データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20財務大臣・中央銀行総裁会議 成果文書及び議長総括

[場所] 仮訳
[年月日] 2023年7月18日
[出典] 財務省
[備考] 
[全文] 

 全てのG20の財務大臣・中央銀行総裁は、パラグラフ1、4及びパラグラフ6から26について、アネックス1、2とともに合意した。

1. 我々、G20諸国の財務大臣・中央銀行総裁は、2023年7月17~18日にインドのガンディーナガルで会合した。インド議長国のテーマである「一つの地球、一つの家族、一つの未来」の下、我々は、国民と地球の福利を優先することを誓い、国際経済協力を強化し、すべての人に対する世界の発展を強化し、世界経済を力強く、持続可能で、バランスの取れた、包摂的な成長(SSBIG)に向けて舵を切るという我々のコミットメントを再確認する。

2. *1* *2* 2022年2月以降、我々は、ウクライナにおける戦争が世界経済に更なる悪影響を与えていることも目の当たりにした。この問題に関して議論が行われた。我々は、多数決(141か国が賛成、5か国が反対、35か国が棄権、12か国が欠席)により採択された2022年3月2日の国連総会決議ES-11/1において、ロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾とし、同国のウクライナ領土からの完全かつ無条件での撤退を要求している国連総会や、国連安全保障理事会を含む他のフォーラムで表明してきた自国の立場を改めて表明した。ほとんどのG20メンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難し、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、また、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギー及び食料不安の増大、金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における既存の脆弱性を悪化させていることを強調した。この状況及び制裁について、他の見解及び異なる評価があった。G20が安全保障問題を解決するためのフォーラムではないことを認識しつつ、我々は、安全保障問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。

3. 平和と安定を守る国際法と多国間システムを堅持することが不可欠である。これには、国際連合憲章に謳われている全ての目的及び原則を擁護し、武力紛争における市民およびインフラの保護を含む国際人道法を遵守することが含まれる。核兵器の使用又はその威嚇は許されない。紛争の平和的解決、危機に対処する取組、外交・対話が極めて重要である。今日の時代は戦争の時代であってはならない。

4. 世界の経済成長は長期平均を下回っており、依然として一様ではない。見通しの不確実性は依然として高い。債務の脆弱性を悪化させる可能性のある世界的な金融状況の顕著な引締め、インフレの持続、地経学的緊張により、リスクのバランスは依然として下向きに傾いている。従って、我々は、成長を促進し、不平等を縮減し、マクロ経済と金融の安定を維持するために、十分に調整された金融政策、財政政策、金融規制・監督政策、構造政策が必要であることを再確認する。我々は、マクロ政策協力を引き続き強化し、持続可能な開発のための2030アジェンダに向けた進展を支援し続ける。我々は、SSBIGを達成するためには、政策立案者が政策対応において機敏かつ柔軟であり続けることが必要であることを再確認する。これは、いくつかの先進国における最近の銀行混乱の際に証明されたとおりであり、関係当局による迅速な行動が金融安定の維持と波及効果の管理に役立った。我々は金融安定理事会(FSB)、基準設定主体(SSBs)、いくつかの法域によってとられた、いかなる教訓がこの最近の銀行混乱から学び得るかを検討する初期措置を歓迎するとともに、進行中の作業の促進を奨励する。我々は、必要な場合には、マクロプルーデンス政策を用いて、下振れリスクを回避する。中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに引き続き強くコミットしている。中央銀行は、インフレ予想の安定維持を確保し、各国間への負の波及効果の抑制に資するよう、政策スタンスについて明確に意思疎通を行っていく。中央銀行の独立性は、政策の信認を維持するために極めて重要である。我々は、中期的な財政の持続可能性を維持しつつ、貧困層や最も脆弱な人々を保護するために、一時的で的を絞った財政措置を優先する。我々は、全体的な金融政策と財政政策のスタンスの一貫性を確保する。我々は、成長を押し上げ、物価上昇圧力を緩和するための供給サイドの政策、特に労働供給を増やし生産性を高める政策の重要性を認識する。我々は、2021年4月の為替相場についてのコミットメントを再確認する。我々はまた、成長と雇用創出を回復する上で、世界貿易機関(WTO)を中核とする、ルールに基づく、差別的でない、自由、公正で、開かれた、包摂的、公平、持続可能でかつ透明性のある多角的貿易体制が重要であることを再確認し、保護主義と闘い、WTO改革のための協調努力を奨励するとの我々のコミットメントを再確認する。

5. 世界の食料・エネルギー価格は、ピーク時の水準から下落しているものの、世界経済の不確実性を考慮すると、食料・エネルギー市場の高い水準での変動の可能性は残されている。この文脈において、我々は、加盟国が共有した政策経験に基づき、国際通貨基金(IMF)、世界銀行グループ(WBG)、国際エネルギー機関(IEA)、国連食糧農業機関(FAO)の分析に裏付けられた、食料・エネルギー不安のマクロ経済的影響と世界経済への影響に関するG20報告書を歓迎し、その自主的で拘束力のない政策的教訓に留意する。我々は、食料不安と戦う国際農業開発基金(IFAD)を支援するため、IFAD加盟国によるIFADに対する年末の野心的な増資に期待する。

6. 我々はまた、気候変動に起因するものを含む、SSBIGのマクロ経済リスク評価に関する議論や、各国固有の状況や異なる発展レベルを考慮した様々な移行政策に留意する。気候変動の物理的影響がもたらすマクロ経済コストは総体的に重大であり、不作為がもたらすコストは秩序ある公正な気候移行のコストを大幅に上回る。我々は、資金、技術、及び、各国固有の状況に沿った適時の政策行動の分野を含む国際的な対話と協力の重要性を認識する。また、気候変動の物理的影響と移行政策の両方が、成長、インフレ、失業等のマクロ経済に与える短期、中期、長期の影響を評価し、考慮することも重要である。我々は、メンバー国により共有された政策経験や、IMF、IEA、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)からの技術的なインプットに基づく、エビデンスに基づく評価を示している、気候変動と移行経路に起因するマクロ経済リスクに関するG20報告書を支持する。この報告書における分析に基づき、我々は、多様なステークホルダーからのインプットを活用し、特に財政・金融政策に関連するマクロ経済的なインプリケーションに関する更なる作業を適切に検討する。

7. 我々は、低中所得国の開発ニーズへの対応に焦点を当て続けながら、21世紀の地球規模の課題に対処するため、国際開発金融機関(MDBs)を進化し、強化する野心的な努力を追求することに引き続きコミットする。

8. 2022年11月のバリにおける我々の首脳からのマンデートをフォローアップし、また、2023年春のMDBsからのアップデートに基づき、G20による「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」(以下、「CAF」)の勧告を実施するためのG20ロードマップが策定された。我々は、このロードマップを支持し、MDBsのガバナンスの枠組の中で、長期的な財務の持続可能性、強固な信用格付及び優先的に弁済を受ける地位を保護しつつ、その野心的な実施を求める。我々はまた、MDBs、専門家及び出資国に関与すること等を通じて順次行われる、実施の進捗に関する定期的なレビューを求める。我々は、MDBsが、特にリスク選好度の定義と金融イノベーションへの適応に関して、CAF勧告の実施を進めていることを賞賛する。同時に、我々はCAFの実施をさらに進める必要性を強調する。我々は、「グローバル新興市場」(GEMs)データの適時の公表及び、独立機関としてのGEMs2. 0の2024年初頭までの立上げに関する、MDBs間の進行中の協力に感謝する。我々はまた、将来に向けて、MDBsが、ハイブリッド資本、請求払資本、保証等の分野において、協力することを奨励する。我々は、MDBs、信用格付機関、出資国の間の対話の強化を評価し、また、情報交換及び格付手法における継続的な透明性を奨励する。我々は、実施中及び検討中のものを含めた初期のCAF措置により、G20CAFロードマップで推定された通り、潜在的に今後10年間で約2,000億米ドルの追加的な融資余力が見込まれることに留意する。これらは、勇気づけられる第一歩であるが、CAFの実施には、継続的かつ更なる推進力が必要である。

9. さらに、我々が、MDBsに、そのビジョン、インセンティブ構造、運営アプローチ及び財政能力を進化させるための包括的な努力を行うことを改めて要請することにより、MDBsは、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた進捗を加速させるというそのマンデートとコミットメントに合致しつつ、広範な地球規模の課題への対応においてその影響力を最大化するためのよりよい準備が整う。我々は、21世紀のためのMDBのエコシステムの強化と進化に向けた緊急の必要性を認識しつつ、MDBsの強化に関するG20独立専門家グループの第1回報告書の作成に係る努力を評価し、2023年10月に期待される第2回報告書と併せて、それを精査する。我々は第1回報告書の提言に留意し、MDBsは、MDBsの有効性の強化のため関連がありかつ適切な場合には、各機関のガバナンス枠組において、適宜の時期にこれらの提言を議論することを選択できる。我々は、2023年10月の第4回財務大臣・中央銀行総裁会議のサイドラインで開催される、MDBsの財務能力の強化に関するハイレベルセミナーに期待する。我々は、MDBsに対して、地球規模の課題によりよく対処するための進化のための努力を国際金融アーキテクチャー作業部会(IFAWG)において更新するよう奨励する。我々は、2023年3月の「世界銀行グループの進化に関する報告書」を歓迎し、世界銀行に対し、合意された行動の実施を進め、マラケシュで開催される2023年のIMF・世銀年次総会までに、世界銀行の進化の大幅な進展に貢献できる更なる提案の策定を継続することを求める。我々は、この分野におけるその他の多国間の努力を認識し、新たな国際的開発資金取決めのための首脳会合に留意する。我々はまた、野心的な第21次IDA増資に期待する。我々は、国際復興開発銀行(IBRD)の2020年の投票権見直しに係る最終報告書を確認するとともに、2025年の投票権見直しを期待する。

10. 我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの中心に位置する、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFへのコミットメントを再確認する。我々は、クォータの十分性を再検討することに引き続きコミットし、2023年12月15日までに結論が出されるよう、指針としての新たなクォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直し(GRQ)の下でのIMFガバナンス改革のプロセスを継続し、IMFの資金基盤におけるクォータの主要な役割を確保する。この文脈において、我々は、少なくともIMFの現在の資金規模を維持することを支持する。我々は、最も資金を必要とする国々に対するプレッジによる、1,000億米ドルの自発的な貢献(SDRまたは同等の貢献)という世界的な野心の画期的な達成と、26億米ドルのグラントのプレッジを歓迎し、プレッジの迅速な履行を求める。我々は、特別引出権(SDR)の自発的な融通あるいは同等の貢献による、強靭性・持続可能性トラスト(RST)に対する総額約455億米ドル、貧困削減・成長トラスト(PRGT)に対する総額約242億米ドルの融資原資及び19億米ドル近くの利子補給金、のプレッジを伴う、RST及びPRGTの下で達成された進捗を歓迎する。我々は、PRGTの第一段階の資金調達ニーズを満たすため、マラケシュにおける2023年IMF・世銀年次総会までに、PRGTの利子補給金や融資原資に対する更なる自発的なプレッジを求める。我々は、IMFが、増大する低所得国のニーズを今後数年間に亘って満たすことを目指して、2023年のIMF・世銀年次総会までに、PRGTを持続可能な基盤に据えるための多様な選択肢について暫定的な分析を実施することを期待する。G20は、G20「アフリカとのコンパクト」を通じたものを含むアフリカへの継続的な支援を再確認する。我々は、強い対外ポジションを有する国からのSDRの融通あるいは同等の貢献に関する進捗を引き続き注視し、9月のSDRの使用に関するIMFの事後報告書に期待する。我々は、RST支援プログラムの有効性を引き続き注視し、2024年4月に予定されている中間見直しに期待する。我々は、関係する法的枠組みとSDRの準備資産としての性格と地位を保持する必要性を尊重しつつ、MDBsを通じたSDRの融通のための実現可能な選択肢の模索に関する更なる進捗に期待する。我々は、予防的取極(FCL、PLL、SLL)の見直しに期待し、IMFサーチャージ・ポリシーについて行われた議論に留意する。

11. 我々は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入及び採用から生じる潜在的なマクロ金融上の影響、特にクロスボーダー決済や国際通貨・金融システムへの影響に関する議論を歓迎する。我々は、BISイノベーション・ハブ(BISIH)の「CBDCに関する教訓」に関する報告書を歓迎するとともに、この問題に関する議論を進展させるため、IMFの「CBDCの広範な導入がもたらす潜在的なマクロ金融上の影響」に関する報告書に期待する。我々はまた、その本来の目的に留意しつつ、IMF、OECD及びBISによる政策アップデートに基づき、資本フローの変動に対処するための様々なツールの利用に関する国際的な枠組みの実施に関する継続的な議論を期待する。我々は、資本フローの持続可能性を促進することへのコミットメントを再確認する。この目的のため、我々は、OECDの「秩序あるグリーンな移行に向けて―投資要件と資本フローのリスク管理」に関する報告書に留意する。

12. 我々は、効果的、包括的かつ体系的に低・中所得国の債務脆弱性に対処することの重要性を再度強調する。我々は、2020年11月13日に合意された、第2及び最終パラグラフを含む、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」においてなされた全てのコミットメントを引き続き守り、予測可能で、適時に、秩序立ち、連携した方法で、「共通枠組」の実施を強化する。この目的のため、我々はG20国際金融アーキテクチャー作業部会(IFAWG)に対し、「共通枠組」の実施に関わる政策関連の課題について引き続き議論し、適切な提言を行うことを求める。我々は、ザンビア政府と公的債権者委員会との間の債務措置に関する最近の合意を歓迎し、迅速な解決を期待する。我々は、ガーナにかかる公的債権者委員会の立上げを歓迎し、可能な限り早期の債務措置の合意を期待する。我々はまた、エチオピアに対する債務措置の迅速な妥結を求める。「共通枠組」のほかに、我々は、公的債権者委員会の立上げを含む、スリランカの債務状況の適時の解決に向けた全ての取組を歓迎し、可能な限り早期の解決を求める。世界の債務状況に関するG20ノートの公平かつ包括的な方法での策定作業に留意しつつ、我々はG20IFAWGに対し、引き続き迅速に策定するよう求める。我々は、効果的な債務措置の促進に向け、「共通枠組」の内外の主要なステークホルダー間の交流を強化し、共通の理解を促すための、公的債務にかかるグローバルラウンドテーブル(GSDR)参加者の取組を奨励する。

13. 我々は、民間債権者を含む全てのステークホルダーによる債務の透明性の向上に向けて作業を継続する共同の取組を歓迎する。我々は、国際金融機関へのデータ共有に関する自発的な確認作業の結果に留意する。我々は、国際金融協会(IIF)/OECDの共同データ保存ポータルにデータを既に提供している民間セクターの貸手の取組を歓迎し、他の貸手にも自発的に貢献するよう奨励する。

14. 我々は、将来の都市を包摂的で、強靭で、持続可能なものとするための努力において、資金の動員を強化し、既存の資金を効率的に使用する必要性を強調する。このため、我々は、その性質上自主的で拘束力のない「将来の都市への資金調達に関するG20原則」を支持するとともに、資金調達戦略を提供し、革新的な都市計画と資金調達モデルの事例集を提示する「将来の都市への資金調達に関するG20/OECD報告書」を支持する。我々は、開発金融機関やMDBsを含むステークホルダーに対し、適切な場合に、都市インフラの計画や資金供給にこれらの原則を参考として活用する可能性を模索し、初期のパイロット事例から得られた経験を共有することを奨励する。我々は、包摂的な都市の実現手段についての大枠の提示における進展に留意する。また、我々は、公共サービスの効果的な提供のための地方自治体の総合的な制度上の能力を評価し、強化する際の指針となる、カスタマイズ可能な「都市行政の能力強化のためのG20/ADB枠組み」にも留意する。我々は、自主的で拘束力のない質の高いインフラ投資(QII)指標の進行中の試行的な適用に留意し、個別の国の状況を考慮しつつ適用に関する更なる議論を期待する。我々は、グローバル・インフラストラクチャー・ハブが、2014年以来、G20の複数年にわたるインフラ・アジェンダを支援したことに感謝する。我々は、GIHの理事会と出資国が、これまでに創出された価値を維持するための最善の方法の探求に現在取り組んでいることに留意する。我々は、将来の都市への資金供給のための政策を策定する際に民間部門の視点を統合することに焦点を当てた、2023年インフラ投資家対話の成果報告に期待する。

15. 我々は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及びパリ協定の完全かつ効果的な実施を強化するとの我々の確固たるコミットメントを引き続き再確認する。我々は、意味のある緩和行動及び実施の透明性の文脈において、途上国のニーズに対応するため、2020年までに、また2025年まで毎年、年間1,000億米ドルの気候資金を合同で動員するとの目標に対する先進国のコミットメントを想起し、再確認する。先進国である貢献国は、2023年にこの目標が初めて達成されることを期待している。この文脈において、我々はまた、UNFCCCの目的の達成及びパリ協定の実施に資する、途上国を支援するための年間1,000億米ドルを下限とした、野心的な新たな共同の気候資金の量的目標についての継続的な審議を支持する。

16. 我々は、各国の事情に沿った移行活動への支援を確保しつつ、気候資金のための適時かつ十分な資源の動員を支援するためのメカニズムに関するサステナブル・ファイナンス作業部会(SFWG)の勧告を歓迎する。我々はまた、各国の異なる事情を考慮しつつ、野心的な我々の国が決定する貢献(NDC)、カーボンニュートラル及びネット・ゼロを達成するための適応と緩和両方の取組に均衡ある形で対応するため、ブレンディッド・ファイナンス手法、メカニズム、及びリスク配分のためのファシリティを通じた、緊急に必要とされている民間資金の活用といった、気候に関する行動を実現する重要な手段として、公的資金の重要な役割を認識する。我々は、気候資金の動員におけるMDBsの強化された役割を含む、ブレンディッド・ファイナンス及びリスク配分のためのファシリティの拡大に向けた勧告を歓迎する。我々は、途上国によるパリ協定の実施を支援するため、多国間気候基金などの譲許的資金の効果を最大化する重要性を強調するとともに、本年の緑の気候基金(GCF)の野心的な増資に期待する。我々は、温室効果ガス排出を回避し、削減し、除去し、適応を促進する初期段階の技術の商業化を支援する重要性を認識し、グリーン及び低炭素技術の迅速な開発、実証、展開のためのより多くの民間資金の流入を促進するための金融ソリューション、政策、インセンティブに関する勧告に留意する。我々は、カーボンニュートラル及びネット・ゼロにむけた、適当な場合における、カーボンプライシング及びかかるプライシングによらないメカニズムとインセンティブの活用を含む、財政、市場及び規制メカニズムからなる政策の組み合わせの重要性を再確認する。我々は「持続可能な投資を支援する非価格政策手段」に関する議論のとりまとめの早期の最終化に期待する。

17. 我々は、サステナブル・ファイナンスを拡大するための行動をとることへのコミットメントを再確認する。G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップに沿って、我々は、SDGsと整合的な資金調達のための分析枠組み、並びに、各国の状況を考慮しつつ現状分析を活用した社会的インパクト投資手段の導入拡大並びに自然関連のデータ及び報告の改善のための自発的な勧告を歓迎する。我々は、全ての関連するステークホルダーに対し、2030アジェンダのための行動と支援において、これらの勧告を考慮することを奨励する。

18. 我々は、複数年にわたるG20技術支援行動計画(TAAP)及び気候投資に対するデータ関連の障壁を克服するために策定された自発的な勧告を承認する。我々は、関連する法域及びステークホルダーによる、各国の状況に沿ったTAAPの実施を奨励する。我々は、自発的で柔軟性のあるG20サステナブル・ファイナンス・ロードマップの実施における、メンバー、国際機関、ネットワーク及びイニシアティブによる進展に関する報告に期待し、トランジション・ファイナンスの枠組の実施等を含む、ロードマップで推奨されたサステナブル・ファイナンスを拡大する行動を推進するための更なる努力を求める。我々は、G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップの実施レビューを含む、2023年G20サステナブル・ファイナンス報告書の最終化に期待する。我々は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)によって2023年6月に公表されたサステナビリティ及び気候関連の情報開示基準の最終化を歓迎する。それは、比例原則に対処するメカニズムを提供し、相互運用性を促進する。各国固有の状況を考慮するため、それらの基準の実施において柔軟性が保持されることが重要である。上記の通り実施されるとき、それらの基準は、国際的に比較可能で信頼できる情報開示を支援することを助ける。

19. 我々は、財務・保健合同タスクフォース(JFHTF)の下、財務・保健省間の連携の強化を通じて、パンデミックへの予防・備え・対応(PPR)のためのグローバル・ヘルス・アーキテクチャー(国際保健の枠組み)を強化することに引き続きコミットしている。JFHTFの下で、我々は、低所得国の声を拡大するため、招待された主要な地域機関のタスクフォース会合への参加を歓迎する。我々は、世界保健機関(WHO)、世界銀行、IMF及び欧州投資銀行(EIB)の連携により作成された、経済の脆弱性とリスクに関する枠組み(FEVR)及びパンデミックによる経済の脆弱性とリスクについての初期報告書に関する議論を歓迎する。我々は、各国固有の状況を考慮しつつ、変化するパンデミックの脅威による経済の脆弱性とリスクを定期的に評価するため、タスクフォースが複数年にわたる作業計画上でこの枠組みの改良を続けることを求める。我々は、将来のパンデミックへの我々の対応を支援するための財務・保健セクター合同の備えに貢献する、新型コロナウィルス感染症(Covid-19)における財務・保健の制度的アレンジメントのベストプラクティスに関する報告書を歓迎する。我々は、WHOと世界銀行によって作成された「パンデミックの対応のためのファイナンスの選択肢とギャップのマッピングに関する報告書」を歓迎し、他の国際フォーラムでの議論を十分に考慮しつつ、迅速かつ効率的に必要な資金を供給するために、ファイナンス・メカニズムをどのように最適化し、より良く調整し、必要な時には適切に強化しうるかについて、更なる検討を期待する。これら3つの報告書が提供する分析は、8月に開催される財務大臣・保健大臣合同会合における次のパンデミックの脅威に対するグローバルな対応に係る議論への重要なインプットとなるものである。我々は、パンデミック基金による案件募集が完了したことを歓迎し、今後数ヶ月の間に行われる第一回目の資金配分に期待する。

20. 我々は、21世紀のニーズに応じて、グローバルで公正、持続可能かつ現代的な国際課税システムに向けた協力を継続していくことに対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」(「包摂的枠組み」)の2023年7月の成果声明に示された通り、利益Aに関する多数国間条約(MLC)の条文のとりまとめ、利益Bに関する作業の大幅な進展、及び、租税条約上の最低課税ルール(STTR)とその実施枠組みの策定に関する作業の完了を歓迎する。我々は、「包摂的枠組み」に対し、2023年後半にMLCを署名できるよう準備するため、MLCに関するいくつかの懸案事項を速やかに解決することを求め、2023年末までに利益Bに係る作業を完了させることを求める。我々は、各国が共通アプローチとしてのグローバルな税源浸食対抗(GloBE)ルールの実施のために講じた措置を歓迎する。我々は、2本の柱の国際課税パッケージを効果的に実施するための能力構築に向けた協調した取組の必要性を認識するとともに、特に、途上国に対する追加的な支援と技術支援の計画を歓迎する。我々は、OECDと連携した、インドにおける南アジア租税・金融犯罪調査アカデミーのためのパイロット・プログラムの立上げを歓迎する。我々は、「途上国と国際租税に係るG20/OECDロードマップ」に関する2023年のアップデートに留意する。我々は、税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム(「グローバル・フォーラム」)の「途上国の自動的情報交換の可能性を引き出すための2021年戦略の実施についてのアップデート」に留意する。我々は、暗号資産等報告枠組(CARF)及びCRSの改訂の迅速な実施を求める。我々は、著しく多くのこれらの法域が2027年までにCARFによる情報交換を開始するという強い願望を踏まえ、グローバル・フォーラムに対し、関連する法域による情報交換を開始する適切かつ調整されたタイムラインを明らかにし、その作業の進展について我々の将来の会合に報告することを要請する。我々は、「不動産に関する国際課税の透明性の向上」についてのOECD報告書及び「租税条約に基づき交換された税務情報の税以外での目的での使用の促進」に関するグローバル・フォーラムによる報告書に留意する。我々は、脱税、汚職及びマネーロンダリングとの闘いに関するG20ハイレベル税シンポジウムで行われた議論に留意する。

21. 我々は、暗号資産エコシステムにおいて急速に進展する動向のリスクを引き続き注意深く監視する。我々は、暗号資産の活動及び市場並びにグローバル・ステーブルコインの規制・監督・監視に関する金融安定理事会(FSB)のハイレベル勧告を承認する。我々は、FSB及び基準設定主体(SSBs)に対し、規制裁定を回避するため、一貫性のある形でグローバルに、これらの勧告の効果的かつ適時の実施を促進することを求める。我々は、FSB及びSSBsの暗号資産に関する共有された作業計画を歓迎する。我々は、あらゆる種類のリスク、新興市場・発展途上経済(EMDEs)に固有のリスク、並びにマネーロンダリング及びテロ資金供与リスクに対処するためのFATF基準の進行中のグローバルな実施を考慮した、調和された包括的な政策及び規制枠組を支援するため、2023年9月の首脳サミットの前に、ロードマップを含むIMF及びFSBの統合報告書を受領することを期待する。この文脈で、我々は、統合報告書への重要なインプットとして、議長国ノートに留意する。我々はまた、「暗号資産エコシステム:主要な要素とリスク」に関するBISの報告書を歓迎する。

22. 我々は、ノンバンク金融仲介(NBFI)において進展しつつある動向を監視しつつ、システミックな観点からNBFIの脆弱性に対処し、その強靭性を向上するためのFSB及びSSBsの作業を引き続き強く支持する。我々は、オープンエンド型ファンドにおける流動性ミスマッチへの対処に関するFSBの2017年勧告の改訂についてのFSBの市中協議報告書を歓迎するとともに、FSBマネー・マーケット・ファンド提案の実施を促進し、証拠金の慣行を改善し、ノンバンクのレバレッジによる脆弱性に対処するための作業を支持する。我々は、FSBの、サイバーインシデント報告における更なる収斂の実現に向けた勧告、サイバーレキシコンの更新及びインシデント報告交換のためのフォーマット(FIRE)に係るコンセプトノートを歓迎する。我々は、報告ニーズ並びにFIRE開発の前提条件及び実現可能性を特定するFSBの作業に期待し、また我々は、FSBに対し、適切なタイムラインを伴った行動計画を策定することを求める。

23. 我々は、「サードパーティーリスク管理及び監視の強化」に関するFSBの市中協議報告書を歓迎する。我々は、ツールキットが、金融機関のオペレーショナル・レジリエンスを高め、BigTechs及びFinTechsを含む重要なサードパーティーのサービス提供者への金融機関の依存度の高まりから生じる課題に対処するとともに、法域間及び金融サービスセクターの様々な分野での規制監督上のアプローチの分断を減少させるための取組を支援することを期待する。我々は、クロスボーダー送金の改善に向けたG20ロードマップの次の段階のための優先行動の効果的な実施へのコミットメントを再確認するとともに、この方向でSSBs及び国際機関が行ったイニシアティブを歓迎する。その目的のため、我々は、このロードマップの実施に関するFSBの10月における進捗報告書に期待する。我々は、クロスボーダー送金の改善を目的とした革新的な解決策を促進する、BISイノベーションハブとの共同イニシアティブであるG20TechSprint2023に期待する。我々は、「気候変動による金融リスクに対処するためのFSBのロードマップ」に関する年次進捗報告書を歓迎する。我々は、サステナビリティ及び資本市場からの資金へのアクセスを支え、ひいてはより広い経済の強靱性に貢献し得るコーポレート・ガバナンスのための政策及び規制枠組を強化することを目的とする、改訂されたG20/OECDコーポレート・ガバナンス原則を承認する。

24. 我々は、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)による「G20の2020年金融包摂行動計画(FIAP)」の下での成果物の完成に向けた進捗を歓迎する。我々は、G20送金目標に向けた2023年首脳向け進捗アップデートを歓迎し、中小零細企業(MSMEs)のデジタル金融包摂強化に向けた規制上のツールキットを承認する。我々は、デジタル公共インフラを通じた金融包摂の推進及び生産性向上のための自発的な拘束力のないG20政策提言を承認する。我々は、包摂的な成長と持続可能な開発を支える金融包摂の推進を助けるためのデジタル公共インフラの重要な役割に留意する。我々はまた、G20首脳の方針に沿って、最後の1マイルの金融包摂及び送金コストの削減に向けた進捗を達成するため、革新的な決済システムを含む、技術革新の継続的な進展及び責任ある利用を奨励する。我々はまた、デジタル金融リテラシー及び消費者保護を強化するための継続した取組を支持する。我々は、G20及びそれを超えた国々における個人及び中小零細企業、特に脆弱で十分なサービスを受けられないグループの金融包摂を急速に加速させるための、行動指向で先を見据えたロードマップを提供する2023年G20FIAPを承認する。我々はまた、更新された2023年GPFIの付託事項を承認する。

25. 我々は、金融活動作業部会(FATF)とFATF型地域体(FSRBs)の戦略的優先事項を実施することの重要性を認識する。我々は、次期相互審査に向けたものも含め、高まるリソースのニーズを支援することにコミットし、他国に対し同様の行動を促す。我々は、犯罪者が不正に得た利益を隠匿し、洗浄することをより困難にするため、法人及び法的取極めの実質的支配者の透明性に関する改訂されたFATF基準を適時かつグローバルに実施することに引き続きコミットする。我々は、犯罪収益を回復するためのグローバルな取組を強化するための、FATFの進行中の作業、特に、財産回復に関する国際基準の改訂に向けたFATFの進捗及びグローバルな財産回復ネットワークの強化を歓迎する。我々は、各国が、特にテロ資金供与、マネーロンダリング及び拡散金融リスクに関するFATF基準に沿って、暗号資産に関連するリスクを軽減するための効果的な規制及び監督の枠組みを策定し、実施することの重要性を再確認する。この点に関し、我々は、「トラベル・ルール」を含むFATF基準のグローバルな実施を加速するためのFATFによるイニシアティブ、並びに、分散型金融(DeFi)及び個人間で行われる取引(P2P取引)を含む新たな技術やイノベーションのリスクに関する作業を支持する。我々は、テロ資金調達のためのクラウドファンディングの利用や、サイバー犯罪詐欺に関連するマネーロンダリングに関するFATFの作業が完了することを期待している。

26. マハトマ・ガンジーの教えを偲ばせるビジョンを持って、我々G20各国の財務大臣および中央銀行総裁は、すべての国が繁栄し、繁栄が広く共有され、人類と地球の幸福が調和をもって結びつく未来を構想する。


{*1* 中国は、G20財務大臣・中央銀行総裁会議は、地政学的な問題を議論するための正しいフォーラムではない、と述べた。}

{*2* ロシアは、パラグラフ2、3、5の内容を理由として、本文書のステータスを共通の成果とすることには、同意しなかった。}