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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 持続可能な開発目標(SDGs)のための多国間主義についてのG20議長総括(G20開発大臣会合)

[場所] インドネシア、ブリトゥン
[年月日] 2022年9月8日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 我々G20開発大臣は、2022年9月8日、インドネシアのブリトゥンに集まり、インドネシアG20議長国及び過去の議長国の下での取組、合意、及び成果を踏まえ、2030アジェンダの実施と持続可能な開発目標(SDGs)の達成のための多国間システムの改革を含む、より包摂的な多国間主義に対するコミットメントを新たにした。

第1部

1. メンバーは、気候・生物多様性・汚染の危機、新型コロナウイルスのパンデミック、その他世界各地の危機の結果、世界経済の回復が鈍化し、大きな停滞に直面していることに同意した。ロシアのウクライナに対する戦争については、多数のメンバーが非難を表明した。また、開発作業部会(DWG)は地政学的問題を議論する適切な場ではないとの意見も示された。メンバーは、平和、敵対行為の停止、対話、そして国連憲章と国際法の尊重を呼びかけた。

2. メンバーは、これらが、世界のサプライチェーンの混乱、エネルギー・食料不安と栄養不良の増大、その他の人道的・経済的課題など、世界各地で深刻な結果を生み、持続可能な開発のための2030アジェンダを推進する取組をさらに悪化させたと指摘した。メンバーは、これらが、世界の混乱に対して最も脆弱な国々、特に開発途上国に不釣り合いに影響を及ぼしていることを認識した。従って、メンバーは、インドネシアのG20議長国及び過去の議長国の下での取組、合意、及び成果を踏まえ、SDGsを達成するために多国間主義を強化するとのコミットメントを再確認した。

第2部

以下の事項について合意があった:

3. 2022年のG20テーマである「共に、より強い回復」に沿って、我々は、グローバルヘルス・アーキテクチャーの強化、包摂的なデジタルトランスフォーメーションの実現、持続可能なエネルギー移行の加速というインドネシアG20議長国の3つの優先事項を歓迎する。G20開発作業部会(DWG)が行う取組とその成果物は、「誰一人取り残さない」という誓いの下、開発の課題に取り組み、2030アジェンダの実施とSDGsの達成を加速させるという前述の優先事項

に貢献するものである。

4. 我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダとそのSDGsの達成に対する

揺るぎないコミットメントを表明するが、これは、依然、万人のための持続可能な将来のためのブループリントである。我々は、持続可能な開発を国際協力のアジェンダの中心に据え、誰一人取り残さないことを約束した。現在、2030アジェンダの適時の実現を確実にするための期間は、10年を切っている。しかし、国際社会は、多重の危機及び課題、適切で負担可能なファイナンス及び技術へのアクセスの不足により、SDGs達成への軌道から全体としてはずれている。さらに、保健システムのひっ迫、教育危機の深刻化、グローバル・バリューチェーンの混乱、債務破綻リスク等、そして、新型コロナウイルスやその他のワクチン及び医学的・非医学的対策に関する、輸送の課題、誤情報や不公平なアクセスは、新型コロナウイルスのパンデミックによる公衆衛生と社会経済への悪影響をさらに悪化させ、SDGs達成への進捗をさらに阻害することとなった。食料・エネルギー不安の悪化、気候危機、ジェンダー不平等、金融引き締めからなる多重危機によって、憂慮すべき状況がさらに増幅している。

5. 我々は、食料・エネルギー供給の混乱、生活コストの上昇など、SDGsの達成を著しく脅かす多重危機に関する国連グローバル危機対応グループの報告書にも留意する。我々は、現在の世界的な食料安全保障の危機を深く懸念している。我々は、短期的にも長期的にも、影響を受けている国々及び人々に対する連帯を示す、迅速、効率的かつ強固な多国間の対応の必要性を認識し、運用可能な対応を支援することにコミットする。*1*G20として、我々は、世界の農業及び食料システムをより持続可能で強靭なものにするために協働しなければならない。したがって、我々は、食料安全保障、栄養及び食料システムに関するマテーラ宣言を踏まえ、全ての地域における世界の食料安全保障と栄養を達成するために、自発的な貢献を動員し維持するという我々のコミットメントを再確認する。このことは、持続可能な農業における革新的政策と責任ある投資の支援や、地域の食料システム、地域開発及び持続可能で強靭な食料システムの促進において、緊急かつ連携した対応を要求するものである。さらに、現在の世界的なエネルギー需要とエネルギー市場の変動は、全ての人々にとって低廉で信頼できる持続可能な近代的エネルギーを実現するために、信頼と長期目標に基づくパートナーシップの必要性を強調している。我々は、共に、より強く回復するために、クリーンで、持続可能で、公正で、低廉な、誰一人取り残さない包摂的なエネルギー移行を加速するための具体

的かつ実践的な行動に焦点を当てることの重要性を強調する。

6. 持続可能な開発のための2030アジェンダを適時に実施する緊急性に留意し、また、SDGsの達成に直接影響を与える多重の憂慮すべき危機に対処し、我々は技術及び負担可能な資金ファイナンスを含む資源の動員によりSDGsの実現の進捗を加速させるというコミットメントを再確認する。2我々は、2022年G20バリ・アップデートに示されているように、インドネシア議長国下においてG20がSDGsの達成に向け共同で具体的な行動を実現することの必要性を強く主張する。その際、我々は、SDGsの認知度向上、G20の取組と2030アジェンダとの更なる整合性の確保、協調と政策の一貫性の強化について、G20の財

務トラック及びシェルパ・トラックと協働していく。

7. 開発格差の是正というマンデートの実現に向けて、我々は、前述の開発課題

を考慮し、開発途上国が包摂的で、強靱で、ジェンダーに配慮した、社会的、経済的、環境的に持続可能な回復の取組を促進するための具体的行動を打ち出す。したがって、我々は、後発開発途上国(LDCs)や小島嶼開発途上国(SIDS)を含む開発途上国におけるより強い回復と強靱性のためのG20ロードマップに関する開発作業部会における取組を歓迎する。このロードマップは、LDCsやSIDSを含む開発途上国の回復の加速化に役立つことを目的としている。ロードマップは、3つの重点分野、すなわち、零細・中小企業(MSMEs)、適応型の社会的保護、及び温室効果ガスについて低排出型又は低炭素型であり気候変動に対して強靱な開発を通じた、ブルーエコノミーを含むグリーンエコノミーを含む。

8. 我々はまた、同じ考えの下、透明性と相互責任の重要性に留意し、SDGsの資金ギャップを解消するための新たな資金源を引き出すために、ブレンディッド・ファイナンスを含む革新的資金調達メカニズムの役割を強調する。我々は、2030アジェンダ達成の進捗を測定するための任意の統計枠組みの一つである持続可能な開発のための公的総支援(TOSSD)の貢献を認識する。世界的に債務レベルが上昇していることに鑑み、我々は、債務破綻に対応するためのG20財務トラックにおいて進行中の取組を認識する。過去、2020年のサウジアラビア議長国下、及び2021年のイタリア議長国下での業績や成果を踏まえ、我々は、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国におけるブレンディッド・ファイナンスを拡大するためのG20原則に関する開発作業部会における取組を歓迎する。G20原則は、ブレンディッド・ファイナンスの実施を拡大するための我々の共通の戦略的方向性と熱望を反映した一連の自発的原則を定めている。

2質の高いインフラ投資に関するG20原則の重要性を強調しつつ

9. また、我々は、ワクチン接種を含む高品質で安全、有効で負担可能な価格の医療製品への普遍的かつ公平なアクセスの欠如は、グローバルヘルスの問題であるだけでなく、開発の問題でもあると考える。ワクチン接種能力向上と輸送のための資金によって補完された、安全で有効な新型コロナウイルスワクチンのより公平な生産、アクセス、輸送、及びこれらのワクチンを配備するための資源のサージキャパシティは、普遍的で持続可能かつ強靱な回復の前提条件である。このような回復は、SDGsの達成を軌道に戻すための前提条件である。この点において、我々は、第12回WTO閣僚会議で先般合意された新型コロナウイルスのパンデミック対応及び将来のパンデミック対応に関する閣僚宣言及びTRIPS協定に関する閣僚決定を認識する。G20は、2020年のサウジアラビア議長国下で承認された開発途上国における新型コロナウイルス対応及び復興に向けたG20支援を通じ、グローバルヘルスの強化や開発課題への取組に貢献してきたが、さらに多くのことを行う必要がある。このような回復への取組を進め、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するために、我々は、WHOが主導するグローバル・ワクチン戦略への支持を再確認し、現地のニーズと国の予防接種計画を考慮しつつ、ワクチン接種及び、治療薬、診断薬、抗ウイルス薬を含むその他の対策への公平かつ普遍的なアクセスを確保する取組を引き続き推進する。さらに、我々は、これまでマテーラ宣言の下で促進されてきたように、保健システムの強化、ワンヘルス・アプローチの下での取組の強化にコミットするとともに、危機対応及び予防にとって不可欠な保健システムのパフォーマンスへの投資にコミットする。我々は、世界全体での保健システムへの公平なアクセスのために、パートナーシップを築くことを目指す。

10. 我々は、グローバルヘルスが世界的な開発課題であることを認識する。その提供は、低所得国や開発途上国を支援するSDGsに向けた進捗を加速させることを目的としている。この文脈で、我々は、G20ローマ首脳宣言を想起し、国際公共財である広範な新型コロナウイルスワクチンの接種を含む、新型コロナウイルスのパンデミックとの闘いという我々のコミットメントを再確認する。我々はまた、世界的な連帯、公平性、多国間協力、効果的なガバナンス、そして備えの中心に人々を据えることへの我々のコミットメントを再確認する。さらに、我々は、グローバル・ヘルス・ガバナンスを強化し、パンデミックに対する予防・備え・対応(PPR)に関する文書を策定するためにWHOで行われている議論と取組にコミットする。この中には、パンデミックに対するPPRへの持続可能な資金調達を促進するための資金調達メカニズムの特定、及び世界銀行に設置されるパンデミックに対するPPRのための金融仲介基金の設立が含まれる。また、我々は、設計段階においてWHOが中心的な調整機能を担う、パンデミックに対するPPRのためのG20財務・保健合同タスクフォースが設立されたことを評価する。国際保健におけるWHOの主導的役割を認識しつつ、将来の疾病のアウトブレイクが世界的なパンデミックに発展しないよう適時に予防・封じ込めるために、世界・地域・国内の保健システムが、より包摂的で、強靭な、よりよく備えられたものとなるよう、その能力を強化・確保するために、PPRが追求されなければならない。これはSDGs達成への更なる重大な停滞の予防となる。

11. これらの重要な取組は、より強力な多国間協力によってのみ進めることができる。しかしながら、我々の世界は、現在、多重危機と相互に増強し合うグローバルな課題の中で分裂に脅かされている。この厳しい現実は、多国間主義がより公平で、より強靭で、より持続可能な世界のための2030アジェンダ実現のための選択肢の一つではなく必然であり、多国間主義を再活性化するための呼びかけが必要な時期であることを示している。我々は、SDGs達成の適時な実現を確保するために、多国間主義を活性化し、多国間協力を支援することを含む国連75周年記念宣言における我々のコミットメントを想起する。我々は、国際法、協力及び世界的連帯の礎である、国連憲章の目的と原則に引き続き導かれる。

12. 我々G20開発大臣は、SDGsのための多国間主義を再活性化させるという我々のコミットメントを宣言し、G20ビジョン声明が2030アジェンダの適時な実現のためのそうした取組とコミットメントを具体化することを確認するため、ブリトゥン島に集まった。その際、我々は、G20の一連の作業と連携した全ての取組においてSDGsの達成を促進するとともに、パートナー国、国際機関、国際開発金融機関、関連するステークホルダーと連携し、アジェンダの推進を図る必要がある。

結び

 各国大臣は、以下の添付文書「後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国におけるより強い回復と強靭性のためのG20ロードマップ」及び「後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国におけるブレンディッド・ファイナンスを拡大するためのG20原則」に関する開発作業部会における取組を歓迎する。

 我々は、インドネシアのG20DWG議長国期間中に参加した国際機関の貢献に感謝する。我々は、インドネシア議長国の我々のアジェンダ運営に感謝する。我々は、2022年11月15-16日にバリで開催されるG20首脳会合に我々の成果文書を提出する予定である。我々は、2023年のインドのG20議長国下における進展と更なるイニシアティブを歓迎する。

{*1* FAO、IFAD、WFPやその他の関連機関の取り組みなど。}