[文書名] インドネシアJETPに係る共同声明(インドネシア共和国政府(GOI)と日本、アメリカ合衆国、カナダ、デンマーク、欧州連合、ドイツ連邦共和国、フランス共和国、ノルウェー、イタリア共和国及びグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の各国政府(合わせて「国際パートナーズグループ」またはIPG)による共同声明)
インドネシア共和国政府(GOI)と日本、アメリカ合衆国、カナダ、デンマーク、欧州連合、ドイツ連邦共和国、フランス共和国、ノルウェー、イタリア共和国及びグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の各国政府(合わせて「国際パートナーズグループ」またはIPG)による共同声明。
1. 気候変動が我々の国、人々、環境に与える最悪の影響を回避するため、持続可能な開発目標7(SDG7)を含む2030アジェンダとパリ協定の目標に向けた取組を加速させ、またグラスゴー気候合意を実施する必要性を認識する。
2. 工業化以前の水準よりも1.5℃高い水準までに抑えることを射程に入れ続けることよって気候変動の影響を制限することは、国際社会が共同で2030年までに世界のCO2排出量を2019年比で半減させ、今世紀半ばまでに世界のCO2排出量ネットゼロを達成することにかかっていることを認識する。
3. エネルギーへの普遍的かつ負担可能で信頼できるアクセスのための努力を強化しながら、電力部門の排出量削減を促進し、エネルギー効率を向上させ、再生可能エネルギーの導入を促進することによって、エネルギーシステムを脱炭素化する緊急性を強調する。
4. 「2022 年G20 サステナブル・ファイナンス報告書」における移行金融枠組みの実践的かつ自発的な提言に沿って、低温室効果ガス排出と気候変動に強い経済に向けて、秩序ある、公正でかつ負担可能な移行を支援するための移行金融を可能にする行動を取る必要性を認識する。
5. 座礁資産の可能性を防ぐために、ネットゼロ排出の世界への移行を支援するための民間資金の動員を奨励する必要性を認識する。
6. 移行金融枠組みを開発する際の考慮事項としての環境・社会・ガバナンス基準の重要性及び現在の基準とエネルギー移行ニーズとの間に存在するギャップを認識する。
7. 質の高いグリーン雇用を創出する産業革新の機会をもたらし、石炭火力発電所の早期退役を通じた電力部門の迅速な排出削減により直接的または間接的に影響を受ける、女性、若者、その他の移行に対して脆弱な人々を含むすべてのコミュニティと社会集団を考慮する公正なエネルギー移行の重要性と、そのような移行により影響を受けているインドネシア経済のいくつかの重要な部門が存在することを認識する。
8. 「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」は、貧困と失業を軽減することができ、また、国民、特に最も貧しい人々やエネルギー移行による潜在的な混乱に対して最も脆弱な人々のために強固な保護を提供することに配慮すべきであることに留意する。
9. さらに、公正な移行プロセスは、労働者がよりグリーンな未来への移行の主要な受益者となるように、再教育とスキルアップ、雇用創出、その他の形態の協力を通じて人材育成プログラムを実施するための、組織労働者や企業を含む関係者の完全な関与に基づいていることを強調する。
10. 2050年までの低炭素・気候変動強靱化に向けた長期戦略の作成、2060年またはそれ以前に経済全体でのネットゼロ排出を約束、再生可能エネルギーに関する大統領令の制定、オングリッド石炭火力パイプライン(計画段階事業)の削減に向けた取組、再生可能エネルギー導入を可能にするエネルギー・金融両部門の必要な政策・法律・規制の策定と実施、国内石炭供給への補助金とエネルギー料金の段階的引き下げへの取組など、ネットゼロの未来に向けてインドネシア共和国政府及び国営企業がすでに進めている進展を含め、気候変動緩和における世界的取組に対するインドネシアの重要な貢献を認識する。
11. 財務省のスペシャル・ミッション・ビークル(SMV)であるPT Sarana Multi Infrastructure (PT SMI)の下で、エネルギー移行に関連する一部の資金を必要に応じて管理するための国別プラットフォームの設立を認識する。
12. インドネシアが公正なエネルギー移行の早期リーダーとなることを意図していること、グリーン移行の経済・社会的コストを最小限に抑えながら再生可能エネルギーの恩恵を受ける努力をしていること、そして世界的な協働の重要性を認識する。
13. 持続可能で公正なエネルギー移行を実現するために必要な数十年の時間枠を考慮し、長期的な協働とパートナーシップの必要性を認識し、当初の3~5年の期間を超えてパートナーシップを延長できることに留意する。
14. インドネシアの取り組みに対して、幅広いソースからの資金調達、技術支援、人材育成を含む、協力の規模を拡大し続ける重要性を認識する。
15. JETPは、インドネシア企業が能力を向上させ、再生可能エネルギーやエネルギー効率を含む、クリーンエネルギーソリューションの製造バリューチェーンの一部となる機会を提供することを目指すことを認識する。
16. 上記の目的を追求するため、IPG、持続可能な追加的資金源、及び既存の国際的なイニシアティブ、例えば「G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ」を活用するため国際パートナーの包摂性からもたらされる可能性がある強化された資金調達の必要性を認識する。
17. 気候投資基金の「石炭からの移行促進投資プログラム」とアジア開発銀行の「エネルギー・トランジション・メカニズム」を支援する。
18. 包摂的で持続可能かつ公平なより良い経済成長を達成するために、エネルギーアクセス、技術、金融という3つの優先分野におけるエネルギー移行のための世界的な支援を改めて表明するという、2022年のG20議長国としてのインドネシアのコミットメントを認識する。
意図すること:
1. 工業化以前の水準よりも1.5℃高い水準までに抑えることを射程に入れ続ける軌道を支援し、再生可能エネルギーの拡大、オングリッド及びオフグリッド石炭火力発電の逓減並びに労働者とコミュニティ、特に石炭からのエネルギー移行により最も影響を受ける人々のための公正なエネルギー移行を達成する具体的行動の実施に基づく、野心的な電力部門の排出削減の道筋と戦略を含む、迅速かつ野心的で公正なエネルギー移行をインドネシアが追求することを支援する長期的なパートナーシップとしてJETPを設ける。
2. 可能な限り最も野心的な排出削減を達成するために、インドネシアの電力部門の脱炭素化を可能にする、インドネシア政府とIPGのパートナーシップとしてJETPを実施する。このパートナーシップには、バンク・オブ・アメリカ、シティ、ドイツ銀行、HSBC、マッコーリー銀行、MUFG、スタンダードチャータードなどの金融機関を初期メンバーとして含む「ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)」作業部会も含み、国際開発金融機関の専門知識や資源、業務も活用される予定である。
3. このパートナーシップは、オングリッド及びオフグリッド並びに産業用自家電源システムを含む電力部門に関して、以下の共同目標を達成するための包括的な投資計画(JETP投資・政策計画)を策定することを目指す。
i. 国際支援を条件として、石炭火力発電所の早期退役を含め、2030年までに電力部門の排出量を絶対値で290MT-CO2以下(2030年の基準値357MT-CO2から減少)をピークとし、その後は野心的な軌道で直ちに減少させ、2050年までに電力部門のネットゼロ排出を達成する。
ii.再生可能エネルギーの導入を加速し、2030年までに全発電量の少なくとも34%を再生可能エネルギーが占めるようにする。
iii.上記の目標を達成するために必要な要素として、JETP投資・政策計画の中でインドネシア政府によって優先化され、特定された石炭火力発電所の早期退役を、IPGの支援により加速させる。
iv. IPG の支援により、結果として生じるエネルギーとコストの節約につながる基準などを通じて、エネルギー効率と電化に係る手段、技術及び改革の広範な導入を加速する。
v. IPGと協働しながら、現地の技術力と知識に投資することによって、再生可能エネルギーとエネルギー効率において、適切かつ実現可能な範囲で、活力と競争力のある現地産業の発展を加速させる。
vi.関連する利害関係者と協議しながら、インドネシアの人口のうち移行による潜在的な悪影響に対して最も脆弱な層、労働者、並びに女性、若者及び石炭産業又は石炭産業に関連する雇用で生計を立てている脆弱な人々に特に焦点を当てた全ての社会集団を特定し、支援するための確固たる計画を策定することによって、公正なエネルギー移行を実現する。
vii.大統領令Perpres 112/ 2022に従って自家発電石炭火力発電所の開発を制限するとともに、自家発電施設を含むジャワ・バリ以外の発電施設について、可能性のあるゼロ排出と再生可能エネルギーの解決策を見出し、実行するために協力する。ただし、当該解決策は、インドネシアの産業発展と経済成長の必要性とネット・ゼロへのコミットメントとのバランスをとるため、負担可能で(非再生可能エネルギーと同等かそれ以下)、信頼性が高く(ベースロードを供給できる)、アクセスが容易で、かつタイムリーである(非再生可能エネルギーの代替手段と同等かそれ以上に早く導入できる)ことを条件とする。
viii. 現在のRencana Usaha Penyediaan Tenaga Listrik(RUPTL)for 2021 - 2030に含まれている計画中のオングリッド石炭火力発電所の既存のパイプライン(計画段階事業)を凍結するとともに、再生可能エネルギーに関する大統領令(Perpres 112/ 2022)に従い、オングリッド石炭発電設備の新規建設の完全なモラトリアムを再確認する。
ix. RUPTLにおける再生可能エネルギー目標を達成し、強固な国内再生可能エネルギー製造能力を支援するために再生可能エネルギー導入を拡大するため、現地調達要件を国内再生可能エネルギー製造能力のロードマップに整合させる。現地調達要件の進展は、実行可能な国内市場のサイズと規模を考慮すべきである。
x. 贈与、譲許的融資、市場金利融資、保証及び技術支援を含む手段(その一部は、民間投資のリスク回避と触媒として使用される)の組み合わせにより、目標を達成するために十分な資金を動員する。
xi. パートナーシップを通じて、今後3~5年間で200億米ドルを動員し、そのうち100億米ドルはIPGメンバーにより動員される。インドネシア政府及びIPGと緊密に協働しながら、GFANZ作業部会メンバーは、野心的な移行の道筋と投資計画の支援に当たり、少なくとも100億ドルの民間資金を動員し、促進するよう取り組む。民間部門の資金は、触媒的な公的資金を条件とするものとし、国際開発金融機関の関与の強化を含む全ての関係者の集団的な野心により、公的資金は、上記の金額を大幅に上回る民間資金を生み出す可能性を持っている。これらの資金は、透明性をもって報告され、インドネシア政府と関係者の進展に応じた、予算上の手続きと条件に沿った、国の政策と実現環境の改善における継続的な進展を含め、競争入札によるプロジェクトのパイプライン(計画段階事業)を含むJETP投資・政策計画への同意を条件とする。パートナーシップの継続は、例えば、新たな自家発電石炭を回避及び全ての新規自家発電プロジェクトの代替案として再生可能電力供給への投資をうまく特定するための戦略の策定を含め、タイムリーでゼロ排出、負担可能で信頼できる代替手段が利用できる場合には、新たな石炭発電能力を持たないことを条件とする見込みである。
4. この共同声明は、インドネシア政府及び国際パートナーズグループのメンバーによる政治的コミットメントを構成するものであり、拘束力のある国際合意ではない。
付録:パートナーシップ・アクションプラン
今後6ヶ月間、パートナーシップは以下の計画を実行するつもりである。
1. 最初の3ヶ月以内:
a. 加速された公正なエネルギー移行に関する包摂的な政治対話(市民社会、民間部門等の非政府関係者を含む)を確定し、事務局として活動する既存の団体を特定し、パートナーシップの進捗についてリーダーレベルのアップデートを提供する。
b. 共同声明の「意図すること」セクションを運用するために、支援される行動の範囲を決定する。
c. JETPの目標を支援するため、民間部門からのものを含む投資を効率的かつ市場が主導する方法で促進するため、エネルギーと金融の両部門において政策改革戦略を策定する。
d. 民間部門の関与のための明確な戦略を特定する。
e. 資金調達の条件をさらに明確化・精緻化する。
f. 特定のJETPプロジェクトや取組に対する最初の資金源を確定する。
g. インドネシアに対し、ネット・ゼロ経済への広範なエネルギー移行の中で、持続可能な財政的・技術的支援を構築することを支援する。
h. コンセプトアプローチをさらに発展させ、JETP投資・政策計画における最もインパクトのある用途に向けて追加の技術的・財政的支援を活用するためのインプットを募集するため、開発金融機関や主要なステークホルダーと調整プラットフォームを設置する。
2.6ヶ月以内:
a. 現地調達の要件に対応した、国内の再生可能エネルギー製造能力のためのロードマップを開発する。
b. 共同声明に含まれるトップライン目標、及びタイムリーでゼロ排出、負担可能で信頼できる代替手段が利用可能な場合には追加的な石炭設備を制限するというコミットメントの順守を評価するため、年2回のレビュープロセスを開発する。
c. 公正なエネルギー移行を実現するための投資要件と機会を特定するため、JETP投資・政策計画を策定する。これは、インドネシア政府が主導し、事務局が管理・技術支援を行い、PTSMIが協力すべきである。また、投資・政策計画は公正なエネルギー移行のための民間投資を妨げるエネルギー・金融市場の規制障壁に対処するために必要な政策改革の概要を提供する。
d. このパートナーシップのための完全な作業プログラムを、JETP投資・政策計画に基づいて作成する。作業プログラムは、包摂的なプロセス、つまり、民間部門や市民社会を含む非政府関係者の参加を得て作成され、インドネシアの公正なエネルギー移行がもたらす社会・経済的影響に取り組む。
e. グリーン開発への明確な道筋を支援するため、ネットゼロ目標に沿った電力部門における2030年のロードマップを策定する。
f. インドネシアの人々にとって安定した負担可能な電力を維持しながら、排出量を大幅に削減する方法で、2030年前後でオングリッド及びオフグリッド石炭火力発電所の早期退役または建設回避を加速させる計画を特定する。
g. インドネシア国営電力公社(PLN)及び関連子会社の長期的な財務の持続可能性を向上させるために作用する、潜在的な融資手段及び政策を特定する。
h. インドネシアの公正なエネルギー移行の活動を支援するために、国内機関からのものを含む、更なる財源を活用するための戦略を策定する。