データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20南アフリカサミット:首脳宣言

[場所] 
[年月日] 2025年11月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

G20南アフリカサミット:首脳宣言

1.我々、南アフリカのヨハネスブルグに集ったG20の首脳は、2025年11月22日及び23日に南アフリカ議長下でアフリカ大陸における歴史的なG20サミットを開催し、主要な世界的課題に対処し、包括的な成長の主要な柱である連帯、平等及び持続可能性の促進に向けた方策について議論した。

2.G20首脳は初めてアフリカで会合を開催した。ウブントゥの精神に基づき、我々は個々の国家が孤立して繁栄することはできないと認識している。アフリカの哲学であるウブントゥは、「あなたがいるから私がいる」と訳されることが多く、より広範な共同体、社会、経済及び環境の文脈における個人の相互関連性を強調する。我々は、国家からなる国際社会の共同体としての相互関連性を理解し、多国間協力、マクロ経済政策調整、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップ及び連帯を通じて、誰一人取り残されないことを確保するというコミットメントを再確認する。

3.我々は、地政学的・地経学的な競争及び不安定性の高まり、紛争及び戦争の激化、格差の拡大並びに世界経済の不確実性及び分断の増大という背景の下に集う。この困難な政治的・社会経済的環境に直面する中、我々は、共通の課題に集団的に対処するための多国間協力への信念を強調する。我々は、世界中の戦争及び紛争による甚大な人的被害及び悪影響を苦痛と共に留意する。

4.我々は、国際人道法を含む国際法、国連憲章及びその紛争の平和的解決の原則に従って行動するという揺るぎないコミットメントを確認するとともに、この点において、我々は、民間人とインフラに対する全ての攻撃を非難する。

5.我々は更に、国連憲章に沿って、全ての国は、いかなる国の領土一体性及び主権又は政治的独立に対する、領土取得を追求するための武力による威嚇又は武力の行使は慎まなければならないこと並びに各国は、人種、性別、言語及び宗教による区別なく、全ての人の人権及び基本的自由の尊重を促進及び奨励することを含め、国家間の友好関係を発展させるべきであることを再確認する。

6.我々は、あらゆる形態及び主張によるテロ行為を非難する。

7.我々は、国連憲章の目的及び原則全体を指針として、スーダン、コンゴ民主共和国、パレスチナ占領地及びウクライナにおける公正で、包括的かつ永続的な平和、並びに世界中のその他の紛争や戦争の終結に向けて取り組むことに一致している。平和があってこそ、持続可能性と繁栄が達成できる。

災害強靭性・対応の強化

8.我々は、自然災害、人為的要因、あるいは気候変動によって悪化しているかに関わらず、災害やショックの頻度、強度及び地理的範囲の増大が持続可能な開発の進展を阻害し、国家及び国際システムの対応能力の両方に負担を強いることについて認識する。このような災害は、全ての国に壊滅的な影響をもたらす。我々は、災害の影響を既に不均衡に受けており、適応、災害軽減、防災及び復旧の費用を負担できない国々、特に小島嶼開発途上国(SIDS)及び後発開発途上国(LDCs)に特別な注意を払う必要性を強調する。我々は、防災に向けた統合的で、包摂的で、人間中心かつ包括的なアプローチの重要性を強調する。我々は、災害への強靭性と対応の強化の必要性を認識しており、これには、地震、猛暑、洪水、干ばつ、山火事及び砂漠化を含む災害の発生及び悪影響を軽減するため、また、必要な場合には相互に、またパートナーを支援する用意を整えるための協調的な行動をとることが含まれる。したがって、我々は、ドナー、国際金融機関、開発銀行、民間セクターを含む国際社会に対して、災害後の復旧・復興と適応、災害軽減、防災及び再建措置に対処するよう促す。これらの措置は、特に開発途上国及び最も脆弱な国々に対し、各国の事情及び優先事項を尊重しつつ、持続可能な強靭性を促進する方法で行うべきである。

9.我々は、証拠に基づいた政策立案に根ざし、持続可能な強靭性の構築への投資、予防の優先及び先行的行動の重要性を強調する。これには、人々の生命と生活を中核に据えつつ、適時で、柔軟で、効果的で、包括的かつ公平な災害対応と復旧に向けた、事前の防災と備えを強化するため、負担可能で、包摂的で、アクセス可能な事前取決型資金調達メカニズムの拡大と更なる活用を含み得る。これには、パラメトリック保険、リスクプール、緊急時融資枠、大災害債、あるいは、特に適応型社会保護システムといった選択的な提供メカニズムと連携した保険保証制度など、事前の防災を促す資金調達を含み得る。また、災害に強靭なインフラのためのコアリション(CDRI)などの取組にも留意する。

10.我々は、「災害リスク軽減(DRR)への投資に関するG20自発的ハイレベル原則」を歓迎し、防災への投資強化に向けた国際協力を促進するとともに、G20メンバー及び招待国に対し、適切な場合には、各国の事情、優先事項及びニーズに沿って、これらを関連する全てのセクター及びあらゆるレベルにおける国及び国以下の計画及び金融システムに組み入れるよう促す。我々は更に、G20南アフリカ議長下で策定された「復興準備度評価枠組」を、強靭な復旧に向けた優先度の高い活動を組み込む、先行的・包括的・持続可能な復旧計画策定のための貴重な自発的ツールとして認識する。

11.大規模災害の増加は、脆弱な立場にある人々、特に低所得層に、貧困及び不平等を悪化させる形で、不均衡に影響を及ぼしていることに懸念を持って留意する。したがって、我々は、不平等への対処と脆弱性の軽減に向けた取組の必要性を強調する。我々はまた、途上国が災害リスク軽減の取組を強化するためには、国際協力と開発のためのグローバル・パートナーシップを通じた、適切で、持続可能で、適時な資金を含む実施手段の提供強化と、継続的な国際支援が必要であることを認識する。我々は、特定の災害リスクを最小化し強靭性を構築する一方で、生態系サービスを提供する手段として、自然を活用した解決策及び生態系を活用したアプローチを歓迎する。

12.我々は、互恵的な技術協力及びグッド・プラクティスの交換を促進するためのパートナーシップ強化の重要性、並びに、より強い回復と強靭性及び長期的な開発の基盤としての包括的で、持続可能で、質の高いインフラ投資の必要性を認識する。我々は、早期警報システムの普遍的普及を通じて全ての国を保護する緊急の必要性を改めて表明し、2027年までに国連の「全ての人への早期警報イニシアティブ」の実施を求める呼びかけの重要性を強調する。我々は、このイニシアティブの下でロードマップを最初に立ち上げた南アフリカを称賛する。

13.我々は、仙台防災枠組(SFDRR)2015-2030の重要性を再確認するとともに、SFDRR、持続可能な開発のための2030アジェンダ、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、及びパリ協定の間に存在する強い相乗効果を認識する。我々は更に、特にアフリカにおいて、これらの枠組みの実施における進展を加速させる必要性を強調する。

低所得国が債務持続可能性を確保するための行動措置(資本コスト)

14.我々は、高水準の債務は、インフラ、災害への強靭性、保健医療、教育及びその他の開発ニーズへ投資する能力を制限する、多くの途上国の包摂的な成長への障壁の一つであることを認識する。システミックな債務危機のリスクは概ね抑制されているようである一方、多くの脆弱な低中所得国は、高い資金調達コスト、大規模な対外借換ニーズ、そして大幅な民間資金流出に直面している。これらの債務脆弱性は、他の要因と相まって、こうした国々の財政的余力、貧困や不平等への対応力、そして成長と開発への投資能力を制約し得る。状況は、特にアフリカにおいて、多くの低所得国にとって非常に困難である。我々は、低所得国(LICs)にとって、対外公的債務全体に係る利払いが顕著に増加し、過去10年間で2倍以上になったことに懸念をもって留意する。

15.我々は、効果的、包括的、かつ体系的に低中所得国による債務脆弱性へ対処する取組を、支援する我々のコミットメントを再確認する。我々は、このコミットメントを推進するための具体的な行動の基礎となるものである、2025年10月の会合において我々の財務大臣が採択した「債務持続可能性に関するG20閣僚宣言」を支持する。

16.我々は、予測可能で、適時に、秩序立ち、かつ連携した方法で「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)後の債務措置に係るG20共通枠組(CF)」の実施を更に強化することへの我々のコミットメントを再確認する。

17.我々は、民間債権者を含む全ての利害関係者に債務透明性の向上を求めることを再確認する。

18.我々は、進行中であるIMF(国際通貨基金)・世界銀行の低所得国向け債務持続可能性枠組(LIC-DSF)の見直しを支持する。この見直しは、IMF・世界銀行の低所得国向け債務持続可能性分析(DSA)を支える手法の更なる改善をもたらし、債務脆弱性についてより効果的に理解し対処することに資する。

19.我々は、極めて重要な余裕と流動性を提供し得る「危機に強靭な債務条項」の適切な場合における自発的な活用に留意する。我々は、債務持続可能性の強化を支援するため、利点と限界についてバランスの取れた見方をもって、負債管理オペレーション及び「開発債務スワップ」、気候又は類似のスワップの自発的かつケースバイケースでの活用の検討を模索する取組に留意する。

20.我々は、共通理解を更に推進すべく、公的債務に係るグローバル・ラウンドテーブル(GSDR)をはじめとして、民間セクター、公的な二国間及び多国間債権者並びに債務国を含む主要な関係者と建設的に関与していくことに引き続きコミットする。借入国と関与し、借入国の声を高めることは重要である。

21.我々は、債務が持続可能である一方、流動性困難に直面している、強固な改革アジェンダを有する脆弱国への支援を、国際社会に引き続き求めるとともに、IMFと世界銀行に、これらの国々を、各国固有かつ自発的な形で支援するための実現可能な選択肢に関する作業を継続することを要請する。我々はまた、これらの国々への支援策を、IMFと世界銀行の協力を得て議論する。我々は、本件に係る、IMFと世界銀行からの更なる報告に期待する。

22.我々は、債務管理、債務透明性、公共財政管理、そして国内資金動員のギャップに対処することの重要性を強調し、この目的のために、適切な能力構築を引き続き推進する。

公正なエネルギー移行のための資金動員

23.我々は、世界のエネルギー情勢において、特にアフリカやその他の開発途上地域で、不平等や課題が存在する一方、成長の機会もあることを認識する。我々は、アフリカで6億人以上が電力にアクセスできず、アフリカ諸国の平均アクセス率は40%と世界最低水準であること、また、推定10億人がクリーン・クッキング(環境負荷の少ない調理方法)を利用できていないことを認識している。我々は、家庭でクリーン・クッキングのための燃料が不足しているために、毎年200万人のアフリカの人々が命を落としていることを深く憂慮している。

24.我々は、国家主権、経済発展、安定及び世界の繁栄にとって、エネルギー安全保障が依然として基礎であることを再確認する。我々は、G20南アフリカ議長国の「自発的エネルギー安全保障ツールキット」を、各国が自国のシステムを強化するための実践的なリソースとして高く評価する。このツールキットは、エネルギー技術とイノベーション、リスクの特定、地域間の相互連結性、インフラ強靭性、エネルギー効率、緊急事態のための備え及び人材育成に対する統合的アプローチの採用を支援するために開発され、特に開発途上国にとって関連性が高いものである。

25.我々は、既存の目標や関連政策を通じて、再生可能エネルギーの容量を世界全体で3倍にし、エネルギー効率改善率を世界平均で年率2倍にする取組の実施を支援し、同様に、2030年までに、各国の事情に沿って、排出削減対策技術及び除去技術を含むその他のゼロ排出及び低排出技術に関してもその実施を支援する。我々は、エネルギー安全保障及びエネルギー移行に向けた技術中立的で統合的かつ包摂的なアプローチが極めて重要な役割を果たすことを強調する。我々は更に、特に途上国において、世界的な持続可能なエネルギー移行のための資金ギャップを埋めるため、あらゆる関連する資金源や経路からの投資を促進及び拡大する必要性を認識し、エネルギー移行技術及びインフラへの既存及び追加投資のデリスキング、資金動員及び多様化の緊急性を強調する。我々は、途上国の低炭素排出への移行を支援する重要性を再確認し、譲許的資金や革新的資金調達、ブレンデッド・ファイナンス・メカニズム並びにリスク軽減手段及び技術支援を含む、途上国のための低コストの資金調達促進に向けて取り組む。我々は、国内のエネルギー計画、能力構築、自発的かつ相互に合意された条件に基づく技術移転、政策戦略及び枠組みの重要な役割を認識するとともに、エネルギー移行への資金調達を促進する環境整備において、政府各レベル間及び国際金融機関間の協調を促進する。

26.2020年サウジアラビア議長下で策定された「効果的なカントリー・プラットフォームに関するG20参照枠組み」、「移行計画及びカントリー・プラットフォームに関する枠組み」及び2024年ブラジルG20議長下で採択された自発的な「公正かつ包摂的なエネルギー移行のためのG20原則」を想起し、G20メンバー及び招待国は、エネルギー安全保障、貧困削減、社会的強靭性及び公平、並びに自発的かつ相互に合意された条件に基づく技術移転及び経済的なエンパワーメントなどを追求する各国の事情及び優先事項を考慮しつつ、地域社会、国家及び地域のアプローチを通じて、エネルギー移行計画の推進に向けた取組を強化すべきである。我々は、持続可能な生産及び消費パターンを受け入れ、持続可能な開発のためのライフスタイル(LiFE)を主流化することの重要性を認識する。

27.我々は、多様な道筋及び技術中立的なアプローチを通じて、エネルギー安全保障、負担可能性及びアクセス並びに市場の安定性を推進し、公正かつ包摂的な持続可能なエネルギー移行を加速させる。これには、増加するエネルギー需要を満たすため、国内及び共同の目標に貢献する追加的なエネルギー需給管理、送電網の拡張並びに近代化の取組を含む。我々は、関連する適用可能な目標及び国際的なコミットメントに沿って、バランスのとれた、信頼のある、革新的で、安定で、負担可能で、アクセス可能で、クリーンかつ持続可能なエネルギーシステムを支援しつつ、これを実現する。

28.我々は、「クリーン・クッキング・ソリューション普及加速のための自発的インフラ投資行動計画」を歓迎する。我々は、加盟国が自発的に、利用可能かつ負担可能なクリーン・クッキング技術、インフラ及び燃料(液化石油ガス(LPG)を含むがこれに限定されない)の開発及び普及を支援するための適切な政策環境を整備し、必要に応じて改革に取り組むという自発的なコミットメントに留意する。これには、分散型で包摂的なエネルギーソリューション、送電網の拡張及び政策枠組みの整備への投資支援が含まれる。我々は、アフリカ大陸全体における普遍的なエネルギー安全保障、アクセス及び負担可能性の加速、持続可能な開発の推進、公正な移行の促進には、マルチステークホルダーによる行動が必要であることを認識する。我々は、2030年までにアフリカで3億人に電力を提供する取組を進める、世界銀行グループとアフリカ開発銀行が主導する「ミッション300」プラットフォームを歓迎する。我々はまた、アフリカ及びその他の地域におけるエネルギーアクセス促進のため、様々な種類のゼロ排出及び低排出技術及び燃料の利用に関するその他の国際的イニシアティブにも留意する。

29.我々は、持続可能な工業化が持続可能な開発及びエネルギー移行の礎石であることを強調する。我々は、鉱物資源の現地製造及び選鉱を含む工業化の恩恵を公平に分配することを支援する「持続可能な工業化ハブのためのハイレベル自発的原則」に留意する。

30.我々は、自発的な「公正かつ包摂的なエネルギー移行のためのG20原則」を再確認し、クリーンで、持続可能な、公正かつ負担可能で、包摂的なエネルギー移行を促進するという我々のコミットメントに関するリオデジャネイロ宣言を想起する。

包摂的な成長及び持続可能なための重要鉱物の活用

31.我々は、世界経済が持続可能な移行、急速なデジタル化及び産業革新を含む大きな変化を経験する中で、重要鉱物への需要が増加することを認識している。我々は、重要鉱物に関連する利益が十分に実現されていないこと、特に開発途上国における生産国が、過小投資、限定的な付加価値化及び選鉱、技術不足、並びに社会経済的・環境的問題といった課題に直面していることに留意する。

32.したがって、我々は、重要鉱物資源が繁栄と持続可能な開発の原動力となることを確保するための、自発的かつ拘束力のない青写真である「G20重要鉱物フレームワーク」を歓迎する。このフレームワークは、工業化と持続可能な開発を支える、持続可能で、透明性が高く、安定的で、強靭な重要鉱物バリューチェーンを確保するための、国際協力の緊急の必要性に対応するべく設計されている。更に、これは鉱物探査への投資促進、現地での原料加工の推進、持続可能な採掘慣行のためのガバナンス強化を目指す。鉱物資源に恵まれた国々が包括的な経済成長のために自国の資源を活用する主権的権利を完全に尊重しつつ、経済的・社会的・環境的配慮及び保全、地域社会の参加並びに供給の安全性を確保するものである。重要鉱物は単なる原材料輸出ではなく、付加価値創出と広範な発展の触媒となるべきである。

33.我々は、長期的な持続可能な経済成長を確保するため、特に開発途上国における重要鉱物の探査拡大、鉱物資源の供給源、輸送ルート、市場、加工拠点及びバリューチェーンの多様化促進、鉱物資源に恵まれた開発途上国における価値の保持と選鉱の強化、そして各国の枠組みに沿った経済的・社会的・環境的側面に関する強固で無差別かつ適切な基準の実施を支持する。我々は、地政学的緊張、WTO規則に整合していない一方的な貿易措置、パンデミック、自然災害などによる混乱に対し、重要鉱物のバリューチェーンがより耐性を持ち、より多くの生産国がバリューチェーンに参加し恩恵を受けられるよう確保することを目指す。

34.我々は、官民セクター、金融機関、開発パートナー、投資家及び地域社会が連携し、重要鉱物の潜在能力を最大限に引き出すことで、これらの資源が豊富な地域住民の利益に資するとともに、持続可能で公平な開発、経済成長及び繁栄を推進するよう促す。

包摂的な経済成長、工業化、雇用創出、不平等削減

35.我々は、不平等、失業、不完全雇用、及びインフォーマル雇用が、世界経済の成長、開発並びに社会及び経済的安定に対する重大な脅威となることを認識する。我々は、これらの課題、並びに国家内及び国家間の富及び開発の格差に対処することが不可欠であることを強調する。我々は、各国の状況及び国際的義務に沿って、共有された繁栄のため、全ての人々に平等な機会と経済資源及び基本サービスへのアクセスを確保することの重要性を想起する。

36.我々は、包摂的かつ持続可能な産業政策は、経済の強靱性を強化し、力強い成長を支えるとともに、全ての国々に利益をもたらす形で質の高い雇用を創出する上で、極めて重要な役割を果たし得ることを認識する。この目的のため、我々は、「包摂的な経済成長、工業化、雇用及び平等に向けた持続可能な産業政策に関する自発的かつ法的拘束力のないG20ハイレベル原則」を歓迎する。工業化、特に製造業及び関連セクターの成長は、生産性、雇用創出、及び経済成長の重要な推進力である。多面的かつ相互に絡み合った課題に直面する世界において、経済の強靱性を強化し、経済を多様化し、全ての国々の経済的利益を確保する強固な成長を支えるためには、包摂的かつ持続可能な産業政策がますます緊急の課題となっている。我々は多国間主義を強化し、世界経済における安定性、公正な競争、予測可能性を奨励し、包摂的で持続可能な生産部門、既存及び新興技術への投資を促進するとともに、技術革新を通じた産業革新を推進する。産業は経済の他の分野に強力な乗数効果をもたらし、イノベーションを促進し、良質で高水準の雇用、働きがいのある人間らしい仕事を創出し、社会にとって不可欠な物品及びサービスを生産する。我々は、持続可能な産業政策の実施に伴うポジティブな影響を最大化するため、グローバルな協働と対話を推進するとともに、これらの政策の負の影響を最小化するため、WTOのルールを含む国際的な権利及び義務を遵守した行動に取り組む。

37.「包摂的な経済成長、雇用及び不平等削減に関するG20原則」を基礎として、我々は、雇用が経済成長の中心的目的であり、良質な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事が持続可能な工業化の核心でなければならないことを認識する。強固な労働機関、公正な賃金設定メカニズム及び普遍的で適応型の社会的保護は、不平等の削減及び強靱性の醸成に不可欠である。我々は、経済政策が生産性及び衡平性の両方を推進し、誰一人取り残されないことを確保するよう、包摂的な経済成長の原動力として、工業化、人間らしい仕事の創出、社会的保護、及び労働権の尊重を結びつける協調的な政策の重要性を認識する。

38.G20の首脳として、我々は、科学、テクノロジー、起業家精神、並びに先住民及び地域の知識と連携しながら活用し、誰一人取り残さない繁栄への新たな道を開くというビジョンを共有する。我々は、起業家精神がこのビジョンの礎であることを認識する。我々は、また、スタートアップ及び中小零細企業(MSMEs)が雇用創出、イノベーション、及び地域開発の原動力としての役割を果たすことも認識する。

食料安全保障

39.我々は、世界の飢餓削減における進展を歓迎する一方で、2024年には最大7億2000万人が依然として飢餓に直面し、26億人が健康的な食生活を賄えない状況にあることに懸念を抱いている。我々は、食料は人間の生活の中心であり、G20が、デカン・ハイレベル原則を通じ再確認されたように、国家の食料安全保障の文脈において、SDGsの目標2(SDG2)の達成及び食糧の権利の漸進的な実現に向けあらゆる努力を尽くすべきであることを再確認する。我々は、飢餓からの解放という全ての人の基本的権利を認識し、安全で健康的かつ栄養価の高い食料へのアクセス及び手頃な価格を実現する条件を整えるための政治的意志が必要であることを確認する。我々は、国際法、特に国際人道法を遵守するための我々のコミットメントを再確認し、意図的に民間人に対する飢餓を戦争の手段として用いるべきではないことを再確認する。

40.したがって、我々は、WTOルールに整合的で、開かれた無差別的な貿易政策を通じて、強靭で持続可能な食料システム及び食料安全保障を確保するとの我々のコミットメントを改めて表明する。我々は、また、農業・食料システムの強靱性の近代化は、土地、土壌の生物多様性、エネルギー及び水管理、食料廃棄の削減、適応及び緩和、持続可能なテクノロジー、イノベーション及びアプローチへの支援、並びに小規模農業者及び家族農業者への投資を通じて強化されることに留意する。同時に、女性及び若者の包摂及びエンパワーメントの促進、地域の食料生産の強化、多様な食料供給を促進する強靱で改善された食料バリューチェーンの構築、WTOに整合的な国家及び緊急用食料備蓄、ゼロ・ウェイスト等のイニシアティブを通じた食料の損失・廃棄の削減、並びに国家の食料安全保障及び国内生産を補完する食料供給を確保し、健康的な食生活へのアクセス及び負担可能性を向上させる国際的及び地域の貿易取決によって強化されることに留意する。

41.我々は、南アフリカ議長下で設置された食料安全保障に関する他の既存の枠組みとも整合するG20食料安全保障タスクフォースの取組を歓迎し、世界的な食料安全保障及び栄養の確保のアジェンダの推進における議長国のリーダーシップを称賛する。また、我々は、G20食料安全保障閣僚会合で提唱された「食料安全保障及び栄養、並びに過剰な食料価格の変動に関するウブントゥ・アプローチ」を歓迎する。これらは、特に低所得世帯における過剰な食料価格の変動の悪影響に対処することを目的とするとともに、全ての人々が十分かつ安全で負担可能な価格の栄養価の高い食料を入手できる未来を形作るという我々の共通の決意を示す。我々は、ウブントゥ・アプローチを実施し、その進捗状況を見直すことにコミットする。

42.我々は、食料安全保障タスクフォースの取組が整合する、食料安全保障及び栄養に関する過去のG20イニシアティブを想起する。我々は、現在及び未来世代の利益のため、農業、養殖、及び食料システムを強化するために協力することを誓約するとともに、貧困、飢餓及び不平等に統合的かつ持続可能な方法で対処する重要なプラットフォームとして、「飢餓と貧困に対するグローバル・アライアンス」への支持を改めて確認する。我々は、2025年9月にカイロで開催された第3回G20食料安全保障タスクフォース会合の開催に向けた、議長国南アフリカとエジプトの成功した協力を想起する。これはアフリカ特有の食料安全保障の課題に対処するための議長国南アフリカの下でのG20の強いコミットメントを反映している。

43.アフリカの広大な農業の潜在力を認識し、我々は、能力構築及び技術支援の拡大、並びに小規模農業者及び漁業者、特に女性及び若者に対する対象を絞った支援に向けた取組を奨励する。具体的には、資金、市場、デジタルツール、及び気候変動に対して強靱なインフラへのアクセス改善を通じてこれを実現する。我々は、アフリカ連合の包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)戦略、行動計画及びアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実施を支援する。具体的には、変動の激しいグローバルサプライチェーンへの依存度を低減するための、現地の食料生産、貯蔵及び流通能力への投資、並びに統合された種子銀行の構築、現地肥料生産の強化、及びアフリカ域内農業貿易の促進に向けたアフリカ主導の取組を支援することを含む。

人工知能、データガバナンス及び持続可能な開発のためのイノベーション

44.我々は、不平等を削減し、善そして全ての人のためのAIを含むデジタル技術及び新興技術の潜在力を改めて強調し、持続可能な開発のための人工知能、データガバナンス、及びイノベーションに関するタスクフォースの取組を歓迎するとともに、AIに関する国際的議論を推進する南アフリカ議長のリーダーシップを称賛する。

45.我々は、G20AI原則を再確認し、ニューデリー及びリオデジャネイロ首脳宣言における、AIを含むデジタル技術及び新興技術の潜在力を活用する我々のコミットメントを想起する。我々は、先進国と途上国の声を取り入れる必要性を認識し、AIの潜在能力を最大限に引き出し、その恩恵を衡平に共有し、リスクを軽減するため、国際協力及びさらなる議論を促進するために協働する。安全、安心で、信頼できるAIの開発、導入及び利用を確保するためには、人権の保護、透明性及び説明可能性、公正性、説明責任、規制、安全性、適切なヒューマン・オーバーサイト、倫理、偏見、プライバシー、データ保護並びにデータガバナンスに取り組まなければならない。我々は、持続可能な開発の強化を含む国際的なAI協力の推進における国連が他の既存のフォーラムとともに果たす役割を認識する。

46.我々は、南アフリカ議長国下でユネスコにより設立された技術政策支援ファシリティ(TPAF)の設立に留意する。これは、世界の経験及び研究を活用して各国がAI政策を策定することを支援することを目的としている。

47.我々は更に、G20とアフリカ連合間の多国間及びマルチステークホルダー間協力のための自発的プラットフォームとして策定された「アフリカのためのAIイニシアティブ」の立ち上げを歓迎する。我々は、アフリカにおけるAI開発・採用の基盤として、アフリカ諸国におけるコンピューティング能力へのアクセス促進、並びにAI人材育成・訓練、高品質で代表性のあるデータセット及びインフラ整備を推進することを奨励する。我々は、技術的・財政的資源の自発的貢献を通じたアフリカAIエコシステムの発展、及びアフリカ大陸に持続可能な価値を生み出す投資モデルに焦点を当てた長期的パートナーシップに基づく、アフリカ中心の主権的AI能力の構築を奨励する。

アフリカのためのパートナーシップ

48.我々は、経済成長、貿易、雇用、及び繁栄を促進するため、アフリカに対する強固な支援を改めて表明する。我々は、アフリカ大陸の経済的な潜在力を引き出す上で、民間セクター投資が果たす重要な役割に留意する。

49.我々は、G20「アフリカとのコンパクト」の重要性を認識する。我々は、世界銀行グループのマルチドナー基金により支援された、第2段階(2025年~2033年)の開始を通じたものを含め、議長国南アフリカが同コンパクトを更に強化したことを称賛する。我々は、投資環境の改善のため同コンパクト参加国により取り組まれている改革、並びに今年新たに加わったザンビア共和国及びアンゴラ共和国に留意する。

50.我々は、成長、開発、工業化及び技術進歩を生み出すアフリカの能力を強化することを目的として、集団的又は二国間のイニシアティブに基づき、その他の拡大されたアフリカとのパートナーシップについても認識する。

51.我々は、アフリカ及び後発開発途上国の工業化の支援に関するG20イニシアティブを認識し、途上国、特にアフリカ諸国がグローバルな産業バリューチェーン及びサプライチェーンにより良く統合され、工業化及び近代化プロセスを加速させることを支援する我々のコミットメントを再確認するとともに、この方向におけるG20メンバーの取組を支持する。

財務トラック

52.2025年上半期において、世界経済は、高まる不確実性や複雑な課題に引き続き直面しているにも関わらず、強靭性を示した。こうした課題には、進行中の地政学や貿易の緊張、グローバルサプライチェーンの混乱、高い債務水準、及び、頻繁な異常気象や自然災害を含む。これらの要素は、中期的な成長への下方リスクをもたらし、金融及び物価の安定にリスクを高める可能性がある。

53.高水準の公的債務及び財政圧迫に照らし、我々は、財政余力を構築し、財政の持続可能性を確保し、官民の投資を奨励し、生産性を向上させる改革を実施しつつ、成長を志向するマクロ経済政策の追求により長期的な潜在成長力を高める必要性を認識している。強い経済成長を生み出し、より多くのより良い雇用を創出するために構造改革は不可欠である。全ての過度な不均衡は国際通貨基金(IMF)により更に分析をされるべきであり、必要であれば、そして、差別をすることなく、開かれた世界経済に貢献し、持続可能な経済成長を損ねることのないやり方で、各国固有の改革と多国間の調整を通じて対処されるべきである。我々は、財務大臣及び中央銀行総裁が行った2021年4月の為替相場のコミットメントを再確認する。各国の中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って物価安定の確保に強くコミットしている。中央銀行の独立性はこの目標を達成するために極めて重要である。我々は、世界経済についての既存の、そして新たなリスクに対処するための多国間協力の強化の重要性を強調する。

国際金融アーキテクチャの強化及び債務続可能性の改善に向けた協力

54.我々は、国際開発金融機関(MDBs)の、加盟国の貧困削減、経済成長、及び開発を推進する上での重要な役割を再確認する。我々は、MDBs総裁グループによって策定された、最初の「MDBロードマップに関する履行進捗報告書」を歓迎する。我々は、MDBsが既存の資金をより効率的に活用し、民間部門とより多くのリスクを共有し、今後10年に亘り融資能力を拡大するための新たな手段を活用する際の助けとなる自己資本の十分性に関する枠組(CAF)の可能性を一層認識し、G20ロードマップとCAF改革を履行するためのMDBsによる継続的な作業の必要性を認識する。我々は、「リマ持株原則」に沿った国際復興開発銀行の「2025年株式保有見直し」の結果に期待する。我々は、アフリカ開発基金の第17次増資を支持する。

55.くの脆弱な低中所得国は、高い資金調達コスト、大規模な対外借換ニーズ、そして大幅な民間資金流出に直面している。これらの債務脆弱性は、他の要因と相まって、こうした国々の財政的余力、貧困や不平等への対処力、そして成長と開発への投資能力を制約し得る。我々は、共通枠組の最近の進捗を歓迎するとともに、創設から5年間で、債務措置を要請した4カ国(チャド、ザンビア、ガーナ及びエチオピア)対し、債務措置を提供したことに留意する。

56.我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの中心にあり、強固で、クォータを基礎とし、かつ十分な資金基盤を有するIMFへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、IMFと地域金融取極(RFA)間の連携の継続を支持する。我々は、「第16次クォータ一般見直し」にて合意されたクォータ増資についての国内承認を進めており、さらなる遅延なくこのプロセスを終わらせることを期待している。我々は、最も貧しい加盟国のクォータシェアを守りつつ、加盟国の世界経済に占める相対的な地位をより良く反映させるための、クォータシェアの調整の重要性を認識する。しかし、我々は、クォータとガバナンス改革に関する加盟国のコンセンサスを築くにあたっては段階的に進めることが必要であることを認識する。我々は、「ディリヤ宣言」に沿って、IMFクォータとガバナンスに関する将来の議論を導く一連の原則を、2026年の春会合までに策定するようIMF理事会に求めることを支持する。

57.我々は、MDBs及びその他の国際経済・金融機関の意思決定における途上国の代表性及び発言権を強化する必要性を強調する。その関連で、我々はサブサハラ・アフリカの発言権と代表性を高めるためのIMF理事会における25番目の理事の創設を歓迎する。

58.我々は、「特別引出権(SDR)チャネリングに関するG20ノート」を認識する。我々は、支援を必要とする国々のための1000億米ドルを超える自発的なSDRチャネリングあるいは同等の貢献の達成、並びに「貧困削減成長トラスト」及び「強靱性・持続可能性トラスト」への移転について留意する。我々は、未履行のプレッジを迅速に実施することを求めるとともに、チャネリングされた結果発生するSDR建て請求権の、準備資産としての地位の尊重と、それらの流動性を確保しつつ、MDBsへのSDRチャネリングの検討を、意欲がありかつ法的にそれを追求できる国に対して奨励する。

59.我々は、EMDEsへの持続的な資本フローを促進し、健全な政策枠組、とりわけ中央銀行の独立性を発展させることにコミットし続ける。我々はノンバンク金融機関(NBFI)の役割の拡大と、その資本フローに与える影響を理解するための継続中の作業に留意する。

強靱性への資金調達:サステナブル・ファイナンス、インフラ投資及び健康安全保障へのフロー拡大

60.我々は、持続可能で強靱な経済の重要性を認識する。我々は、各国の事情を考慮して、自然災害の保険補償ギャップへ対処すること、並びに、適応及び強靱性の考慮を金融機関や企業の自発的な移行計画に統合することに関する、2025年G20議長国及びサステナブル・ファイナンス作業部会(SFWG)共同議長による「サステナブル・ファイナンス報告書」の提言に留意する。我々は、複数年にわたる自発的かつ柔軟性のある、行動指向の文書であるG20サステナブル・ファイナンス・ロードマップの全体的な実施を継続して行うことに向けたG20メンバーの努力を認識する。

61.我々は、カーボン・クレジット市場における健全性の向上及び相互運用性が必要であることを議論し、自発的ツールとしての効果的なカーボン・クレジット・データ・モデル設計のためのSFWG指針に沿って開発され、パリ協定第6条と整合し、かつUNFCCCの指針と合致する、自発的かつ拘束力のない共通カーボンクレジットデータモデル(CCCDM)について留意する。我々は、「気候データ運営委員会(ClimateDataSteeringCommittee)」が2026年に実施する、希望する関係者及び市場参加者が参加するCCCDMの取組に留意する。

62.我々は、必要に応じて、サステナビリティ目標及び各国の優先事項を支援する中で、MDBs、気候・環境関連基金、各国の開発銀行間の相互運用性を高めるための関係者間の強靱かつ効果的な協調を確かなものにするよう助けることにより、グローバル・サステナブル・ファイナンス・アーキテクチャの強化に引き続きコミットする。我々は、アプローチが国の状況、優先事項、能力及びプラットフォームによって異なることを認識しつつ、革新的な資金調達手段、リスク分担ツール及び国主導の投資を通じたものを含む民間部門投資の動員の重要性を強調する。

63.我々は、国の優先事項に合致した質の高いインフラへの投資が、より迅速な経済成長及び持続可能な開発を支える上で決定的に重要であることを認識する。我々は、インフラ作業部会(IWG)の議題の下で、適切な環境・有効な準備慣行及びデータに支えられた信頼性の高いパイプライン開発、ブレンデッド・ファイナンスを通じたプロジェクトのデリスキング、及び地域開発のための国境を越えたインフラ推進に焦点を当てた価値ある成果物を支持する。我々は、アフリカにおける国境を越えたインフラプロジェクトの引き出しと加速させることを目的とする「ウブントゥ・レガシー・イニシアティブ」が議長国及びアフリカ開発銀行により立ち上げられたことも認識する。このイニシアティブは、他の地域の関係者が採用できるモデルを提示している。

64.我々は、財務・保健合同タスクフォース(JFHTF)によるパンデミックの予防、備え、及び対応(PPR)に関する財務・保健の連携強化に向けた取組を歓迎する。我々は、加盟国による財務と保健の連携を通じた持続可能なパンデミックPPRの主要な資金源としての国内資金源動員の強化と財務と保健の連携を通じた効率的かつ効果的な保健支出の重要性を強調する。我々は、他の形式の支援と共に、外部資金と国内資金のフローを各国の計画及び戦略的な優先事項とより良く整合させる必要性を強調する。我々は、タスクフォースの更新された主要な成果物、すなわち、「経済の脆弱性及びリスクの枠組み(FEVR)に関するグローバル・レポート」、「対応資金のためのオペレーショナル・プレイブック」及び「パンデミックへの備えに関する資金調達報告書」を歓迎する。我々は、財務・保健当局により行われたパンデミック対応資金に関するシミュレーション・エクササイズ、及び議長国により再招集された「パンデミックPPRのためのグローバル・コモンズ資金調達に関するハイレベル独立パネル」の取組に留意する。

65.我々は、パンデミックPPRを強化するための国際的および国内的な投資を促し、多様なドナー基盤からの「パンデミック基金」への更なる拠出を促進するため、「パンデミック基金」及びその他のグローバルヘルス関連基金と引き続き協力する。我々は、タスクフォースの技術的成果を保護することの重要性について同意し、必要に応じてタスクフォースの進化に関する議論を継続することに同意する。

金融の安定性の保護、イノベーションの促進とシステミックなリスクの管理、及び金融包摂支援の継続的取組

66.我々は、金融安定が持続可能な経済成長を支えることを認識し、脆弱性に対処し、開かれた、強靭で、かつ安定した国際金融システムを促進するための我々のコミットメントを再確認する。バリ宣言(2022年)及びブエノスアイレス宣言(2018年)で明文化された基本原則に基づき、バーゼルIIIを含む全ての同意された国際的な基準及び改革の、完全で、適時の、かつ一貫性のある実施の重要性を強調する。我々は、金融リスク及び脆弱性を監視し、金融の安定性を維持し、グローバル金融システムの強靭性を高めるための健全な金融基準と勧告を定める上で、金融安定理事会(FSB)及び基準設定主体(SSBs)の重要な役割を強調する。

67.我々は、クロスボーダー送金の改善に向けたG20ロードマップの効果的な実施と、目標を達成するための、必要に応じた更なる適切な行動を取ることへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、このアジェンダの推進における関連する国際機関及びパートナー組織の協力的な取組を称賛する。

68.我々は、ノンバンク金融仲介(NBFI)のレバレッジに起因するシステミックなリスクに対処するためのFSB勧告を支持し、法域がこれらの勧告を実施し、データの入手可能性・報告、質、利用及び情報共有を改善するよう奨励する。我々は、金融セクターにおけるAI、暗号資産及び関連するフィンテックの発展の機会を活用し、それに伴うリスクを軽減することへの我々の支持を改めて表明する。我々は、暗号資産及びステーブルコインに関するFSBのハイレベル勧告の実施に関するFSBのテーマ別ピア・レビューを歓迎し、我々は、また、これに関するFSB及びその他のSSBsのグローバルな規制枠組みの実施を促す。ほとんどのメンバーは、気候関連金融リスクへ対処することの重要性を認識する。こうした取組は、責任あるイノベーションを促進しつつ金融安定を守る上で不可欠である。

69.我々は、グローバルネットワークに亘るマネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融と闘うための金融活動作業部会(FATF)基準の効果的な実施の監視におけるFATFとFATF型地域体への支援を再確認する。我々は、法人の悪用を防止し、財産回復を更に促進し、迅速で、建設的で、包摂的で、かつ効果的な国際協力を促進し、送金の透明性を向上させ、暗号資産を用いた不正資金を軽減しつつ暗号資産セクターの責任あるイノベーションを促進するためのグローバルな取組を強化することの必要性を強調する。我々は、また、DeFi、ステーブルコイン及び個人間で行われる取引(P2P取引)を含む、新たな技術及び関連するリスクに係るFATFの進行中の作業を支持する。

70.南アフリカのG20議長国としてのテーマである「連帯、平等、持続可能性」の精神に基づき、我々は、全ての人の経済的繁栄に貢献する金融の政策を実施することにコミットする。

71.我々は、「中小零細企業(MSME)金融のための金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)行動計画」で強調されている中小零細企業(MSMEs)向けの資金調達ギャップ解消に向けた取組強化の要請に留意する。我々は、金融包摂への我々のコミットメントを再確認し、消費者保護及び信頼を確保しつつ、決済、貯蓄、信用供与、保険及び送金にまたがる金融サービスの利用強化を誓う。

国際課税システムの安定化と国内資金動員の強化に向けた協力

72.我々は、全ての関係者にとって受け入れ可能な、均衡の取れた実用的な解決策を可能な限り早期に見出すという共有された目標をもって、「第2の柱」のグローバル・ミニマム課税に関する懸念に対処するため、建設的な関与を継続する。解決策の実現は、実質ベースの税制上の優遇措置の公平な取扱いに関する議論を含む、公平な競争条件の観点から特定されうる重大なリスク、及び、税源浸食と利益移転(BEPS)のリスクが対処されることを確保することへのコミットメントを含む必要があり、経済のデジタル化に伴う課税上の課題に関する建設的な対話を含む、国際課税システムを安定させるための更なる進展を促す。これらの取組を、全ての国の課税主権を保持しつつ、OECD/G20包摂的枠組み(IF)の加盟国間の緊密な協力により、推進する。

73.我々は、国際租税協力に関する国連枠組条約を策定するための進行中の交渉に留意するとともに、参加しているG20メンバーは、不要な努力の重複を避けるよう努めつつ、幅広いコンセンサスを得る、並びに既存の成果、プロセス及び他の国際機関において現在進行中の作業を基礎とするという目的を再確認した。

74.我々は、「国際税務協力に関するG20リオデジャネイロ閣僚宣言」を想起しつつ、グローバルな移動について研究し、税制、格差、及び成長の相互作用を理解するために、段階的かつ証拠に基づいたアプローチを採用するというIFの決定を引き続き歓迎する。

75.我々は、協力によって重要な進展が得られることを示す、OECD/G20BEPSプロジェクト及び透明性に係るイニシアティブに関する実績評価に係る報告書を歓迎する。これまでの成果に基づいて途上国が十分に参加し恩恵を受けられるようにするためには、包摂的な参加及びニーズに応じた税に関する能力の向上を支援することが必要である。関心を有する法域が不動産に関する国際的な税の透明性を強化することを可能にする、任意の新しいOECD枠組みにより、これらの成果を拡大する機会がある。

76.我々は、国内資金動員(DRM)が共通の重要課題であることに同意する。南アフリカG20議長国下での成果は、DRMが最も効果的な資金源であり、歳入管理が税制の重要な柱であり、能力構築提供者間における協調及び連携が重要であり、各国主体で、各国が主導し、かつ納税者との社会契約を実行する改革への構造的なアプローチが価値あるものであることを示している。来年東京で開催される、DRMに関する税に関する協働のためのプラットフォーム(PCT)「税と開発カンファレンス」を期待する。

アフリカへの財政トラックの焦点強化及びその効果の向上

77.財務大臣・中央銀行総裁は、アフリカ大陸及びその国々が経済、金融、その他関連する目的を達成するために行っている努力を支援するために、2025年から2030年のG20財務トラックアフリカ・エンゲージメント・フレームワーク(AEF)を立ち上げた。我々は、本枠組みはG20とアフリカ間の協力強化の機会であり、南アフリカ議長国の永続的なレガシーであることを認識する。我々は、AEFに向けた基盤として、アフリカの成長と開発を阻害する重大な障壁の特定における各国際機関の準備作業を歓迎する。

77.財務大臣・中央銀行総裁は、アフリカ大陸及びその国々が経済、金融、その他関連する目的を達成するために行っている努力を支援するために、2025年から2030年のG20財務トラックアフリカ・エンゲージメント・フレームワーク(AEF)を立ち上げた。我々は、本枠組みはG20とアフリカ間の協力強化の機会であり、南アフリカ議長国の永続的なレガシーであることを認識する。我々は、AEFに向けた基盤として、アフリカの成長と開発を阻害する重大な障壁の特定における各国際機関の準備作業を歓迎する。

78.我々は、2030年までの後続の議長国によって決定される、潜在的に優先する注目分野のメニューとしてのAEFを実施するための運営の仕組みやアプローチを歓迎する。我々は、特化したリソース、各議長国との協力、フレームワーク間の調整、アフリカ連合及びアフリカの国際機関との協議を通じた協議プロセス設立、毎年のアップデートと定期的なインプット等を通じて、2030年までこの枠組みを支えていくという南アフリカ議長の申し出を歓迎する。我々は、AEF支援のための既存のイニシアティブ、特にアフリカとのコンパクトの強化に向けた取組を支持する。

79.我々は、議長国南アフリカによって行われた、G20財務トラックの運営及び意思決定プロセスのレビューについて、その主だった気づき、現在の慣行の幾つかの面で意見の一致が見られた分野、そしてその強化のために取り得る選択肢を含め、歓迎する。このレビューは、グループの非公式かつコンセンサスに基づく原則を尊重しながら、将来の議長国やメンバーが望ましいと思うやり方で、現在の業務慣行を修正するための選択肢を検討する上で、メンバーにとって有益な土台を提供する。

80.我々は、2025年6月30日から7月3日にかけてスペインのセビリアで開催された第4回開発資金国際会議の成果と、途上国の開発目標達成のための支援を行うという参加国による新たなコミットメントに留意する。

グローバル開発アジェンダへのG20による貢献及び公平なグローバル・ガバナンスの促進

81.我々は、2025年が国連及び国連憲章の80周年に当たることを強調する。我々は、国連憲章に反映されている国際法の原則に基づき、国連を中核とする多国間主義の強化へのコミットメントを再確認する。我々は、また、全ての国が国連憲章の目的及び原則に全体として整合的な方法で行動しなければならないことを再確認する。

82.我々は、共有する目標を実現するための国連改革を推進するため、グローバル・ガバナンス改革に関するG20の行動要請の精神の下、全ての国連加盟国と協力する。

83.我々は、安保理を21世紀の現実及び要請に整合させ、一層の代表性、包摂性、効率性、実効性、民主性及び説明責任のあるものにし、国連加盟国全体に対してより透明性のある変革的改革を通じて、安保理を改革することを誓う。この改革により、安保理の作業方法の有効性及び透明性を改善するとともに、全ての加盟国間でより良い責任共有を可能にする。我々は、アフリカ、アジア太平洋及びラ米・カリブのような代表性の低い又は代表されていない地域及びグループの代表性を向上させる国連安全保障理事会の構成拡大を求める。

84.我々は、平和が持続可能な経済発展への道であり、増大する経済的不平等及び不安定性を含む地球規模の課題に対処する上で、国際協力及び多国間での解決策が重要であることを再確認する。

85.我々は、グローバル開発アジェンダに尽力し、より強固な国際協力を通じて世界が直面する社会、経済、及び環境課題に対処するための取組を加速させることにコミットし、2025年6月30日から7月3日にセビリアで開催された第4回開発資金国際会議(FfD4)の成果に留意する。

86.我々は、貿易及び投資が経済成長、開発、雇用創出、工業化、技術進歩の推進力となり、世界の食料安全保障に貢献し得ることを認識する一方、その恩恵が全ての者によって共有されているわけではないことに留意する。我々は、貿易の恩恵が社会の全ての層に行き届き、全ての人々が貿易の恩恵を受ける機会を確保するよう努める。我々は、世界経済に対する既存の及び生じつつあるリスク、並びに課題に対処するため、多国間協力を強化することの重要性を強調する。我々は、貿易課題を進展させるためのWTOの重要性を認識する。また、我々は、WTOで合意されたルールが世界貿易を促進する鍵であることを認識する。更に、我々はWTOが課題を有することも認識する。我々は、WTOの機能を改善し、全ての加盟国の目標達成により適うものとするためには、有意義で、必要かつ包括的な改革が不可欠であることを認識する。また、我々は、農業、及び開発を含む加盟国が関心を持つその他の問題について、WTOにおける建設的な関与の必要性を認識し、進行中の交渉において進展が可能な分野を特定するため、WTOにおける建設的な議論を求める。我々は、2026年3月のカメルーンにおける第14回WTO閣僚会議(MC14)において、ポジティブな成果を確保するため、建設的に取り組むことにコミットする。

87.我々は、AfCFTAを含む地域経済統合が、経済成長、強靱性、投資及び開発の重要な推進要因であることを認識し、南アフリカ大統領が主導する貿易と投資に関するG20アフリカ協力アジェンダに留意する。これは、AfCFTAの実施に対する支援を活用し、アフリカの民間部門への投資を動員するとともに、アフリカ連合アジェンダ2063を支援する主要インフラプロジェクトへの投資を促進することにより、アフリカの包摂的な成長及び開発の潜在能力を強化するための、自発的かつ法的拘束力のないイニシアティブである。

88.我々は、包摂的な開発の礎として、各国が定義する社会的保護の最低基準を含む、普遍的な社会的保護制度を推進するために協力する。我々は、社会保障についての人権、並びに普遍的な社会的保護制度が、強靱性、及び人間の幸福をもたらすことを認識する。社会保障は人間の尊厳を守り、持続可能な開発を促進するとともに、不平等を軽減する。我々は、全てのG20メンバー及びその他の国々に対し、国家レベルでの普遍的な社会的保護システムの採用及び漸進的実施を支援し、他国、特に低所得国が能力を構築し資源を動員できるよう、協力を通じて支援するよう求める。我々は、また、包摂的な社会的保護制度の資金確保、不平等削減及び社会的結束強化のため、累進課税、構造改革及び再分配政策の重要性を認識する。

89.我々は、アフリカから流出する資金が毎年少なくとも880億米ドルに上り、国内資源動員の取組を損なっていることに留意し、不正な資金の流れ(IFFs)との闘いにおける取組強化にコミットする。我々は、行動要請策定における南アフリカの主導的役割を歓迎するとともに、IFFs対策に関する自発的で法的拘束力のないハイレベル原則の実施に向けたロードマップに期待する。我々は、南アフリカが、地球規模の公共課題及び地球規模の公共投資に関する研究、並びに情報に基づく対話を促進するため、ウブントゥ委員会を設立していることに留意する。

90.我々は、我々の主導的な役割に留意し、UNFCCCの目的を追求するにあたり、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映した形で、パリ協定の完全かつ効果的な実施を強化することによって、気候変動に取り組むという我々の確固たるコミットメントを再確認する。

我々は、今世紀半ば頃までに、世界の温室効果ガス(GHG)排出量のネット・ゼロ又はカーボンニュートラルを達成するという我々のコミットメントを再確認し、そのための取組を強化する。我々は、パリ協定並びに各国の異なる事情、道筋及びアプローチを考慮しつつ、各国が決定する方法で、GHG排出量のネット・ゼロ又は気候中立へのコミットメントを前進させるよう、互いに奨励する。

パリ協定の10周年の機会に、我々は、気候変動の緊急性と深刻さを認識する。我々は、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏2度高い水準に抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏1.5度高い水準までのものに制限するための努力を、この努力が気候変動のリスク及び影響を著しく減少させるであろうことを認識しつつ、継続するというパリ協定の気温目標を再確認する。我々は、気候変動の影響は、摂氏1.5度の気温上昇の方が、摂氏2度の気温上昇と比べてはるかに小さいということを強調し、気温の上昇を摂氏1.5度に制限するための努力を追求することへの決意を再び表明する。

91.我々は、有意義な社会的・経済的機会を促進しつつ、持続可能な開発及び衡平性の達成、並びに貧困撲滅に向けた取組に資する、経済全体的及び社会全体的なアプローチを包含することによって、各国の公正な移行の道筋が、気候変動対策の重要な要素であることを認識する。

92.我々は、関連する公共政策における適応の主流化、世界の気候へのレジリエンスのためのUAEフレームワークの実施の重要性を強調する。我々はまた、早期警報システムの開発・実施、異常気象を含む気候変動の影響への対応を促進及び支援するとともに、各国の状況・ニーズ・優先事項に沿って災害リスク軽減解決策を支援する。我々は、気候変動の影響に伴う損失及び損害を回避し、及び最小限にし、並びにこれらに対処するための緊急かつ強化された行動と支援の必要性を認識する。

93.我々は、ブラジル・ベレンで開催された2025年国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)の成功裏の成果を強調し、2026年のCOP31議長国を歓迎する。

94.我々は、パリ協定の気候目標を達成するために、グローバルな投資を拡大し、世界的に、あらゆる資金源から数十億ドルから数兆ドルへと、投資及び気候資金を急速かつ十分に拡大する必要性を認識する。この点に関し、途上国の優先事項とニーズを考慮に入れつつ、資金、能力構築、及び自発的かつ相互に合意された条件に基づく技術移転を拡大しつつ、全ての関係する資金の流れをこれらの目的に整合させることが不可欠である。

95.我々は、ドバイにおける国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で採択された第1回グローバル・ストックテイク(GST-1)の成果、及びバクー(COP29)で採択された新規合同数値目標(NCQG)を歓迎し、その実施を期待する。我々は、GST-1の成果を踏まえることによるなど、更新された国が決定する貢献(NDC)の通知の取組を歓迎する。我々は、摂氏1.5度の道筋に沿って、温室効果ガスの排出を大幅に、迅速かつ持続的に削減する必要性を認識し、参加国に対し、パリ協定並びに各国の異なる状況、道筋及びアプローチを考慮しつつ、各国が決定する方法で、気候変動に対する世界的な取組に貢献することを求める。

96.我々は、大気の質の悪化がもたらす重大なリスクを認識するとともに、G20環境・気候持続可能性大臣会合で採択された「大気質に関するケープタウン閣僚宣言」を歓迎する。我々は、各国の国内法を尊重しつつ、環境に影響する犯罪に対処する各国の対応を強化する緊急の必要性を認識し、同じくG20環境・気候持続可能性大臣会合で採択された「環境に影響を及ぼす犯罪に関するケープタウン閣僚宣言」を歓迎する。

97.我々は、生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」の迅速かつ完全で効果的な実施へのコミットメントを再確認し、他国にも同様に行うよう奨励する。我々は、CBDの締約国が、KM-GBFとそのゴール及びターゲットに沿って、生物多様性国家戦略及び行動計画を可能な限り早期に更新又は改定することの重要性を強調し、あらゆる資金源からの資金強化を求める。

99.我々は、森林が極めて重要な生態系サービスを提供しているとともに、気候変動対策の吸収源としても機能していることを認識し、我々は、2030年までに森林減少及び森林劣化を止めて、反転させるための強化された取組を含め、森林の保護、保全、持続可能な管理及び森林減少との闘いのための取組を拡大することの重要性を強調する。これらの取組では、持続可能な開発に対するこれらの行動の貢献を強調し、地域社会及び先住民族の社会的及び経済的課題を考慮する。森林の文脈において、我々は、WTOのルールと多国間環境協定に整合的な形で、差別的なグリーン経済政策を回避する。我々は、特に途上国に対する、譲許的かつ革新的な資金調達を含むあらゆる資金源から、森林のための新規かつ追加的な資金を動員することにコミットしている。我々は、生態系サービスへの支払いのために、新規かつ多様な資金源の動員を目指す革新的なメカニズムを奨励する。熱帯林の保全を奨励し、持続可能な開発を支援する革新的な手段として、ベレン気候サミットにおけるトロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティ(TFFF)の設立に留意する。

100.リオデジャネイロ及びニューデリーのG20宣言における勧告を基礎として、我々は、ニースで行われた第3回国連海洋会議の結果に留意する。海洋は、世界の食料安全保障の強化、持続可能なエネルギーへのアクセス拡大、海洋資源の保全及び持続可能な利用、並びに違法・無報告・無規制(IUU)漁業を終わらせることなど、G20アジェンダの諸課題に対する解決策を提供する。我々は、海洋法に関する国際連合条約に基づくいずれの国の管轄にも属さない区域における海洋の生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する協定(BBNJ協定)の2026年1月の発効に十分な批准数の受領に留意し、署名国は同協定の迅速かつ効果的な実施を求める。我々は、WTO漁業補助金協定の発効を歓迎する。我々は、未受諾のWTO加盟国に対し、同協定を可能な限り早期に受諾するよう求める

101.我々は、女性及び女児のエンパワーメント、並びにジェンダーの平等を達成するための社会的・経済的障壁を緊急に取り除くことに対する完全なコミットメントを再確認する。我々は、女性主導の開発を奨励し、政治、経済及び公的生活におけるあらゆるレベルでの意思決定において、女性の完全かつ平等で有意義な参画及びリーダーシップを確保する。我々は、女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を非難するとともに、ジェンダーに基づく暴力及びジェンダーを理由にした女性及び女児の殺害を終わらせるという我々のコミットメントを想起する。この目的のため、我々は、全ての女性及び女児に対する、性的暴力及びハラスメントを含むあらゆる形態の暴力、並びに公的・私的生活、オンライン・オフラインを問わず発生する暴力を根絶するための加速的な行動をとることにコミットする。北京宣言及び行動綱領の30周年を祝うに当たり、我々は同宣言の完全で、効果的かつ加速的な実施への我々のコミットメントを再確認する。我々は、北京+30を記念し、同会議の精神を前進させるため中国及び国連女性機関(UNWomen)により10月13~14日に北京で開催された「女性に関するグローバル・リーダー会議」を歓迎する。我々はまた、平和の実行者としての女性の役割を認識する。

102.我々は、女性の起業、並びに女性主導のビジネス及び協同組合を支援するため、経済資源、並びに金融及び市場への完全かつ平等なアクセス及び権利を女性が有することを確保するための改革を行うことにコミットする。南アフリカG20議長期間中における、ケア分野における女性の起業を促進する、世界銀行の女性起業家金融イニシアティブ(We-Fi)の呼びかけを奨励する。我々は更に、ケア・エコノミーへの投資及び社会的保護を大幅に増加させ、定型化された観念に対処する措置を採用することにコミットする。我々は、G20メンバーに対し、国際労働機関(ILO)の「ディーセント・ケア・ワークのための5R枠組み」を使用する包括的でセクター横断的なケア政策・戦略・ロードマップ・行動計画を、2030年までに策定し、実施するよう求めることを歓迎する。我々は、今後のサミットで報告される、「女性のエンパワーメントと経済代表性向上のための民間アライアンス(EMPOWER)」による継続的な取組を歓迎する。

103.アンタルヤ・ゴールの基礎に基づき、我々は、南アフリカG20議長国下で採択されたネルソン・マンデラ・ベイ目標を通じた若者のエンパワーメントを歓迎する。同目標は、2024年の水準を基に、2030年までに就労・就学・職業訓練のいずれにも属さない若者(NEET)の割合を更に5%削減することを目指し、NEET率が10%未満の国は、その機運を維持する。

我々は更に、2030年までに労働力参加におけるジェンダー格差を2012年の水準から25%削減するという、改訂されたブリスベン・エテクウィニ目標を歓迎し、これを採択する。同目標は、同一価値労働同一賃金を推進することへの我々のコミットメントを含み、この目的のため、我々は、G20メンバー及び招待国に対し、2022年水準を基に、2035年までに男女間の調整未賃金格差の15%削減に向けて徐々に取り組むよう奨励する。

我々は、ILO及び経済協力開発機構(OECD)に対し、これらの目標に向けた進捗状況のモニタリングを支援するよう要請する。

104.我々は、適切で、予測可能で、透明性があり、柔軟かつ持続可能な資金調達に支えられた、グローバルヘルスにおける、世界保健機関(WHO)憲章に沿ったWHOの役割を認識する。保健分野への投資拡大は、安定、成長、及び強靱性の根本的な要因となり得る。我々は、国際的な支援により補完される、保健資金の原資としての保健分野のための国内公的資金調達を奨励する。我々は、ルサカ・アジェンダをはじめとする、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)及び健康安全保障の推進を目的としたイニシアティブに留意する。我々は、持続可能な開発の基盤として、女性、子ども、及び青少年を含む全ての人の健康と福祉への投資が極めて重要であることを認識し、全てのパートナーに対し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に向けた進展を加速させるため、協調した行動及び取組を強化することを求める。

我々は、メンタルヘルスを含む、人々を中心とした統合された保健サービスの提供及びユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するため、より強靭、より公平、より持続可能で、かつより包摂的な保健システムを構築することに引き続きコミットする。我々は、エビデンスに基づいた伝統的及び補完的な医療の潜在的な役割を認識する。

105.我々は、パンデミックの予防、備え及び対応(PPPR)のための国及び地域、並びにグローバルな能力を強化する。この点において、第78回世界保健総会におけるWHOパンデミック協定(仮称)の採択に留意し、病原体へのアクセスと利益配分に関する同協定の附属書のための加盟国主導の交渉に期待する。

106.我々は、南アフリカ及び英国が共同でヨハネスブルグで立ち上げた世界エイズ・結核・マラリア対策基金の第8次増資へのコミットメントを歓迎する。これは、感染症と闘い持続可能な保健システムの強化のための国際的な多国間資金の重要な原資であり、我々のグローバルな健康安全保障を促進する証明されたモデルである。女性・子ども・青少年の健康のためのグローバル・リーダーズ・ネットワーク(GLN)の議長国として、シリル・ラマポーザ大統領と南アフリカのリーダーシップを称賛する。

107.我々はG20研究・イノベーション作業部会の第2回会合の開催を歓迎し、科学、技術、及びイノベーション分野における活気ある国際パートナーシップの促進の重要性を再確認する。研究及びイノベーションは、科学、技術、工学、数学(STEM)分野への女性及び女児の参加を積極的に促進し、知識へのアクセス及び創出における世界的な不平等と非対称性を軽減する取組であるべきであることを再確認する。この観点から、我々は、「科学への関与に関するG20勧告」の実施に取り組む。同勧告は、科学への参加を拡大し、社会の全ての人が科学にアクセスできるようにすることを目的としており、オープン・サイエンスへの我々のコミットメントを強化するものである。

108.我々は、2030年までにジェンダーによるデジタル・デバイドを半減させることを含め、デジタル・デバイドを埋めること、また、安価で安全なデジタル・インフラの開発及び展開を拡大する上で開発途上国を支援することにより、全ての人のための普遍的かつ有意義な連結性を達成するといった過去のG20サミットでのコミットメントを再確認する。我々は、安心、強靱性、安全、及び信頼を構築するとともに、人間とその発展を中心に位置づけ、並びに人権の保護、促進、及び完全な享受を可能とする、実現可能で、開かれた、公平で、無差別的かつ持続可能なデジタル経済を創出することの重要性を認識する。

109.我々は、地域社会のニーズに応えることができる、公平で、包摂的で、繁栄し、強靱かつ持続可能なデジタル・トランスフォーメーションを推進するデジタル公共インフラの変革的な潜在力を認識する。

110.我々は、国家の社会的・経済的未来にとって極めて重要な投資として、政府及び社会の双方が関与し、共有する価値観や文化を含め、包括的なアプローチによる幼児期ケア・教育(ECCE)政策の策定及び実施を推進する。我々は、21世紀の教育専門家の育成には、変化する社会に学習者が備えるため、教育者の能力を統合することを含むと認識する。我々はまた、特に幼児・基礎教育における教員不足を抑制する手段として、教職への更なる認識を支援する。2030年のコア・スキルに向けた適切な教育学を教育者に備えさせつつ、全ての人のデジタル・デバイドを克服するため、包摂的なデジタル・アクセス、技術インフラ、及び連結性に関連する課題に対処する。

111.我々は、既存の資格の承認に関する地域規約及びユネスコの「高等教育の資格の承認に関する世界規約」に関する実施の強化及び一貫性を高めることを支援し、また、署名国間の協力を促進すること並びに適当な場合には世界規約の2025-27年期の作業計画を通じて容易にされる過程及び国家的な又は自国の国内の水準、枠組み及び過程に従った過程を支援する。

112.我々は、文化財の返還又は回復に対して原産国が付与する重要性を認める。それらの文化財は、当事国にとって基本的な精神的、歴史的及び文化的価値を有し、自国の文化遺産を代表する収集を行うことを可能にするものである。我々は、文化財の返還及び回復に関し、開かれた、かつ、包摂的な対話を支持する立場を再確認し、社会的な結束の強化に資するその価値が一層認識されていることを認める。

113.我々は、腐敗に対するゼロ・トレランスを維持し、腐敗及び関連する不正な資金の流れを防止し、闘う国際的な取組において自ら模範を示すという我々の共有のコミットメント及び献身を再確認する。我々は、腐敗が法の支配を損ない、市場のインテグリティ(清廉性)を脅かし、経済資源を転用し、市民の信頼を損なうと同時に、社会経済的不平等を悪化させることを認識する。したがって、我々は公的部門の効果的かつ効率的な運営のために、インテグリティ(清廉性)、説明責任及び透明性の促進と強化、並びに利益相反の防止のへコミットする。我々は公平と正義を堅持し、国連腐敗防止条約(UNCAC)及びその他の適用可能な国際法的枠組み、GlobEネットワーク等の実施を強化し、外国贈収賄の犯罪化及び対策を含む腐敗の防止及び腐敗との闘いを推進する。我々は、強固な財産回復措置に向けた各国の取組を強化するための指針として、「押収・没収財産の管理に関するG20ハイレベル原則」に留意する。

114.我々は、公的部門以外の個人や団体が腐敗の防止及び腐敗との闘いにおいて果たす役割を認識し、市民社会、学術界、メディア及び民間部門の参加を通じた積極的な関与を、UNCAC、その他の関連する国際的な義務及び国内法制度に従って促進する。我々は、腐敗に係る犯罪者と腐敗によって得られた資産に対する安全な避難先を与えないという我々のコミットメントを再確認する。我々は、公益通報者保護メカニズムを強化し、「公益通報者保護に関する2025年G20説明責任報告書」に留意する。

115.我々は、その移民の地位にかかわらず、人権及び基本的自由への最大限の尊重を確保するとともに、国内の政策、法制度及び状況に沿った形で、より包摂的な世界に向けた取組において、移住労働者を含む移民及び難民を支援するというコミットメントを再確認する。また、我々は、人道的な必要性及び避難の根本的な原因に対応しつつ、安全で、秩序ある、正規の移住に向けた包摂的なアプローチの一環として、非正規移住の流れと移民を密入国させることの防止の重要性を認識する。我々は、出身国、経由国、目的地国の間の協力強化を支持する。我々は、今後の議長国の下で、移住と強制移動に関して引き続き対話す

る。

116.我々は、公正な競争と政策協調、人的交流の促進及び包摂的かつ持続可能な観光の発展を確保しつつ、観光イノベーションと投資、航空ネットワークの強化、市場アクセスの拡大、新規路線の開設、持続可能性の推進、航空安全及び航空保安並びに旅行・観光分野のスタートアップ及び中小零細企業(MSME)の強化に向けたデジタルイノベーションの推進に対する強力な支援を強調する。我々は、適切な場合には、実用的かつ証拠に基づくアプローチにより、若者、女性、脆弱な立場にある人々、地域社会及び先住民のための機会の促進及び拡大に取り組んでいく。

我々は、観光を国家開発戦略に統合することの重要性と、持続可能な観光のための資金調達を促進する必要性を強調する。我々は、透明性があり、予測可能で、持続可能性に合致した投資環境を通じた官民資本の動員を求める。

G20@20レビュー

117.我々は、G20議長国南アフリカがG20@20レビューを開始したことを称賛し、レビューの作成を支援したナレッジ・パートナー及び諮問委員会に対し、感謝する。レビュー作業は次期議長国サイクルで継続される。

包摂的で効果的なG20に向けて

118.我々が初めてアフリカの地で会合するにあたり、我々はG20に加盟して2年を迎えるアフリカ連合をG20の完全なるメンバーとして歓迎する。アフリカの声は、G20やその他あらゆる国際フォーラムにおいて引き続き増幅されるべきである。

119.我々は、全ての国連加盟国及び常任オブザーバー並びに関連する国際機関及び地域機関に対するG20の働きかけの重要性を強調する。この点において、我々は、南アフリカG20議長国下で、2025年9月に開催された第80回国連総会に合わせてG20外相会合がニューヨークで開催されたことを称賛する。

120.我々は、G20社会サミットをヨハネスブルグで開催する決定を称賛する。このイニシアティブは、非政府ステークホルダーに対し、国際的なアジェンダの根本的な課題について意見を表明する独自の機会を提供した。我々は、G20議長国南アフリカが、エンゲージメント・グループの活動を引き続き統合するアプローチをとったことを歓迎する。我々は、国際協力が必要な課題に対するG20のアプローチを共に形成するには、幅広いアクターとの連携強化と対話の拡大が重要であることを認識する。

結語

121.我々は、グローバルな経済協力に関するプレミア・フォーラムとしてのG20と、コンセンサスに基づき、サミットを含む全てのイベントに全てのメンバーが対等な立場で、国際的な義務に従いつつ、参加する多国間主義の精神に基づくG20の継続的運用への我々のコミットメントを改めて表明する。

122.我々は、本年の南アフリカのリーダーシップに感謝する。我々は、2026年の米国議長国下で共に取り組み、2027年に英国で、そして2028年に大韓民国で再会することにコミットする。我々は、次期議長国サイクルにおいてG20議長国となる順番を前倒しするというサウジアラビアの野心を歓迎する。