[文書名]　20か国財務大臣・保健大臣合同会議議長総括

第1部−グローバル・ヘルスの文脈に関する議論の総括

1.　多くのメンバーは、ロシアのウクライナに対する不法かつ不当で、いわれのない侵略戦争を強く非難し、戦争の終結を求めた。これらのメンバーは、最も脆弱な人々や女性及び子供により甚大な影響を与えてきた、紛争による重要な保健インフラへの損害や医療従事者の犠牲に懸念を表明した。彼らは、戦争が現下の新型コロナウイルスによるパンデミックや国際的な食料不安、栄養不良を悪化させ、その結果、健康及び経済への影響を与えているとの見解を表明した。いくつかのメンバーは、不幸なかつ進行中のロシア・ウクライナ間の戦争に関して主張されたさまざまな見解に留意し、本フォーラムにおいて地政学的な問題を扱うことは適切とは考えないとした。2メンバーは、地政学的緊張の複層化や紛争、その他世界各地におけるこの種の対立を懸念し、本フォーラムにおいて1メンバーを非難することは適切でないとの見解を表明した。

第2部−具体的な成果及び更なる行動に関する合意

　我々は、多国間協力を通じて重要なグローバル・ヘルスの問題に対処する重要性に合意するとともに、以下の成果に合意した。

2.　新型コロナウイルスのパンデミックの影響は世界中で引き続き感じられている。我々は、あらゆる場所で可能な限り早期にパンデミックを制御し、人々を備えと対応の中心に置き、健康危機への備え、予防、検出、報告、対応のための我々の共同の取組を強化するという我々のコミットメントを再確認し、特にグローバル、国、地域レベルでの保健システムとコミュニティの強靭性、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ（UHC）の達成を促進する。我々は、安全で、安価で、質が高くかつ有効なワクチン、治療薬、診断薬（VTD）への適時、公平かつ普遍的なアクセスが極めて重要であることを認識する。我々は、全ての国で70%の人々がワクチン接種を完了するという世界保健機関（WHO）の目標には程遠いものの、世界中で新型コロナウイルスワクチンの接種率が上昇していることを歓迎し、特に低・中所得国でのワクチン接種を増やすための更なる努力を奨励する。我々は、世界的に検査率が低下していることに留意する。我々は、世界がこのウイルスの長期的な制御に移行する中で「新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス加速事業（ACT-A）」の柱や機関を通じることを含め、これらのギャップに対処する国内外の取り組みを引き続き支援していく。我々はまた、ワン・ヘルス・アプローチを採用しつつ、効果的なグローバルサーベイランス、従事者の訓練、VTDにおける製造・研究・開発の強化、と、薬剤耐性の脅威への取り組みの重要性を認識する。

3.　我々は、パンデミック予防・備え・対応（PPR）のためのグローバル・ヘルス・アーキテクチャー（国際保健の枠組み）を強化するために行われている喫緊の取組を引き続き支援する。我々は、パンデミックPPRを強化するための、世界保健総会で決定されることを念頭に置いた、法的拘束力と非法的拘束力の両方の要素を含む、法的拘束力のある文書のドラフトと交渉を行う政府間交渉機関や、国際保健規則（IHR）（2005）の的を絞った改正を検討する国際保健規則の作業部会の活動を支持する。我々は、パンデミックPPRのガバナンス、システム、資金調達の強化を加盟国と一致して推進するWHOの活動を支援する。我々は、ワクチン・アライアンス（Gavi）、世界エイズ・結核・マラリア対策基金（グローバルファンド）、感染症流行対策イノベーション連合（CEPI）、ユニットエイド、革新的な新たな診断のための基金、医薬品特許プールのようなグローバル・ヘルスにおいて革新的で柔軟なパートナーシップが、WHO、ユニセフ、およびその加盟国との緊密な協力の下、将来のパンデミックの脅威に対するグローバル・ヘルスの強靱性および対応能力を構築する上で果たせる役割を認識する。

4.　イタリアとインドネシアが共同議長を務め、WHOが主管し世界銀行がサポートする事務局からの支援を受けたG20財務・保健合同タスクフォース（タスクフォース）は、グローバル・ヘルス・アーキテクチャーの強化に貢献するというG20首脳による2021年ローマ宣言からのマンデートを進めてきた。タスクフォースは、G20議長国インドネシアの下、パンデミックに対応するための共同活動を推進し、パンデミックPPRの資金ギャップを評価し、金融ファシリティの設立を促進し、財務・保健省間の連携体制の発展を目指し様々な選択肢を検討してきた。

5.　G20ハイレベル独立パネル並びに、WHO及び世界銀行は、年間約100億ドルのパンデミックPPR資金ギャップが存在すると推定した。G20サウジアラビア議長下、イタリア議長下において始まり、インドネシア議長が継続したように、我々は、IHR（2005）遂行における重大なギャップへの資金供給と、PPR能力を向上させるための追加財源の提供を歓迎する。この点に関して、我々は、世界銀行が主管するパンデミックPPRのための新たな金融仲介基金（パンデミック基金）の設立を歓迎する。パンデミック基金は、パンデミックPPRの重大なギャップに対処し、国、地域、グローバルレベルでの能力を構築し、パンデミックPPRのための資金源に付加価値をもたらし、補完的投資を推進し、パンデミックPPRの強化に向けた協調的で一貫したアプローチを促進することを目的としている。我々は、パンデミック基金の包摂的なメンバー構成及び低・中所得国、市民社会組織、ドナーからの参加を歓迎し、グローバル・ヘルス・アーキテクチャーにおけるWHOの指導的役割を反映する、この努力におけるWHOの技術的専門性と調整面での中心的な役割を認識する。我々は、技術面におけるリーダーであり技術諮問委員会の議長を務めるWHOと共に、世界銀行が主管する事務局の活動に感謝する。我々は、パンデミック基金の初回案件の募集が可能な限り早期に開始されることを期待する。我々は、パンデミック基金を通じて、途上国のパンデミックPPRの能力を向上させることにコミットし、パンデミック基金がその統治文書に従って運営され、パンデミックPPRの重要なギャップを埋めるのに効果的であり、また引き続きWHOが調整面での中心的な役割を果たし、G20との強いつながりを保ち、意思決定において低・中所得国及び非G20パートナーの視点に包摂的であることを確保するために、学んだ教訓に拠って必要な変更を取り入れることを目的として、パンデミック基金の棚卸し的な初年度末の見直しを期待する。我々は、現在のドナーによる14億ドルに達する資金拠出を称賛し、追加の自発的な拠出を奨励する。我々は、新たなドナーに対し、可能な限りパンデミックファンドに参加することを求める。

6.　パンデミックPPRのために、財務・保健省間の協力を続けることが不可欠である。我々は、タスクフォースのマンデートを延長し、タスクフォースの事務局にタスクフォースの共同議長や次のG20議長であるインド、G20トロイカ、G20メンバーと協働し、複数年の計画期間を考慮して2023年のタスクフォースの作業計画に合意することを求める。我々は、世界銀行の支援を受けつつ、事務局を引き続き主管するWHOに感謝する。2023年、タスクフォースは、引き続きインドネシアとイタリアが共同議長を務め、先進国と新興国の視点を代表し、2023年G20議長国のインドの支援を得つつ、WHO、国際金融機関、その他の関連機関の専門知識を引き続き活用する。低所得国の声を拡大するために、我々は、必要に応じ、主要な地域組織にタスクフォースの会合への参加を呼びかける。我々は、タスクフォースがグローバル・パンデミックPPRアーキテクチャーを補完し続け、グローバル・ヘルス・ガバナンス・システムの重複や分断がこれ以上生じないことを担保するよう、WHOと緊密に協力していく。G20ローマ首脳宣言からのマンデートを実現するために、2023年にタスクフォースは、財務省及び保健省間の連携体制を引き続き発展させ、パンデミックへの共同対応を発展させるために過去の財務・保健の連携のベストプラクティスや経験の共有を必要に応じて行う。タスクフォースは、各国固有の状況を考慮し、資源動員に関する更なる作業の重要性を認識しつつ、新たなパンデミックに対応する財務と保健の連携に焦点を当て、パンデミックによる経済リスクと脆弱性、及びそれらを軽減する方法について、よりよく理解するための作業を実施する。我々は、タスクフォースに対し、2023年に財務大臣と保健大臣にその進捗を報告するよう要請する。