データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2005年〜2006年 日中韓三国間協力進捗報告書(2007年1月12日、フィリピン、セブでの外相三者委員会にて採択)

[場所] セブ
[年月日] 2007年1月12日
[出典] 外務省
[備考] 外相三者委員会にて採択、外務省仮訳
[全文]

2003年の第5回日中韓首脳会議において採択された「日中韓三国間協力の促進に関する共同宣言」に従って、三国外相を長とする外相三者委員会は、年次首脳会議に三国間協力の進捗報告書を提出することとされている。

 外相三者委員会は、2004年11月の第6回首脳会議に最初の進捗報告書を提出した。本報告書は、関係省庁の支援を受けて作成した2回目の報告書であり、2004年の第6回首脳会議以降の様々な分野での進捗を対象としている。

1.経済分野での協力

(WTOドーハ開発アジェンダ交渉)

 第5回及び第6回の日中韓経済局長協議は、2005年11月に北京、2006年11月にソウルに於いてそれぞれ開催された。右会合においては、ドーハ開発アジェンダ交渉の実質的進展を達成するための相互協力強化の方途が検討された。また三国は、2005年の釜山及び2006年のハノイにおけるAPEC首脳会議においてドーハ開発アジェンダに関する独立文書の採択に貢献した。

(FTA)

 2005年、中国国務院発展研究中心、日本国総合研究開発機構、韓国対外経済政策研究院は、「日中韓FTAに向けて:展望と課題」をテーマに、三国間FTAの効果に関する分野別の共同研究を継続して行った。本研究において、漁業、繊維業、鉄鋼業における効果が優先的に研究されるとともに、第三次産業に対する全般的な効果についても分析が行われた。

 2006年には、本研究は、同じテーマで、サービス貿易、原産地規則、センシティブ分野の扱い等の論点に焦点を当てて行われた。事務レベル会合には、日中韓ビジネスフォーラムからも代表が招待された。共同研究グループは、第7回首脳会議に共同研究報告書及び政策提言を提出する予定となっている。

(投資・ビジネス環境改善)

 三者は、過去2年間に6度の協議を行い、三国投資協定の範囲とモダリティについてコンセンサスに達した。ビジネス環境改善についても議論が行われた。

 2005年10月、第4回日中韓ビジネス・フォーラムが韓国で開催され、三国のビジネス環境改善の必要性及び三国の経済統合を加速させる必要性を強調した共同声明を採択した。

 2006年10月、第5回日中韓ビジネスフォーラムが中国で開催された。三者は、同フォーラムが政府に対するコミュニケーション及び提案能力を強化すべきとの点、並びに観光、環境保護及び省エネ等の分野における協力を拡大することを関係当局に慫慂すべきとの点で一致した。

(物流)

 三国は、協力して2006年5月に「日中韓の流通及び物流に関する共同報告書」を出版し、本分野における三国間協力を促進した。

(環黄海経済技術協力)

 2001年に開始された日中韓の環黄海経済技術交流会議は、政府、NGO、企業、大学の参加を得て、三国の地方自治体にとって有益な基盤となった。同会議は、三国の地方自治体間の協力を促進した。2005年及び2006年に、韓国と中国は、それぞれ第5回と第6回の会議を主催し、双方とも実りの多い会議となった。省エネと環境保護が主要な協力分野となっている。

(税関)

 2005年9月、三国の税関当局は第1回の事務レベル協議を実施し、第1回日中韓3か国関税局長・長官会議の開催について議論した。同会議は、2007年前半に開催される見込みである。

 税関相互支援協定(CMAA)は、二国間を基本とした一層の協力を進めるための効果的手段であるとされてきている。既に発効している中韓税関相互支援協定に加え、日韓税関相互支援協定が2004年12月、日中税関相互支援協定が2006年4月に署名された。

(運輸)

 2006年9月、韓国は、第1回日中韓物流大臣会合を主催した。「日中韓物流大臣会合共同声明」と2つの付属文書(「日中韓物流大臣会合の枠組み」及び「日中韓物流大臣会合の行動計画」)の採択により、1年に1回会合を開催することを決定し、北東アジアにおける安全かつ効率的、低廉でシームレスな物流システムの創設を促進するため政府間協力チャンネルへと発展した。

(品質管理・検査・検疫)

 品質管理、検査、検疫に関する中韓協議メカニズムの第1回二国間会合が、2006年1月に中国で開催された。日中の協議メカニズム設立については協議中である。これまでの作業を基礎に、三者は、三国間協力メカニズムの実現可能性について議論している。

(知的財産権保護)

 韓国と中国は、中国国家知識産権局(SIPO)、日本国特許庁(JPO)、韓国特許庁(KIPO)による長官級会合の第5回と第6回会合をそれぞれ2005年と2006年に開催した。三者は、将来の協力に関する意見交換を行い、三国間協力のロードマップ起案、中小企業のためのサービスに関する共同シンポジウム開催、統計データ交換等の論点について議論した。

 長官級会合の枠組み内で、機械化専門家による共同グループ(JEGA)が2003年に開始された。4度開催された年次会合において、同グループは、主に三者によるウェブサイト開設、優先権書類の交換、出願情報の交換等の論点につき議論を行った。

(ICT産業(ICT Industry))

 三か国のICT分野における協力は、政府、産業界及び研究機関が参加する情報通信大臣会合及びそのワーキンググループからなる包括的な枠組みへと発展を遂げている。

 2006年3月に中国において、第4回日中韓情報通信大臣会合が開催された。同会合では、「日中韓情報通信大臣会合及びワーキンググループ(フォーラム、協力体制を含む)に関するToR(Terms of Reference of China-Japan-Korea ICT Ministers' Meeting / Working Groups (Forum, Liaison System))」が承認された。ToRでは、大臣会合と各ワーキンググループとの関係を明確化し、三か国の協力を情報交換から具体的なプログラムベースへと前進させる必要性を強調している。

 また三か国は、第4回日中韓情報通信大臣会合レポート(Fourth China-Japan-Korea ICT Ministers' Meeting Report)に署名したが、本レポートでは、ASEAN諸国のための人材育成プログラム、情報ネットワークセキュリティの情報共有体制及び実施の強化、RFID・センサーネットワーク技術及び利用に関する交流及び協力、国際インターネット接続料金確定に関するモデル研究、オープンソースソフトウェアに関する協力、第四世代移動通信に関する鍵となる技術の標準化、の6つの優先的プロジェクトを実現するよう三か国が努力することとなっている。

 一方、大臣会合の枠組みの下のワーキンググループについては、会合開催やその他の手段を通じて、引き続き定期的かつ効果的な交流と連絡を行った。

(環境保護)

 2004年12月、第6回日中韓三カ国環境大臣会合が東京で開催された。参加閣僚は、共同声明を署名・採択し、循環型経済、エコ・ラベリング等の分野における協力を実施することで合意した。中国は、循環型経済に関する三国間のシンポジウム開催を提案した。日本は、三国間の共同作業部会設立を提案した。黄砂に関する大臣会合は、中国、日本、韓国及びモンゴルの環境大臣と関係国際機関の代表が参加して開催された。

 2005年5月、中国が、三国間の共同作業部会の設立式を北京で開催したのに続き、同部会の第1回会合が韓国で7月に開催された。同年9月、北京で循環型経済に関する三国間のシンポジウムが開催された。同シンポジウムの参加者は、特に循環型経済について意見交換を行った。

 2005年10月、韓国で第7回日中韓三カ国環境大臣会合が開催された。参加閣僚は、循環型社会、循環型経済及び3R(リデュース、リユース、リサイクル)に関するセミナーを、今後3年間順番に主催することに合意した。参加閣僚はまた、作業部会に対し、将来の協力計画を起案することを委任した。更に、国連気候変動枠組条約の下での三国の努力と両立・貢献し、京都議定書に代わるものではなく補完するものとして、「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」の立ち上げを歓迎した。

 第8回日中韓三カ国環境大臣会合は、2006年12月に北京で開催された。参加閣僚は、日中韓首脳会議の重要な構成要素としてTEMMが果たす役割を認識し、北東アジアの地域環境協力促進と持続可能な発展の達成にとってTEMMは極めて重要であるとの意見で一致した。参加閣僚は、黄砂、漂着ごみ、有毒及び有害廃棄物の違法な越境移動等の環境問題に取り組むことにより、TEMMが将来より重要な役割を担うべきであることで合意した。

(災害予防・管理)

 2005年10月、韓国は、第2回地震災害軽減に関する中国地震局、日本国気象庁、韓国気象庁による会合を開催し、地震データ及び情報の交換や専門家の交流を含む論点について議論した。2006年11月、第3回会合が北京において開催され、協力を継続・加速させる必要性を再確認した。

(エネルギー)

 三国の外交当局の参加を得て、2004年12月にソウル、2005年3月に東京、2005年4月に北京にて、3度のエネルギーに関する課長級対話がそれぞれ開催された。参加した各国課長は、相互のエネルギー事情と政策について意見交換を行い、エネルギー分野において、外務当局間で三国間協力を推進するためのモダリティについて議論した。その結果、2005年5月に日本の京都で開催された外相三者委員会に「日中韓外交当局間エネルギー対話報告書」が提出された。

 三国は、ASEAN+3、アジア太平洋経済協力(APEC)、国際エネルギーフォーラム(IEF)等の多国間枠組みの下で緊密に協力し、エネルギー安全保障の一層の強化に向けた議論を主導した。

(金融協力)

 三国間の金融協力は、財務大臣会議を頂点とする重層的な制度へと発展している。

 2005年5月にトルコで開催された第5回日中韓財務大臣会議において、参加閣僚は、チェンマイ・イニシアティブ(CMI)の有効性強化とマルチ化の推進に合意した。

 2006年5月、第6回日中韓財務大臣会議がインドにおいて開催された。参加閣僚は、マクロ経済の状況について議論し、CMIのマルチ化について意見交換を行った。参加閣僚は、東アジア金融協力の将来について一層の研究を行う必要性を認識し、それぞれのスタッフに対し、関係する作業を始めるよう指示した。参加閣僚は、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)、ASEAN+3リサーチ・グループ等、他の地域協力プロジェクトを推進する強いコミットメントを再確認した。三者は、世界及び地域の持続的成長と金融市場の安定を達成するために自らの役割を強化する必要性、及び国際金融機関における発言権強化の必要性を認識した。

 三国の財務当局者も様々なレベルで引き続き活発な交流と緊密な協力を行ってきている。

(科学技術)

 2006年8月、韓国にて科学技術協力に関する第3回局長級会合が開催された。同会合において、三国間の閣僚級会合開催についての議論が行われた他、現在進められている共同研究プロジェクトが高く評価された。韓国は、2007年1月に第1回日中韓科学技術大臣会合を韓国にて開催することを計画している。

(保健)

 2006年5月、三国の保健当局の代表者は、ジュネーブにおいて、「新型インフルエンザに対する共同対策に関する日中韓政策趣意書(レター・オブ・インテント)」に署名した。また、分野別の協力強化を念頭に、可能な限り早期に、新型インフルエンザへの共同対応に関する覚書に署名することにも合意した。

(観光)

 2006年7月、日本において第1回日中韓観光大臣会合が開催され、日中韓三国間の観光交流と協力の強化に関する北海道宣言が採択された。参加閣僚は、2005年に1200万人である三国間の国際観光交流の規模を2010年までに1700万人に増加させることに合意した。

(漁業資源保全)

 日中韓三国は、2006年10月までに17回の研究者によるセミナーを開催し、306の文書を発出した。同セミナーと文書は、水産養殖と漁業資源保全の分野における科学的研究と管理の促進に大きく貢献した。三国の非政府漁業組織は、2004年12月から友好交流会合を3度開催し、2006年11月には、韓国の釜山において漁業協力に関する日中韓フォーラムが開催された。これらすべての取り組みは、一貫して相互理解の強化に大きな貢献となった。

2.文化及び人的交流

(人事行政)

 2005年1月、韓国において、日中韓の人事当局による第1回の総裁級会合が開催された。三国の人事当局は、「人事行政分野における協力に関する覚書」に署名した。2005年7月、日本は、第1回の局長級会合を主催し、最初の協力計画が決定された。第2回の総裁級会合は、日本において2006年5月に開催された。三国の人事当局の長は、共催シンポジウム、人的交流及び情報交換等の協力活動をレビューし、その進展に満足の意を表した。三国の人事当局の長はまた、中国において第3回の総裁級会合を開催することを決めた。2006年7月、中国は、第2回の局長級会合を主催し、新しい協力計画を決定した。三国の人事当局による協力は一層進展しつつある。

(人的交流)

 相互理解、信頼と友好の促進、協力の機会と手段の探求を念頭に、「日中韓次世代リーダー・フォーラム」が2003年から毎年7月に三国で開催されている。第3回フォーラムは、北京、名古屋、岐阜、光州、ソウルで2005年7月に開催され、政界、ビジネス界、メディア、学界、青年団体を含む様々な分野の代表の参加を得て開催された。第4回フォーラムは、青島、仙台、ソウル、済州島において2006年7月に開催された。

 2005年8月、「北東アジアにおける将来の協力プランを探る」とのテーマの下、韓国にて、第2回北東アジア(日中韓)ユース・フォーラムが開催された。

(教育)

 日中韓の教育省による第1回の局長級会合は、2006年3月にソウルで開催された。同会合においては、各国の教育政策が紹介された。参加した局長は、現在の二国間の各交流プログラムを拡大して三国間のプログラムとして実施することに合意した。詳細は継続して議論する。

 2005年に、日本に滞在する中国人留学生が計80,592名である一方、中国に滞在する日本人留学生は計18,874名である。韓国に滞在する中国人留学生は、計13,091人、中国に滞在する韓国人留学生は、54,079名または28,408名である(数字は中国と韓国からそれぞれ提供された)。韓国に滞在する日本人留学生は938名(2003年度の日本が提供した数字)、日本に滞在する韓国人留学生は15,606人(2005年度の日本が提供した数字)である。

(文化)

 2005年2月、日中韓のオンライン・コミック配給者と若手オンライン漫画家が参加して、第5回「アジアINコミックス2005」が開催された。参加者は、それぞれの国のオンラインでの漫画配給とオンライン漫画家の活動状況について議論した。

 日中韓文化フォーラムの設立会合及び第1回会合が、2005年12月にソウルで開催された。第2回会合は2006年12月に北京で開催される予定。同フォーラムは、文化、スポーツ、青少年の分野において様々な人的交流活動を実施することによって、三国の人々、特に若者の間における相互理解と友好を促進した。同フォーラムの枠組み内で、三者は、三国の青少年の間でサッカーの青少年友好試合その他の交流活動を開催した。

(スポーツ)

 過去2年間、三国間のスポーツ交流と協力が盛んに行われた。サッカー、バドミントン、卓球等様々な活動が1000名以上の人々が参加して開催された。

 2005年と2006年には、韓国と日本が相次いで日中韓A3サッカー・チャンピオン・カップを主催した。

 第13回と第14回の日中韓ジュニア交流競技大会は、2005年に日本、2006年に韓国でそれぞれ開催された。

(地方自治体間の交流)

 2005年9月に韓国が主催した第7回日中韓姉妹都市会議において、北東アジアの共同の発展促進における地方自治体の役割について議論が行われた。2006年8月、第8回会合が「北東アジアにおける調和の促進と共通の発展及び繁栄の達成」をテーマに中国において開催された。三国の地方自治体間の理解と協力の促進に活発な役割を果たしながら、同会議は、二国間及び三国間の交流と協力を強化する重要なメカニズムとなった。

 2006年11月、中国において、「第2回東アジア経済交流推進機構会議」が開催された。参加者は、三国の都市間の交流と協力を強化することについて意見交換を行った。

3.アジア地域協力

 東アジア地域協力における重要な参加国として、中国、日本、韓国は、ASEAN+3や東アジア首脳会議(EAS)等の枠組みの中で協調と協力を十分に維持した。

 東アジア協力を強化する重要な手段として、三国は、ASEANとの関係を一層向上及び発展させた。

 三国は、アジア太平洋経済協力(APEC)やアセアン地域フォーラム(ARF)等の枠組みにおける活動に積極的に参加し、アジアにおける多国間主義の発展に寄与した。

 六者会合が2005年9月19日に共同声明を採択して以来、三国は、同共同声明の完全な履行と朝鮮半島の最終的な非核化に向けてしっかりとした努力を行ってきた。

結論

 過去2年間、三国間協力は、経済と貿易、情報、環境保護、人材開発、文化の重点5分野をはじめとする様々な分野において、大きく進展した。三国は、相互の関係発展における現在の新しい機運を捉え、政治的な相互信頼を一層強化させる機会とすべきであり、また、「日中韓三国間協力の促進に関する共同宣言」や「日中韓三国間協力に関する行動戦略」等の共同文書に基づいて、新たな成果のための三国間協力を促進するための機会及び東アジアの平和、繁栄と発展に然るべき貢献を行うための機会とするべきである。