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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第7回日中韓首脳会議 共同プレス声明

[場所] セブ
[年月日] 2007年1月14日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.中華人民共和国、日本国及び大韓民国の第7回首脳会議が、温家宝中国国務院総理、安倍晋三日本国内閣総理大臣及び盧武鉉韓国大統領の出席の下、2007年1月14日にフィリピンのセブで開催された。温家宝中国国務院総理が同会議の議長を務めた。

2.三国の首脳は、三国間関係の最近の進展に満足の意を表明するとともに、アジアにおける重要な国々として、中華人民共和国、日本国及び大韓民国は、アジアの平和、安定及び繁栄の維持に大きな責任を負っているとの認識を共有した。三国の首脳はまた、三国間の未来志向の三国間協力の強化が、三国の国民の基礎的かつ長期的な利益の双方に資するとともに、アジアの平和、安定及び繁栄に大きな重要性を有することを確信した。三国の首脳は、地域全体の安定と発展という利益のために行動し、相互の尊敬と理解に基づく政治的信頼を強化することに合意した。三国間の更なる信頼構築の重要な手段として、三国の首脳は、より頻繁な交流を行うことに合意するとともに、三国が関係する主要な政治・外交課題や地域・国際問題に関する緊密な連絡及び調整を行うため、外務高級事務レベルの三者協議メカニズムを創設することを決定した。第1回目の三者外務高級事務レベル協議は、本年、中国主催で開催される。

3.三国の首脳は、「2005/2006日中韓三国間協力進捗報告書」を承認するとともに、様々な分野(特に経済・貿易、ICT産業、環境保護、人材育成及び文化の5つの優先分野)においてなされた重要な進展に満足の意を表明した。三国の首脳は、三国が、「日中韓三国間協力の促進に関する共同宣言」及び「日中韓三国間協力に関する行動戦略」に基づき、三国間協力を更に推進、拡充していくため、現在の新たな三国間関係発展のモメンタムに立脚すべきであることに合意した。この目的のため、三国の首脳は、三国間協力に、6つの新たな優先分野、即ち金融、科学・技術、物流、公衆衛生、観光及び青少年交流を加えることを決定した。

4.経済・貿易分野における三国間協力の更なる推進のため、三国の首脳は、三国を代表する研究機関による三国間FTAに関する共同研究のこれまでの進捗に留意するとともに、政府関係者のオブザーバー参加の可能性を伴う、今後の研究のより肯定的な結果に期待を表明した。三国の首脳は、2007年の出来るだけ早期に、三国投資協定交渉を開始することに合意した。三国は、それぞれの国において、ビジネス環境改善のために引き続き努力していく。三国の首脳は、安全、効率的、費用対効果に優れ、シームレスな三国間の物流システムの構築を推進していくことに合意した。三国の首脳は、WTOドーハ開発アジェンダ交渉の早期かつ成功裏の妥結に向けて、共に協力していく用意があることを表明した。

5.三国の首脳は、黄砂、漂着ごみ、有毒・有害廃棄物の違法な国境を越える移動等の問題に取り組むことによって環境分野における協力を一層強化していくことに合意するとともに、既存の二国間、地域及び多国間の枠組みにおける協力を強化していくことに合意した。三国の首脳は、黄砂が、北東アジアにおける他の問題とともに、地域の国々にとって共通の懸念事項となっていることに留意し、これらの地域環境問題による被害の軽減に共に取り組むことに合意した。この目的のため、三国の首脳は、既存の枠組み、特に三カ国環境大臣会合(TEMM)を通じて、具体的な措置を更に探求していくことに合意した。

6.社会・文化協力の強化を念頭に、三国の首脳は、2007年を中国、日本及び韓国の文化交流年に指定するとの中国の提案を歓迎した。三国の首脳は、かかるアイデアは、三国の国民間の相互理解と友好を強化するものであるとの見解を共有した。中国は、2007年に三国の文化に焦点をあてた第9回アジア芸術祭を開催することを提案した。日本及び韓国は、中国の提案を歓迎し、支持した。

7.三国の首脳は、北東アジアにおけるエネルギー安全保障の重要性に関する共通の理解を共有し、三国間のエネルギー対話を一層推進することで合意した。

8.三国の首脳は、捜査協力と連携の強化によって、三国間協力を要する犯罪分野での対応策に関する緊密な協力を強化することに合意した。

9.三国の首脳は、日中韓の三国間協力が東アジア協力の重要部分であるとの点で一致した。かかる三国間協力は、東アジア協力を拡充させ、関連する制度づくりを強化し、ASEAN+1、ASEAN+3、東アジア首脳会議及び東アジア共同体構築の推進において積極的な役割を果たすものである。三国の首脳は、ASEANとの協力強化、東アジア協力の推進、東アジア協力におけるASEANの主導的な役割を尊重することを再確認した。三国の首脳は、ASEAN+3を主要な手段として、東アジア共同体を長期的目標として実現していくとの見解を共有した。三国の首脳は、東アジア首脳会議がこの地域における共同体の形成に重要な役割を果たし得ることを再確認した。さらに、三国の首脳は、APECにおいて、躍動的かつ調和的なアジア太平洋共同体に向けての取組を継続することを誓約した。

10.三国の首脳は、北朝鮮の最近のミサイル発射及び核実験により引き起こされた状況への懸念を表明した。さらに、三国の首脳は、朝鮮半島の核問題を対話と交渉を通じて平和的に解決するとのコミットメントと共に、全ての国連加盟国による国連安保理決議1695及び1718の完全な履行が必要であることを再確認した。三国の首脳は、9月19日共同声明の完全履行及び半島の非核化に向けて、具体的かつ効果的なステップをとることを求めた。また、三国の首脳は、国際社会の人道上の懸念に係る問題への対処の重要性を強調した。

11.三者は、様々な世界的脅威と課題に対応するための国連の権威、効率性、能力及び説明責任を強化するため、安保理を含む国連の改革を支持し、この問題について連絡をとっていく意向である。三国の首脳は、潘基文国連事務総長の職務を支援していく用意がある旨表明した。