世界の食料の安全及び食料安全保障の基盤であることを認識する。現在の食料安全保障の危機への対応の不可欠な部分として、我々は、世界の食料安全保障を強化するための我々の努力が、水資源、気候変動の緩和と適応、土地劣化、汚染軽減、及び生物多様性に関する我々の目標を達成するための措置と相互に協力して進むことを確保する。我々は、国連食料システムサミット2021で強調されたように、食料生産、消費、フードロス・食料廃棄を含むバリューチェーン全体に沿った持続可能な食料システム移行を推進するための取組を強化する。

7. 我々は、砂漠化、土地劣化、干ばつ、及び、それらが関連する全ての生態系の損失と劣化、森林減少、特に原生林及びその他固有の生態系に対する取組において、経験と知識の共有、能力強化、調整、シナジーのための既存のグローバルなイニシアティブに対するG20の支援を強化することの重要性を認識する。このような既存のイニシアティブ間の交流は、経験とベストプラクティス、保全、回復、持続可能な管理について、学び、交換し、専門知識を共有し、回復の実施と拡大においてネットワーク化するためにさらに発展させる必要がある。

8. さらに、我々は、特に砂漠化対処条約(UNCCD)、世界泥炭地イニシアティブ、世界マングローブ連合、UNREDDプログラムなどの既存のプラットフォームや取組が、最終的に泥炭地やマングローブを含む全ての生態系をカバーする可能性を持つ物理的・文化的な景観アプローチに基づいた生態系固有の助言を提供し、保護、保全、持続可能な利用、回復、持続可能な管理に取り組むための結果やベストプラクティスを交換し、生態系、経済、社会の複数の利益への貢献ができるように、支援し、奨励する。

9. 我々は、生物多様性の損失を止めて反転させるためには、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びその持続可能な開発目標を達成するべく、自然の保護、回復、保全、及び持続可能な利用が不可欠であることを強調する。我々は、自然を活用した解決策及び生態系を活用したアプローチの実施を通じて行うことを含め、2050年ビジョン「自然との共生」の実現に向けて、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させ、また生物多様性の損失の直接要因及び間接要因に対処するため、国内的行動を通じて、また、適切な場合には多国間主義及びグローバルな対応を通じて、根拠に基づく効果的かつ総合的な行動を強化することにコミットしている。我々は、生物多様性の保護、保全、持続可能な利用及び回復を全ての政策において主流化することの重要性を強調する。我々は、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)地球規模評価報告書(2019年)に懸念を持って留意し、IPBES野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価報告書の政策決定者向け要約が最近承認されたことを歓迎し、生物多様性の損失の主な要因として野生種の乱獲に対処する必要性を認識する。また、我々は、生物多様性に対する汚染の悪影響を世界的に緩和することの重要性を認識し、化学物質、廃棄物、及び汚染に関する科学政策パネルを設置するための国連環境総会再開セッション(UNEA)決議5/8を歓迎する。

10. 我々は明確で、野心的で、現実的で、変革的かつ強固なポスト2020生物多様性枠組(GBF)の達成に向けて取り組んでおり、これまでの進展を歓迎する。そして、我々は、全ての関係者及び国に対し、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二部においてGBFを最終化し採択するよう、そして、それが適切な場合には、生物多様性国家戦略を合わせて更新するよう、強く奨励する。我々は、測定可能な主要な指標及び効果的な実施・レビュー・報告メカニズムのセットと関連した、生物多様性に関する明確かつ測定可能なゴール及びターゲット及びその実施手段の必要性を強調する。いくつかのメンバー国は、2030年までに少なくとも世界の陸地の30%、世界の海洋の30%を保護又は保全するターゲットに対する支持を表明している。これらの自主的なコミットメントを行ったメンバー国は、同様の野心的なコミットメントをその他の国が行うことを奨励し、支持する。

11. 我々は、生物多様性の損失、気候変動、土地の劣化、海洋の健全性の低下、森林減少、汚染、廃棄物、食料安全保障のないこと及び水の安全性、利用可能性とアクセス性への取組において、補完性の規模を拡大し、主流化することにコミットする。

12. 我々は、SDG6と2030アジェンダの水関連目標の達成にコミットしている。我々は、持続可能な湖沼管理に関するUNEA決議5/4を歓迎し、湿地や帯水層、河川や湖を含む水関連生態系の保護、保全、回復、水に依存する生態系の持続的利用、関係者の関与、自然との共生を実現するための国際協力の発展などの実施すべき行動を強調することにより、統合的で持続可能かつ気候変動に強い水管理を強化するため、国連2023水会議及びラムサール条約第14回締約国会議(COP14)の成功に向けて取り組むことにコミットする。我々は、SDG6が未達成に終わるリスクにさらされていることを認識し、民間セクターを含むあらゆる資金源からの持続可能な水資源管理に対するより多くの行動と投資の必要性を強調する。また、我々は、気候変動の影響を最も受けるセクターのリスクと障壁を軽減するために、各国が環境を整備することを支援する必要性を認識する。

13. 我々は、河川流域規模での協力やセクターを超えた協力、水資源保護、保全及び持続可能な利用の実施を含む、全ての適切なレベルでの統合的水資源管理(IWRM)の重要性を認識する。また、我々は、節水型の持続可能な生産・消費パターンの実施、水の保全、並びに、雨水利用、再生水(処理排水)の再利用、地表水・地下水の持続的、効果的、効率的利用を含む、非伝統的・代替的水源への依存が重要であることを認識する。我々は、統合的水資源管理を、河川、湖沼、海洋の持続可能な管理、及び、循環経済アプローチを含む資源効率性を改善する都市の努力に関連付ける、コミュニティベースの水ガバナンス及びそれが適切な場合には関連するコミュニティ及び構造とともに、河川流域ベースの水ガバナンス及び近隣諸国間の協力の利点を認識した流域ベースのアプローチに取り組むことを奨励する。我々は、将来の世代が、信頼でき、十分で、安全かつ清潔な水資源へのアクセスを確保するために、気候変動が水資源に及ぼす影響を緩和し、それに備え、適応するための努力を強化し支援することの喫緊性を強調する

14. 我々は、安全かつ清潔な飲料水及び衛生を確保する権利を、適切な生活水準に関する権利に由来する人権として想起する。我々は、また、水が人間や自然にとって多くの価値を持つものであることを認識する。水は、必要不可欠なものであり、持続可能な発展へと向かう中で、我々が行うほぼ全ての活動の基礎である。

15. 我々は、水、エネルギー、食料、及び生態系の結びつきを意識したあらゆるセクターにおける水の利用を持続可能な方法で取り組む必要性を強調し、その経済的・社会的影響の大きさと、持続可能で統合的な水管理戦略の策定に全ての関係者と水の利用者を含める必要性を強調する。我々は、統合的水資源管理(IWRM)の一環として、水配分メカニズムの開発を奨励する。

16. 我々は、極端な干ばつ、熱波、洪水及びそれらの影響並びに海面上昇を防止し、それと闘うための措置を国家の緩和及び適応政策並びに計画に取り入れることを含め、気候変動に起因する異常気象及びその他の影響を予測し、それらに適応することの緊急性に留意する。我々はまた、利用可能な早期警戒・監視システムを確立し、予測・予行演習・緊急計画の能力を強化し、また特に最も脆弱な国に対する実施への投資を拡大することの重要性を認識することにより、コミュニティと生態系の強靭性を構築するための取組を強化することの必要性にも留意する。

17. 我々は、自発的かつ相互に合意された条件での技術移転を含む、統合的で気候変動に強い水管理に関する知識とベストプラクティスの共有の重要性を強調する。G20水対話とその継続を支持し、サウジアラビア王国が主催するG20水プラットフォームなどを通じて、その成果の活用を促進する。

18. 我々は、気候変動、生物多様性の損失、水の安全性、利用可能性とアクセス性、土地の劣化、廃棄物と汚染に取り組むため、現在の物質的な資源の使用とそれに伴う影響が、SDGs、特にSDG12の達成と両立する必要があることを認識する。我々は、経済の循環性と資源効率性を高めることが、環境、気候、開発の目標への到達につながることを強調する。我々は、「持続可能な消費と生産を達成するための貢献としての循環経済の強化」に関するUNEA決議5/11の実施に対する我々の支持とコミットメントを再確認する。

19. 我々は、持続可能な生産と消費を達成し、気候変動、生物多様性の損失、土地と水の劣化及び汚染への対処に貢献するため、資源効率性と循環経済の重要性を強調する。我々は、その他のアプローチの中でも資源効率性及び循環経済の実施を促進し、消費及び生産が環境、社会、経済に与える負の影響を最小化するため、特に、途上国に対して、また、あらゆるレベルの政府、産業、バリューチェーン関係者、コミュニティ、市民社会、先住民族、地域社会、女性、若者、子ども、障害者、脆弱な状況にある人々、及び研究機関を含む関係パートナーや利害関係者間で科学と知識の共有を含む強力な協調と協力の必要性を強調する。

20. GHG排出量、生物多様性の損失、生態系の劣化、汚染を含む環境フットプリントを削減するために、ライフサイクルを通じて生産とサービスの持続可能性を高める必要があること、また、包摂的で弾力的かつクリーンでありながら、それが適切な場合には、資源の利用の効率性及び循環性、サプライ及びバリューチェーンの透明性を高める必要性を認めつつ、多くの参加国は、ビジネスセクターと協力することの重要性を認識し、世界中のビジネスセクター間での知識共有を奨励する。

21. 我々は、持続可能な開発を実現するための基本的な手段として、循環経済、ライフサイクル視点、製品やサービスに関する、より持続可能な選択の重要性などのアプローチを含め、持続可能な生産と消費の形態に関する意識を社会、特に若者の間で高めることの重要性を認識する。

22. 我々は、資源効率性と循環経済及び持続可能な生産と消費形態を実現するためのその他の手段を促進するため、関連する関係者と協力しながら、措置、行動、知識とグッドプラクティスを共有する上でのG20資源効率性対話の重要な役割を強調する。各国の状況、能力、優先順位を考慮し、国家の拡大生産者責任(EPR)制度やその他の市場を基盤とした手段、自主的な制度、規制、持続可能な公共調達、能力開発、技術的側面、並びにライフサイクルの視点を考慮し、それが適切な場合には、持続可能かつ強靭で透明性のあるサプライチェーン及びバリューチェーンを含むような新しい循環ビジネスモデルの実施に関する情報の共有を含む。我々は、2022年7月にG20資源効率性対話のポータルがさらに発展したことを歓迎し、G20資源効率性対話会合を開催した議長国、また関連するワークショップを開催した欧州連合、イタリア、インドネシア商工会議所に感謝する。我々は、ここに、G20資源効率性対話ロードマップ2021-2023への支持を表明する。我々は、特に、UNEP国際資源パネルなどの科学に基づく知見から利益を得つつ、対話を通じて我々の協力を継続することを再確認する。

23. 我々は、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組(10YFP)の役割と、イノベーションを加速し、持続可能な開発及びクリーンかつ持続可能な生産と消費のための効果的な手段を開発するための、持続可能かつ循環経済のアプローチに関する明確な国家戦略の役割を認識する。我々は、SDG12に沿った持続可能な生産・消費パターンの中でも、新しく、循環型で、資源効率的なビジネスモデルの重要性を認識する。

24. 我々は、研究・科学コミュニティと関連する国際機関、特に、国際資源パネル、UNEP、UNIDO、OECD等が、物質・天然資源の利用と環境・気候・経済・社会への影響に関する研究と分析を継続し、ギャップと課題を特定しながら、適切な場合に、国家の優先事項とニーズに従って検討するための取りうる行動と政策の選択肢を提案することを要請する。

25. 我々は、マイクロプラスチックを含む海洋ごみとプラスチック汚染が、生態系とその生物多様性に重大な影響を与えることを認識する。また、海洋ごみとプラスチック汚染の主な発生源は陸上にあること、一方で、ゴーストギアとして知られる、放棄、遺失、その他の理由で捨てられた漁具を含む海上を発生源とする海洋ごみも多数あることを認識する。

26. 我々は、環境及び開発に関するリオ宣言の原則及び各国の国内事情及び能力等を考慮した、プラスチックの全ライフサイクルに対処する包括的なアプローチに基づいた、拘束力のあるアプローチ又は自主的なアプローチを含みうる、海洋環境等におけるプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を作成するため、UNEA決議5/14により設置された政府間交渉委員会(INC)に参加することを含め、世界規模のプラスチック汚染を終わらせることを十分に支持し、また、我々が最大限取り組むことにコミットする。我々は、2024年末までにその作業を完了するとの野心をもって、そのプロセスにおいて建設的かつ戦略的な役割を果たすことを決意している。我々は、その文書のための長期的かつ世界的な展望の必要性を再度強調する。

27. 我々は、新たな法的拘束力のある国際文書から生ずる一部の法的義務が、開発途上国及び移行経済国により効果的に実施されるためには、能力構築、技術援助及び資金援助を必要とすることを認識しつつ、能力構築及び技術援助、相互に合意する条件に基づく技術移転、資金援助の取決めを交渉するために、政府間交渉委員会を通じてG20諸国及び非G20諸国やその他の関係者の間で協力することにコミットする。

28. 我々は、これまでの進展に注目し、国連総会決議69/292で求められているように、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する国連海洋法条約(UNCLOS)の下での国際的な法的拘束力を有する文書について、野心的でバランスのとれた合意を遅滞なく達成することを参加代表団に呼びかける。

29. 我々は、世界の海洋資源を保全し持続可能な形で利用するというSDG14の実施を加速すること、及びSDG14bに沿った小規模零細漁業者に対する海洋、海洋資源及び市場へのアクセスの確保を含むその他の海洋に関連したSDGsの迅速な実施の重要性を強調する。

30. 我々は、違法、無報告、無規制(IUU)漁業と闘い、これを終わらせるための我々の強いコミットメントを再確認し、IUU漁業が世界の多くの地域において海洋の持続可能性に対する深刻な脅威であり続けていることを認識する。我々は、IUU漁業に従事する漁船又は操業者への補助金を禁止し、過剰漁獲された資源に関する漁業又は漁業関連活動への補助金を規律する、WTOの漁業補助金に関する画期的な新協定を歓迎する。我々は、SDG14. 6に沿って、途上国及びLDC加盟国に対する適切かつ効果的な特別かつ差異ある待遇がこれらの交渉に不可欠であることを認識しつつ、過剰漁獲能力や過剰漁獲に寄与する特定の形態の漁業補助金に対する更なる規律を通じて、海洋、海洋資源の持続性の要請に応じる包括的WTO協定を達成するための努力を継続する。

31. 我々は、企業や組織が進行する自然関連の財務リスクを報告し行動するための、また、投資家が自然関連の財務リスクをより良く評価するための枠組みを開発する、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の重要な作業を認識する。我々は、市場参加者がTNFDの枠組みに関与することを求め、その開発を支援することにコミットする。我々は、この分野において財務大臣との協働を継続する。

32. 我々は、G20のサステナブル・ファイナンス作業部会及び財務トラックと密接に協力及び協調し、泥炭地とマングローブを含む表面水及び地下水による湿地、サンゴ礁、森林、海洋及びその他の特有の生態系のような、全ての生態系を保護し、保全し、持続可能に利用し、回復するためのサステナブル・ファイナンスの規模拡大を支持し、自然、生物多様性、循環経済及び資源効率性、水資源、衛生及び社会的課題に対する金融に関し、G20による努力を段階的に引き上げるためのG20サステナブル・ファイナンスロードマップで特定された優先的な行動に対処する追加的な進展を呼び掛ける。我々は、2020年9月の国連総会生物多様性サミットにおいて立ち上げられた「生物多様性に対する金融プレッジ」を歓迎し、金融機関に対し、それに署名するよう慫慂する。我々は、UNFCCCCOP26における国際開発金融機関による、「自然、人々、地球」に関する共同声明を歓迎し、生物多様性条約COP15第二部(CBDCOP15. 2)までに生物多様性資金に対する具体的な金額へのプレッジにコミットすることを国際開発金融機関に求める。我々は、また、金融の流れを持続可能な開発、自然及び気候の目的に合致させるという緊急の必要性及びそれらの分野における多くのシナジーについて強調する。我々は、コベネフィットを最大化するためのそれらのシナジーを強化する。

33. 我々は、公的及び民間金融機関並びにその他の関連する公的機関がサステナブル・ファイナンスに参加することを促進する政策を強化することにコミットし、また、G20サステナブル・ファイナンスロードマップの実施にもコミットしている。我々は、自然の保護、保全、持続可能な利用、回復を支援する革新的な資金調達手段のさらなる開発及び実施を奨励する。

34. 強力な法的及び政策手段と、適切な場合には河川流域管理及び関連する多国間環境条約(MEAs)の措置を含む、あらゆるレベルにおける効果的な制度を支援しつつ、多くの参加国は、この制度により水と湿地に関する近隣諸国間の能力構築と河川流域規模の協力が可能になると認識する。また、参加国は、集団行動の効果的な実施は、能力開発、環境に配慮した技術、既存及び新規の革新的な資金調達スキームの開発、専用の開発パートナーシップ、多国間主義や国際協力への新たな強いコミットメントの拡大によって、各国の法律や規制に従い、権限を付与する一貫性のある法律や政策の枠組みをあらゆるレベルで必要とすることを認識する。

35. 我々は、経済全体を誰一人取り残さない持続可能性の高い方向に導くために、企業や消費者の行動変革を促す有効な手段として、財政政策が果たしうる役割を強調し、土地の保護、保全、持続可能な管理及び回復のプログラム及びプロジェクトに資金を提供するための国家間の国際的パートナーシップを通じて行うことを含め、これらの手段を拡大し最大限に活用するためのイニシアティブを奨励する。

36. 我々は、関連する革新的な資金調達手段の実施を認識し、土地の保護、保全、持続可能な管理及び回復のプログラム及びプロジェクトに資金を提供するための国家間の国際的パートナーシップを通じて行うことを含む、これらの手段を拡大し、最大限に活用するためのイニシアティブを奨励する。

37. 我々は、貧困、保健、経済、環境の課題が相互に関連していることを念頭に置き、各国の異なる開発レベルと能力を考慮しつつ、誰一人取り残さない、持続可能な経済への公正かつ公平な移行にコミットする。我々は、開発途上国、特に後発開発途上国に対して、資金、技術、能力開発の支援を行うことを奨励し、既存のガバナンスの枠組みを最大限に活用し、新たな革新的な解決策を見出すよう努力する。リオ宣言の原則を想起し、我々が異なる課題に直面していることを認識しつつ、我々は持続可能な開発に向けた国際協力を強化する。

気候持続可能性

1. メンバー国は主導することの重要性を認識し、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2℃高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも1.5℃高い水準までのものに制限するための努力を追求し、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映することで、パリ協定の完全かつ効果的な実施を強化することによって、気候変動に取り組むための国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の不動の約束と目的を再確認する。

2. メンバー国は、IPCCの地球温暖化に関する1.5℃特別報告書やIPCC第6次評価報告書(AR6)など利用可能な最良の科学の知見を懸念を持って想起し、1.5℃における気候変動の影響は2℃の場合よりはるかに小さいこと、地球温暖化が2℃を超えると一部の地域では気候に強靭な開発さえ不可能となりうること、気温上昇を1.5℃まで抑える努力をする決意が緊急であることを認識した。この点で、一部のメンバー国は、GHG排出量の大幅な削減における先進国の主導的な役割を強調した。

3. 我々は、自然及び人間のシステムがその適応能力を超える圧力を受けた際、気候変動が、自然と人間に対して、広範囲にわたる悪影響とそれに関連した損失及び損害を引き起こしていることを強調する。我々は、気候変動に対する強靭性を高めるために、自然を活用した解決策や生態系を活用したアプローチを含む適応策を強化する。

4. 我々は、COP26やCMA3を含む過去のCOPやCMAの関連成果を実施するための役割を十分に果たす。我々は、COP27の次期議長であるエジプトの努力を歓迎し、全面的な支持を表明するとともに、シャルムエルシェイクで成功し、野心的でバランスのとれた一連の成果採択への道を開くために建設的に取り組む。我々は、実施を支持及び強調し、緩和、適応、実施手段の強化の重要性を強調する。

5. 我々は、最新の科学を反映し、循環炭素経済、社会経済、技術及び市場の発展を含む各国の異なる事情及びアプローチを考慮に入れつつ、今世紀半ば頃までのGHG排出ネット・ゼロ/カーボンニュートラルに向けたNDCの実施及び公正な移行を加速するため、パンデミックからの持続可能で、強靭で、包摂的かつ公正な回復及び豊かで包括的で、強靭で安全で持続可能な誰一人取り残さない社会の推進において協力する機会の重要性を認識する。

6. 我々は、NDCの実施への影響を含む持続可能な復興における経済・社会・環境的影響のストックテイクに関する研究を委託した議長国のイニシアティブを評価する。我々は、各国の新型コロナウイルス感染症からの復興支出は各国の緩和や適応に関する支出を促進する機会を創出しうることに留意する。また、復興支出が、持続可能な開発目標の達成に向けた進展を支える社会、環境、保健の共同便益の機会をとらえることだけでなく、気候関連の課題、不適切な適応に立ち向かう努力においてより迅速で的を絞った行動につながりうることに留意する。

7. 我々は、復興策の設計と実施において、地域主導のアプローチ、利害関係者の参加、包括的なガバナンスの取り決めを促進することの重要性に留意する。これらは、地域社会と先住民を巻き込み、伝統的知識、先住民の知識、地域の知識体系を活用した既存の地域イニシアティブによる復興と、持続可能な開発を確保し、先住民、地域社会、移民、子ども、障害者、脆弱な状況にある人々の権利に関するそれぞれの義務を尊重・促進し、ジェンダー平等、女性・女児・若者のエンパワーメント、世代間公平を促進・尊重したGHG排出の少ない、気候変動に強靭な開発への公正な移行のための措置を含んでいる。

8. 野心のギャップを認識し、パリ協定の気温目標に合わせるため、一部のメンバー国は、グラスゴー気候合意が締約国に対し、各国の異なる事情を考慮し、2022年末までにパリ協定の気温目標にそって、必要に応じてNDCの2030年目標を再検討し、強化するよう要請していることを想起する。また、一部のメンバー国は、効果的な気候変動対策や途上国への十分な財政支援のために、利用可能な最良の科学に基づくNDC目標やネット・ゼロの約束の達成を目指し、国内対策の採用・実施を含むがこれに限らない具体的な実施行動が重要であると留意した。

9. 気候変動とエネルギーの連関の重要性と公正なエネルギー移行の必要性を認識し、我々が共に回復し、より強く回復するように、持続可能なエネルギー移行に向けた具体的かつ実践的な行動に焦点を当てたエネルギー大臣会合の成果を、大多数のメンバー国は期待する。

10. 我々は、持続可能な開発に貢献し、パリ協定第2条に言及される気温目標に照らして適切な適応面での対応を確保することを目的として、適応能力の強化、強靭性の強化、及び気候変動に対する脆弱性の低減についての適応に関する世界全体の目標(GGA)に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画を歓迎し、実施することにコミットする。我々は、適応行動と緩和行動との間の潜在的な相乗効果を強調する。

11. 我々は、防災、避難、非経済的損失などの包括的なリスク管理に関する政策戦略及びガバナンスの強化を通じたものを含め、気候変動の悪影響に関連する損失と損害を回避し、最小化し、

対処することにコミットする。また、我々は、グラスゴー対話に建設的に関与し続け、サンティアゴ・ネットワークの完全な運用に向けて取り組むことにコミットする。

12. 国別適応計画は、気候適応に関する各国のニーズと優先事項に関する適切な情報源であると認識し、各国が異なる課題に直面していること、特に途上国に注目し、一部のメンバー国は、国別適応計画を継続的に作成、実施、モニタリングするために、異なるレベルの支援を行うよう要請した。

13. 我々は、気候の緩和と適応に関する野心を高めることが、パリ協定の目標に沿った強力な国内政策行動を通じたものを含め、特に途上国において実施環境を創出するための取組を加速させることを強調する。また、我々は、能力構築、技術の開発・移転・展開、気候資金の動員を通じた途上国支援の重要性と、資金の流れが、温室効果ガスについて低排出であり、及び気候について強靱である発展と適合していることの重要性を強調する。

14. 一部のメンバー国は、気候変動に対する脆弱性が高い途上国に対する資金の利用可能性の増進とアクセスの円滑化による回復措置を実施することや、働きがいがあり、人間らしく、質の高い仕事を創出することを通じたものを適宜含め、規模を拡大した資金供与において緩和と適応をバランスさせることの重要性を強調する。

15. 我々全体で共有する気候野心達成のための緩和及び適応行動における循環性及び能力構築を含め、イノベーションのための技術開発及び技術移転に関する協力の強化が極めて重要であると強調し、メンバー国は、研究開発における国際協力強化による移行期の技術、及びGHG排出量を削減・吸収する能力を高める低排出技術開発の支援による途上国への技術の展開・移転を含む全体的なアプローチの必要性を認識する。この関連で、一部のメンバー国は、メタンを含む二酸化炭素以外のGHG排出量を2030年までに削減するための更なる行動を検討する意図を改めて表明した。

16. 我々は、持続可能な開発及び貧困撲滅に向けた努力との関連で、気候変動への対処、及び気候変動対策を強化するための地域・国際協力の促進において、多国間主義の役割を認識する。

17. 我々は、異なる政府制度を考慮しつつ、環境に配慮したライフスタイル、知識の共有や都市間連携の促進などの気候行動を実施し、地域のニーズや環境条件を背景とした移行を行う上で、都市、地域及び地方自治体が重要な役割を担っていることを認識する。この点において、我々はまた、都市における適応能力を高めることにより、脆弱性を軽減する必要性を認識する。私たちは、「ニュー・アーバン・アジェンダ」で強調されているように、持続可能な都市開発が重要であることを想起する。この点で、我々は、気候変動と闘う上でにおけるライフスタイルを選択することの重要性及び教育、訓練、国民の意識、国民の参加、情報への公的アクセスの重要性を強調する。

18. 気候変動における緩和及び適応を促進する上で、海洋と気候の連関を利用することの重要性を認識し、多くのメンバー国が、より持続可能で包摂的かつ強靭な沿岸生態系管理を推進するための国際協力、国家計画及びイニシアティブの強化を通じたものを含めた、より協力的な海洋気候変動対策に向けて努力を促進するよう呼びかけた。

19. 我々は、持続可能な開発のための国連海洋科学の10年に沿って、あらゆる地政学的分布及び規模の海面上昇といった気候変動の悪影響を緩和し、適応し、強靭性を強化するために、科学的な知見を向上させ、災害リスク軽減を含む効率的な行動を実施するために、データの収集・管理、研究開発、予測、海洋-気候の連関の理解強化のための海洋観測とモデリングを、異なる国や地域の状況を考慮しながら、改善していくことの重要性を強調する。

20. メンバー国は、各国の状況、それぞれの能力、優先順位に沿って、ブルーカーボン生態系を保全し、持続可能に利用し、保護し、回復するための取組に投資し、海洋における緩和と適応のための研究開発及び技術革新を促進し、GHGの排出削減と気候変動への強靭性の構築における健全性、十全性及び有効性を高めるため、ブルーカーボン生息地を含む沿岸生態系の保護・保全回復・持続的利用・管理の改善を行うことにコミットする。さらに我々は、より持続可能で包摂的な沿岸の回復力を促進するため、世界規模での経験の共有、環境上適切な技術の開発・展開・普及、能力開発、資金調達、安全で持続可能な海洋と気候に関数イノベーションと行動に関する協力の重要性を強調する。この点に関し、一部のメンバー国は、各国の異なるニーズ、優先順位、状況、及びそれぞれの能力を考慮することの重要性を強調した。さらに一部のメンバー国は、海運部門のゼロ・エミッション燃料及び技術への移行を加速し、海運部門を世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという目標に合致する道筋に位置付けることにコミットしている。

21. 我々は、社会科学、物理学、経済学の各分野の内部及びそれらの間の包括的な対話を促進するとともに、全ての関係者をそのプロセスに参加させることによって、異なるアプローチに関する集合知を強化するために、これらの分野の政策インターフェイスを促進することが重要であると認識している。また、我々は、温室効果ガスの排出削減・除去及び適応に貢献する沿岸地域の持続可能なライフスタイル、成長、強靭な開発において、地域や地方のイニシアティブが果たす役割を認識する。

22. 我々は、気候変動の悪影響を受ける沿岸域及び都市における女性、子供、若者、先住民及び脆弱な状況にある地域コミュニティを含む脆弱な集団が、海洋を活用した気候政策及び戦略、海洋を活用した適応計画並びに統合沿岸域管理の策定及び実施に関与することの重要性を認識する。

23. 大半のメンバー国は、人為的な発生源による温室効果ガス排出削減及び気候変動に対する強靭性及び適応力を強化しうる海洋を活用した行動を促進するため、UNFCCC海洋と気候変動の対話及びその他の関連するフォーラムにおける我々の関与を強化するに努める。さらに、メンバー国は、海洋を活用した緩和及び適応を推進するため、海洋と-気候の連関に関する自主的なパートナーシップの設立の可能性を議論するなど、既存のイニシアティブやプロセスに基づく機会をさらに追及する。この点に関して、一部には、気候緩和と適応のための海洋を活用した行動に関するG20パートナーシップの議長提案(附属書1)に留意する国もあった。

24. 我々は、民間資金の動員、気候関連のリスク管理の改善、及びNDCの実施の推進力となりうる、各国の事情を考慮した財政・金融政策、金融・セクター規制、及び公的金融手法の重要性を認識する。我々は、拡大された気候行動に資する民間投資を可能にする上で、政策アプローチ及び規制改革が重要な役割を果たすことを認識する。この文脈において、我々は、財務トラックで行われている議論を支持する。

25. パリ協定第9条を想起し、一部のメンバー国は、これまでに見られた進捗と気候資金動員の増加量を評価した。一方、一部のメンバー国は、意味のある緩和行動と実施の透明性という文脈において、2020年までに年間1000億米ドルを共同で動員するという先進国締約国の目標が達成されていないことを深い遺憾をもって指摘したが、多くの先進締約国が表明したプレッジの増加や気候資金実施計画「1000億米ドル目標の達成」とその中の共同の行動を歓迎し、その誓約の実施における透明性の重要性を強調した。

26. 締約国は、先進国に対し、規模拡大した資金源の供与において緩和資金と適応資金の間の均衡を達成する文脈において、途上国に対する適応のための気候資金の供与を共同で、2025年までに2019年の水準から少なくとも2倍にすることを求めるグラスゴー気候合意を想起し、また、パリ協定第9条4項を想起し、一部のメンバー国は、先進国に対し、これらの取組に関して気候資金実施計画への進捗報告を通じて引き続きさらなる情報を提供すること、及び気候変動の悪影響から保護すべく、対象を絞った投資に対する多様な機会を活用するよう求めた。

27. 我々は、公的資金が、特に適応行動のための他の気候資金を動員するための重要な手段であり続けること、そして、債務の持続可能性に向けた努力を損なわないような代替的かつ革新的な資金源の探求を含む資金の供与と動員を増加させるために、官民、国内、二国間及び多国間の資金源の間のシナジーを特定する努力を続ける必要があることを強調した。

28. 我々は、「温室効果ガス(GHG)排出量が少なく、気候変動に強靭な未来に向けた革新的な金融に関する研究を委託する議長国のイニシアティブを歓迎する。この研究は、G20諸国の規制当局、立法関係者、金融機関、民間団体が、それぞれの役割と責任において、グリーンで持続可能な低GHGへの移行のための資金調達を加速する政策・制度・革新的な資金手段を提案・開発・適用しており、さらに、異なる状況と発展の度合いを考慮しつつ、気候及び持続可能な金融の適用の加速にロールモデルとして貢献しうることに言及したものである。

29. メンバー国の大半は、官民の金融機関、国際開発金融機関(MDBs)及び国際金融機関(IFI)に対し、効果的な気候行動の達成に必要な規模の資金へのアクセスを強化するために、途上国における協力を拡大することを要請する。この観点から、メンバー国の大半は、MDBsに対し、そのマンデートに沿って、気候資金動員を増加するとのコミットメントをフォローアップし、野心的な時間枠内で活動及び投資のポートフォリオのパリ協定との整合性を追求する努力を強化するよう改めて要請する。さらに、多くのメンバー国は、気候変動に対処するための資金動員におけるMDBsとIFIsの重要な役割、及び、政策、投資、業務において緩和と適応の問題を主流化することの重要性を認識する。この観点から、多くのメンバー国は更に、MDBsに対し、そのマンデートに沿って民間資金を動員するための計画を2022年までに策定し、民間セクターとのリスク分担の観点から、適切な場合には国主導のプロセスやプラットフォームを通じて行うことも含め、戦略的に投資リスクを軽減することを求める。

30. また、我々は、全ての国際開発金融機関及び金融機関に対し、その全ての活動、特に間接融資や政策に基づく融資について、パリ協定及びSDGsと整合的な確固たる強固な手法をCOP27までに完成させ、公表すること、また、ポートフォリオの整合性について、全体としてどのように報告する予定であるかを、COP27までに策定することを求める。

31. 我々は、気候行動を強化する可能性を持つパリ協定第6条の実施の重要性を強調する。また我々は、パリ協定第6条、及び第13条の下で強化された透明性枠組みを実施するための、特に途上国における能力構築の必要性、及び国や世界の気候目標及び国際協力を支援するために、民間及び公的部門が気候資金源にアクセスするための準備態勢を向上させる必要性を認識する。

32. 気候持続可能性作業部会の議長イニシアティブの一部として、以下の研究(附属書2-8)を歓迎する。

 a. NDC実施への影響を含む持続可能な復興に伴う経済・社会・環境的影響のストックテイクに関する研究。

 b. 全ての人々にとってより強靭な未来を創るための緩和-適応コベネフィットの役割に関する研究

 c. 持続可能な海洋イニシアティブのための行動とパートナーシップの強化に関する研究

 d. 科学、研究、イノベーションにおける協力の強化を通じて、気候変動に対する海洋を活用した解決策の促進に関する研究

 e. 温室効果ガスの低排出と気候に強靭な未来に向けた革新的な資金枠組みに関する研究

 d. 炭素の経済的価値の活用を通じた、温室効果ガス低排出と気候変動に強靭な未来に向けたNDC実施と持続的移行の加速に関する研究

また我々は、土地の劣化、生物多様性の保全、統合的で持続可能な水管理、資源効率性と循環経済、海洋ごみ、海洋保全、持続可能な金融、気候緩和と適応、実施手段などに関する幅広い問題について、しっかりとした意見交換を行った。我々は、これらの課題に関する作業と具体的行動を継続的に強化することに引き続きコミットする。

各国の大臣は、2022年の環境大臣代理会合及び気候・持続可能性作業部会(EDM-CSWG)、環境・気候大臣会合(JECMM)の両方を主催するインドネシアのリーダーシップ、及びホスピタリティと優れた運営に対して高い感謝の意を表明した。我々はまた、2023年のインド議長国を支持し、G20及びそれ以降における環境と気候の持続可能性における協力の進展が成功するよう、緊密に連携していく。


附属書1.

議長国提案

気候緩和と適応のための海洋を活用した行動に関するG20パートナーシップ

背景

変化する気候下での海洋・雪氷圏に関するIPCC特別報告書、及び最近のIPCC第6次評価報告書第1、第2及び第3作業部会報告書へのWGI、WGII、WGIIIの最近の貢献によれば、海洋・沿岸生物及び沿岸コミュニティの生活に悲惨な影響を与える、海洋温暖化、酸性化、貧酸素化、氷解、海面などの体系的変化が存在することが指摘されている。

SROCCはまた、保護、修復、再生可能資源利用の予防的生態系に基づく再生可能資源利用管理及び汚染やその他のストレス要因の削減は、海洋生態系によるサービスや選択肢を支援する可能性があることを明らかにした。SROCCで強調された対応策には、炭素の吸収と蓄積を含む生態系サービスの維持を支援する保護区のネットワーク、陸生及び海洋生息地の復元と生態系管理ツール、予防的アプローチの強化。マングローブ、潮間帯、海草藻場などの植生沿岸生態系(沿岸の「ブルーカーボン」生態系)の復元を含み、炭素吸収と蓄積の増加を通じた気候変動の緩和、気候変動の緩和を支援する洋上風力、潮汐力、波力、火力、塩分濃度差からのエネルギー抽出及び藻類バイオ燃料から構成される海洋再生可能エネルギーを提供する。

科学、研究、イノベーションにおける協力の強化を通じた気候変動に対する海洋を活用した解決策の促進に関する研究及び議長国によって作成された持続可能な海洋イニシアティブのための行動とパートナーシップ強化に関する研究に基づき、全てのメンバー国は海洋政策、計画、戦略を策定している。さらに、一部のメンバー国は、海洋を適応又は緩和の要素に、あるいは両方の要素に含めてNDCに盛り込んでいる。

これらの研究は、政策、対話及び行動に適切に反映させるための、海洋と気候の連関に関する科学的理解を深める必要があることを特定した。海洋科学への投資、技術や情報の交換促進、沿岸及び海洋環境保護の拡大支援、小規模漁業コミュニティへの支援、海洋の持続可能な管理など、緊急の行動が必要である。世界経済に対する海洋の貢献は、2030年までに3兆米ドルにまで拡大すると予測されている。30億人以上の人々が生計を海に依存し、世界貿易の80%以上が海上輸送されている。小規模漁業は、第一次海洋漁業雇用の約90%を占めている。気候変動は、自然災害、海洋温暖化、酸性化、貧酸素化の強度と頻度を増加させ、魚類個体群の分布と豊度に変化をもたらし、漁業に依存する発展途上国に悪影響を与える。小規模漁民や養殖業者も重要なステークホルダーであり、彼らは地元で自然資源を回復し保護するための実行者であり、気候変動に対する自然を活用した解決策の重要な支持者である。最近まで、国の漁業・養殖業の開発や政策における気候変動適応の主流化は弱く、徐々にしか改善されていなかった。漁業と養殖業に特有の脅威、感受性、脆弱性を考慮し、漁業と養殖業に依存するコミュニティとステークホルダーの適応能力を高めるために、本セクターでより大きな適応が必要であり、特に国や地域ごとの状況に合わせた適応が必要である。漁業と水産養殖業に特有の懸念事項を認識し、統合し、対処することは、気候やその他の環境の脅威に直面したとき、この部門とそれを支える地域社会の回復力を高めることにつながる。

メンバー国は、海岸線を有し、研究、イノベーション、及び技術開発の役割を促進することにより、温室効果ガスの低排出及び気候に強靱な行動を強化するための海洋の重要な役割に関心を寄せている。

目的

インドネシアG20議長国は、全てのメンバー国間で海洋を活用した緩和と適応行動を促進し、海洋と気候の連関に関する知識の共有、技術移転及び能力開発に関するパートナーシップを確立する機会を模索するため,気候緩和及び適応のための海洋を活用した行動のためのG20パートナーシップを提案する。

G20パートナーシップは、社会科学、物理科学、経済科学の3分野における対話を促進することにより、これらの分野の政策的インターフェイスを強化することの重要性について、より緊密な協力を提供する。さらに、本パートナーシップは、メンバー国間で、気候変動への適応と緩和のために海洋を活用した行動に関する政策オプション、研究、イノベーション及び優良事例について、見解や経験を共有することを目的としている。

背景の設定

インドネシア議長国は、CSWGメンバー国の参加を得て、パートナーシップを開始する。これは、各国の異なる状況、ニーズ、優先事項を考慮しつつ、メンバー国、国際機関及びその他の関連機関の専門家の参加の可能性を探りながら、自発的なものである。

このパートナーシップは、沿岸の強靭性と保護、自然を活用した解決策と生態系に基づくアプローチ、平等な社会開発、より効率的な国際輸送回廊、海洋の吸収能力の向上、及び持続可能な環境に配慮したブルーエコノミーに関する優良事例、教訓、知識、研究及びイノベーションを交換するキックオフイベントから開始される予定である。このパートナーシップは、今後のG20会合を支援することが期待されている。

パートナーシップの範囲

本パートナーシップの範囲は、CSWGの議論において、以下のように認識されている。

1)海洋を活用した解決策のための海洋と気候の連関に関する研究、開発、技術展開(R,D&D)の促進を通じて、適応と緩和のための海洋を活用した行動に関する情報、知識、経験、優良事例を共有すること。

2)温室効果ガスの低排出及び気候強靭性、能力構築開発、技術支援及び資金動員に向けた海洋の役割を促進するため、世界レベルでの持続可能な海洋イニシアティブのための共同協力を通じた行動を強化する。

3)G20における対話を通じ、利害関係者及び専門家による知識の共有を促進する。提案されたテーマは、海洋科学、海洋を活用した適応及び緩和のコベネフィットを伴う海洋を活用した緩和と適応である。


附属書2.

気候変動持続可能性作業部会におけるG20による研究

a. NDCの実施への影響を含む持続可能な復興における経済、社会、環境的影響のストックテイク

b. 全ての人々にとって、より強靭な未来を創造するための緩和と適応のコベネフィットの役割

c. 持続可能な海洋イニシアティブのための行動とパートナーシップの強化

d. 科学、研究及びイノベーションにおける協力の強化を通じた、気候変動に対する海洋を活用した解決策の促進

e. 温室効果ガスの低排出及び気候に強靭な未来に向けた革新的な金融枠組み

f. 炭素の経済的価値の活用を通じた、温室効果ガスの低排出及び気候に強靭な未来に向けたNDCの実施と持続的な移行の加速