[文書名] G20気候変動に対する世界的な資金動員のためのタスクフォース(TF-CLIMA)閣僚声明
我々、G20外務、財務、環境・気候大臣及び中央銀行総裁は、2024年10月24日に開催された「G20気候変動に対する世界的な資金動員に関するタスクフォース(TF-CLIMA)」の閉会に際し、持続可能な開発の優先事項や貧困と飢餓の根絶に向けた努力とのシナジーを発揮しながら、気候変動に対する行動を加速し拡大することを目的に、各国の経済及び国際金融システムにおいて大胆かつタイムリーで構造的な行動を主導することを決意した。
2. 我々は、気候変動の緊急性と深刻さを理解し、認識する。我々の取組の総和は個々の取組の総和を上回る力を持つことを認識し、我々は、気候変動に対する世界的な資金動員に向けて協力し、取組を結集する。我々は、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2°C高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも1.5°C高い水準までのものに制限するための努力を追求するというパリ協定の気温目標を再確認し、これにより気候変動のリスクと影響を大幅に削減できることを認識する。我々は、1.5°Cの気温上昇は、2°Cの気温上昇に比べて気候変動の影響が大幅に小さくなることを強調し、気温上昇を1.5°Cに抑える努力を追求する我々の決意を改めて表明する。
3. 我々は、我々の主導的な役割に留意し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の目的を追求するにあたり、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映した形で、パリ協定の完全かつ効果的な実施を強化することによって気候変動に取り組むという我々の確固たるコミットメントを再確認する。我々は、今世紀半ば頃までに、世界の温室効果ガス(GHG)排出量のネット・ゼロ又はカーボンニュートラルを達成するという我々のコミットメントを再度表明し、パリ協定及び各国の異なる事情、道筋、アプローチを考慮しつつ、各国が決定する方法で、GHG排出量のネット・ゼロ又は気候中立に関するコミットメントを前進させるよう互いに奨励する。
4. 我々は、ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の野心的かつバランスが取れた成果、特にUAEコンセンサスとパリ協定下の第1回グローバル・ストックテイク(GST-1)の成果を歓迎し、全面的に支持する。我々は、以下に言及するGST-1の成果に積極的に対応していく。
5. 我々は、GST-1決定のパラグラフ28を想起する。同項は、1.5°Cの道筋に沿って温室効果ガス排出量を大幅、迅速かつ持続的に削減する必要性をさらに認識し、締約国に対し、パリ協定及び各国の異なる事情、道筋、アプローチを考慮しつつ、各国が決定する方法で、以下の世界的な取組に貢献するよう求めている:
(a)2030年までに再生可能エネルギーの発電容量を世界全体で3倍にし、エネルギー効率改善率を世界平均で年率2倍にする。
(b)排出削減対策が講じられていない石炭火力の逓減に向けた取組を加速する。
(c)脱炭素燃料や低炭素燃料を活用した、ネット・ゼロ排出のエネルギーシステムに向けた取組を、今世紀半ばより十分以前に、または半ば頃までに、世界的に加速する。
(d)科学に沿って2050年までにネット・ゼロを達成するため、この決定的に重要な10年間で行動を加速し、公正で秩序ある衡平な方法でエネルギーシステムにおける化石燃料から移行する。
(e)再生可能エネルギー、原子力、特に排出削減が困難なセクターにおける炭素回収・利用・貯蔵などの排出削減・除去技術、低炭素水素製造などの、ゼロ及び低排出技術を加速する。
(f)2030年までに、特にメタン排出を含むCO2以外のGHG排出を世界的に加速的に大幅に削減する。
(g)インフラの開発やゼロ又は低排出車両の迅速な普及を含め、多様な道筋を通じて、道路交通からの排出削減を加速する。
(h)エネルギー貧困や公正な移行に対処しない非効率な化石燃料補助金を可及的速やかにフェーズアウトする。
6. 我々は、GST-1において、過渡的燃料がエネルギー安全保障を確保しつつ、エネルギー移行を促進する役割を担い得ると認識されたことを想起する。
7. 我々はさらに、GST-1において、パリ協定の気温目標達成に向け、昆明・モントリオール生物多様性枠組に沿って、社会的・環境的セーフガードを確保しつつ、2030年までに森林減少と森林劣化の阻止・反転に向けた努力の強化、温室効果ガスの吸収源・貯蔵庫として機能する陸域・海洋生態系、生物多様性の保全など、自然と生態系の保全・保護・回復の重要性が強調されたことを想起する。
8. 我々は、気候変動に関する政府間パネルの第6次評価報告書の統合報告書において、モデル化された経路と仮定に基づいて、オーバーシュートしない又は限られたオーバーシュートを伴って気温上昇を1.5°Cに抑えるモデル化された世界全体の経路、また、温暖化を2°Cに抑え、即時の行動を想定するモデル化された世界全体の経路では、世界の温室効果ガス排出量は、2020年から遅くとも2025年までにピークを迎えると予測されるとの知見をGST-1が認識したことを強調する。このことは、全ての国がこの時間枠内にピークに達することを意味するわけではなく、ピークに達するまでの時間枠は、持続可能な開発、貧困撲滅の必要性及び衡平性によって、また、各国の異なる事情に沿って形成され得ることに留意し、自発的かつ相互に同意された条件での技術開発及び技術移転、能力構築及び資金調達が、この点で各国を支援できることを認識する。
9. 我々は、パリ協定第2条に定める気温に関する目標の文脈において、持続可能な開発に貢献し、及び適応に関する適当な対応を確保するため、気候変動への適応に関する能力の向上並びに気候変動に対する強靭性の強化及び脆弱性の減少という適応に関する世界目標の重要性を強調する。
10. 我々は、GST-1が、各国の異なる事情に基づき、緊急、漸進的、変革的かつ国主導の適応行動を求め、パリ協定第2条1(b)の目標達成に必要なものに沿って適応努力を強化することを求めたことを再確認し、気温に関する目標の文脈において適応に関する適当な対応を確保することの重要性を強調する。
11. 我々はさらに、G20環境気候持続可能性ワーキンググループの閣僚宣言を歓迎する。これは、適応に関する世界的な取組の重要性を再確認し、気候変動の影響が広範囲にわたって顕著になり拡大していることを受け、社会全体及び経済全体での適応の規模を拡大し、優先順位を付け、主流化するための緊急行動の必要性を認めている。
12. 我々は、異常気象の発生が増加し、その悪影響が増大していることに憂慮と深刻な懸念を抱いている。我々は、早期警戒システムの普遍的な適用を通じて地球上のすべての人々を保護する緊急の必要性を再度表明し、国連事務総長が立ち上げた「すべての人のための早期警戒イニシアティブ」の実施を求める。
13. 我々は、GST-1決定文書に効果的に対応することを目的として、早期に行動を起こすという強いコミットメントを再確認する。資金、能力構築、技術開発及び技術移転が気候行動の重要な要素であり、公的資金が重要な役割を果たすことに留意しつつ、我々は、途上国への気候資金と投資の拡大、広く利用可能な技術革新の加速、強靭性及び温室効果ガス低排出経路の強化、さらには野心的なグリーン産業計画と戦略の支援を含む、国際協力と支援の強化の必要性を強調する。
14. 我々は、再生可能エネルギー、特に排出削減が困難なセクターにおける温室効果ガスの排出削減・除去技術及び適応を促進する技術を含むゼロ及び低排出技術の開発、実証、商業化、及び展開を支援することの重要性を認識する。我々は、カーボンニュートラル及びネット・ゼロに向けた、適当な場合における、カーボンプライシング及びかかるプライシングによらないメカニズムとインセンティブの活用を含む財政、市場及び規制メカニズムからなる政策の組合せの重要性を再確認する。我々は、循環炭素経済、社会経済的、技術的、市場開発を含む異なるアプローチを考慮しつつ、最も効率的な解決法を推進する。
15. 我々は、特に開発途上国における気候行動への民間資本の流入を促進するための構造的な障壁を特定し、これに対処することを目的として協力し努力を共にするとともに、信用格付けや国別リスク評価の透明性向上を模索するなど、関係機関はリスクが適切に捕捉されるよう取り組むべきであることを認識する。
16. 我々は、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を中期的にフェーズアウトし、合理化するという2009年にピッツバーグで表明したコミットメントを実施する取組を強化するという、ニューデリー宣言におけるコミットメントを改めて表明し、最も貧しく脆弱な人々に的を絞った支援を提供しつつ、この目標を達成することにコミットする。
17. 我々は、GST-1のパラグラフ39に積極的に対応する。このパラグラフは、NDCの国が決定するという性質とパリ協定第4条4を再確認し、締約国に対し、野心的で、全ての温室効果ガス、セクター及び分類を含む経済全体の排出削減目標を含み、最新の科学に基づき、各国の異なる事情に照らして、地球温暖化を1.5°Cに抑えることに整合したNDCの提出を奨励している。
18. 我々は、現在も、そして今後も、気候変動との地球規模の闘いに対する各国の取組を伝える主要な手段であり続ける各国のNDCsの野心と実施を支える国主導の強力な国別移行計画に引き続きコミットしている。我々は、緩和、適応、強靭性構築の政策とロードマップを公的資金及び民間資金の両方に支えられた具体的な投資計画に転換し、この決定的に重要な10年間及びそれ以降の行動を加速させ、アジェンダ2030と持続可能な開発目標(SDGs)及び関連する多国間合意に貢献するための一つの手段として、各国の強いオーナーシップに基づき、柔軟で各国の事情にうまく適応したカントリー・プラットフォームの自発的な利用を支持する。
19. 我々は、多国間金融アーキテクチャの変革を、気候変動との闘い及び持続可能な開発の促進という緊急の課題と整合させる必要性を強調する。
20. 我々は、温室効果ガス低排出であり、かつ気候に対して強靭な開発に向けた道筋に資金の流れを整合させるための進展の重要性を強調する。
21. 我々は、「より良く、より大きく、より効果的な国際開発金融機関(MDBs)に向けたG20ロードマップ」の実施を支援する。これは、新たな危機感と決意を持って21世紀のグローバルな課題に対処するシステムとしてのMDBsの中期的な包括的ビジョンを設定し、SDGsを達成するために中低所得国の開発ニーズへの対応に引き続き焦点を当てたものである。我々はまた、パリ協定とアジェンダ2030の目的、そして各国のニーズや優先事項に沿った気候行動やプロジェクト、プログラムへの資金調達において協調するため、MDBsと環境・気候関連基金、MDBsと各国及び地方開発銀行とのそれぞれの連携強化の必要性を強調する。各国の政策との整合性や現地の知識の深さ、現地通貨建ての資金調達能力を持つ国の開発銀行や公的開発銀行は、この取組において極めて重要である。
22. 我々は、自発的で柔軟性のある「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」の実施に向けた我々の取組を加速することにコミットする。G20サステナブル・ファイナンス作業部会による作業を認識し、我々は気候・環境関連基金へのアクセスを改善し、その運用を最適化する必要性を強調する。これらの基金は、国のオーナーシップを確保し、投資の効果を最大化するために、各国のニーズ、優先事項、戦略を考慮することが不可欠である。気候・環境関連基金の効果を最大化するには、融資の範囲、規模、スピードが極めて重要である。新興・開発途上国(EMDEs)、小島嶼開発途上国(SIDS)を含む後発開発途上国(LDCs)にとって、低コストでアクセスしやすい資金を利用できるようにすることが極めて重要であり、これは緩和及び適応の取組への支援を促進する上で重要である。各国の固有の事情、課題、開発目標を考慮した個別のアプローチは、能力構築と制度強化に不可欠である。我々は、ブラジルG20議長国とサステナブル・ファイナンス作業部会(SFWG)によって任命された独立ハイレベル専門家グループ(iHLEG)が作成した、気候・環境関連基金の独立レビューに関する報告書を歓迎する。
23. 我々はさらに、G20サステナブル・ファイナンス作業部会による信頼性が高く強固な公正な移行計画を推進するための作業を認識し、移行計画の設計と実施を推進するために、その採択は任意で拘束力がない、一連のハイレベルなG20原則を歓迎するとともに、金融機関や他の企業間での相互運用性と適用性を歓迎する。移行計画は、移行に向けた長期戦略を組み込み、金融機関や企業がリスクを軽減し、移行に関連する機会を捉えるのに役立つ。また、移行計画には、特に物理的リスクへの曝露が高い国において、気候リスクへの適応に関する要素が含まれることがある。
24. 我々は、公的資金を補完し、適切な場合には、革新的な金融手法やブレンディッド・ファイナンス、外国為替リスクの軽減を通じた海外直接投資、持続可能なタクソノミー、十全性(質)の高い炭素市場、国内資金動員戦略、能力構築イニシアチブ、対象を絞った譲許的資金など、幅広い資金源からの資金動員の拡大を確保する形で、気候変動への対処における民間部門の役割を強化するための再度焦点を当てた取組の重要性を強調する。
25. 我々は、2020年にG20が承認した「効果的なカントリー・プラットフォームに関する参照枠組み」を想起する。この枠組みは、カントリー・プラットフォームが自主的かつ国主導であるべきこと、戦略的ビジョンと原則を共有し、政府の強いオーナーシップに基づくものであるべきこと、そして画一的な方法は存在しないことを規定するものである。我々は、カントリー・プラットフォームがNDCs、国別適応計画(NAPs)及び長期低排出開発戦略(LT-LEDS)で定められている目標を達成するための強力な手段となり得ることを認識する。我々は、気候・環境関連基金が、準備プログラムも含め、カントリー・プラットフォームの開発及び実施を支援する役割を果たすことを認識する。
26. 我々は外国為替(FX)リスクのヘッジコストが、途上国へのクロスボーダー投資、特に再生可能エネルギーのような主に自国通貨による収益を伴うプロジェクトに大きな課題をもたらしていることを認識する。我々は、為替ヘッジコストを軽減し、民間投資を誘致し、プロジェクトの資金的な実現可能性と低廉性を確保するために、新たなFX流動性ファシリティの開発を奨励する。我々は、MDBs、気候・環境関連基金、国際金融機関(IFI)に対し、FX流動性メカニズムを強化し、現地通貨建ての資金調達を支援することを推奨する。
27. 我々は、締約国はすべての国において持続可能な経済成長と開発を達成し、その結果、気候変動の問題によりよく対処できるようにすることを目的とした、協力的で開かれた国際経済システムの促進に協力すべきであると認識し、一方的措置も含め、気候変動と闘うために取られる措置は、恣意的または不当な差別の手段、あるいは国際貿易に対する偽装された制限を構成すべきではないことに留意したGST-1のパラグラフ154を想起する。
28. 我々は、ブラジルG20議長国によるTF-CLIMA設立のイニシアティブを歓迎する。TF-CLIMAは、シェルパ・トラックと財務トラックを統合し、世界経済と開発のアジェンダにおいて気候変動をさらに主流化することを支援する。我々は、我々のコミットメントの達成を支援し、世界的な野心を支援する手段として、以下のタスクフォースの成果を歓迎する。我々は、TF-CLIMAの下に独立した専門家グループを設置した、G20議長国ブラジルのイニシアティブに留意し、専門家グループによる報告書は『グリーンジャストプラネット』と題された。
29. 我々は、この決定的に重要な10年間における行動と実施を強化し、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けることを目的とし、国際協力と国際的な環境整備を大幅に強化するための「ミッション1.5へのロードマップ」を導くというCOP28、COP29、COP30の議長国の役割に対する支持を強調する。
30. 我々は、COP29議長国への支援を誓い、バクーでの交渉の成功にコミットする。また、2025年のCOP30議長国への支援も誓う。