データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20バリ首脳宣言

[場所] バリ
[年月日] 2022年11月16日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1. 14年前、G20の首脳は、我々の世代における最も深刻な金融危機に直面する中、初めて会合を行った。我々は、規模の大きなグローバルな経済主体として、共同で責任を負っていること、並びに、我々の協力が世界経済の回復に必要であり、グローバルな課題に取り組み、強固で、持続可能で、バランスのとれた、かつ包摂的な成長の基礎を築くために必要であることを認識した。我々は、G20を国際経済協力に関するプレミア・フォーラムと位置付け、本日、我々は、深刻な世界経済の課題に再び対処するに当たり協力するという我々のコミットメントを再確認する。

2. 我々は、2022年11月15日及び16日、他に類を見ない多元的危機の中、バリ島で会合を行った。我々は、経済の低迷を招き、貧困を増加させ、世界経済の回復を遅らせ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を妨げた、新型コロナウイルスのパンデミック及び気候変動を含むその他の課題によりもたらされた惨状を経験してきた。

3. 今年、我々は、ウクライナにおける戦争が世界経済に更なる悪影響を与えていることも目の当たりにした。この問題に関して議論が行われた。我々は、3月2日の国連総会決議ES―11/1(141か国が賛成、5か国が反対、35か国が棄権、12か国が欠席)においてロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾とし、同国のウクライナ領土からの完全かつ無条件での撤退を要求している国連総会や、国連安全保障理事会を含む他のフォーラムで表明してきた自国の立場を改めて表明した。ほとんどのG20メンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難し、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、また、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギー及び食料不安の増大、金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における既存の脆弱性を悪化させていることを強調した。この状況及び制裁について、他の見解及び異なる評価があった。G20が安全保障問題を解決するためのフォーラムではないことを認識しつつ、我々は、安全保障問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。

4. 平和と安定を守る国際法と多国間システムを堅持することが不可欠である。これには、国際連合憲章に謳われている全ての目的及び原則を擁護し、武力紛争における市民及びインフラの保護を含む国際人道法を遵守することが含まれる。核兵器の使用又はその威嚇は許されない。紛争の平和的解決、危機に対処する取組、外交・対話が極めて重要である。今日の時代は戦争の時代であってはならない。

5. 今日の世界経済における重要な局面において、共通の課題に対処するために、G20が、国際的なマクロ政策での協力及び具体的な協働も含め、利用可能な全ての政策手段を用いつつ、具体的で、正確で、迅速かつ必要な行動をとることが不可欠である。その際、我々は、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国がこうした地球規模の課題に対応しSDGsを達成するに当たり、そうした国々へ支援を行うことにコミットしている。G20議長国インドネシアの「共に回復し、より強く回復する」というテーマに沿って、我々は、強固で包摂的かつ強靱な世界経済の回復、並びに雇用と成長をもたらす持続可能な開発のためのアジェンダを推進するため、協調行動をとる。

以上のことを踏まえ、我々は:

− マクロ経済政策対応及び協力において引き続き機動的かつ柔軟である。我々は、長期的な成長、持続可能かつ包摂的、グリーンで公正な移行を支援するため、公共投資及び構造改革を行い、民間投資を促進し、多角的貿易及びグローバル・サプライチェーンの強靱性を強化する。我々は、長期的な財政の持続可能性を確保する。G20の中央銀行は、物価の安定を達成することにコミットしている。

− 金融の強靱性を強化し、持続可能な金融と資本フローを促進するために世界金融危機以来とられた措置に留意しつつ、マクロ経済及び金融の安定を守るとともに、下方リスクを軽減するためにあらゆる利用可能な手段を用いることにコミットしている。

− 食料及びエネルギー安全保障を促進し、市場の安定を支援するための行動をとる。価格上昇の影響を緩和するために一時的なかつ的を絞った支援を提供し、生産者と消費者の間の対話を強化し、長期的な食料及びエネルギー安全保障上のニーズ及び強靱で持続可能な食料・肥料・エネルギーシステムのための貿易及び投資を増加させる。

− SDGsの達成を支援するため、民間投資の促進を含め、より多様な革新的資金源及び手段を通じ、低・中所得国及びその他の開発途上国への更なる投資を引き出す。我々は、多国間開発金融機関(MDBs)に対し、持続可能な開発及びインフラ投資によるものを含むSDGsの達成を支援し、グローバルな課題に対応するため、そのマンデートの範囲内で追加の資金を動員し提供するための行動を前進させることを求める。

− SDGsの達成を加速させ、持続可能な開発を通じた万人の繁栄を達成することに改めてコミットする。

6. 我々は、現在の紛争及び緊張によって悪化した世界の食料安全保障上の課題について深く懸念している。したがって、我々は、とりわけ途上国の脆弱性に対処するため、命を救い、飢餓と栄養不良を防ぐための緊急の行動をとることにコミットするとともに、持続可能で強靱な農業・食料システム及びサプライチェーンに向けた変革を加速するよう求める。我々は、世界的な食料危機に対処するために利用可能なあらゆる手段を用いて、最も脆弱な人々を飢餓から守ることにコミットする。我々は、食料品及び肥料の世界的な価格高騰及び不足を含む食料安全保障上の課題に対処するため、更なる協調行動をとる。我々は、国際農業・食料安全保障プログラム等のG20の取組を想起し、食料安全保障を支援するための国際的な、地域的な又は各国のイニシアティブを歓迎する。我々は、特に、国連事務総長による食料・エネルギー・金融に関する国連グローバル危機対応グループ並びに世界銀行及びIMFの食料安全保障に係る対応の進捗に留意する。我々は、G20マテーラ宣言を基礎とし、持続可能な形で食料を生産し流通させ、食料システムが気候変動への適応及び緩和並びに生物多様性の喪失防止・回復に一層貢献することを確保し、食料源を多様化し、全ての人のために栄養ある食料を奨励し、国際的、地域的及びローカルな食料バリューチェーンを強化し、並びにフードロス及び食料廃棄を削減する取組を促進するために協力することの重要性を強調する。また、我々は、ワンヘルス・アプローチを実施し、食品科学技術の研究を強化し、また、食料サプライチェーン上の関連するステークホルダー、特に女性、若者、小規模・零細農水産業者の能力を向上させる。

7. 我々は、困難な状況下で食料サプライチェーンの機能を維持するための国際的な取組を支持する。我々は、特に開発途上国及び後発開発途上国において支援を必要としている人々のため、食料及び食品についてアクセス、手頃さ及び持続可能性を確保することにより、食料不安に対処することにコミットしている。我々は、開かれ、透明性があり、包摂的、予見可能かつ無差別的で、WTOルールに準拠した、ルールに基づく農業貿易に対する支持を改めて表明する。我々は、市場の予見可能性を高め、歪みを最小化し、ビジネスの信頼を高め、農業及び食料の貿易が円滑に進むようにすることの重要性を強調する。我々は、世界の農業・食料品の貿易のルールを更新し、農産品及び食品の貿易を促進する必要性並びに関連するWTOの規定と整合的ではない態様での食料及び肥料に係る輸出禁止又は輸出制限を課さないことの重要性を再確認する。我々は、食料貿易のサプライチェーンの混乱に対して最も脆弱な人々を支援するため、食料及び肥料について、地元の食料源を基礎とするものを一部含む持続的な供給並びに生産の多様化にコミットしている。我々は、意図的に食料安全保障に悪影響を与えることを回避する。我々は、緊急事態における食料へのアクセスを確保するための人道的な供給を促進することにコミットするとともに、利用可能な資金を有する国連加盟国及び全てのステークホルダーに対し、食料危機によって最も影響を受けた国々の政府の要請に応じ、また、これらの政府により評価されたニーズに基づき、そうした国々を支援するために現物供与及び資金の提供を行うよう求める。我々は、人道的な活

動については制裁対象としないことを引き続き支持するとともに、国連における現在の取組を通じたものを含め、全ての国がこの目的を支持することを求める。我々は、世界の食料安全保障と栄養の状態を引き続き注意深くモニタリングする。

8. 我々は、緊張を緩和し、世界的な食料不安及び途上国における飢餓を防ぐための、ウクライナ及びロシア連邦からの穀物、食料品及び肥料/投入物の妨害されない輸送に関する、「ウクライナの港からの穀物及び食料品の安全な輸送に関するイニシアティブ(黒海穀物イニシアティブ)」並びに世界市場へのロシア産の食品及び肥料の供給促進に関するロシア連邦と国連事務局の間の了解覚書から成る、トルコ及び国連の仲介によって2022年7月22日に署名された2つのイスタンブール合意を歓迎する。我々は、全ての関連するステークホルダーによるこれらの合意の完全、適時かつ継続的な実施の重要性及び当事者によるこれらの取組の継続を求める国連事務総長の呼びかけを強調する。この文脈で、我々は、EUの「連帯レーン」、国連世界食糧計画(WFP)によって促進されたロシアの肥料の寄付等、農産・食料品の流れを確保する他の取組を強調する。更に、我々は、アラブ調整グループのイニシアティブのような食料不安に対処する様々なイニシアティブに留意する。

9. 我々は、自然と調和した形で生産性及び持続可能性を促進するため、また食料サプライチェーンの効率性と平等なアクセスを向上させることにより、とりわけ小規模な農水産業者の生計を改善し所得を向上させるため、農業及び食料システムにおけるデジタルイノベーションを含む革新的なプラクティスと技術の導入を支援することにコミットしている。我々は、農業研究及び科学並びに証拠に基づくアプローチへの責任ある投資を促進する。我々は、信頼できる適時のデータと情報の共有を通じて、食料及び肥料/投入物市場の透明性を高め、市場の不確実性を低減し、食料安全保障と栄養のための協調した形での政策対応を支援する、早期警戒ツールとして農業市場情報システム(AMIS)を引き続き強化する。

10. 我々は、食糧農業機関(FAO)と世界銀行グループに対し、食料不安に関するマッピング演習の結果を共有するよう求める。同演習は、今後、技術専門家や他の関連国際機関からのインプットと統合され、食料安全保障への対応に関する体系的分析を提供する。これは、世界的な対応における主要なギャップを特定し、食料と栄養に関する変数及び資金について検証し、肥料の需要及び供給について検証し、G20農業市場情報システム(AMIS)を強化し、また、更なる技術的・体系的分析を必要とする中期的課題の特定を行う。FAOと世界銀行グループは2023年の春会合までに報告する。

11. 我々は、気候とエネルギーの危機が地政学的な課題により更に悪化している時に会合を行った。我々は、エネルギー価格と市場の変動、また、エネルギー供給の不足/途絶を経験している。我々は、クリーンで、持続可能で、公正かつ負担可能で、包摂的なエネルギーへの移行と持続可能な投資の流れを加速し確実なものとすることにより、エネルギーシステムを迅速に変革・多様化させ、エネルギー安全保障、強靱性及び市場の安定性を強化する緊急性を強調する。我々は、世界のエネルギー需要に見合った負担可能なエネルギー供給を確保することとの重要性を強調する。我々は、最新の科学的発展と各国の異なる事情を考慮しつつ、今世紀半ば頃までに、世界全体で温室効果ガス排出量のネット・ゼロ又はカーボンニュートラルを達成するとの我々のコミットメントを改めて表明する。我々は、途上国、特に最も脆弱な国々に対し、エネルギー分野における負担可能で信頼性が高く持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセス、能力構築、公的領域における負担可能な最新技術及び互恵的な技術協力の提供並びに緩和行動への資金提供の観点から、継続的な支援を行うことを求める。

12. 我々は、SDGsの目標7(SDG7)の目標達成へのコミットメントを再確認し、エネルギーアクセスにおけるギャップを解消し、エネルギー貧困を根絶すべく努める。我々の指導的役割を認識し、「バリ・コンパクト」及び「バリ・エネルギー移行ロードマップ」の下、我々は、エネルギー市場の安定性、透明性及び負担可能性を達成するための解決策を見いだすことにコミットしている。我々は、エネルギーのサプライチェーンとエネルギー安全保障を強化し、エネルギーミックス及びエネルギーシステムを多様化することによって、エネルギー移行を加速するとともに、我々の気候変動に係る目的を達成する。我々は、各国の事情を考慮しつつ、再生可能エネルギー資源を含むゼロ排出及び低排出電力の導入並びにエネルギー効率、排出削減対策技術及び除去技術を強化するための措置を迅速に拡大する。我々は、各国の事情に沿って、また、公正な移行に向けた支援の必要性を認識しつつ、再生可能エネルギーを含むクリーン電力の導入の急速な拡大及び排出削減対策の講じられていない石炭火力発電の逓減(フェーズダウン)に向けた努力の加速を含む省エネルギー措置の急速な拡大によるものを含む技術の開発、導入、普及及び政策の採用を加速することが重要であると認識している。我々は、2009年にピッツバーグで行われた、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を、中期的かつ段階的に廃止・合理化するというコミットメントを実施するための努力を向上させ、最貧層や最も脆弱な人々に的を絞った支援を提供しつつ、この目標を達成することにコミットする。我々は、地域的なエネルギーの相互連結の整備を含め、エネルギー価格の変動を抑制し、クリーンで安全で包摂的かつ持続可能な技術を強化することにより、エネルギーの負担可能性及びアクセスを確保するための国際協力及び関係する生産者・消費者間の対話を強化する。我々は、最貧国及び最脆弱国に的を絞った支援を提供しつつ、持続可能なインフラ及び産業並びに革新的技術への投資を促進すること、また、適当な場合における、カーボンプライシング及びかかるプライシングによらないメカニズム並びにインセンティブの活用を含む、クリーンエネルギーへの移行を支えるための幅広い財政・市場・規制メカニズムを促進することにコミットしている。

13. 我々は、我々の主導的な役割に留意し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の目的を追求するに当たり、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映した形で、パリ協定及びその気温目標の完全かつ効果的な実施を強化することによって気候変動に取り組むという我々の確固たるコミットメントを再確認する。我々は、必要に応じてパリ協定に整合させるために、我々の国が決定する貢献(NDC)における2030年目標を再検討し、強化するよう求めることを含む、グラスゴー気候合意及び国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)を始めとするこれまでのCOP及びパリ協定締約国会合(CMA)の関連する成果の実施において我々の役割を十分に果たす。これに関して、我々は、新たな又は更新されたNDCによる気候変動への行動の強化を歓迎し、締約国に対し、緩和と適応の野心と実施手段を拡大するとともに、アフリカで開催されているCOP27において損失及び損害(ロス&ダメージ)について進展させることを奨励する。我々は、気候変動の影響は、摂氏1.5度の気温上昇の方が、摂氏2度の気温上昇に比べてはるかに小さいという気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価に留意し、気温の上昇を摂氏1.5度に制限するための努力を追求することを決意する。このためには、異なるアプローチを考慮しつつ、長期の野心と短期及び中期的な目標とを整合させる明確な国家の方針 の策定を通じて、また、持続可能な開発の文脈で、重要な要素としての資金及び技術を含む国際協力・支援や持続可能で責任ある消費及び生産を通じて、全ての国による有意義で効果的な行動及びコミットメントが必要である。

14. 我々は、ポスト2020生物多様性枠組(GBF)の実現に向けたこれまでの進展を歓迎する。我々は、2030年までに生物多様性の喪失を防ぎ回復させるための行動と説明責任の強力な枠組として、第15回生物多様性条約締約国会議(COP15)第2部における「自然との共生」という2050年ビジョンの実現の観点から、GBFを妥結させ、採択することを全ての締約国及び国に求めるとともに、適当な場合には、生物多様性国家戦略及び行動計画 をそれに合わせて更新することを求める。我々は、3つのリオ条約の目的を達成し、相乗効果を発揮することの重要性を強調する。我々は、生物多様性に関する明確かつ測定可能な目標と、実施及び説明責任を果たす手段の必要性を強調する。我々は、2030年までに生物多様性の喪失を抑え回復させるための行動を強化することにコミットし、生物多様性条約(CBD)締約国に対し、モントリオールにおけるCOP15において、野心的で、バランスのとれた、実践的で、効果的で、強固で、変革的な「ポスト2020生物多様性枠組」を採択することを求める。我々は、交渉が行われれば、途上国締約国による実施を可能とすることを助け、支援することを含む、GBFの実施のため新たな追加的資源を動員すべく、国及び組織からを含むあらゆる資金源からの資源動員の強化を求め、また、民間及び公的資金の流れを生物多様性の目的に整合させることを求める。我々は、自主的に2040年までに土地の劣化 を50%削減するというG20の野心を支え、2030年までに土地の劣化の中立性を達成するため、生物多様性の喪失 、森林減少 、砂漠化、土地劣化及び干ばつと闘い、劣化した土地を回復する取組を拡大する。我々は、2030年までに少なくとも世界の陸地の30%及び海洋の30%を保全又は保護することを確保するために多くの国々が行っている取組を認識し、各国の状況に応じて、この目的に向けて前進することを支援する。我々は、持続不可能な消費と生産のパターンを変えることにより環境への影響を削減し、また、国境を越える廃棄物の不法取引を防止することを含め、環境上適正な廃棄物の処理を強化することにコミットする。

15. 我々は、自然を活用した解決策及び生態系に活用したアプローチを通じたものを含め、生物多様性の喪失を防ぎ回復させ、気候変動の緩和及び適応を支援し、環境の保全及び保護、持続可能な利用及び回復、並びに自然災害への対応を強化し、生態系の劣化を軽減し、生態系サービスを強化し、また、海洋及び沿岸環境に影響を及ぼす問題に対処するための取組を強化する。我々は、持続可能性を高めるために、持続可能な開発及び生活様式、資源効率性並びに循環経済を更に促進するとともに、特に海洋を基盤とした気候変動への行動を進めるため、科学的知識の共有、問題意識の喚起並びに能力構築支援に関して協働する。我々は、違法・無報告・無規制(IUU)漁業を終わらせることにコミットしている。我々は、漁業補助金に関するWTOの多国間協定を歓迎し、その迅速な発効を奨励する。我々は、国連環境総会決議5/14に沿って、海洋環境等におけるプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書の策定にコミットしており、2024年末までに作業を完了するとの野心を持っている。我々は、これまでの進捗を強調しつつ、国連総会決議69/292で求められたように、参加代表団に対し、国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国連海洋法条約(UNCLOS)の下での法的拘束力を有する国際文書について、野心的かつバランスのとれた合意を遅滞なく達成することを求める。我々はまた、森林、海草、サンゴ礁、泥炭地やマングローブを含むあらゆる多様性を持つ湿地生態系を含む生態系が気候変動の緩和と適応の取組を支えていることを認識する。

16. 我々は、気候変動、生物多様性の喪失及び環境の悪化に対処するため、途上国への支援の大幅な増加を含め、政策を強化するとともに、予測可能で適切かつ適時にあらゆる資金源から資金を動員する緊急の必要性を認識する。我々は、意味のある緩和行動及び実施の透明性の文脈において、先進国が2020年までに緊急に、また2025年まで年間1,000億米ドルを共同で動員するという目標を実現するとのコミットメントを想起するとともに、同コミットメントを果たすことを更に求める。我々はまた、UNFCCCの目的の達成及びパリ協定の実施に資する、途上国を支援するための年間1,000億米ドルを下限とした、野心的な新たな共同の気候資金の量的目標についての継続的な審議を支持する。我々は、プレッジの実施における透明性の重要性を強調する。我々はまた、パリ協定第9条を想起しつつ、規模拡大した資金源の供与において緩和と適応との間の均衡を達成する文脈において、開発途上締約国に対する適応のための気候資金の供与を2025年までに2019年の水準から少なくとも2倍にすることを先進国に求めているグラスゴー気候合意を想起する。

17. 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定の目標達成のための世界的な取組の強化と、COP26におけるコミットメントの遂行という文脈において、カーボンニュートラルとネット・ゼロに向けた我々の政策の組み合わせは、炭素に価格付けを行う仕組みや非価格的な仕組み、インセンティブの使用を適切に含めた、あらゆる種類の財政、市場、規制メカニズムを含むべきであり、中期的に、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の段階的廃止及び合理化を図り、各国の状況に沿い、最も貧しく脆弱な層に的を絞った支援を提供しつつ、この目標にコミットするべきであることを、我々は再確認する。我々は、気候変動から生じるマクロ経済リスクを認識し、異なる移行の費用と便益についての議論を続ける。

18. 我々は、UNFCCC、パリ協定及び生物多様性条約に沿った「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の目的を達成するため、秩序ある、公正で、かつ、負担可能な移行を支援するための行動をとることにコミットしている。我々は、自発的で柔軟性のある「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」の優先事項への対応についての、G20、国際機関、その他の国際的なネットワーク及びイニシアティブ、及び民間部門にわたる進展を歓迎するとともに、サステナブル・ファイナンスを拡大するロードマップで推奨された行動を推進するための更なる取組を求める。我々は、ロードマップにおける進行中及び今後の進捗を示すためのサステナブル・ファイナンス作業部会によるオンラインのダッシュボード及び関連作業の保存場所の設置を歓迎し、各国の事情を考慮しつつ、メンバーによる自主的な貢献を奨励する。我々は、トランジション・ファイナンスの枠組の開発、金融機関のネットゼロコミットメントの信頼性の向上、並びにアクセス可能性及び負担可能性の向上に焦点を当てたサステナブル・ファイナンス手段の拡大における各法域や関連するステークホルダーのための実務的で自発的な勧告を示す「G20サステナブル・ファイナンス報告書」を支持する。我々はまた、移行を支援するための資金調達及び投資を奨励する政策手段に関する議長国フォーラムにおける価値ある議論を歓迎する。

19. 我々は、SDGsの下でのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成及び維持に向けて、健康的で持続可能な回復を促進することにコミットしている。新型コロナウイルスのパンデミックがまだ収束していない一方で、世界保健機関(WHO)は、最近、サル痘についても国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言した。これは、国際保健上の脅威が常に存在し、我々の共同の予防、備え及び対応の能力を改善するために、G20及びより広い国際社会が団結しなければならないことを強く認識させるものである。我々は、人々を備えの中心に位置づけ、彼らが効果的に対応できるように備えさせることによって各国の保健システムを強化することの重要性を再確認する。我々は、パンデミックに対する医学的対策への公平なアクセスの必要性を強調し、ACTアクセラレータの取組を歓迎し、ACTアクセラレータの外部評価の結果が将来の議論にとって有用な教訓となり得ることに留意する。我々は、WHOの主導的かつ調整的な役割とその他の国際機関からの支援の下、グローバル・ヘルス・ガバナンスを強化するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、決定がWHO総会によってなされることに留意しつつ、パンデミックに対するPPR(予防・備え・対応)を強化するための、法的拘束力のある要素と法的拘束力のない要素の双方を含む法的拘束力のある文書の起案及び交渉を行う政府間交渉会議、並びに、国際保健規則(2005)の改正を検討する国際保健規則に関する作業部会の活動を支持する。

20. G20ハイレベル独立パネル並びに、WHO及び世界銀行は、年間約100億ドルのパンデミックPPR資金ギャップが存在すると推定した。G20サウジアラビア議長下、イタリア議長下において始まり、インドネシア議長が継続したように、我々は、)IHR(2005)遂行における重大なギャップへの資金供給と、PPR能力を向上させるための追加財源の提供を歓迎する。この点に関し、我々は、世界銀行が主管するパンデミックPPRのための新たな金融仲介基金(パンデミック基金)の設立を歓迎する。パンデミック基金は、パンデミックPPRの重大なギャップに対処し、国、地域、グローバルレベルでの能力を構築し、パンデミックPPRのための資金源に付加価値をもたらし、補完的投資を推進し、パンデミックPPRの強化に向けた協調的で一貫したアプローチを促進することを目的としている。我々は、パンデミック基金の包摂的なメンバー構成及び低・中所得国、市民社会組織、ドナーからの参加を歓迎し、グローバル・ヘルス・アーキテクチャーにおけるWHOの指導的役割を反映する、この努力におけるWHOの技術的専門性と調整面での中心的な役割を認識する。我々は、技術面におけるリーダーであり技術諮問委員会の議長を務めるWHOと共に、世界銀行が主管する事務局の活動に感謝する。我々は、パンデミック基金の初回案件の募集が可能な限り早期に開始されることを期待する。我々は、パンデミック基金を通じて、途上国のパンデミックPPRの能力を向上させることにコミットし、パンデミック基金がその統治文書に従って運営され、PPRの重要なギャップを埋めるのに効果的であること、また、同基金が引き続きWHOのための調整に関する中心的な役割を果たし、G20との強いつながりを維持し、意思決定において低・中所得国及び非G20パートナーの視点に包摂的であることを確保すべく、学んだ教訓を引き出し、必要な変更を取り入れるために、最初の年の最後におけるストックテークのためのパンデミック基金の見直しを期待する。我々は、現在のドナーによる14億ドルに達する資金拠出を称賛し、追加の自発的な拠出を奨励する。我々は、新たなドナーに対し、可能な限りパンデミックファンドに参加することを求める。

21. パンデミックPPRのために、財務・保健省間の協力を続けることが不可欠である。我々は、タスクフォースのマンデートを延長し、タスクフォースの事務局にタスクフォースの共同議長や次のG20議長であるインド、G20トロイカ、G20メンバーと協働し、複数年の計画期間を考慮して2023年のタスクフォースの作業計画に合意することを求める。我々は、世界銀行の支援を受けつつ、事務局を引き続き所管するWHOに感謝する。2023年、タスクフォースは、引き続きインドネシアとイタリアが共同議長を務め、先進国と新興国の視点を代表し、2023年G20議長国のインドの支援を得つつ、WHO、国際金融機関、その他の関連機関の専門知識を引き続き活用する。低所得国の声を拡大するために、我々は、必要に応じ、主要な地域組織にタスクフォースの会合への参加を呼びかける。我々は、タスクフォースがグローバル・パンデミックPPRアーキテクチャーを補完し続け、グローバル・ヘルス・ガバナンス・システムの重複や分断がこれ以上生じないことを担保するよう、WHOと緊密に協力していく。G20ローマ首脳宣言からのマンデートを実現するために、2023年にタスクフォースは財務省及び保健省間の連携体制を引き続き発展させ、パンデミックへの共同対応を発展させるために過去の財務・保健の連携のベストプラクティスや経験の共有を必要に応じて行う。タスクフォースは、各国固有の状況を考慮し、資源動員に関する更なる作業の重要性を認識しつつ、新たなパンデミックに対応する財務と保健の連携に焦点を当て、パンデミックによる経済リスクと脆弱性、及びそれらを軽減する方法について、よりよく理解するための作業を実施する。我々は、タスクフォースに対し、2023年に財務大臣と保健大臣にその進捗を報告するよう要請する。

22. 我々は、広範な新型コロナウイルスワクチンの接種が国際公共財であることを認識し、安全、負担可能な、高品質かつ有効なワクチン、治療薬及び診断薬への適時の、公平かつ普遍的なアクセスを確保するための取組を推進する。我々は、WTO第12回閣僚会議(MC12)においてWTOの新型コロナウイルスパンデミックに対する対応及び将来のパンデミックに対する備えに関する閣僚宣言及びTRIPS協定に関する閣僚決定が採択されたことを認識し、TRIPS協定に関する閣僚決定の日から6か月以内に、新型コロナウイルスの診断薬及び治療薬の生産及び供給に同決定の範囲を拡張するかについてWTO加盟国が決定を行うことに留意する。我々は、ヒトの健康を脅かす可能性のある病原体や薬剤耐性を検出するため、多様なセクターにまたがる「ワンヘルス・アプローチ」の採用、並びにゲノムサーベイランスを含む世界的なサーベイランス体制の強化にコミットしている。国際保健規則(2005)の実施に対する我々のコミットメントの一環として病原体のグローバルなサーベイランスを可能とするため、我々は、WHOと協力して共通の信頼できるプラットフォーム上で病原体データを適時に共有することを奨励する。我々は、適用可能な国内法令に整合的な形で病原体の利用から生じる利益を共有することを奨励する。

23. 我々は、世界的な、特に開発途上国におけるワクチン、治療薬及び診断薬へのより良いアクセスを促進するために、現地及び地域的な保健医療用品の製造能力及び協力を強化し、また持続可能な世界及び地域における研究開発ネットワークを強化する必要性を認識し、官民パートナーシップ、自発的かつ相互に合意した条件での技術移転及び知見の共有の重要性を強調する。我々は、技術や技術的知見を自発的かつ相互に合意した条件で共有することを目的とするWHO mRNAワクチン技術移転ハブ及び世界各地域の拠点を支援する。我々は、開発途上国間の協力強化を含め、ワクチンの共同研究及び共同生産を歓迎する。我々は、円滑な国際的な往来、相互運用性を促進する、国際保健規則(2005)の枠組の下での共通の技術標準及び検証法の重要性を認識し、予防接種の証明を含むデジタルソリューション及び非デジタルソリューションを認識する。我々は、将来のパンデミックに対する予防と対応を強化する取組の一環としての信頼できるグローバルデジタルヘルスネットワークの設置に関する国際対話と協力の継続を支持する。そうした取組は、既存の基準と新型コロナウイルスについてのデジタル証明の成功を活用し、発展させるべきである。

24. 新型コロナウイルスのパンデミックにより、デジタルエコシステム及びデジタルエコノミーの変革が加速している。我々は、SDGsの達成におけるデジタル・トランスフォーメーションの重要性を認識している。我々は、負担可能で高品質なデジタル接続がデジタルインクルージョン及びデジタル・トランスフォーメーションにとって不可欠であり、デジタル経済への信頼及び信用を高めるためには、強靱で安全・安心なオンライン環境が必要であると認識している。我々は、デジタル・デバイド、プライバシー、データ保護、知的財産権及びオンラインの安全性に関連する課題に対処しつつ、新しい技術の応用を促進し、企業及び起業家を繁栄させ、消費者を保護し力付ける、 実施可能で、包摂的、開放的、公正な差別的でないデジタル経済を構築するための政策の重要性を認識する。我々は、偽情報キャンペーン、サイバー脅威、オンラインの不正使用への対策、及び接続性インフラにおけるセキュリティの確保の重要性を認識する。我々は、信頼性のある自由なデータ流通を更に可能にし、国境を越えたデータ流通を促進することにコミットしている。我々は、より包摂的で、人間中心で、エンパワーメントをもたらし、かつ持続可能なデジタル・トランスフォーメーションを進める。我々はまた、開発、経済成長及び社会的福利におけるデータの役割を再確認する。

25. 我々は、特に女性、女児及び脆弱な状況にある人々のために、デジタル・トランスフォーメーションのポジティブな影響を活かすためのデジタルスキルとデジタルリテラシーの更なる向上のための国際協力を促進するとともに、信頼できるスキル及びリテラシー向上のための取組を更に支持する。我々は、新興技術の活用に長けた労働力に対する需要の高まり、そうした需要に応えるための教育及び訓練、リスキル並びにスキル向上に留意する。また、我々は、教育への普遍的アクセスを確保し、学習の回復を加速し、及び生涯学習を促進するため、学習者、教師、学校指導者その他の教育専門家のデジタルリテラシーのスキルを向上させつつ、高性能かつ安全なインフラの促進による連結性の向上、並びによりアクセスしやすく負担可能なリソース及びツールの提供を目指す。

26. 我々は、強靱で持続可能な食料システム及び農業の構築、持続可能で働きがいのある人間らしい雇用の創出及び能力開発、包摂的な貿易、工業化及び投資の支援、生産性の向上、並びに特に中小零細企業(MSMEs)及びスタートアップにとって将来の経済の可能性を開くことにおけるものを含め、デジタル技術が様々な分野で復興及びエンパワーメントの鍵となることを発見した。若者、女性、企業、監査機関、議会、科学者、労働者等、全てのステークホルダーを巻き込むことによって、社会のデジタル化に向けた我々の取組から誰一人取り残さないことを確保することが不可欠である。

27. 我々は、重要なパフォーマンス指標の当初推計の将来における提供、及び次の段階の作業の優先順位を示している「2022年進捗報告書」を含む、「クロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップ」の継続的な実施を支持する。我々は、中央銀行、他の関係当局および決済事業者に対し、こうしたクロスボーダー決済を改善するための重要なイニシアティブについて、引き続き協働することを奨励する。我々は、クロスボーダー決済と相互運用性に関する議長国インドネシア、国際決済銀行(BIS)・決済・市場インフラ委員会(CPMI)、及びBISイノベーションハブ(BISIH)によるFEKDI2022での共同ワークショップで示された、決済システムのインターリンクとアプリケーションプログラミングインターフェースが担う役割についてのBIS・CPMIによる報告書を歓迎する。また、我々は、クロスボーダー送金のためのCBDCへのアクセスおよび相互運用性の確保に向けた選択肢についてのBIS・CPMI、BISイノベーションハブ、IMF及び世界銀行による共同報告書を歓迎する。

28. 我々は、「G20の2020年金融包摂行動計画」に導かれた、「生産性向上と、女性、若者及び中小零細企業向けの持続可能で包摂性のある経済の育成のための、デジタル化の恩恵を活用するためのG20の金融包摂枠組」(ジョグジャカルタ金融包摂枠組)を支持する。デジタル化及びサステナブル・ファイナンスの発展に対処し、金融包摂及び福祉を支援するため、我々は、更新された「G20/OECD金融消費者保護ハイレベル原則」を支持し、更新された「G20/OECD中小企業金融に関するハイレベル原則」を歓迎する。

29. 共に回復し、より強く回復するという我々が共有する野心を支援するために、我々は、各国固有の状況を適切に検討し、よく調節され、よく計画され、よく意思疎通の取られた、持続可能な回復を支援するための政策にコミットする。我々は、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長を支援するために、傷跡化する効果の緩和にコミットする。我々は、財政政策の対応において引き続き機動的かつ柔軟であり、変化する状況に対して必要に応じて調整する用意がある。最も脆弱なグループの購買力の維持と、エネルギー及び食料価格を含む一次産品価格の上昇の影響の緩和を支援するための、一時的な的を絞った措置は、高いインフレ圧力を助長しないようよく設計されるべきである。我々は、引き続きマクロ政策での協力を強化し、金融の安定性及び長期的な財政の持続可能性を維持し、下方リスクと負の波及効果を防いでいく。マクロプルーデンス政策は、金融環境がタイト化するにつれて上昇するシステミックリスクを防ぐために、警戒し続ける必要がある。我々は、今年多くの通貨がボラティリティの増加を伴って大幅に変化したことを認識しつつ、2021年4月に財務大臣・中央銀行総裁が行った為替相場のコミットメントを再確認する。また、我々は、国際協力の重要性を再確認し、G20を通じた多国間主義の効果的なシステムを維持するための、G20議長国インドネシアの取組に対し、感謝の意を表する。

30. G20の中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに強くコミットしている。このために、中央銀行は、インフレ圧力がインフレ予想に与える影響を注意深くモニタリングしており、景気回復の確保と各国間への波及効果の抑制に配慮しつつ、インフレ予想の安定維持を確保するよう、データに依拠し、明確に意思疎通がとられた方法で、引き続き金融政策の引き締めペースを適切に調整する。中央銀行の独立性は、それらの目標を達成し、金融政策の信認を支えるために、極めて重要である。

31. 我々はOECD/G20の2本の柱の国際課税パッケージの迅速な実施に対してコミットしている。我々は、第1の柱の進捗を歓迎する。また、我々は、共通アプローチとしてのグローバルなレベルでの一貫性のある実施への道筋をつける、第2の柱のグローバルな税源浸食対抗(GloBE)モデル法制の進捗を歓迎し、GloBE実施枠組の完成を期待する。我々は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組」に対して、残された課題を含む、2023年前半における多国間条約の署名等による第1の柱の最終化、及び、第2の柱の租税条約上の最低課税ルール(STTR)の実施のための多国間協定の策定を可能とするためのSTTRの交渉の完了を求める。我々は、2022年7月の「税と開発に関するG20閣僚級シンポジウム」に照らし、税と開発アジェンダの強化に取り組み、我々は、「途上国と国際租税に係るG20/OECDロードマップ」に留意する。我々は、地域での取組を含む国際的に合意された税の透明性基準の実施における進捗を支持し、2022年7月のアジア・イニシアティブ・バリ宣言への署名を歓迎する。また、我々は、我々が両方とも自動的情報交換のための国際基準に不可欠な追加要素として認識している、暗号資産等報告枠組と共通報告基準の改訂を歓迎する。我々は、OECDに対して、タイムラインの見込みを含む、実施パッケージに関する作業を完了することを求め、税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラムに対して、そのコミットメントやモニタリング・プロセスに基づき、関係する法域による両方のパッケージの広範な実施を確保することを勧める。

32. 我々は、持続可能な資本フローの促進及び現地通貨建て資本市場の発展等により、国際金融アーキテクチャーの長期的な金融面での強靱性を高めるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、資本フローの自由化と管理に関するIMFの改訂版「機関としての見解」を歓迎するとともに、資本フロー管理措置の活用のための国際枠組を、それらの本来の目的に留意しつつ、整合的に実施することに関する、国際機関との継続的な議論を期待する。我々は、「統合的な政策枠組」の運用に関するIMFによる更なる進捗に期待し、国際決済銀行(BIS)のマクロ金融安定化フレームワークに関する報告書を歓迎する。我々は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が、国際通貨金融システムの安定性や完全性を維持しつつ、クロスボーダー決済を円滑化するよう、どのように潜在的に設計され得るかについての、継続的な探究を歓迎する。我々は、CBDCを実装するための最も実践的で実行可能な解決策に関する議論に貢献してきたものとして、BISイノベーションハブとの共同イニシアティブであるG20TechSprint2022が成功裡に完了したことを歓迎する。我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心とした、強固で効果的なグローバル金融セーフティ・ネットを維持するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、IMFのクォータの十分性を再検討することにコミットしており、2023年12月15日までに、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でのIMFガバナンス改革のプロセスを継続する。我々は、IMFサーチャージ・ポリシーに関する議論の継続に留意する。

33. *1*我々は、すべての脆弱国が共に回復し、より強く回復することを支援することにコミットしている。我々は、特別引出権(SDR)の自発的な融通あるいは同等の貢献による816億ドルに上るプレッジを歓迎し、最も資金を必要とする国々のために世界合計で1,000億ドルを自発的に貢献するという野心を達成するため、全ての意欲ある、貢献可能な国からの更なるプレッジを要請する。我々は、適格性を満たす低所得国や小国及び脆弱な中所得国が、パンデミックや気候変動に起因するものを含むマクロ経済リスクをもたらす長期的な構造課題に対処することを支援するための、強靱性・持続可能性トラスト(RST)の稼働を歓迎する。我々は、RSTへの自発的な貢献を歓迎し、資金ニーズを満たすための広範な貢献者のプールを確保するため、RST及び貧困削減・成長トラスト(PRGT)、特にPRGTについては利子補給金に対する追加的なプレッジ及び時宜を得た貢献を求める。我々は、国内の法的枠組及びSDRの準備資産としての地位を保持する必要性を尊重しつつ、多国間開発金融機関(MDBs)を通じて各国がSDRを自発的に融通するための実現可能な選択肢を模索することにオープンである。我々は、バランスシートの最適化、その他の潜在的な手段を含め、MDBsの開発効果を最大化するための方法を探求する。我々は、早期の検討を歓迎するとともに、MDBsが、G20による「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」の勧告を各MDBsのガバナンスの枠組の中で実施するためのオプションについて議論を続け、2023年春にアップデートすることを求める。これは、MDBsの長期的な財政的持続可能性、強固な信用格付及び優先的に弁済を受ける地位を守りつつ、勧告の実施に向けた実現可能なロードマップの継続的開発に情報を提供するものである。我々は、国際復興開発銀行(IBRD)の2020年の投票権見直しに係る最終報告書を確認するとともに、2025年の投票権見直しを期待する。このような困難な節目において、我々は、「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を越えた債務措置に係る共通枠組」を、予測可能で、適時に、秩序ある、調整された方法で連携して実施するための取組を強化することへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、これに関して、ザンビアに対する資金保証の提供を含め、進展を歓迎する。我々は、チャドへの債務措置の妥結を歓迎し、ザンビアに対する、2023年の初頭までの、時宜を得た債務措置の妥結を奨励する。また、我々は、IMF支援プログラムの下でのエチオピアに対する債務措置の妥結を奨励する。我々は、いくつかの脆弱な中所得国の悪化した債務状況を懸念している。この問題は、こうした諸国の債務措置の要請に迅速に対応するための、全ての公的・民間の二者間の債権者を含む多国間の協調によって対処し得る。我々は、民間債権者及び他の公的な二国間債権者が、措置の同等性の原則に沿って公平な負担を確保するため、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することにコミットすることの重要性を強調する。我々は、債務の透明性の向上に引き続き取り組むため、民間債権者を含む全ての関係者による協働の重要性を再確認する。我々は、国際金融協会(IIF)/OECD共同のデータ保存ポータルに既にデータを提供している民間セクターの貸し手の取組を歓迎し、他の貸し手も自発的に貢献するよう引き続き奨励する。

34. 我々は、より困難な世界経済・金融の見通しに直面する中において、グローバルな金融システムの強靱性を強化する必要性を強調し、金融安定理事会(FSB)及びIMFに対し、モニタリングの取組を継続するよう求める。我々は、政策措置の継続的な協調及び国際基準の実施等を通じ、グローバルな金融安定を維持することにコミットする。我々は、2022年末までに、金融セクターにおける出口戦略及び新型コロナウイルスの傷跡化する効果に関するFSBの最終報告書及びその金融安定上の課題に関する結論がまとまることを歓迎する。我々は、ノンバンク金融仲介(NBFI)における特定された構造的脆弱性にシステミックな観点から対処することを含め、特にクロスボーダーな波及効果に対する強靭性を高めるためのグローバルな政策行動を強く支持する。この目的のため、オープンエンド型ファンドを含む、NBFIにおけるシステミックなリスクに対処するための政策提案を含むFSBのNBFI進捗報告書を歓迎する。我々は、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)、BIS決済・市場インフラ委員会(CPMI)及び証券監督者国際機構(IOSCO)による証拠金の慣行の見直しに関する報告書を歓迎する。我々は、「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」を補完する、気候関連金融リスクに対処するための更新されたFSBロードマップの実施を前進させることを支持する。気候関連金融リスクに効果的に対処するためには、グローバルに一貫性のあるデータを要する。我々は、グローバルに一貫性のある、比較可能で信頼できる気候関連財務情報開示を支援するための、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による基準の最終化、及び気候以外の作業に期待し、開示枠組間の相互運用性の達成のための取組を歓迎する。我々は、グローバルに一貫性のある、比較可能な気候関連財務情報開示の実現に関するFSBの進捗報告書、及び気候関連リスクへの監督規制上のアプローチに関する最終報告書を歓迎する。我々は、各法域の気候シナリオ分析に関するFSB及び気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)による報告書を歓迎する。

35. 我々は、いわゆるステーブルコインを含む暗号資産エコシステムが注意深くモニタリングされ、金融安定に対する潜在的なリスクを軽減するための強固な規制・監督・監視の対象となることを確保するための、FSB及び国際基準設定主体による進行中の作業を歓迎する。我々は、「同じ活動・同じリスクには同じ規制を確保する」との原則に基づく、暗号資産活動の規制のための包括的な国際的枠組を確立するためにFSBが提案したアプローチを歓迎する。我々は、「グローバル・ステーブルコイン」の規制・監督・監視に関するハイレベル勧告の見直しに関するFSBの市中協議報告書を歓迎する。我々はまた、暗号資産の活動及び市場に対する規制監督上のアプローチの国際的な一貫性の促進に関するFSBの市中協議報告書を歓迎する。イノベーションの恩恵を活用しながら、規制の成果を強化し、公平な競争条件を支援するため、リスクに関する公衆の認識を構築することは極めて重要である。我々は、「金融市場インフラのための原則」をシステム上重要なステーブルコインへ適用することを確認する、BIS・CPMI及びIOSCOによる最終ガイダンスを歓迎する。我々は、サイバーインシデント報告における更なる収斂の実現に関するFSBの協議報告書を歓迎し、最終報告書に期待する。我々は、データギャップイニシアティブの第2フェーズ(DGI-2)の結果を歓迎し、パートナーと共に特定された残存課題に引き続き対処する。我々は、参加国との連携の下で、IMF、FSB、及び経済及び金融統計に関する当局間グループ(IAG)によって準備された、新たなデータギャップイニシアティブ(DGI)の作業計画を歓迎する。我々は、IMF、FSB、IAGに対し、目標が野心的であること、その提供において各国の統計キャパシティと優先順位、各国の状況を考慮する必要があることに留意するとともに国際的なレベルでの重複を避けつつ、これらのデータギャップを埋める作業を開始し、2023年後半に進捗を報告することを求める。我々は、第2次報告書及び進行中の市中協議を含む「G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則」の見直しに関する作業の進捗を歓迎し、見直しに関する更なるアップデートを期待する。

36. 我々は、WTOを中核とする、ルールに基づく、差別的でない、自由、公正で、開かれた、包摂的、公平、持続可能でかつ透明性のある多角的貿易体制(MTS)が、開かれて相互に連結した世界における包摂的な成長、イノベーション、雇用創出及び持続可能な開発という我々が共有する目標を推進するために、また、新型コロナウイルス及びグローバルなサプライチェーンの混乱により緊張下にある世界経済の強靱性及び回復を支えるために不可欠であることを再確認する。我々は、WTOの改革が多角的貿易体制の信頼を強化する上で重要であることに同意する。我々は、全ての人々にとって好ましい貿易・投資環境を促進するため、公平な競争条件及び公正な競争を確保し続ける。我々は、国連「持続可能な開発のための2030アジェンダ」及びSDGsの推進に対する多角的貿易体制の貢献の重要性に留意する。第12回WTO閣僚会議(MC12)が成功裏に終了したことを称賛し、我々は、MC13への道のりにおいて、紛争解決メカニズムの改革を含め、WTOの全ての機能を改善するためにWTO改革について積極的、建設的、現実的かつ集中的に議論することにより、前向きなモメンタムを捉え、前進することにコミットする。

37. 我々は、サプライチェーンの問題に対処し、貿易の混乱を回避するために、国際貿易・投資に係る協力を強化することにコミットしている。我々は、貿易と気候・環境政策は相互補完的かつWTOと整合的であるべきであり、また、持続可能な開発の目標に貢献すべきであると考える。また、我々は、デジタル貿易に関する包摂的な国際協力の重要性を認識する。我々は、下流の製造業、デジタル貿易及びサービスのような生産性の高いセクターへの持続可能かつ包摂的な投資を通じて付加価値を促進し、外国投資家と現地企業、特に中小零細企業との間の連携を促進することの必要性を認識する。我々は、適切な場合に、より広範なG20のプロセスにおいて、貿易・投資・産業における政策の一貫性に関する議論を行い、産業に関連する問題に継続して対応するというインドネシアの議長国としてのイニシアティブに留意する。

38. 我々は、持続可能で、包摂的で、アクセス可能で、かつ負担可能な方法でインフラ投資を活性化することの重要性を認識する。我々は、持続可能なインフラ投資を拡大するため、民間部門の参加を最大限梃入れするためのG20とグローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)の枠組を支持する。これは、自主的で、義務的でなく、各国の状況を考慮しており、公共投資やMDBsによるファイナンスを含む他の資金源からの投資を補完する。我々は、2022年G20インフラ投資家対話の成果文書に留意する。我々は、社会的包摂を増進し、地域格差に対処するため、アジア開発銀行(ADB)の支援を受けて用意された、地域や都市における包摂的で質の高いインフラ投資のための資金動員に関するG20-OECD政策ツールキットを支持する。我々は、インフラのライフサイクルにおけるジェンダーへの配慮を促進するに当たり、インフラへの民間セクターの参加におけるジェンダー包摂的なアプローチについての暫定報告書に留意し、最終報告書に期待する。我々は、インフラに関する長期的な戦略と計画への洞察を提供することで、官民双方がポストコロナの社会変革的なインフラ投資に向かうことを可能にするインフラ・トラッカー2.0を支持する。デジタル・デバイドを縮小するため、我々は、G20デジタルインフラのファイナンスに関する課題、実践、イノベーションのケーススタディ集を支持する。我々は、G20 のために作成された、質の高いインフラ投資(QII)指標集と関連のガイダンスノートを支持する。これらは自主的で、義務的でなく、各国の状況を考慮している。我々は、QII指標をいかに適用できるかについての更なる議論を期待している。我々は、GIHのあり得べき新しいガバナンスモデルの策定に向けた進捗を歓迎し、可能な限り早期にこのプロセスを導く原則が最終化されることを求める。

39. 自動化とデジタル技術の台頭は、仕事の世界を作り変え、機会と課題の両方をもたらしている。この状況に加え、新型コロナウイルスのパンデミックは、多くの国で既に存在していた不平等を悪化させ、女性、若者、高齢労働者、障害者、移住労働者に引き続き不均衡に影響を与えている。我々は、現在の傾向が労働市場に及ぼす悪影響を緩和し、自動化とデジタル技術がもたらす機会に効果的に対応しながら不平等を是正し、ジェンダー平等を促進することが、我々の最優先事項であり続けることを強調する。我々は、働きがいのある人間らしい仕事の推進と児童労働及び強制労働の撤廃にコミットしている。

40. 我々は、その移民としての地位にかかわらず、人権及び基本的自由への最大限の尊重を確保するとともに、国内の政策、法制度及び状況に沿った形で、国際協力の精神に基づき、回復に取り組む上で、移住労働者を含む移民及び難民の完全な包摂を支援するというコミットメントを再確認する。また、我々は、人道的な必要性及び避難の根源的な原因に対応しつつ、安全で、秩序ある、正規の移住に向けた包摂的なアプローチの一環として、非正規移住の流れと移民を密入国させることの防止の重要性を認識する。我々は、出身国、通過国、目的地国の間の協力強化を支持する。我々は、今後の議長国の下で、移住と強制移送に関する対話を継続する。

41. 我々は、より大きな社会正義、働きがいのある人間らしい仕事及び万人のための社会的保護につながる、人間中心、包摂的、公正、持続可能なアプローチにコミットしている。我々は、包摂的な労働市場を追求するにあたり、障害者、女性及び若者があらゆる部門及びレベルにおいて参画するための取組を継続する。我々は、コミュニティベースの職業教育及び訓練を通じたものを含め、人的能力、労働市場及び生産性の持続可能な開発を促進し、起業を通じた雇用創出を進め、中小零細企業をエンパワーし、インフォーマル・セクターを含む全ての労働者のための労働者保護を醸成し実行する取組を加速することを決意している。我々は、社会的パートナーの関与の下、労働市場のニーズに効果的に対応するためのスキル開発へのアプローチを最大化する。我々は、アンタルヤ・ユース・ゴール、及び、2030年までの万人のための普遍的な社会的保護に向けた進捗を加速する。

42. 我々は、新型コロナウイルスのパンデミックを含む多元的危機並びに財政的余力の欠如及び金融と技術への不均衡なアクセスが、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びアディスアベバ行動目標の時宜を得た形での実現に向けて重要な課題をもたらしていることを深く懸念している。我々は、より包摂的な多国間主義及び2030アジェンダの実施を目指した改革を再活性化することによって、持続可能な開発のための2030アジェンダを実施し、2030年までのSDGsの達成を加速させ、開発課題に対処するためにリーダーシップを発揮し、協力して行動する。

43. この観点から、我々は、野心的かつ具体的な行動を通じて、太平洋・カリブ海における小島嶼開発途上及び後発開発途上国を含む全ての途上国において、包摂的かつ持続可能な回復を強化し、強靱性を強化していく。我々はまた、G20「アフリカとのコンパクト」や、「アフリカ及び後発開発途上国の工業化の支援に関するG20イニシアティブ」を含む、アフリカへの継続的な支援の実施を改めて表明する。我々は、中小零細企業、適応型の社会的保護、グリーンエコノミー及びブルーエコノミーに焦点を当てる。我々は、互恵的な技術協力を促進し、グッドプラクティスを共有するためのパートナーシップの必要性、及び、より強い回復と強靱性のための包摂的で質の高いインフラ投資の必要性を認識する。我々は、透明性と相互説明責任の重要性に留意しつつ、ブレンディッド・ファイナンスを含む革新的資金メカニズムを強化することにより、2030アジェンダの実施に向けた資金ギャップに対処する必要性を強調する。災害に強靱なインフラのためのコアリション、グローバル・ブレンディッド・ファイナンス・アライアンスといったイニシアティブに留意し、災害リスク軽減のためのグローバル・プラットフォームを歓迎する。2023年のSDGサミットの成功を期待する。

44. 教育へのアクセスは人権であり、包摂的かつ持続可能な経済の回復にとって重要な手段である。我々は、「教育変革サミット」の成果を歓迎する。我々は、より強靱で、テクノロジーが可能とする、アクセスしやすい、効果的な教育制度を再構築するため、特に途上国と連帯し、行動する。我々は、特に女性と女児に重点を置きながら、教育への障壁を取り除き、教育・学習環境を改善し、教育のあらゆる段階における移行を支援するため、G20内外の関係者を力付ける。また、我々は、仕事や、より公平で、包摂的かつ持続可能な社会への有意義な参加、貢献に備える上で、学習者のウェルビーイングが重要であることを強調する。我々は、持続可能な開発のための教育(ESD)の重要性並びに包摂的で、公平かつ質の高い教育及び訓練を確保するためのSDG4へのコミットメントを再確認する。我々は、仕事の性質が変容する中で、あらゆるレベルにおける生涯学習の促進にコミットし、この点に関する連携を奨励する。

45. 我々は、特に健康、気候、食料、エネルギー危機のさなか、様々な分野における持続可能な資源利用に関する研究及びイノベーションの重要性を認識する。我々は、グリーンエコノミーやブルーエコノミーを含む持続可能な開発を支援するため、生物多様性の保全とその活用に関する研究・イノベーションの協力を歓迎する。また、我々は、研究とイノベーションを促進するための包摂的な協働を推進するとともに、研究者の国際的な移動を促進する。

46. 我々は、女性及び女児が新型コロナウイルスのパンデミックやその他の危機によって、不均衡に影響を受け続ける中、包摂的な回復及び持続可能な開発のための取組の中核に、ジェンダー平等と女性の活躍を位置付けるというコミットメントを再確認する。我々は、G20ロードマップ「ブリスベン目標に向けて、また、ブリスベン目標を超えて」を実施し、男女間の賃金格差の是正に焦点を当てつつ有給及び無給の介護・家事労働における不平等な分配に取り組むことを含め、金融包摂とデジタル技術へのアクセスを促進することにコミットする。我々は、ジェンダーに基づく暴力の撤廃、社会・医療・介護・教育サービスの強化及びジェンダーの固定観念の克服に取り組む。我々は、STEM(科学、技術、工学及び数学)教育への参加を含む、包摂的で質の高い教育への女性と女児の平等なアクセス、中小零細企業(MSMEs)を通じた女性の起業、指導的地位への女性と女児のアクセスを引き続き促進する。我々は、地方に住む女性や障害を持つ女性の生活の質を向上させる。我々は、「女性のエンパワーメントと経済代表性向上のための民間アライアンス(EMPOWER)」の活動及び同アライアンスのG20への関与を歓迎し、G20女性活躍担当大臣会合を将来開催することを支持する。

47. 我々は、世界の回復における観光の重要な役割を再確認し、より人間を中心とした、包摂的、持続可能でかつ強靱な観光セクターを再構築するための地域密着型のアプローチを再確認する。我々は、観光の回復を可能にするためには、安全な国際的移動及び連結性を強化し、ポストコロナの円滑な往来を実現することが極めて重要であることを認識する。更に、我々は、知識基盤の経済、人の創造性、知的財産権を含むクリエイティブエコノミーは、重要な商業的・文化的価値を保持しながら、人材開発、デジタル・トランスフォーメーション、イノベーション、官民パートナーシップ、自然・文化遺産の持続的保全、革新的資金調達を通じて、観光地域社会及び中小零細企業の強靱性の向上に寄与することを認識する。

48. 我々は、社会的・経済的利益を超えた固有の価値を有し、持続可能な開発を実現し、推進する手段としての文化の役割を再確認する。我々は、文化多様性を持続可能な生活の資源として活用する政策を整備し、文化・芸術・遺産分野で働く人々の貢献を評価する包摂的で公平な環境をあらゆるレベルで促進することにコミットしている。我々は、該当する場合は、地域社会や先住民も含む人々の文化遺産を尊重、保護、保存する。我々は、文化経済を強化するために、公的なインセンティブと民間部門からの持続可能な投資を支持する。我々は、文化遺産を保護するとともに、関連するユネスコの条約および国内法に従って、文化財の不法な取引と闘い、その正当な所有者及び原産国への返還を促進する。

49. 我々は、腐敗に対するゼロ・トレランス(非寛容)に向けた我々のコミットメントを新たにするとともに、法的拘束力のある文書によるものを含む腐敗防止の取組に対する我々の義務とコミットメントを強化し、実施することを通じて、引き続き模範を示す。我々は回復への共同の取組の重要な部分として、官民双方の透明性と説明責任の重要性を強調する。我々は、あらゆる形態の腐敗を防止し、対処するために、監査、市民参加及び腐敗防止教育が重要な役割を果たすことを強調する。我々は、我々のコミットメントを想起し、全ての国に対し、外国の公務員に対するものを含む贈賄を犯罪化し、贈賄を効果的に防止、撲滅、探知、捜査、起訴及び制裁することを求める。我々は、「グローブ・ネットワーク」や腐敗公務員の入国拒否に関するG20専門家ネットワークといった既存のネットワーク及びイニシアティブの任意の活用を含め、組織犯罪に関連する腐敗及びマネーロンダリングを含む経済犯罪と戦うための国際協力及び法的枠組の強化に更に取り組む。我々は、国連腐敗防止条約(UNCAC)第16条に沿った外国贈収賄の犯罪化及び外国贈収賄法の執行に向けた我々の行動に関する情報を共有し、適切な場合には、OECD外国公務員贈賄防止条約への参加を拡大することを期待する。我々は、国内法に従って、腐敗に係る犯罪者とその資産に対する安全な避難先を与えないという我々のコミットメントを再確認する。また、我々は、全てのセクターにおいて腐敗リスクを軽減することが重要であることを認識する。我々は、清廉性の文化を推進することを含め、学術界、市民社会、メディア、民間部門といったステークホルダーとの連携を更に強化し、その積極的な参加を促進する。

50. 我々は、国際社会がマネーロンダリング・テロ資金供与・拡散金融と効果的に闘うための取組を強化する必要性を認識する。我々は、これらの脅威に対応するためのグローバルな行動を主導するために、金融活動作業部会(FATF)とFATF型地域体(FSRBs)の戦略的優先事項の実施についてのコミットメントを再確認する。我々は、暗号資産、特に「トラベル・ルール」、及び実質的支配者の透明性に関する国際基準の実施を促進するためのFATFによるイニシアティブを歓迎し、経済及び社会に重大な影響を与えるシステム全体に及ぶ腐敗行為及び環境犯罪との闘いにおける国際基準の役割を認識する。我々は、国内の枠組に沿って、犯罪収益を差押え、被害者及び国に資金を返還するためのグローバルな取組を強化するためのFATFによる進行中の作業を支持する。我々は、全てのG20メンバーがFATF基準を採用し、効果的に実施するために協力を強化することを奨励する。

51. 我々は、G20メンバー、招待国、地域及び国際機関による多岐にわたる、各国からの意見や調整された国際協力の連携をとりまとめたインドネシア議長国の取組を歓迎する。これらは、付属文書として「強力で包摂的な回復のためのG20アクション」に示された。我々は、国際社会が共に回復し、また、より強く回復するための取組に、大きなモメンタムと影響をもたらすため、更なる具体的な行動を求める。

52. 我々は、各種G20作業部会及び閣僚会合における成果を歓迎する。我々は、議長国インドネシアに対し、 G20 への貢献及びG20バリ・サミットを成功裏に主催したこと及びG20プロセスへの貢献について感謝する。2023年のインド、2024年のブラジル、2025年の南アフリカでの再会を楽しみにしている。

 我々は、国連及びその専門機関、世界銀行グループ(World Bank Group)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、アジア開発銀行(ADB)、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、欧州投資銀行(European Investment Bank)、グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)、国際民間航空機関(ICAO)、国際エネルギー機関(IEA)、国際エネルギーフォーラム(IEF)、国際農業開発基金(IFAD)、国際労働機関(ILO)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国際連合食糧農業機関(FAO)、金融安定理事会(FSB)、Gavi、Global Fund、国際原子力機関(IAEA)、イスラム開発銀行(Islamic Development Bank)、国際電気通信連合(ITU)、Medicine Patent Pool、万人のための持続可能なエネルギー(Sustainable Energy for All (SE for All))、石油輸出国機構(OPEC)、世界経済フォーラム(WEF)、国連世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、国連砂漠化対処条約(UNCCD)事務局、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連経済社会局(UNDESA)、国連開発計画(UNDP)、国連欧州委員会(UNECE)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局、国連グローバル・パルス(UN Global Pulse)、国連人間居住計画(UN Habitat)、国連児童基金(UNICEF)国連工業開発機関(UNIDO)、国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)、国連女性機関(UN Women)、世界観光機関(UNWTO)、G20エンゲージメント・グループ(W20、L20、T20、S20、Y20、SAI20、P20、C20,B20、U20)といった国際的な組織による、貴重な意見及び政策提案に感謝する。

別添

A.閣僚会合及び作業部会の成果文書(以下略)

B.強力で包摂的な回復のためのG20アクション


{*1* メンバーが、パラグラフ33における債務問題について異なる見解を有し、MDBsのような多国間債権者による債務措置の重要性を強調したことに留意。}